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日米安保50年の見直しにつながる沖縄「密約」裁判 12月1日公判(第4回)で吉野元アメリカ局長が証言(桂敬一)
http://www.asyura2.com/09/senkyo74/msg/805.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 11 月 14 日 19:57:15: twUjz/PjYItws
 

http://www.news-pj.net/npj/katsura-keiichi/20091113.html

メディアは今 何を問われているか

日本ジャーナリスト会議会員
 桂 敬一
目次 プロフィール


日米安保50年の見直しにつながる沖縄「密約」裁判
―12月1日公判(第4回)で吉野元アメリカ局長が証言―

  オバマ大統領訪日を前に、大新聞の多くが、先乗り役のゲーツ米国防長官の恫喝に慌てふためき、新政権に 「すぐ自民政権の合意どおりに普天間基地の名護移転で決着しろ」 と急き立てた。これに対して鳩山政権は、二枚腰三枚腰で粘って、と言いたいところだが、実は、閣内意見の不一致で、なかなか結論が出せないうちに、グアム基地の拡充・強化やアフガン対策で日本のカネに期待しなければならないアメリカが気を回し、とりあえずは、日本で両首脳が会ったとき、将来の問題も含めて話し合おう、ということになり、うまくすれば、冷戦体制下、あるいは 「55年体制」 下の日米安保を、根本的に再検討するきっかけが作れるかもしれないなりゆきとなっている。

  このような情勢が生まれつつあるからこそ今、3月から始まった沖縄密約文書開示請求の裁判がきたる12月1日に第4回の公判を迎え、そこで、沖縄返還交渉に当たり、その後、密約文書の存在も認めた吉野文六元外務省アメリカ局長と、米国立公文書館でアメリカ側が保存してきた一連の密約文書を発見、日本政府のウソを暴露してきた我部政明琉球大教授とが証言台に立つこととなった事態の行方が、大きな注目を浴びる状況となっている。
  この 「密約」 は、沖縄返還という米軍占領体制からの転換のゴタゴタのなか、両政府のインチキ、とくにアメリカの言いなりになる日本政府の盲従のせいで、生まれたものだ。ところが、その後も日米安保体制の見直しや若干の変更があるたびに、日本政府は「密約」に類する合意をアメリカに与え、在日米軍の便宜を図り、それを既成事実化する一方、それらの一切を国民にはひた隠しするやり方をつづけてきた。その例が 「思いやり予算」 であり、ブッシュ政権時代の、世界的な対テロ戦略展開のための沖縄の基地再編=普天間基地の名護・辺野古移設と沖縄海兵隊のグアム移転に対する合意でもある。後者においては、移転経費のうち61億ドルもの巨費を日本が負担することになっているが、なぜそれが必要なのかの詳細は、国民の前に明らかにされていない。

  しかし、ブッシュ・小泉時代の世界的な対テロ戦の拡大を目指した日米安保体制は、オバマ・鳩山時代となった今、見直されるのが筋というものだろう。そして、新しい合意の中身は、見直しの結果まとめられた、新しい安保体制の内容いかんによって、決められるべきだろう。それは両国民にすべて公開され、支持が得られるものでなければならない。そういう手続を避け、政府にとって都合の悪いことは隠す。あるいはそういう事実はない、証拠もないとウソをつく。そのためには政府間の約束は「密約」にしておく、という悪い例が沖縄 「密約」 だった。その全容が解明され、司法の適切な判断によって政府が裁かれ、政府が情報公開を公明正大に行うようになれば、普天間基地移設、沖縄海兵隊グアム移転の問題はもとより、今後の日米間の安保体制全体も、新しい時代にふさわしいものへと見直されていくことになるはずだ。そのような意味から、12月1日の沖縄 「密約」 裁判は、十分注意を払って注目するだけの価値がある。

  状況が大きく変わる可能性もある。10月27日の第3回公判でも、被告=国側の準備書面は、原告側が米国の公文書を証拠とし、これに該当する日本側文書が外務省に存在すると推定、それらを開示するよう求めるのに対して、相変わらず 「ない」 を繰り返すだけのものだった。しかし、事態はもはや、そういえばいうだけ、国が適切な外交交渉を行っていたのかどうか、疑わしくなるばかりとなっているのが実情だ。岡田克也新外相は10月末現在、外務省事務当局に命じ、沖縄 「密約」 ・ 「核密約 」両文書の所在について調査を行わせていたので、その結果が12月1日に出てくる可能性もある。
  当時の交渉当事者、吉野元アメリカ局長が証人として出廷、「密約」 と関連文書の存在を証言すれば、これまで 「ない」 一点張りの国側代理人は、吉野証人と対質しなければならない羽目に陥るのではないか。どちらかの偽証、あるいは当事者能力の欠如が問題とならざるを得ないからだ。また、杉原則彦裁判長が国側代理人に向かい、「外務省文書だけでなく、大蔵省文書についても、もっと具体的に調べ、納得のいくよう説明しなさい」 と、この公判で指示したのも、注目される。何事も、もういい加減ではすまされないのだ。

