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鳩山由紀夫HP憲法改正試案の中間報告W 引用5 統治機構の再編成
http://www.asyura2.com/09/senkyo75/msg/235.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2009 年 11 月 25 日 09:04:47: KqrEdYmDwf7cM
 

(回答先: 鳩山由紀夫HP憲法改正試案の中間報告V 引用4 地方自治条項の改正について 投稿者 てんさい(い) 日時 2009 年 11 月 25 日 09:02:42)

憲法改正試案の中間報告W
統治機構の再編成
鳩山由紀夫
http://www.hatoyama.gr.jp/tentative_plan/index.html

小泉首相も、世間も、もうほとんど忘れているが、「首相公選制の導入」は政権発足時には郵政民営化とならぶ彼の公約だった。国民的盛り上がりの中で行われた自民党総裁公選で選ばれた小泉氏の失速や、イスラエルでの首相公選制の失敗などもあって、現在においては首相公選論は下火になっている。
当時あれほど首相公選論が盛り上がった直接の背景には、森政権が自民党の一部幹部による密室の談合で誕生したことへの国民の怒りがあった。民主的正統性を欠いた政権交代が、議院内閣制への懐疑を産み、国のトップを国民が直接選挙するアメリカ大統領制的システムへの共感を呼んだのだ。
さらに、短命な首相と大臣のもとで官僚支配の弊害が顕著となり、経済のグローバル化が進展する中で、日本が進めなければならない改革政策がなかなか実行されないというもどかしさや、国益に基づく迅速で戦略的な政府の意思決定が行われていないのではないか、といった不満を多くの国民が共有していた。
政界でもこうした問題意識は共通しており、首相公選論が関心を呼ぶ一方で、議院内閣制の強化をめざす議論も生まれた。その一つが行政改革会議の最終報告書とその後の官邸・内閣機能の強化めざしたに一連の行政機構改革であった。
行政改革会議の最終報告書は、求められる「二十一世紀型行政システム」として、@総合性、戦略性の確保A機動性の重視B透明性の確保C効率性・簡素性、を掲げた。それは今もって、日本の統治システム改革の指針とすべき視点である。
議院内閣制と二院制国会を中心とする戦後日本の統治システムが行き詰まりを見せているのは事実だが、それを首相公選制(アメリカ的な大統領統治システム)に代えればすべての問題が解決するかといえば、そう簡単ではない。
イギリスやドイツの議院内閣制を思い浮かべれば明らかなように、首相の在任期間は長いし、強いリーダーシップを発揮している。また総選挙では二大政党のそれぞれが首相候補である党首を前面に押し立てて戦うため、国民は自分たちで首相を選んでいる気持ちになる。
厳格な三権分立のもとで立法府が行政府を絶えず掣肘する大統領制よりも、政党が立法府と行政府を縦断して統治権力を構成する議院内閣制の方が強力な統治システムだという意見もある。また大統領制では、しばしば政府と議会のねじれ現象、いわゆる「分割政府」が生じる。大統領の与党が議会で少数派である場合は、政権はかえって不安定化し、政治的停滞に陥る場合も多い。
要するに、「なぜ日本では首相を直接選べないのか」という国民の不満や、政権が短命で首相が族議員や官僚機構の抵抗を受けて、なかなか大胆なリーダーシップを振るえないなど、われわれが議院内閣制の問題点と考えていることは、「日本の」議院内閣制の問題だということになる。
私は今回の新憲法試案では、基本的には、議院内閣制を前提とし、それを現代の政治環境に適合させるという視点で統治システムの改革案を作成した。首相公選制も一つの選択肢だが、天皇制の存在や百年以上にもわたる日本の議会制民主主義の発展の伝統を尊重すべきだと考えたからである。
行革会議最終報告書のいう「総合性、戦略性、機動性、透明性、効率性、簡素性」をキーワードとする新たな時代の統治システムを構築するためには、内閣、国会、政党のあり方を総合的に見直し、憲法の中に位置づけなければならない。


