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圧勝した民主党政権の最大の使命は「ガバナンスの回復」:「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」(神保哲生)
http://www.asyura2.com/09/senkyo70/msg/395.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 9 月 01 日 18:15:11: twUjz/PjYItws
 

http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090901-01-0901.html

「検証・民主党政権で日本はどう変わるのか」
2009年9月1日 ビデオニュース・ドットコム

圧勝した民主党政権の最大の使命は「ガバナンスの回復」
(ジャーナリスト 神保哲生)
 
 
総選挙は、過半数をはるかに超える308議席を獲得した民主党の圧勝に終わった。この結果を受け、『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』の著者・神保哲生氏に民主党政権の今後の展望や課題について語ってもらった。
  
  
──まずは選挙結果を受けての印象は?
  
 ここまでの圧勝を民主党がどう受け止めるかが気になる。自民党の無策ぶりに愛想をつかした有権者たちが、民主党の政策に期待し支持を寄せた結果の勝利だと受け止めれば、さっそく明日からでも公約の実現に取りかかろうとするだろう。
  
 だが、大勝に浮かれるようなことがあると心配だ。自民党があまりにも議席を減らしたので、当分民主党の脅威にはなりそうもない。そのような状況の下で、無理に国民に不人気な政策や、激しい抵抗に遭うことが予想される政策を急いで実行する必要はないと考えてしまうと、大勝したことがむしろ仇となるかもしれない。
  
 また、今回新たに当選した百数十人の新人議員たちが、これまで民主党が積み重ねてきた政策や理念をどれくらい理解しているかも気になるところだ。新人の多くはいわゆる「小沢チルドレン」であり、「政策よりも地元まわりを」という小沢一郎氏の考えのもと、旧来型のドブ板選挙を戦ってきた人が多い。彼らの党の政策に対する理解の度合いによっては、選挙前と選挙後の民主党は異なる政党になってしまう可能性さえある。この圧勝は党そのものを変質させかねないほどのインパクトを持っているということだ。
  
 私は、多くの有権者は民主党が公約を実現することを期待して票を投じたと考えるが、あまりにも勝ちすぎたことで、民主党自身が政策の重要性を見失う恐れがある。それを防ぐためにも、有権者やメディアは、今後も民主党に対して、公約の実行を迫っていくことが大切だろう。
  
 アメリカでは、自分が投票した議員の行動に不満があったり、議員に浮かれた様子が見られたりすれば、有権者が議員事務所にクレームの電話を掛けたりファックスを送ったりすることは日常茶飯事だ。日本にはそういうカルチャーがないので、そこまでは望まないにしても、議員や党のサイトを通じてメールを出したりすることは簡単にできる。民主党が標榜してきた「市民の参加」という意味からもそうした動きが出てくることが望ましい。
  
 当面マスメディアは、組閣人事や首相のプロフィールといった、表層的で一般受けするニュースを重点的に報じるだろう。もちろんそれはそれで意味はあるが、今の日本が置かれた状況を考えれば、とてもではないが政権交代という「お祭り」に浮かれている場合ではない。有権者は政権公約の実行の進捗状況や、その前提となる人事や制度改変などに、目を光らせていく必要がある。
  
 たとえば、官僚を束ねる事務担当の官房副長官人事などは、民主党の改革の本気度を見極める上で重要だ。また、本気で情報公開を進めなければ、かねてから鳩山由紀夫代表が主張してきた「政治を官僚から国民の手に取り戻す政治」は夢物語になるので、その点のチェックも欠かせない。
  
 民主党政権では、1人1人がそうしたニュースの「ツボ」を意識することが大切だ。自民党時代のように、いったん選挙が終われば政治のことは政治家と官僚にまかせておけばいいという「まかせる政治」感覚からは卒業すべきだろう。


財源問題以前に問われる重要な問題

──秋にはさっそく予算に関する審議が始まるが、財源問題はどうなるか?
  
