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【新政権は「白いキャンバス」】官僚主導の「法令遵守」からの脱却―郷原信郎(日経ビジネスオンライン)
http://www.asyura2.com/09/senkyo70/msg/475.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 9 月 02 日 18:48:34: twUjz/PjYItws
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090830/203747/?bvr

官僚主導の「法令遵守」からの脱却
真価が問われる「社会的要請への適応」としてのコンプライアンス

 郷原 信郎 【プロフィール】


 2009年衆議院総選挙は民主党の圧勝に終わり、民主党を中心とする政権が誕生することが確実となった。その背景にあるのは、この国の社会、経済への国民の「絶望感」に近い危機感と、それをもたらした自民党中心の政権への決定的な不信感である。


国民が求めたchange

 バブル経済の崩壊によって、高度経済成長を支えた戦後の社会・経済システムは終焉し、旧来のシステムを背景とする政官業をめぐる不祥事・スキャンダルが多発した。しかし、官僚主導の戦後経済体制と一体化した自民党中心の政治体制の必死の延命が図られた結果、社会・経済の新たなパラダイムの構築は大幅に遅れた。

 将来に対する漠然とした不安感と閉塞感に包まれたまま21世紀を迎え、その直後に「自民党をぶっ壊す」という刺激的なスローガンを掲げて登場した小泉政権に多くの国民が期待した。しかし、結局、「天下り」に象徴される官僚の既得権益と「世襲」に象徴される政治の既得権益は温存され、ぶっ壊されたのは国民の生活と仕事の方だった。

 裏切られた国民の期待の「残滓」として残された衆議院の圧倒的多数の議席にしがみつきながら、1年毎に首相交代を繰り返した自民党に対する国民の不信が極限まで高まったことが、今回の選挙で、国民が、従来の政権とはまったく異なった民主党政権を選択し、308議席という圧倒的多数による政権運営のパワーを与えることにつながった。

 国民は、将来に希望の見えない日本社会の現状の下で、政権交代というchangeに唯一の望みを託した。マニフェストに掲げた政策の財源が不確かだったり、内容が二転三転したりしても、多くの国民が民主党に投票した。様々な政見・立場の政治家の寄せ集めであること、現時点での「政権担当能力」が官僚と一体となった従来の自公政権との比較では未知数であることなど、問題を十分に認識した上で、敢えて民主党政権を選択した。だからこそ、自民党のネガティブキャンペーンは、民主党への追い風にまったく影響しないどころか、かえって自民党の支持を一層低下させるだけに終わった。

 こうして変化を求める国民の意思に基づいて政権を担当することになった民主党に求められているのは、マニフェストの具体的項目を形式的、短期的に実行することではない。その根底にある「開かれた透明で公正な市民主導の社会」の理念の実現に向けて、持続可能な政権の形を構築することである。従来の「政官業」の癒着構造から脱却し、消費者利益の確保、国民生活の向上に向けて経済を活性化できるよう、官民の健全な協力に支えられた「全員参加型」の政治・社会・経済システムを実現することである。


新政権の理念と「法令遵守」からの脱却

 筆者は、「社会的要請に適応すること」が真のコンプライアンスであると主張し、その観点から、民主党に対しても、独占禁止法、金融商品取引法、消費者関連法など企業活動に重要な影響を及ぼす法分野に関して助言を行い、国会の場でも参考人として意見陳述を行ってきた。2006年2月の衆議院予算委員会公聴会では民主党推薦の公述人として、「法令遵守」から脱却して「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの観点から経済法制を再構築すべきとの意見を述べた。

 その延長上で民主党政権の企業関連政策を考えるとすれば、基本的な方向性は、官僚主導の「法令遵守」中心の枠組みから、社会的要請に応え、消費者利益を確保することに向けての企業の自主的、自律的コンプライアンス重視の枠組みに転換することであろう。

 自民党中心の政権の下では、縦割り型行政システムの下での省益重視の内閣立法に依存する状態が続き、行政官庁が立法と法運用の両方を事実上独占してきた。族議員中心の政権与党に支えられた官僚が中心となって政策を立案し、それに沿って立法、予算編成が行われ、出来上がった法令の「遵守」を強いられるのが企業、という枠組みだった。そこでは、企業のコンプライアンスは、単純な「法令遵守」に過ぎなかった。

 その構図が、一部の企業や公益法人に既得権益を生じさせ、そこから得られる利益が「天下り」や政治献金を通して官僚や政治の世界に環流するという「政官業」の癒着構造が形成されていた。規制緩和、経済構造改革によって経済官庁の許認可権が撤廃されても、許認可権による規制が官僚主導の立法と制裁強化によって「法令遵守」による束縛に転化しただけで、官僚支配の構図は基本的に変わらなかった。


「社会的要請への適応」としてのコンプライアンス活用

 このような官僚主導の構図から脱却するために必要なのは、企業の自主的コンプライアンスを中心とする枠組みに改めていくことである。

 経済活動の主体である企業は、社会からさまざまな要請を受けている。需要に応えて商品・サービスを提供していくという市場からの直接の要請に応えることだけでなく、安全・安心の確保、環境保全、労働環境や労働条件の向上など、広く社会全体からから受ける要請もある。このような社会的要請にバランス良く応えていく取り組みが「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスである。