  政党条項の新設

まず第一に、現代社会においては権力の民主的正統性なくしては、確かなリーダーシップは発揮できない。議院内閣制をとるとしても、国民が自らの一票で政権を選択したと実感できるように、国会議員選挙が実質的な首相公選の場になるような制度設計が重要である。
この憲法試案の「政党は、国会議員総選挙に際しては、内閣総理大臣候補としての党首及びその施政の基本方針を明示して臨まなければならない」という条文は、総選挙を国民の手による政権選択の場とするための条文である。
日本の総選挙は、長い中選挙区の惰性もあって、まだまだ地域代表としての議員を選ぶという性格が強い。「国民はどうして国のトップを自分たちで選べないのか」という不満はここからくる。
イギリスの総選挙では、個々の候補者は首相候補としての党首と政権構想(いわゆるマニフェスト)を売る「政党のセールスマン」として運動する。最近の日本の政党と選挙のあり方も、そうした方向に変化してきつつある。この方向をさらに確かなものにする必要がある。もちろん見識、経歴において信頼性高い候補者を擁立することが政党の支持拡大の前提であることは言うまでもない。
総選挙を間接的な首相選挙の場とする趣旨を貫徹するためには、選挙制度はフランス型の小選挙区二回投票制度が望ましい。一回目の投票で過半数の支持を得られた候補がない場合は、一週間後に上位二者による決選投票をする。政界はほぼ自動的に二つの政治ブロックに分かれる。
近年、政党への不信から無党派層が増大している。しかし無党派は問題提起であっても、問題の解決にはならない。今必要なのは、政党を育てることで、排除することではない。歴史の経験は政党の存在しない民主政治はありえないことを教えている。政党が崩壊し、別のものが出てきたときは、民主政治そのものが崩壊したときなのである。 今の日本の課題は、何よりも、官僚支配の失敗退場の空白を政党政治が埋められるか、ということなのである。
そのためには、代替機能を持ったに二大政党ないし二大政党ブロックの形成が前提条件となる。それゆえ九十年代以来の政治改革論の一つの目標も政権交代可能な二大政党の確立であった。われわれは、小選挙区制を敷き、自民党に代わり得る責任政党づくりに努め、今一歩でその目的に到達するところに来ている。これはもう後戻りできない、してはならない道だ。憲法改正による統治システム改革の方向もまた、この歩みを加速し、保障するものでなくてはならない。
政党は現行憲法には何の規定も持たない。しかし実際の統治システムは、政府も国会も、政党の存在を当然の前提として機能している。現実政治のうえでは最大といってもよい影響力を行使している。
ドイツの法学者トリーペルは、国家の法制度の中で政党は、「敵視」「無視」「承認及び合法化」「憲法的編入」という歴史的段階を経ると述べている。現に、ドイツ、イタリア、フランス、韓国等の憲法においては、政党は憲法上に規定されている。
政党の巨大な影響力と公的性格から言って、これを憲法上の存在として位置づけないほうがおかしい。平成新憲法では当然「政党条項」を設けるべきだし、政党基本法も制定されるべきであると考える。


  国会は一院制に再編成
 
 日本では、衆参両院の国政選挙が平均すると一年半ごと行われてきた。参議院の選挙結果も政権の存立に大きくかかわり、それが頻繁に政権が交代する理由の一つにもなってきた。しかし第二院の選挙結果で政権が左右されたり、野党党首の責任が問われたりという例は、他の議院内閣制国家では聞かない。
衆議院選挙の間に、衆議院と同じような権限を有する参議院の選挙が行われ、政権維持に少なからぬ影響を及ぼすというのは、現行憲法の統治システムに潜む重大な欠陥といわなければならない。冷戦下には、社会主義を鼓吹する野党が三分の一程度の勢力に封じ込められていたために、この欠陥は露呈しなかった。
首相指名については、衆議院の指名権が優越するから、衆議院で勝てば政権は取れる。しかし、参議院は法案審議については衆議院と同等の権限を持つ。だから、参議院でもし野党が多数を占めるような衆参ねじれ現象があれば、政権は不安定であり、短命化せざるを得ない。それが細川政権が潰れた大きな要因だった。民主党が次の衆議院選挙で政権交代を実現したとしても、細川政権の轍を踏む懼れは大きい。
学説上、二院制の類型は@貴族院型A連邦制型B民主的二次院型の三つに分けられる。@はイギリス、カナダ、Aはアメリカ、ロシア、ドイツ、Bは日本、イタリアがそれにあたる。
このうち世襲制の貴族院的上院は過去のものとなりつつある。日本と同じ単一国家で立憲君主制をとっているスウェーデン、デンマークなどは一院制に移行した。ブレア政権の下、英国では上院の大改革が行われ、上院から世襲貴族が排除された。それでも上院無用論は絶えない。
連邦制国家では、第二院は連邦を構成する国や州の代表ということで、一応の存在意義が認められるかもしれない。アメリカ上院は、条約の批准権や閣僚就任の承認権など強い権限を持っている。ドイツの上院は、州政府の首脳が自動的に任じられ、州に影響を及ぼす法律のみを審議する。フランスでは地方議員団が、上院議員を間接選挙で選ぶ。
問題は、日本やイタリアのような、下院と上院が、同じような直接選挙で選ばれ、両院が同じような権限をもつ、民主的第二次院の存在意義である。民主的第二次院の存在意義は、「第一院の行き過ぎを抑制し、慎重な審議を行い、誤りなきを期すこと」だとされる。この趣旨にたって、参議院の政党化への批判や党議拘束の緩和が主張されている。
 ではなぜ参議院は政党化するのか。衆議院の多数派からなる政党内閣は、提出した重要法案が参議院で遅滞なく可決されるよう、あらかじめ参議院でも多数派を確保しておく必要がある。重要法案が参議院で否決されるような事態になれば内閣の存立にかかわるから、今の強い参議院権限を前提にする以上、参議院の政党化は、議院内閣制と政党政治の当然の帰結なのである。
 したがって、参議院の政党化、擬似衆議院化を回避するには、参議院権限を大幅に縮小する必要がある。参議院で否決されても、衆議院で過半数で再議決すれば(現在は三分の二以上)、法案は成立するとするなら、参議院の政党化は多少抑制されるかもしれない。しかし権限のない参議院が、衆議院(つまり政府与党)を有効にチェックしたり、行き過ぎを抑制したりすることは不可能だろう。
さらに、同じような選挙で公選される第一院と第二院の選挙結果のねじれをどう解消するか、という難問がある。イタリアでは両院の同時選挙が慣例化している。下院が解散されれば、同時に上院も解散する。これなら、両院の選挙結果がそれほど異なることはないだろう。
しかし日本の参議院には解散はない。衆議院の解散を参議院選挙に合わせ、衆参同日選挙を慣例化するというのは一つの解決策ではある。しかし、それは「参議院の究極の政党化」を意味し、ますます衆議院との差をわからなくする。そこまでして、二院制を維持する必要があるのかと、多くの人はさらに疑問に思うだろう。
フランス革命の理論的指導者シェイエスは「第二院は何の役に立つのか。もしそれが第一院に一致するならば。無用であり、もしそれに反対するならば、有害である」と言ったそうだが、これは二院制の国家にとっては永遠の大命題だ。
長い歴史を持つ議会政治と議院内閣制だが、それは時代とともに変質を遂げ、今日においては、政党政治と結びついて、与党(政府)が統治の責任を負い、野党(議会)が政権をチェックし、行政を監視するシステムに発展してきている。
 第一院の多数派(政府与党)が絶対誤らないとはいえない。しかし第一院へのチェック機能としてしては、第二院を置くより、他の制度的保障を考えたほうが、はるかに、安価であり、効果的である。
二院制から一院制に移行したデンマークやスウェーデンでは、国会の少数派に対して、国民投票を請求する権利や、憲法裁判所に提訴する権限を与えている。また、行政監視制度いわゆるオンブズマン制度もよく機能している。
私は、平成の憲法改正に際しては、二院制を一院制に再編し、あわせて国会少数派の対抗権力を強化する制度(国民投票請求権、少数派調査権、憲法裁判所への提訴権、会計検査院への調査要求権など)を創設することを提唱する。


