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【新政権の課題】 巨額研究に日本の研究体制は対応できるのか −米国の巨額研究プロジェクトの光と陰−
http://www.asyura2.com/09/senkyo73/msg/109.html
投稿者 どっちだ 日時 2009 年 10 月 09 日 19:51:52: Neh0eMBXBwlZk
 

(回答先: 【自公まき逃げ2700億】 「国民への還元につながらない」 ―最先端研究支援プログラムに、米ベイラー研究所の松本慎一氏 投稿者 どっちだ 日時 2009 年 10 月 09 日 19:38:45)

前稿に続き「最先端研究支援プログラム」の拙速な変更を新政権に思い止まらせようとする投稿ですが、とき既に遅しでした。

http://medg.jp/mt/2009/10/-vol-281.html
MRICメルマガから転載。

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      ▽ 巨額研究に日本の研究体制は対応できるのか ▽
        −米国の巨額研究プロジェクトの光と陰−

         ベイラー研究所フォートワースキャンパス
         ディレクター
          松本慎一

         2009年10月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
                 http://medg.jp
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◆ライフサイエンス分野における巨額国家プロジェクト

 9月4日、最先端研究開発支援プログラムとして総額2700億円を30名の中心研究
者に交付することが発表された。米国は、巨額の研究費を投資して、新しい分野
のイニシアティブをとり続けることを国策としている。日本における、今回のよ
うな大型の研究助成は米国の政策に対する対抗策として捉えられる。

 日本は、医学を中心とするライフサイエンス分野において、優れた基礎研究を
おこなってきた。しかし、実際にヒトを対象とした臨床試験を運用し、標準治療
として確立させ、更に産業化するという一連の作業を実行するという点は極めて
弱い。

 今回の巨額国家プロジェクトは、まさにこの部分を補うための新しい試みであ
り、大いに期待できる。ただし、巨額な金額を研究に投資する前に、投資がきち
んと機能するかを熟考する必要がある。つまり、『巨額』の部分だけ米国の真似
をしても大いなる無駄になる可能性がある。巨額投資に研究者や研究機関が対応
できるかどうか、そして日本の国策と合致するかどうかを見極める必要がある。


◆米国の大型国家プロジェクト1 〜免疫寛容ネットワークプロジェクトでの経
験〜

 米国では、極めて重要な研究課題に対して迅速に巨額の研究費が割り当てられ
る。私は、1997年から2002年の間、米国で糖尿病治療としての膵島移植の研究を
行ったが、その際に巨額国家プロジェクトに参加する機会があった。私が参加し
た巨額プロジェクトは、「免疫寛容ネットワーク」と呼ばれるもので、免疫に関
する新しい治療法を開発し、その標準化を目指すプロジェクトである。当時のク
リントン大統領の指揮のもとおよそ150億円が交付された。

 この巨額プロジェクトは、ひとつの論文がきっかけとなって立ち上がった。そ
の論文とは、1999年にマイアミ大学の研究グループが、膵島移植を行った糖尿病
モデルのサルへ新規薬剤(CD40ライガンド)を投与した実験で、免疫抑制剤を使
用することなく糖尿病が完治したという論文である(1)。

 CD40ライガンドとは、移植医療で問題となる拒絶反応の引き金を遮断する薬剤
である。移植医療では、拒絶反応を抑えるために、免役抑制剤を一生内服し続け
なければならないが、CD40ライガンドを移植時に一時的に使用することで、免役
抑制剤の内服が不要となることが判明したのである。

 このプロジェクトは、サルの実験の成功をヒトへ応用しようというもので、当
初の目標(エンドポイント)はCD40ライガンドを用いた膵島移植を臨床応用する
こととされた。ここで注目すべき点は、エンドポイントが簡潔に明確化されてい
ること、そして、このエンドポイントが患者に直接還元されるということである。

 ところが、このCD40ライガンドの安全性に関する問題が、他疾患の研究者より
報告された。この時点で米国立衛生研究所(NIH)の判断により、CD40ライガン
ドを用いた膵島移植のプロジェクトは白紙となった。これは、このプロジェクト
の目標が臨床応用であり、臨床応用できないことが判明したため完全に中止となっ
たのである。