 そのようなコンプライアンスに各企業が取り組むことによって、企業間には自主的・自律的なルールが形成され、横断的なルールとしての立法を求める企業側からの要請につながる。一方で、消費者側からの直接の要請も行われ、行政の客観的・専門的知見も踏まえて、政治主導の透明な場で調整され十分な議論を経た上で立法化される。そして、行政機関が、そのようにして作られた法令の運用・執行を、専門的・客観的な立場から行うのである。

 政権交代に伴って「政治」「官庁」「企業」の関係が、企業や、消費者(生活者)から直接のルートで情報提供(提案)を行い、それらを政治主導で調整し政策や立法に反映させる構図に転換することになる。それは、企業にとっても、消費者、労働者、下請業者などとの対話と連携を積極的に進め、こられのステークホルダーとの協働の中から、企業自らが社会の要請を鋭敏に受け止め、それに応える方向での活動を行うという自主的なコンプライアンスに転換する契機となるはずだ。

 そして、業界慣行、法令に基づく制度やその運用の経済実態との乖離、歪みなど、企業が健全な事業活動によって社会の要請に応え、利潤を追求することを妨げる要因が存在するときには、それを改める方向での政策提案を政治に対して積極的に行っていくことも、コンプライアンスの重要な要素となる。

 企業から政治への提案、情報提供が、従来のような個別案件への「口利き」を中心とする不透明な癒着構造から、業界団体、経済団体など経済界側の意見と消費者側の意見とが政治主導のオープンで透明な場に持ち込まれ、そこでの議論を通して基本的な政策決定が行われる構図に転換するのである。

 企業の側には、経済実態と法制度や運用に関する十分な認識・理解をベースに、オープンな場での議論に耐え得る説明能力と説得力が求められる。そのような能力こそが、「真のコンプライアンス」に関する能力となるのであり、それに伴って、企業がコンプライアンスに関して必要とする人材の質も、単純に法令の知識を振り回して「法令遵守」を押しつけるだけの従来の「コンプラ屋」とは異なったものとなる。


公取委の「専制的独禁法運用」は大きな転機に

 企業のコンプライアンスにとって最も重要な分野である1つの独占禁止法の運用は、政権交代によって大きな影響を受けることになるであろう。

 これまでの日本の独禁法の運用の特徴は「形式主義」にあった。一時期相次いだ談合摘発においては、市場の構造や背景に目を向けることなく、合意・談合などの価格競争の制限行為があったかなかったかだけを問題にした。最近では、シェアの大きさだけに着目して、寡占的地位にある事業者の些細な行為を、私的独占などで摘発する事例が相次いでいる。そして、下請法の運用も、契約の書面化、代金支払時期などに関して、下請法の規定に形式的に反したかどうかばかりを問題にするもので、実質的な親事業者と下請け事業者との取引関係の適正化、というような視点は希薄であった。

 企業にとって、従来は、このような公正取引委員会の形式面を重視した法運用に一方的に服従し、公取委の見解のとおりに独禁法を「遵守」することがコンプライアンスであった。

 このような公取委の独禁法運用は、小泉改革下で独禁法強化、談合排除の追い風が吹き荒れた時期以降、マスコミ、世論の強い支持を受けて行われてきた。しかし、そうした状況の中でも、ほぼ一貫して公取委の独禁法運用に対して批判的な立場をとってきたのが民主党であった。2004年、2008年に国会に提出された政府の独禁法改正案に強く反対し(前者に対しては対案を国会に提出し)、一度は継続審議、廃案に追い込んできた。筆者もそのような民主党の独禁法問題への対応について理論面・実務面での助言を行ってきた。

 そういう経過に照らせば、民主党が政権を担うことは、公取委の専制的法運用を改める格好の機会となるであろう。制裁・措置の対象とされた企業は、従来のように、公取委の法運用に盲目的に服従するだけではなく、事業活動や市場の実態に基づいて考慮すべき事項があれば積極的に主張していくべきである。

 企業側が反論・主張を行うことを、違反申告者が公取委の調査への服従を余儀なくされるリニエンシー制度や排除命令後の事後審判制度などの現行法の制度が阻害しているのであれば、それを改める制度の見直しも必要となろう。独禁法運用の在り方について公取委と企業の間で透明な場での議論が行われることが、市場競争の機能を実質的に促進することを通して、健全な経済の発展と消費者利益を確保することにもつながるのである。

 多くの企業にとって重大な関心事は、旧政権の下で法案が成立し設置が決定された消費者庁の発足に伴って消費者問題への対応として企業に求められるコンプライアンスがどのように変わるのか、そして、それが政権交代によってどのような影響を受けるのかという点であろう。