 財源問題はたしかに重要だ。どんなにいい政策を約束していても、そのための財源を捻出できなければ、空約束となる。
  
 民主党の説明では、抜本的な予算の組み替えと徹底したムダの排除で、必要とされる17.5兆円の財源は捻出できるということだが、その説明に対して多くの論者は「そんなに捻出できるはずがない、民主党の考え方は非現実的だ」と言って批判してきた。
  
 しかし、私の考えはちょっと違う。エコノミストや財政の専門家には怒られてしまうかもしれないが、私は現時点ではそうした財源論争自体がナンセンスだと考えている。
  
 民主党の福山哲郎政調会長代理は、選挙前の私のインタビューに対して「実際に今の政府にどれだけのムダがあって、われわれが政権を取ったときにどれだけのムダを省けるかについての具体的な数字は、実は政権を取ってみなければわからない」と答えている。たぶんそれが正直なところだろう。そんな頼りないことでは困ると考える人もいるだろうが、これこそが今の日本の“官主主義政治”を如実に物語る、おそらく日本の最大の問題だと私は思っている。
  
 今の日本の問題が860兆にのぼる財政赤字であることは論を俟たないが、問題はその数字よりも、なぜ財政赤字がそこまで膨らんだのかという原因だ。数字はその結果に過ぎない。
  
 日本の財政赤字がそこまで膨らんだ原因は、今の日本政府が完全にガバナンス(統治)を失っているからではないか。ガバメント(政府)がガバナンスを失っているとは、まるでブラックジョークのようだが、要するに、財政赤字が膨らんだ理由が、自民党政権が誤った経済政策を実施し、間違った施策に予算を注ぎ込んだ結果なのであれば、民主党は単に経済政策を転換し、間違った施策を止めればいい。
  
 しかし、おそらく福山議員と同様に自民党の議員も、今の日本の予算ではいったい何のためにいくら使われていて、どれだけ無駄を省けるかは正確にはわからないはずだ。
  
 自民党政権下では、経済政策の失政があった結果として財政赤字が膨らんだというより、事実上財政がアウト・オブ・コントロールに陥ったことが、最大の問題だったのではないか。予算編成を官僚にまかせっきりにするうちに、政治は財政をコントロールする機能も能力も失い、ガバナンスが崩壊したなかで、各省庁が既得権益としての予算の取り分を要求する状態が恒常化していた。
  
 これは日本を1つの株式会社にたとえて考えるとわかりやすい。われわれ有権者はオーナー、つまり株主だ。これまで自民党という経営陣に会社経営を任せていた。ところが会社は大赤字で倒産の危機に陥ってしまった。前経営陣の問題は、経営戦略を間違えたのではなく、経営戦略そのものを何も持たず、すべてを現場、つまり官僚にまかせていたため、しまいにはまったく現場をコントロールできなくなってしまったことだ。
  
 部長クラス以下(官僚)は自分たちの勝手な判断で支出を続けた。部長や課長は現場にいるので、出入り業者とか下請け業者との関係が深まる。接待もあるし天下りも期待できる。放っておけば癒着するのは当然だ。会社の場合、そうした誘惑に対抗するために経営者や株主によるチェック=ガバナンスがある。ところが日本株式会社の場合、経営者は部長が何にいくら金を使ったかまったくわかっていなかった。まさにガバナンスの欠如だ。
  
 そして、われわれは8月30日の株主総会で、旧経営陣を総退陣させた。したがって、新しい経営陣=民主党の一番大きな課題は、まず政府のガバナンスを回復することだ。となれば、単に「ムダ」を削るだけではダメだ。財源を捻出するために官僚に「10兆円削れ」と命じて中身を丸投げしてしまえば、優秀な彼らなら何とか帳尻は合わせてくるだろう。
  
 だが、問題はその中身なのである。利権につながるようなものを残して、必要な事業が削られた結果として10兆円を捻出したとしても、ガバナンスが回復したことにはならない。その意味で、いくら削れるかをめぐる数字合わせ議論は、この段階では最優先課題とすべきではないと、私は考えている。


政府のガバナンスをいかに回復するか

──では、何がムダかの判断はどうすればよいか?
  