◆米国の大型国家プロジェクト2 〜エドモントンプロトコール〜

 前述したプロジェクトが暗礁に乗り上げていた頃、カナダのアルバータ大学か
ら、膵島移植後に新しい組み合わせの免疫抑制剤を使用すること(エドモントン
プロトコール)で、1型糖尿病患者がインスリン注射から離脱したという論文が
発表された(2)。実際にヒトを対象とした臨床試験で成功しているため、この論
文のインパクトが極めて強く、免疫寛容ネットワークのプロジェクトはCD40ライ
ガンドの臨床応用を目指した研究から、このエドモントンプロトコールの再現性
を証明する研究へと鞍替えした。

 興味深いことに、CD40ライガンドのプロジェクトを担当していたマイアミ大学
とミネソタ大学は、アルバータ大学の成績が他の施設でも再現性が得られること
が重要であると主張し、多施設共同研究という形でエドモントンプロトコールの
プロジェクトが実施されることとなった。

 この流れに全米の各研究機関は、自施設も参加するべきだと異口同音に主張し
始めた。そこで、アルバータ大学、ミネソタ大学、マイアミ大学の中心研究者は、
膵島分離のための施設認定試験を行うことを発表し、合格した施設が参加できる
ことにした。この発表は、ヨーロッパにも届き、最終的には、世界9施設で共同
研究が開始された。

 このエドモントンプロトコールの多施設共同研究の結果は、2006年に発表され
た(3)。その結論は、膵島移植や免疫抑制剤に対し、経験豊富な施設はエドモン
トンプロトコールを再現できるが、経験が浅い施設は再現できないということで
あった。その後、米国では、膵島移植でよい成績を出したミネソタ大学とマイア
ミ大学に限り公的資金で一部サポートすることを決定した。また、膵島移植の成
績は、長期成績が悪くなることが判明し、全盛期には全米に30以上もあった膵島
移植実施施設は、現時点では10施設ほどになってしまった。


◆巨額研究プロジェクトの光と陰

 国立衛生研究所(NIH)は、当初、CD40ライガンドを用いた膵島移植の臨床応
用に研究費を投入することを決定したが、CD40ライガンドの安全性に問題が報告
された時点でプロジェクトを中止した。エドモントンプロトコールの多施設共同
研究においても、成績が出せない施設への公的資金の補助は打ち切られ、30以上
あった膵島移植実施施設の過半数が閉鎖に追いやられた。

 このように、米国の巨額研究プロジェクトには、明確な成果目標が決められ、
その目標を達成できない場合打ち切られるのである。これは、米国でも、巨額の
研究費を捻出するのは容易ではないということを反映している。つまり、巨額の
研究費を捻出するためには、成果が出ない研究は容赦なく中止される。厳しいよ
うではあるが、このように、エンドポイントを決め、研究成果を評価し成果が出
ないものを打ち切らなければ、研究費の垂れ流しになってしまい、新しい重要な
研究に対する費用が確保できないのである。


◆優れた研究者を確保するシステム『チェア』

 では、打ち切られた後、研究者はどうなるのであろうか。研究者は、自分の研
究の経験が生かせる施設を探し、新しい研究の場に移るのである。このため、多
くの研究者は流動的であり、研究施設も新しい研究者を受け入れる準備ができて
いる。通常は、研究成果が思わしくないと判ると、研究室が閉鎖される前に研究
者は就職活動を行い、新天地で自分の古巣が閉鎖されたことを知るのである。

 優れた研究者のもとには研究費や研究者が集まり発展するのだが、それでさえ
も、同じ分野で極めて進歩的な発見が発表されると、研究費の獲得が困難となり、
研究室はたちまち立ち行かなくなる可能性がある。そこで、米国では、優れた研
究者に対して『チェア』というシステムがある。これは、優れた研究者に対して
巨額の投資を行い、その投資の利子をその研究者に利用してもらうものである。
この『チェア』は、通常一人や少数の裕福な個人が出資することが多い。このた
め、その個人の名前がついた教室や役職、時には研究センターが出現する。『チェ
ア』の対象に選ばれると、比較的安定した研究費で研究者は安定した研究を行う
ことができるのである。


◆アメリカの巨額研究プロジェクトは日本に応用できるのか?