行政権は内閣総理大臣に帰属

官僚支配を打破し、政治の主導で、必要な改革を断行し、迅速に国の意思を決定できるシステムを構築するためには、大胆な地方分権を前提として、首相権限を強化することが必要である。
戦前の統治体制のもとでは、行政権は天皇にあるとされ、総理大臣は「同輩中の首席」に過ぎず、また内閣以外にも天皇を補佐する機関が並立しており、制度的に首相の地位は極めて弱体であった。戦後憲法では内閣総理大臣は「内閣の首長」として大臣任免権を有し、「行政各部を指揮監督する」とされ、かなり強い権限を与えられた。
戦後憲法は、明治憲法体制が陥った権力の過度の分散による意思決定不全状況への反省から、首相が行政機構のトップに立ち、他の大臣を指揮して官僚機構を統制する統治システムを想定していたはずである。
しかし実際には、首相の権力は、大きく掣肘されることとなった。憲法上、行政権は内閣という合議体がもち、内閣は連帯して国会に対して責任を負うとされている。その結果、「内閣法」に顕現した実際の内閣の行政権の行使は、閣議によるものとされ、その閣議決定は全会一致であり、しかも首相が行政各部を指揮監督する場合は「閣議にかけて決定した方針に基づいて」行うことが要求されこととなった。
しかも閣議の議題は、その前日に開かれる各省の事務次官会議で決められる。ここで合意に達しない問題は、閣議の俎上にも上らない。要するに、閣議は各省が納得する最大公約数的な政策しか決められないことになる。事務次官は各省の省議の結論の上に閣議に臨むのだから、行政権の所在はいよいよ行政機構の下層に拡散していくことになる。日本の政治が、官僚支配といわれる要因の一つはここにある。
さらに官僚機構の政策形成過程に与党の族議員が介入するため、政策決定構造はますます複雑で不透明なものになった。自民党政権下の日本のように、「政府と与党と野党」が鼎立しているかのような政治システムは、議院内閣制としては正常ではない。
イギリスでは「与党」という概念は余り使わない。存在するのは「政府と野党」の二つだ。現代の議院内閣制の本質は、選挙で勝利した政党が政府を形成する政治制度であり、与党の政策決定過程は政府の中に吸収される。最近ようやく、政府と与党の一元化を徹底させなければならないという問題意識が高まってきたのは意義深い。
中央官庁が割拠し、縦割り行政の中で強い自立性と、権力をもっている現状を打破し、政策決定の権限と責任の所在を明確化するためには、行政権は、「合議体としての内閣」ではなく、「内閣総理大臣に属する」と規定し直すべきである。最高法規である憲法を改めることによって、内閣法やその他の制度慣習を一気に変革し、首相のリーダーシップを確立すべきである。
今のところ、議院内閣制諸国の憲法で、首相個人に行政権を帰属させているものはないが、これは時代の要請に沿うものであり、イギリスやドイツなど議院内閣制諸国の統治慣行も事実上首相に独任制的な行政権を認めている。イギリスのブレア政権が「首相政治」といわれているのはその端的な例である。
国務大臣は任免権者である内閣総理大臣に責任を負うこととなる。国務大臣は「内閣総理大臣の施政の基本方針の範囲内」で、行政各部の事務を担当する。これはドイツ基本法の条文に倣ったものだ。ただし議院内閣制の慣行から、実際上国会にも責任を負うこととなる。これは任免権者である首相を通しての間接的な責任であり、したがって国務大臣への直接の不信任決議案は認めず、「内閣総理大臣に対して国務大臣の罷免を請求する決議案」とすることにした。
その他この憲法試案では、首相の急死など万一の場合に備えて、あらかじめ総理大臣の職務を代行する国務大臣を決めておくことや、首相補佐官などの政治任用者の登用に大きく道を開く規定もおくこととした。
長年の懸案であった緊急事態条項も新設し、緊急事態における首相の緊急命令発動権は、事前あるいは事後の国会承認を前提に、これを認めることとした。