    第4回公判はつぎのとおり。
    日時:12月1日(火曜) 13時開廷・17時閉廷(予定)
    場所:東京地方裁判所・第103号法廷
    (1) 提出準備書面についての認否・反論
    (2) 吉野文六証人証言 主尋問40分 反対尋問40分
    (3) 我部政明証人証言 主尋問40分 反対尋問40分
    (我部証人に関しては、以下の記事を参照)

  沖縄 「密約」 事件と裁判のこれまでの経緯を、月刊 『法学セミナー』 に執筆したので、以下に転載、紹介します。ご一読ください。転載を承諾してくださった編集部にお礼申しあげます。


月刊 『法律セミナー』 09年12月号 (日本評論社)
ロー・ジャーナル (LAW JOURNAL)


注目すべき沖縄密約文書開示請求訴訟の進展


立正大学講師  桂  敬一

1 「密約」追い詰めたさまざまな力

  「沖縄密約文書」 は元来、1972年5月の沖縄施政権返還に先立つ交渉で、米軍の負担すべき返還軍用地の復元費400万ドルを、日本政府が肩代わりする約束をした記載のある外務省極秘電報を指す。その暴露は、毎日・西山太吉記者が外務省内協力者から入手した電文コピーをもとに、まず紙面で報じ、のち社会党代議士が衆院でそれを示して告発、政治問題となった。政府は、電文コピーの提供を 「そそのかし」 た西山記者と、彼にそれを渡した女性職員を、ともに国家公務員法違反 (機密漏洩) で起訴、多くの新聞記者や法律家がこれを国民の知る権利に対する弾圧と捉え、強力な裁判体制を組むなりゆきとなった。ところが、検察側は狡猾にも、記者の電文入手は女性職員と 「情を通じた」 不当なものだと批判、世間の非難をそちらに向けて争点をねじ曲げ、いわゆる 「西山事件」 に仕立て上げた。

  作家の澤地久枝さんによるルポ 『密約 外務省機密漏洩事件』 (1974年) は、早くも政府の欺瞞と事件の本質を暴いたが、状況が一変したのは、 1998・2000年の琉球大・我部政明教授と朝日による米国公文書調査の結果、外務省 「密約」 の事案を包み込む大蔵省の 「密約」 に基づき、総額6億8500万ドル (公開の沖縄返還協定では3億2000万ドルのみ記載) にものぼる返還費用が、日本政府から米国側に支払われていた事実が判明してからだ。「沖縄密約文書」 の対象範囲は一気に拡大、最初に問題となった400万ドルがかすむほどに、疑惑の対象となる金額も巨大化した。

  2002年には琉球朝日放送の土江真樹子ディレクターがドキュメンタリー 「告発」 で、 2006年には北海道新聞の往住嘉文記者が吉野文六元外務省アメリカ局長 (沖縄返還の交渉担当者) の証言スクープで、「密約文書」 存在の事実固めを前進させていった。 1972年当時の状況を知らない、これら若いジャーナリストの激励を受け、33年前の裁判で有罪とされた西山元記者も2005年、政府に 「密約」 の事実を認めさせ、自分の名誉を回復するために、国家賠償請求の訴訟を起こした。

  さらに2008年、奥平康弘 (憲法研究者)、原寿雄 (ジャーナリスト)、筑紫哲也 (同) の三氏が共同代表となり、米国公文書館で公開されている、 @ 吉野氏のサイン (イニシャル) 入りの返還軍用地費用合意文書、A 同じく吉野氏サイン入りのVOA移転費用合意文書、 B 柏木雄介 (当時・大蔵省財務官) およびアンソニー・J・ジューリック (米国側交渉担当者) 両氏サイン入りの沖縄返還関係全費用の取り決め文書 (いずれも英文) について、日本側が保存の同文書とそれらの翻訳文とを公開するよう政府に求める集団的な開示請求運動を、情報公開法4条1項 (開示請求手続) に基づいて起こし、ここに至り、「密約」 全体を明るみに引きずり出す機は十分に熟したのだった。

2 もう隠しきれない「不存在」のウソ

  以上に対して政府はこれまで、いかなる 「沖縄密約文書」 も 「不存在」 だということを理由に、国会でも、取材に対しても 「密約」 を否定しきた。西山元記者に対しては、裁判所がかつては 「密約」 あるがゆえの機密漏洩 「そそのかし」 で有罪としたくせに、国家賠償請求裁判では 「密約」 の有無にまったく触れず、請求権が消滅する民法の除斥期間 (不法行為から20年) を適用、請求を退け、敗訴とした。そして、前記3文書の開示請求に対して政府は、@ A については外務省から、B は財務省を通じて、またまた 「不存在」 を理由に、請求者たちに 「不開示」 の門前払いを食らわせた。