 たとえば会社の帳簿にあたる予算書を見ても、漢字だらけの官僚用語で「○○関連対策費」とか「××関連振興費」などといった意味不明の項目がずらっと並んでいるだけだ。その具体的中身は予算書を見てもまったくわからないし、国会でも審議はされていない。自民党政権もわかっていなかっただろう。おそらくその実態を正確に把握しているのは財務相の主計局と当該予算を要求した役所の課長クラス、そして一握りの族議員くらいではないか。
  
 しかし、実際に予算項目の中身を調べてみると、ずいぶんとおかしなものが多く含まれていることも、最近わかってきた。NPOのシンクタンク「構想日本」が「政策棚卸し(事業仕分け)」と称して各省庁の事業予算を一つひとつ細かく精査したところ、3〜4割はカットできるケースが続出したという。たとえば「青少年育成事業」と書かれた項目の中身が、実際は子どもを山に連れて行ってポニーに乗せることだったりしたそうだ。もちろん予算審議の過程で細部まですべてチェックできるわけはないが、その手のムダはおそらく無数にあるにちがいない。
  
 ここで言うムダとは、その事業自体に効果がなく、必要のないものだけではなく、随意契約を入札制にすればもっと安くできるものや、国がやるよりも民間に委ねるべきものなどもすべて含んでいる。
  
 構想日本の「政策棚卸し」は、役所の協力なくしては実現できないので、おそらく役所が事業仕分けのために差し出してきた情報は、比較的ムダが少なかったり、利権的要素が少ない部署のものだったと思われる。それでも3割ものムダが明らかになるのであれば、予算項目のすべてを本気で棚卸しすれば、大変な金額が削れる可能性がある。
  
 民主党はムダ省きで10兆円を捻り出せるはずだと言っているが、これは一般会計と特別会計の合計から重複分を引いた正味予算の5%に過ぎない。
  
──とはいえ、予算の項目を政治がすべてチェックするのは不可能ではないか?
  
 すべてをチェックするのは物理的に不可能だろう。しかし、すべてができなくても、毎年サンプル的にいくつかを中身まで徹底的にチェックすることは可能なはずだ。
  
 しかし、ポイントは政治がすべてやることではない。情報公開を進めて、政治だけでなく、メディアやNPOもそうした役割を担えるようにすることだ。それこそが、私が「まかせる政治から引き受ける政治へ」と呼んでいる民主党政治の要諦だ。
  
 アメリカには政策をチェックする構想日本のようなNPOが無数にある。たとえば、コモンコーズのように、議員の献金と行政のムダをチェックすることに特化したNPOもたくさんある。それは、アメリカでは情報が十分に公開されていて、そのような活動が可能であることと、NPOに寄付が集まりやすくなるように、所得税控除などの税制優遇措置が設けられているからだ。
  
 実は情報公開の推進も、NPOの税制優遇措置の導入も、そして市民の政治参加の推進も、すべて民主党が野党時代に一貫して主張し、推進してきた政策だ(詳しくは拙著『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』を参照されたい)。与党になったとたんに、それらがトーンダウンするようなことがないように、われわれ市民社会も厳しくウオッチしていく必要があるが、何よりも、そんなことをすれば民主党にとって大きな損失となる。
  
 民主党政権が本気で官僚機構や既得権益と対決していく気があるのなら、まずは市民を味方につけなければならない。中身の良し悪しはともかく、小泉純一郎政権が官僚の抵抗を乗り越えて郵政や道路公団の民営化を強行できたのは、一にも二にも、小泉政権が高い支持率に裏打ちされていたからだ。
  