解散権の制限と国民投票制度

この憲法試案では、首相の解散権は、不信任案の可決、信任決議案の否決の場合に限ることとし、いわゆる七条解散は認めないこととした。日本の衆議院議員在任期間は平均で二年半程度といわれている。解散制度がある先進諸国と比較しても著しく短い。
私は、政府が安定した統治を実行するとともに、議会による野党の落ち着いた法案審議期間を保障する上でも、憲法上認められた議員任期は極力尊重すべきであると考える。かつてあったように、与党内の派閥抗争を原因とする解散権の行使や、戦前の超然内閣を思わせるような野党に対する懲罰的な解散権の行使は認めるべきではない。
七条解散を認めないと、首相の政権運営に支障をきたすのではないか、という懸念があるかもしれない。しかし、その心配はないだろう。イギリスやドイツでは日本的な意味での解散はほとんどないといっていいが、政権運営に重大な支障をきたしてはいない。
解散については有名な保利議長見解(昭和五十三年)というものがある。保利氏は七条解散は認めるものの、それは内閣の恣意で行ってはならず、「国会が混乱し、国政に支障をきたすような場合、立法府と行政府の関係を正常化するため」または「直前の総選挙で各党が明らかにした公約や政策とは全く異なる重大な案件が生じ、それが政界の争点となるような場合」以外には、解散権を行使すべきでない、とした。
前者の場合は、何らかの理由で与党内から政権批判が高まったときが想定される。こうした場合は、野党から不信任決議案が出されるだろうし、さもなくば、政府の側から率先して信任決議案を提出して、国会との信任関係を再確認すればよい。国会で信任されないなら、当然解散することも出来る。
総選挙では公約されていなかった政策課題が、突然政界の争点として浮上することがないわけではない。六十年安保では、このことが争点の一つだった。野党は安保改定が総選挙時には伏せられていたと攻撃した。岸首相は後に「安保改定交渉の前に国会を解散しておけばよかった」と回想している。
この例は、保利見解に即して言えば、国民の意見を聞くために解散が必要な場合である。それにもかかわらず、解散は行われなかった。要するに、七条解散を認めたとしても、それが保利氏のいうように、国民の声を聞く機能として適切に行使される保障は何処にもないのである。
「総選挙時に提起されていなかった重大な案件」が突如として生じるということは、普通はあまりないことなのだが、急速な国際情勢の変化で、EU加盟のような国家主権の委譲に関するような重大な争点が浮上し、与野党ともに党内的な意見統一が出来ないというような事態が起こらないとも限らない。こういうときは、この憲法試案が一章を割いて新たに設けた「国民投票制度」を活用すればよいのである。
国民投票の効力を、「拘束的」なものとするか、「諮問的」なものとするかは、諸国で位置づけが別れるが、どちらかというと拘束的な効力を認める国のほうが多いようである。フランス、イタリア、韓国なども拘束的な効果を認めている。私の試案では、国民投票の効力は、「拘束的」なものとした。諮問的な効力しかないとなると、投票結果の扱いをめぐって、かえって政界を混乱させる原因ともなりかねないからである。
国民投票制度は乱用すると議会の形骸化につながる。とくに増税法案など国民負担増につながる案件はなじまない。政党や政治家が責任回避のために国民投票に逃げ込むようなことがあってはならない。この憲法試案では、イタリア憲法に倣って、「予算、増税法案は国民投票の対象からは除く」こととした。