  しかし、黙ってはいられない。開示請求に立ち上がった有志や法律家は今年3月、外務大臣・財務大臣にこの不開示決定を取り消させ、当該文書を開示するよう求める、国を被告とする行政事件訴訟法 (3条・37条) に基づく裁判を開始した。 25名からなる原告団には、奥平東大名誉教授、西山元記者、澤地さん、我部教授のほか、新崎盛暉元沖縄大学長、金平茂紀TBSアメリカ総局長なども加わっている (共同代表は新崎元学長、柴田鉄治元朝日記者と私)。また弁護団は31名、団長は清水英夫弁護士。裁判は東京地裁民事第38部、杉原則彦裁判長の下で進んでいる。6月の第1回公判で裁判長は、被告=国に 「原告の指摘する文書は廃棄したのか。そうでなければ不存在の理由は何か。日本政府に存在しない文書がアメリカ政府に存在するのはなぜか。いずれにも合理的な説明を求める」 と指示する一方、原告には吉野元アメリカ局長の証人申請を促し、その異例の訴訟指揮は、メディアを驚かせた。

  8月25日の第2回公判では、被告・国側代理人が、「密約」 応酬のあった国会議事録、外務・財務 (大蔵) 両省の文書管理規程などを証拠として付した、「密約文書」 の 「不存在」 は適法だとする内容の準備書面を提出した。原告側の方は、情報公開制度で入手した、71年時点における、外務省トップが関わる返還交渉の内情を示す極秘電信文コピーと、吉野元アメリカ局長の同月24日付の 「陳述書」 を提出した。後者は、メディアの取材に応じて自分が認めた 「密約」=日米合意の存在を、あらためて自分の言葉で確認するとともに、「相手国が公開したような文書まで秘密にする必要はない」、日本もアメリカの文書公開のような制度を導入すべきだ、とする意見を述べたものだ。杉原裁判長は以上を踏まえ、年内2回 (10月27日、12月1日) の公判予定を入れ、そこに吉野氏と、開示請求対象文書 @ A B を米国公文書館で発見した我部教授とを、証人として順次招く、と予告した。

3 政府内部から出てきた「核密約」の真実

  沖縄密約裁判の大きな進展が、「核密約」 の実態解明の動きとともに生じている局面にも、注意を払う必要がある。沖縄密約にも、返還費用の負担問題だけでなく、「核密約」 が含まれていたからだ。対米交渉で佐藤栄作首相の密使役を務めた故若泉敬大阪産業大教授は、遺著 『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』 に、沖縄の 「核抜き返還」 は表向きであり、米国の核再持ち込みに対する内密の同意を、政府が与えていた、と書き残した。そして今年5月、『週刊朝日』 の諸永裕司記者は、外務省・谷地正太郎政府代表が、若泉教授の書いたことは事実だ、と語った証言をスクープ、つづいて共同通信は、4人の外務事務次官経験者から得た、「核密約」 の扱いを記した内部文書が外務省に保存されており、歴代首相・外相の一部にこれが見せられていた、とする証言をメディアに配信した。すると、これを受けた西日本新聞の山崎健記者は、村田良平元外務次官にインタビューし、元次官の実名入りで、共同配信が事実であることを報道したのだ。その後、多数の新聞が多くの関係者からの情報をもとに、多様な 「核密約」 報道を競って展開、議論も活発に行っている。

  政府が国民にウソをつき通し、統治の合法性が疑われる事態が、かくも長く放置されてきたのは驚くべきことだ。結果的にそれは、時が経てば経つほど、日本の対米従属を強める原因ともなってきた。在日米軍の再編とともに日米軍事一体化が進み、沖縄の普天間基地の名護移転、海兵隊のグアム移設などに伴う費用負担問題が、今また発生している。その過程を透明化、不公正なことがまかり通らないようにするためにも、これまで考察した 「密約」 の実態を徹底的に解明、その教訓を踏まえて、真に情報公開制度といえるものを、確立する必要がある。

 民主党は選挙前から、政権を取ったらこれら 「密約」 すべての文書を公開する、と約束していたが、岡田克也新外相は9月17日、薮中三十二外務事務次官に、核持ち込みや沖縄返還をめぐる日米間の 「密約」 に関して、外務省内の資料を調査、11月末までに結果を報告するよう命じた。 60年安保改定時の核持ち込み申し合わせ、朝鮮半島有事の際の戦闘行動想定、72年・沖縄返還後の有事の際の核再持ち込み、沖縄の米軍基地跡地の原状回復費用肩代わり、の4点に関する 「密約」 が主な調査対象事案だ。外相としては、省内資料の調査がある程度進んだら、第三者委員会を設置、過去の 「密約」 の公表や省としての今後の情報公開のあり方などについて、検討を加えていくつもりらしい。

  外務省のこのような情報公開の試みが財務省でも始まり、政府機関全体に広がれば、日本の政治の質が大きく変わり、民主主義の確かな成熟が期待できることになる。東京地裁で進行中の沖縄密約文書開示請求裁判は、そうした方向を目指す、先導役としての意味を担わされるものとなりつつあるようだ。

(かつら・けいいち)


 

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