 日本がライフサイエンスを強化するためには、巨額プロジェクトは不可欠であ
る。しかし、今後、日本が巨額プロジェクトを立ち上げる前にいくつかすべきこ
とがある。以下の4項目に提示したい。

 最初のハードルは、基礎研究からヒトを対象とした臨床試験、さらに標準治療
化を指揮できる中心研究者の育成である。このような研究者こそが、世界を相手
にした厳しい競争の中で生存可能であり、得られた研究成果は国民に広く還元さ
れるであろう。

 次に、プロジェクトの立案から運用、成果の検証を行う審査官が必要である。
審査官には、研究内容の弱点や問題点を見抜き、それらを改善するための提案が
できる能力が求められる。さらに成果が上がらない研究を途中で中止する決断力
も求められる。

 そして、最も重要なのは、巨額投資すべき分野を決定するためコミッティーの
創設である。このコミッティーでは、最新の知見をもとに専門家間の十分な議論
がなされ、少なくとも5年から10年後のライフサイエンスの将来を予測し、ど
の分野に投資することが本当に研究成果を国民や国家に還元できるかを判断しな
ければならない。厳しいようであるが、ライフサイエンス分野では、臨床応用の
道が不明確な分野には、巨額の研究費を投資すべきではない。端的にいうと、ラ
イフサイエンスの研究に巨額の費用がかかるのは、ヒトを対象とした臨床研究が
必要であるからであって、細胞培養やマウスの実験には巨額の研究費は不必要で
ある。

 さらに、重要なことは、ライフサイエンスのコミッティーメンバーには、ライ
フサイエンスが新しい産業になることを理解し、「国民への還元」という視点で
物事を考えられる人物を任用することである。コミッティーのメンバーはプロジェ
クトごとに最適の人物を集めることは必須であり、また、選んだプロジェクトが
きちんと成果をあげられない場合、コミッティーのメンバーの再考も必要である。

 一方で、巨額の研究費をきちんと利用できる研究体制の構築が重要である。従
来型の、研究費を「広く薄く」行き渡らせるシステムは、研究室を存続させる点
では効果のあるシステムである。しかし、このシステムでは、ライフサイエンス
分野では日本は生き残れない。つまり、ライフサイエンス分野で世界をリードす
るには、米国のように、重要なプロジェクトには巨額の金額を厳選した研究者や
センターに供給すべきである。重要なことは、日本の国益を考えられるコミッティー
が、中心研究者やプロジェクトそして必要センター数を決定するということであ
る。このなかでも、最高の中心研究者を厳選する作業が最も重要である。人材さ
え確保できれば、環境はお金を出せば整えられるからである。


◆最後に

 十分な戦略なしに巨額の研究費を投資すれば、非効率に無駄を生むだけではな
く、臨床応用が可能であり国民への還元が期待される研究から研究費を奪う結果
にも成りかねない。巨額の研究費を投資する前に、今正に、ライフサイエンスの
日本のブレーンが真剣に議論すべき時期であろう。

参考)
1) Kenyon NS, et al. Long-term survival and function of intrahepatic islet allografts in rhesus monkeys treated with humanized anti-CD154. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999; 96: 8132.
2) Shapiro AM et al. Islet transplantation in seven patients with type 1 diabetes mellitus using a glucocorticoid-free immunosuppressive regimen. N Engl J Med. 2000; 343: 230.
3) Shapiro AM et al. International trial of the Edmonton protocol for islet transplantation. N Engl J Med. 2006; 355: 1318.

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今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いた
だけましたら幸いです。

                MRIC by 医療ガバナンス学会
                http://medg.jp
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