 野党の対抗権力の制度化

行政権を首相に属させ、国民投票実施の権限も緊急事態での命令権も与えることとなると、首相権限が強すぎる、独裁にならないか、という心配があるかもしれない。
首相の行政全般へ指導力を強めることは時代の要請であり、この試案もその方向に立っているが、同時に、野党が政権を監視し、行政を外からチェックしていく機能も強化しなければならないと考えている。
そのために、まず国会の会期制を廃し、通年国会とすることにした。通年国会は、政府に有利だという意見もあろうが、これは与野党ともに会期を政争の具にしてきた悪習から来る発想である。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等の国々でも通年国会である。会期制をなくすことにより、国会活動の内容の豊富化が図れる。逐条審議なども制度化できる。野党の法案修正の機会は高まるのである。
一院制とした場合の国会議員定数は、人口二十万人に一人くらいの六〇〇人程度にしてもよいのではないか。これでも現在の衆参両院の合計定員数を一二〇人以上削減することになるが、イギリス(六五九人)やドイツ(六五六人)の下院定数よりも少ない。一院制で通年国会となり、法案審議に万全を期すなら、それなりの数の議員は必要である。
国政調査権の条文は、少数派調査権としての条文に書き換えた。すなわち三分の一の議員の要求で証人喚問も可能とした。また、憲法裁判所(後述)への提訴も、三分の一の議員の賛成で可能とした。
かつて民主党は、アメリカの会計検査院(GAO)に倣って、国会に所属する行政監視院を創設すべしという法案を提出したことがある。これも一つの意味ある提案だが、三権分立の米国議会と議院内閣制の日本の違いなどを考慮した結果、この憲法試案では、現在の会計検査院を活用する制度改革を構想した。
現行憲法では、会計検査院の決算に関する報告は、内閣だけにすることになっているが、ドイツなどと同じように、国会にも直接報告を行うこととし、国会との関係を強化した。
さらに、国会議員の三分の一の要求があった場合は、個別的事業についての調査を行い、結果を国会に報告するとともに、問題があれば内閣に改善を命ずる権限を憲法上保障することとした。現行国会法一〇五条には良く似た規定があるが、調査要請には過半数の賛成を要するため、死文化している。これを少数派の対抗権力として新たに憲法に入れる意味は大きい。
 国会は、国民投票の実施を内閣に要求する権限も持つこととしたが、この場合は、二分の一の議員の賛成を要件とした。これは、少数派の対抗権力というよりは、超党派的に賛否が分かれる問題(たとえば、同性婚の是非など生命や倫理に関する問題)について賛否を決しなければならない場合で、政府が積極的に関与しない場合が想定されるだろう。


憲法裁判所の新設と国民審査の廃止
 
 現行憲法下では、最高裁判所が違憲立法審査権を持っているが、これは具体的な争訟を前提として行使される付随的違憲審査制である。これに対して、具体的事件を前提としないで、抽象的に法律の合憲性を審査する制度を抽象的規範統制といい、これを行う国家機関を憲法裁判所といっている。世界の憲法の流れは、憲法裁判所を置く方向にある。ドイツ、フランス、イタリア、ロシアなどヨーロッパ諸国のみならず、韓国、タイなどアジア諸国でも憲法裁判所を置いている。
 現在の最高裁が付随的違憲審査制と司法消極主義の立場に立ち、重大な憲法問題について判断を下さないために、憲法の解釈権限は、事実上内閣法制局が掌握するところとなっている。行政府の一部局に過ぎない内閣法制局の憲法解釈が公権的解釈として通用し、政府も国会もこれに拘束されている現状は、法治国家として極めて不正常なことといわなければならない。
また、私が主張するように、地方自治体に立法権を付与する大胆な地方分権型国家が実現するとしたら、国と自治体との権限をめぐる係争は日常化する。これは連邦国家ではごくありふれたことであり、憲法裁判所の大きな役割の一つは、国と地方との係争処理に迅速、的確な憲法的判断を下すことなのである。このシステムがきちんと出来ていないと、地方分権国家は機能しなくなる。
したがって、この憲法試案では、憲法裁判所を創設することとした。現行憲法で最高裁に認められている「一切の条約、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する」権限を憲法裁判所に移し、抽象的規範統制の権限を与える。これにしたがって、司法権の規定は「憲法裁判所の所菅する事項を除き、最高裁判所及び法律で定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と改めた。
憲法裁判所の裁判官は定員九人とし、三人づつを、国会、内閣総理大臣、最高裁判所が指名し、天皇が任命することとした。憲法裁判所裁判官の選任の方法は、いずれにせよかなりの難問である。ここでは、三権がそれぞれ同数を選任するイタリア、韓国の例に倣った。任期は六年とし、再任は出来ない。
違憲審査の提訴の権限は、首相と国会のそれぞれに認めることとした。また国と地方の係争処理のために地方自治体の長にも認めた。最高裁が具体的訴訟で憲法判断に迷った場合や、訴訟当事者が最高裁の憲法判断を不服とした場合も提訴できることとした。
 憲法裁判所の判決は、国と地方のあらゆる機関を拘束する権威を持つ。法律が違憲とされた場合は法律を改廃するか、改憲するかいずれかを選ぶこととなる。政治の現場から、今のような神学論争はなくなる。憲法の条文と事実とがあまりに乖離するような現状はなくなり、法の支配に対する信頼は確かなものとなるだろう。
 司法制度の現状には種々問題はあるが、今回の試案では、とくに形骸化が著しい最高裁判所裁判官の国民審査制については、これを廃止することにした。国会に承認権を与えることについては異論があろうが、憲法慣習として、就任時と再任時に国会の聴聞会に出席して所信を述べることを義務付ける程度ことはしてもよいのではないか。