政権交代後の消費者庁と企業のコンプラインス

 政府提出の消費者庁設置法案に対して、民主党は「消費者権利院」の創設等を内容とする対案を出した。消費者庁という新たな官庁を創設して、多くの法令を所管・共管させることで消費者保護に関連する法律の所管の「隙間」を埋めようとする政府側の消費者庁法案に対して、民主党法案の考え方は、従来の政府内の行政官庁の枠組みとは別個に独立した組織を創設して消費者の権利保護のための活動を統括させようとするもので、両者の間には大きなコンセプトの違いがあった。

 結局、政府案では消費者庁内の組織としていた有識者による監視機関を、内閣府の外局で消費者庁と同格の「消費者委員会」に格上げし、権限も強化することなどで民主党が妥協し、修正の上、消費者庁法案が成立した。政権交代によって当初の民主党の考え方が前面に出てくることは必至である。

 筆者は、民主党法案策定の過程でも種々の助言を行い、3月24日の衆議院消費者問題特別委員会でも参考人として意見陳述し、「所管の隙間」解消にこだわる政府案は、結局のところ、従来の官庁と消費者庁との間に「隙間」を作るだけであると批判した。

 その際、強調したのが、消費者の経済的利益の保護に関して、個別的な契約での消費者の利益侵害の問題と、市場メカニズムの健全な機能を高めることを通じての消費者利益の確保の問題とを区別する必要性である。

 前者は、いわゆる悪質業者、悪徳商法による被害の防止・救済の問題であり、消費者の被害回復と悪質業者の排除が強く求められるのに対して、後者では、市場の公正さを確保するための企業の自主的、自律的なコンプライアンスへの取り組みを活用することが課題となる。このような問題の整理をベースに、従来の官庁の枠組みを超えた消費者保護政策をめざす民主党法案の根底には、消費者保護政策を、従来の官主導の「企業排除の論理」から、消費者の視点に立ち、消費者との対話・連携に基づく企業の健全なコンプライアンスを基軸とする新たな方向に向けようとする発想が存在しているのである。

 実際にそういう方向に消費者政策を転換させることができるかどうかは、経済界全体や個々の企業において、コンプライアンスの考え方を「法令遵守」から「社会的要請への適応」の方向に抜本的に改め、積極的なアプローチに転換していくことができるか否かにかかっているのである。

 検察による小沢代表(当時)秘書の政治資金規正法違反の摘発を契機に民主党が打ち出した「企業・団体献金の全面禁止」については既に民主党法案が前通常国会に提出され、民主党のマニフェストでも政治改革の方策の目玉として示されている。


「企業・団体献金の全面禁止」の行方

 企業の行う政治献金には、営業上のメリットを目論むものであれば実質的に贈賄的、経営者個人のタニマチ的なものであれば実質的に背任的な性格があり、法令に違反するか否かは別として、少なくとも社会的には問題があることは否定できない。かかる意味で、企業・団体献金の全面禁止という民主党法案の方向性は正しいというべきであろう。

 しかし、これまで述べてきたように、民主党政権が、官僚主導から政治主導への転換に伴って、企業の自主的、自律的コンプライアンスを重視する方向をめざしていくのであれば、企業が正当に得た事業収益の中から、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、支持する政策実現のための政治活動のコストを負担することを禁止する理由はない。それは、政党助成金や個人献金の免税措置を通して納税者一般にかかる政治コストの負担を軽減するものとなるばかりか、企業の視点で経済社会の実態に基づいて客観的見地から政策評価が行われることで、政党間の政策競争が、個人献金に全面的に依存することによる過度のポピュリズムの弊害を陥ることを防止することにもつながる。

 このような企業による政治コストの負担に関しては、それが、企業の主権者である株主の政治的意思に基づくものであることが担保されるとともに、資金提供の透明性と使途の適正さが十分に確保される必要がある(『コーポレート・コンプライアンス』18号「政治とカネと検察捜査」)。具体的には、株主総会の個別の承認手続がとられ、政党側の収支報告書に委ねることなく、企業自らが積極的に政治資金の提供の事実を公開し、資金使途についても報告させ公表するなど、公正さと透明性を確保していくことが必要となろう。それによって、従来のような贈賄的又は背任的政治献金の隠れ蓑に使われることも防止できる。

 民主党政権下で「企業・団体献金の廃止」の方向に向かうのであれば、企業は、違法又は実質的に問題がある政治資金の提供を行わないよう、従来以上に「政治資金コンプライアンス」を徹底すべきであることは言うまでもない。その一方で、経済団体などが中心となって、従来の企業の政治献金の枠組みとは異なる公正で透明な政治資金の提供の枠組みの構築について議論を行っていくべきであろう。


新政権は「白いキャンバス」

 今回の新政権は、自民党中心の55年体制と官僚主導の枠組みから脱却して新たな日本社会の構図を作っていくための「白いキャンバス」であり、それを具体化していくのが、生活者・消費者・労働者と企業、官庁のコラボレーションによる、透明で開かれた「全員参加型」の政策決定・立法である。「社会的要請への適応」としての企業の自主的・自律的コンプライアンスが、その中でどう位置づけられ、どのような役割を果たしていけるか、そこに、日本の経済社会が混迷から脱却して活力を取り戻すことができるか否かの鍵が隠されている。

 

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