 また、ガバナンスの回復にも、「情報公開=ディスクロージャー」は不可欠な要素だ。官僚主導の政治では情報がまったく開示されてこなかった。重要な意思決定のほとんどは密室の中で族議員と官僚の間で下されてきた。先に述べたように、オーナーであるはずの市民のみならず、メディアにも、明日にも政権を取ろうかという野党議員に対してさえ、基本的な情報が公開されていなかったのが、これまでのこの国の政府のガバナンスの現状なのだ。
  
 ディスクロージャーさえ進めば、官僚から政治に、そして政治から市民へと、意思決定の主導権が移ってくる。そうしてガバナンスが回復すれば、時間は掛かっても確実に状況は変わっていくはずだ。結党以来ずっと「透明性」つまりディスクロージャーを強調してきた民主党に、その点だけは大いに期待したい。


抵抗克服のカギは情報公開と市民参加

──そうした改革を行う際に官僚の抵抗が予想されるが?
  
 民主党は政治主導を実現するために、国会議員を100人超も内閣に送り込むと言っている。とはいえ、それでは1つの省庁あたり10人にも満たない。それですべてが変えられるはずはない。より重要なのは、官僚のなかに民主党の政策を理解し協力する勢力を作り出していくことだろう。役所にコミットするのではなく政権にコミットする官僚をどれだけ増やしていけるかだ。さらに言えば、政権にコミットすることがその官僚にとって損にならないような仕組みが作れるかどうかがカギになる。
  
 官僚の協力を引き出していくという意味では、今回の圧勝は意味がある。1993年の政権交代では、まだ自民党が一定の勢力を維持していたので、細川護煕政権に協力せずに、自民党の復権を待ったほうが得と考える官僚がいても不思議はなかった。実際、そうした官僚は存在したし、逆にそのとき細川連立政権に協力した官僚たちは、自民党が政権に戻った後はずっと冷や飯を食わされることになった。
  
 しかし、あのときと違い、今回自民党がこれだけ惨敗をした以上、政権がすぐ元に戻るとは官僚も考えないだろう。となればサボタージュするより、自らの生き残りを賭けて民主党政権にコミットする可能性は高くなった。実際、選挙前から民主党の圧勝が喧伝されるに従って、官僚が民主党議員にすり寄る現象が激増していた。
  
 問題は、民主党の議員たちが官僚に取り込まれることなく、これをうまく使いこなせるかどうかだ。ただし、たとえ取り込まれる議員がいたとしても、情報公開がしっかり行われていれば、それが監視の役割を果たす。その意味でもディスクロージャーは極めて重要だ。
  
 最後に忘れてはならないことは、情報公開が進めば市民の責任が増すことだ。
  
 考えてみてほしい。あなたが会社のオーナーで、会社経営を経営者に丸投げしていたなら、もしその会社が苦境に陥ったときには、すべてをその経営者の責任にすることもできるだろう。しかし、もしその経営者が、毎週のように帳簿を持ってあなたの元へ報告に訪れ、経営方針を説明し、あなたの意見と承認を求めていたとすればどうか。会社がうまくいかなくなっても、その経営者だけの責任にはできないはずだ。
  
 情報公開が進んでも、それを活用するかどうかは、われわれ次第だ。情報が公開されれば、われわれにはそれをチェックする義務が生じるし、チェックした結果何か問題があれば、それに対するアクションを起こさなければならない。
  
 民主党政権では市民にとって政治は「まかせる」ものから「引き受けるもの」に変わる。民主党は1998年の結党以来そのような政治を標榜しているし、そのような制度を整備することも約束している。民主党を政権につけた以上、われわれ市民にもその覚悟が求められている。
  
(ダイヤモンド・オンラインからの転載)


プロフィール

神保 哲生(じんぼう・てつお)
ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表。1961年東京生まれ。15歳で渡米、コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て93年に独立。テレビ朝日『ニュースステーション』などに所属した後、99年11月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』、『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』、『ツバル−温暖化に沈む国』、『地雷リポート』など。専門は地球環境、開発経済、メディア倫理。

 

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