 財政健全化条項を新設

財政の章については、以前から「私学助成は違憲である」と指摘されてきた。「公の支配に属さない慈善、教育、若しくは博愛の事業」に対して公金支出を認めないという条文は、全文を削除するか教育の字句を削除することにしたい。
予算の条文について、古くから指摘されているのは「継続費」規定を設けるべきとする意見である。これについても、第二項を設けて明文化した。
会計検査院については、現在は決算の条文の中にもぐりこまされているが、これを別条にして、会計検査院の職務を新たに明記することした。検査院は従来どおり、内閣からも、国会からも独立した組織であるとするが、より国会とのつながりを強める形で組織改革を進める。
会計検査報告は、内閣だけでなく国会にも直接行うこととする。また国会の要請に基づき、個別的な事業について調査を行い、国会に報告し、内閣に改善を勧告する権限も与えた。国会少数派の活用次第によっては、相当の行政監視機能を果たすものとなるだろう。
会計については、発生主義に基づく公会計制度を義務付け、決算については、翌年度の予算編成に間に合うように、「すみやかに」国会に提出するよう政府に義務づける。
さて、財政について最大の問題は「健全な財政の維持、運営」を基本原則として掲げるかどうかである。外国の憲法では均衡財政を義務付ける条文を持つものも少なくない。
健全財政を憲法で明記しても、経済状況によっては、それを破らざるを得ないこともあるのだから、あまり意味はないという意見も根強い。また健全財政を憲法で規定すると、増税の根拠にされかねないという意見もある。
しかし私は、この新憲法試案では、健全財政を明記することとし、現在の財政法の文言をそのまま条文にとりいれることとした。
日本の財政状況は極めて深刻であり、公債残高はすでに終戦時の水準も越えている。今後どの政党が政権を担当するとしても、財政再建は内政上の大きな政治課題として取り組まざるを得ない。
財政再建は一朝一夕になしうる仕事ではないし、また短兵急にやろうとすれば失敗する。
財政再建に奇策はない。歳出削減、増税、さもなくば高インフレ以外に選択肢はない。行政改革を断行し歳出削減につなげていくにせよ、国民に負担増を納得してもらうにせよ、何よりも政治の質が問われる。
先に私は、国際協調主義を再定義し、アジア太平洋地域に恒久的で普遍的な経済社会協力および集団的安全保障の制度を創ることを外交上の国家目標に掲げたが、財政再建は、別の意味で、それと同じ比重をもつ長期的な国家的課題であると考える。
日本財政の再建は、国家としての日本の永続性にかかわる問題であり、今後半世紀以上にわたって内政上の重要課題であり続けるだろう。私が、この平成新憲法試案に健全財政条項を盛り込む所以もここにある。

今回の私の憲法試案は、参議院無用論とか廃止論ということではない。
前述のように、現代の議院内閣制は、政府に拠る与党が統治責任を負い、野党が議会に拠って行政を監視する制度に変化、発展した。私の憲法試案では、現代の議院内閣制下の議会に求められる二つの機能、つまり政府を構成するという機能と政府を監視するという機能、またその役割を担う政党の位置づけを、より明快にしたということである。
国会議員選挙で二大政党が党首と基本政策を掲げて国民に政権選択を求め、選ばれた政党の党首がその基本方針に基づいて内閣を組織し、首相と国務大臣が、その基本方針によって官僚機構を指導する。野党は国会の中で、少数派に与えられた国政調査権その他の権限を駆使して、政府を監視し、行政をチェックする。本来参議院に期待されていた役割は、少数派調査権の保障、憲法裁判所の創設、会計検査院の権限強化など、総体としての統治システム改革の中で、より効果的に代替され得るということである。
 一院制と首相権限の強化を柱とする統治システムの改革案は、議院内閣制を現代の政治状況に適合させる試みだということをご理解いただきたい


統治機構に関する改正試案

第  章   政  党

第 条(政党)
  日本国民は、自由に政党を設立する権利を有する。
2 政党は、国民主権と民主主義の原則を尊重しなければならない。
3 政党たる要件は、法律によって定める。
第 条(政党助成)
  国は、法律の定めるところにより、政党運営に必要な資金を補助する。
2 政党は、法律の定めるところにより、その政治活動に関する資金の収支を公開しなければならない。
第 条(内閣総理大臣候補者の明示)
  政党は、国会議員総選挙に際しては、内閣総理大臣候補としての党首及びその施政の基本方針を明示して臨まなければならない。


第  章   国  会
 
第 条(国会の地位)
 国の立法権は国会に属する。 
第 条(一院制)
国会は、全国民を代表する、選挙された議員で組織する一院で構成する。
2 国会議員の定数は、法律で定める。
第 条(議員及び選挙人の資格) 
国会議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。
第 条(国会議員の任期) 
国会議員の任期は四年とする。但し、国会解散の場合には、その期間満了前に終了する。
第 条(国会議員の選挙)
  国会議員の選挙方法及び選挙区、その他国会議員の選挙に関する事項は法律で定める。
第 条(議員の歳費) 
国会議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第 条(議員の不逮捕特権) 
国会議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
第 条(議員の発言表決の無答責) 
国会議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
第 条(通年国会) 
国会の会期は、四月一日から、翌年の三月三十一日までとする。但し休会期間をおくことが出来る。
2 国会が解散された場合は当期の会期はその日をもって終了するものとし、総選挙後に召集された国会の会期は、その召集された日から三月三十一日までとする。
第 条(総選挙) 
国会が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、国会議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
第 条(資格争訟) 
国会は、その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第 条(議事の定足数と過半数議決) 
国会は、その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 国会の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いて、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第 条(法律、予算、条約等の議決)
  法律案は、国会で可決したときに法律となる。
2 予算及び条約締結の承認には、国会の可決を要する。
  第 条(会議の公開と会議録) 
国会の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 国会は、その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
第 条(役員の選任及び議院の自律権) 
国会は、議長その他の役員を選任する。
2 国会は、会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、国会内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第 条(憲法裁判所裁判官の指名)
  憲法裁判所裁判官の指名には、出席議員の三分の二以上の多数による議決を要する。
第 条(議院の国政調査権)
国会は、国政に関する調査権を有する。これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求するときは、総議員の三分の一以上の議員の賛成を要する。
第 条(憲法裁判所への提訴)
  国会が、法律、条約、命令、規則又は処分について、その憲法適合性を判断するため、憲法裁判所に提訴するときは、総議員の三分の一以上の議員の賛成を要する。
第 条(会計検査の要求)
  国会が、具体的な国の事業について、その予算の執行が適正に行われているかについて会計検査院に調査を求めるときは、総議員の三分の一以上の議員の賛成を要する。
第 条(国務大臣の出席) 
内閣総理大臣その他の国務大臣は、国会に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため国会に出席することができる。又は、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
第 条(弾劾裁判所) 
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、国会の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
第 条(緊急事態宣言下における議員資格の特例)
  内閣総理大臣が国家緊急事態を宣言したとき、国会議員の任期が満了又は解散している場合には、内閣総理大臣がこの憲法及び法律の規定に従って国家緊急事態宣言を解除するまでの間、前任者の任期を延長することとする。


第 章 内 閣

第 条(行政権の帰属)
国の行政権は、内閣総理大臣に属する。
第 条(内閣総理大臣の指名) 
内閣総理大臣は、国会議員の中から、総議員の過半数の支持を得たものを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって行う。
第 条(内閣の組織と責任)
内閣総理大臣は、行政権を執行するため内閣を組織し、その構成員たる国務大臣、及び内閣総理大臣を補佐するために法律で定められた官吏を任免する権限を有する。
2 内閣総理大臣は、施政の基本方針を定め、これについて責任を負う。国務大臣は、内閣総理大臣の基本方針の範囲内において、独立してかつ自らの責任において、その所轄する事務を行う。
3 国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
4 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
5 内閣総理大臣は、事故あるときに備え、あらかじめその職務を代行する国務大臣を指名しておかなければならない。
6 内閣総理大臣は、行政権の行使について、国会に対して責任を負う。
第 条(内閣総理大臣の職務) 
内閣総理大臣は、議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。
2 内閣総理大臣は、その施政の基本方針に基づき、行政各部を指揮監督する。
3 内閣総理大臣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。
  一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
  二 外交関係を処理すること。
  三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  四 法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。
  五 予算を作成して国会に提出すること。
  六 法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
第 条(不信任決議と解散)
内閣総理大臣は、国会で不信任決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときにのみ、天皇に国会の解散を助言することができる。但し、十日以内に国会が解散されないときは、内閣総理大臣はその他の国務大臣とともに辞職しなければならない。
2 内閣総理大臣は、国会で、内閣総理大臣に対して国務大臣の罷免を要請する決議案が可決されたときは、その国務大臣を罷免しなければならない。
第 条(内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による辞職) 
内閣総理大臣が欠けたとき、又は国会議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣総理大臣及びその他の国務大臣は辞職しなければならない。
第 条(辞職後の職務続行) 
前二条の場合には、内閣総理大臣又は内閣総理大臣の職務を代行する国務大臣が、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。
第 条(法律及び政令への署名と連署) 
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
第 条(国務大臣訴追の制約) 
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
第 条(緊急事態への対処)
  内閣総理大臣は、国家の存立と国民の生命の安全が危殆に瀕する恐れがある事態に際しては、法律の定めるところにより、国家緊急事態を宣言し、必要に応じて緊急命令を発布することができる。
2 内閣総理大臣が、国家緊急事態を宣言したときは、十日以内に国会の承認を得なければならない。
3 国家緊急事態宣言に際しては、その区域を定め、その期限を予め明示しなければならない。
4 国家緊急事態宣言の有効期間は、最大三十日とする。但し、国会の事前承認により、これを延長することが出来る。
5 内閣総理大臣は、国会が国家緊急事態を承認しなかったとき、又は国会が国家緊急事態の終了を議決した場合には、当該緊急措置を終了しなければならない。


第 章 国民投票

第 条(内閣総理大臣の国民投票実施権)
  内閣総理大臣は、とくに必要と認めるときには、法律案又は条約案について、その議決の前に国民投票に付することができる。
但し、予算および租税に関する法律案については国民投票に付することはできない。
第 条(国会の国民投票の要求権)
  内閣総理大臣は、国会の総議員の二分の一以上の議員の要求があるときは、法律案又は条約案について、その議決の前に国民投票に付さなければならない。
第 条(国民投票結果の拘束力)
 国民投票に付された提案は、有権者の過半数が投票に参加し、有効投票の過半数の賛成を得たときに、可決されたものとする。
2 国会および内閣総理大臣は、国民投票の結果に拘束される。
3 国民投票の方法その他必要な事項は法律で定める。


第 章 憲法裁判所

第 条(憲法裁判所の違憲立法審査権) 
憲法裁判所は、条約及び法律が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する。
第 条(地方自治体と国の係争処理権限)
憲法裁判所は、地方自治体と国又は地方自治体相互の権限に関して、地方自治体の長又は内閣総理大臣から提訴があったときは、その当否を決定する権限を有する。
第 条(違憲立法審査の対象)
  憲法裁判所は、左の場合に、憲法に適合するかしないかを審理し、決定する
 一、条約及び法律の憲法適合性について、内閣総理大臣又は国会からの提訴があったとき
 二、具体的訴訟事件で裁判所から、憲法適合性について判断を求められたとき
 三、具体的訴訟事件で当事者が最高裁判所の憲法判断を不服として提訴したしとき
第 条(憲法裁判所の判断の効力)
  前条各号に関する憲法裁判所の判断は、国民と地方自治体及び国のあらゆる機関を拘束する。
第 条(選任方法、定員、任期、停年) 
  憲法裁判所の定員は九人とし、三人づつをそれぞれ国会、内閣総理大臣、最高裁判所が指名する。
2 憲法裁判所の長たる裁判官は、互選により指名する。
3 憲法裁判所の裁判官の任期は六年とし、再任されない。
第 条(憲法裁判所裁判官の資格)
憲法裁判所の裁判官は、識見の高い、法律の素養のある、年齢四十歳以上の者の中からこれを指名しなければならない。
2 憲法裁判所の裁判官は、満七十歳に達したときには退官しなればならない。
第 条(規則制定権)
憲法裁判所は、審理に関する手続、裁判所内部規律及び事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
第 条(身分保障)
憲法裁判所裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法にのみ拘束される。
2 憲法裁判所の裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。憲法裁判所裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。
3 憲法裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。


第 章 司 法
 
第 条(司法権の機関と裁判官の職務上の独立)
司法権は、憲法裁判所が所管する事項を除き、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第 条(最高裁判所の規則制定権) 
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
第 条(裁判官の身分の保障) 
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。
第 条(最高裁判所の構成、任期、定年) 
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣総理大臣がこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、任期を十年とし再任を妨げない。
3 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
4 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第 条(下級裁判所の裁判官) 
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣総理大臣がこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。
第 条(対審及び判決の公開) 
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第 章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。


第 章 財 政
 
第 条(財政国会中心主義)
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない
第 条(健全な財政運営)
  国は、健全な財政の維持と運営に努めなければならない。
2 国の歳出は、公債または借入金以外の歳入を以って、その財源としなければならない。やむを得ず公債または借入金をなすときは、事前に国会の承認を得るとともに、その償還についての計画を国会に提出し、承認を得なければならない。
第 条(課税の要件)
 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
第 条(国費支出及び債務負担の要件) 
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
第 条(予算の作成) 
内閣総理大臣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2 内閣総理大臣が、多年度にわたる支出を要すると認める事業については、その年限を定め、継続予算として、国会の審議を受け議決を経なければならない。
第 条(予備費) 
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣総理大臣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣総理大臣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第 条(皇室財産及び皇室費用) 
すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
第 条(公の財産の用途制限) 
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
第 条(国の会計および決算)
  国は、発生主義に基づく公会計の制度を設けなければならない。
2 国の収入支出の決算は、内閣総理大臣が、次の年度にすみやかに国会に提出しなければならない。
第 条(会計検査院) 
国の予算が適正に執行されているかを調査し、また国の収入収支の決算を検査するために、会計検査院をおく。
2 会計検査院は、毎年国の決算を検査し、国会および内閣総理大臣に報告する。
3 会計検査院は、国会から調査を求められた事項について、改善を要すると認められたときは、すみやかに国会に報告するとともに、内閣総理大臣に対してその改善を命ずることができる。
4 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。
第 条(財政状況の報告) 
内閣総理大臣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。


 

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