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イランとイラクの油田占拠劇 (田中 宇)
http://www.asyura2.com/09/warb2/msg/364.html
投稿者 Orion星人 日時 2009 年 12 月 19 日 22:24:00: ccPhv3kJVUPSc
 

http://tanakanews.com/091219iraq.htm
2009年12月19日
  
 12月18日、イラク東南部マイサン州の対イラン国境地帯にあるファッカ油田の、7つの油井の一つを、イランの軍隊(総勢11人)が占拠した。占拠された油井は、イランイラク国境から300メートルイラク側に入ったところにあるが、この国境線自体について両国間で係争があり、イランは、この油井は自国領内であると主張してきた。今年に入って、すでに4-5回、イラン軍がこの油井を占拠し、イラン国旗を立ててしばらく滞在した後、再びイラン側に戻る行為を繰り返していたとの指摘もある。この油井は1970年代に開発されたが、80年代のイランイラク戦争後、現在まで採掘されていない。 (Iraq Says Iran Violated Border, Calls for Withdrawal)

 イラク政府は最近、国内の油田の開発を外国企業に発注する大規模な入札を行った。イラクの石油埋蔵量はサウジアラビアを抜いて世界一であると推測されている。イラクは、自国の油田を積極開発すれば中東有数の金持ち国になれる。イラクが米軍占領下で困窮してきた従来は、シーア派ゲリラがシーア派の隣国イランの支援を得て米占領に対抗するという、イラン依存の構図があった。だが今後、イラクが財政豊かになると、イランの言うことを聞かなくなる恐れがある。それを抑止するための警告として今回、イラン軍が国境地帯のイラクの油田を占拠する示威行為を行い、イランがいつでもイラクに介入できることを示そうとしたという分析が出ている。 (Iraq demands Iran withdraw troops from oilfield)

 今回の事件について、私は全く別の見方をしている。「産油国であるイランとイラクが結託し、国際原油価格を上げるために、国境の油田紛争を演出し始めたのではないか」という推測である(イラク政府はイランを非難したが、イラン政府は越境進軍を否定しており、事実関係そのものがまだ曖昧だが)。今回の占拠事件を受け、12月18日の国際原油価格は3%の高騰を見せた。

▼非米反米諸国の仲間入りしたイラクと組む

 イラク政府の最近の油田開発の入札では、米国企業はわずかしか落札できなかった。主な落札者は、中国のCNPC、ロシアのルコイルやガスプロム、マレーシアのペトロナス、アンゴラのソナンゴル、韓国ガス公社といった新興諸国の政府系石油会社である。米国のエクソンモービルとオクシデンタル、フランスのトタール、英国のBPとシェル、日本の石油資源開発といった欧米日の石油会社も鉱区を落札した。だが、米英が巨額の軍事費と兵力をつぎ込んでイラクを政権転覆・占領したのに、その「見返り」としての米英企業への石油利権の分配が、今回のように全体のごく一部だけというのは、米英にとって全く割に合わない。 (How Iraq is squeezing out Big Oil)

(今回、イラン軍による占拠事件があったファッカ油田も入札対象になり、中国のCNPCが入札した。他の入札者はいなかったが、手数料の交渉でイラク政府と合意に達せず、落札しなかった)

 日本や世界には、いまだに「イラク戦争は石油利権が目的」「米英は常にうまくやるはず」という固定観念にとらわれている人が多く、今回のイラクの油田開発の落札についても「裏では米英が得する仕掛けになっているはず」「落札結果はあとで覆されるはず」と思っている人が多いかもしれない。だが「米イラク侵攻は隠れ多極主義の象徴的な動きである」と感じてきた私から見ると、今回の落札結果は、まさに隠れ多極主義の具現化である。 (自滅の仕上げに入った米イラク戦争) (イラク石油利権をめぐる策動)

 私は07年にFT紙記事をもとにした「反米諸国に移る石油利権」という記事で、世界の石油利権が米英(セブンシスターズ、メジャー)から、非米・反米的な諸国(新セブンシスターズ)の方に移っている(米国はそれを黙認している)と書いたが、そこに出てくる新セブンシスターズには、今回イラクの石油開発権を落札したCNPC、ガスプロム、ペトロナスが入っている。アンゴラや韓国、そして日本やフランスの石油会社の落札も、米英系の独占を崩す非米的な動きである。まだ米軍はイラクにいるので、イラク政府は米国の要望を聞かねばならない状況にある。だが米国は、イラク政府が非米諸国の石油会社に石油利権を多く配分し、米国には少ししかくれないことを黙認している。 (反米諸国に移る石油利権)

(敗戦後の日本の対米従属戦略の重要な不文律の一つは「日本は海外で独自の石油開発をせず、資源の国際利権をあさらない。石油は米英系の会社から買う」ということだったが、今回のイラク落札では、それが破られている。これも、米英覇権の凋落の一つの象徴である)

 非米諸国に石油利権を積極配分するイラク政府自体も、米軍が撤退した後、米英の覇権的行為を容認しない非米諸国に仲間入りするだろう。米国の覇権をある程度は容認する「非米」ではなく、米英イスラエルの中東支配を厳しく非難する「反米」の国になる可能性も高い。このような反米的な新生イラクは、イランにとって、決して敵ではないはずだ。中国やロシアといった非米反米諸国の多くも、イランの核開発疑惑に関して「わが国は核兵器を開発していない」というイランの主張を認め、強硬姿勢をとる米国の方を批判している。

 非米反米的な傾向を強める新生イラクが、その傾向の一環として行ったのが、今回の、非米諸国の取り分を多くした石油開発権の落札だった。イランが、こうしたイラクの行為を敵視すると分析するのは間違いだと私には感じられる。イラクが自国の石油利権を非米化していくのは、むしろイランにとって好ましいことである。

 そう考えると、今回のイラン軍によるイラクの油田占拠は、イラクの石油利権が非米化され、イラク自身が非米反米の国になっていく道筋を歩み始めたことを機に、イランとイラクが国際原油価格をつり上げるために、採掘されていない油田をイラン軍が占拠し、両国間の油田地帯で国境紛争が起きているかのような状況を作ったと思える。周辺地域には米軍はおらず、これが米イラン戦争になる懸念は少ない。

▼中東和平に乗り出しそうなEU

 米議会では、イランへのガソリン輸出禁止法が可決され、米国はイランへの制裁を強めているように見える。だがこれも、イランがガソリンを輸入している先は、中国など、米国の言うことを聞かずに裏で貿易する非米諸国であり、米国がイランへのガソリン禁輸を決めても、たいした影響はない。世界不況で自動車の使用頻度が減り、ガソリンは世界的に余っており、イランに売りたい国はたくさんある。イランにガソリンを売った企業は、米国の国家備蓄に対する石油供給を禁止されるが、米国の国家備蓄はほぼ満杯で、制裁として意味がない。 (US races against time over Iran) (House Sanctions Companies Selling Gasoline to Iran)

 イスラエルがイランを空爆する懸念が指摘され続けており、オバマ大統領が中国訪問時に「近いうちにイスラエルによるイラン空爆を抑制し切れなくなる。中国は早く米国主導のイラン制裁に協力してくれ」と言ったと報じられた。しかし最近では、イスラエルは欧州諸国からも非難され始めており、新設の初代EU外務大臣となったアシュトン卿は、EU外相としての初めての演説で、西岸と東エルサレムに対するイスラエルの占領を不当だと宣言するという、従来の欧州では考えられない大胆なイスラエル非難を展開した。イスラエルのリブニ元外相には英国で逮捕令状を発行されたし、バラク現国防相にはオーストリアから逮捕令状を発行されかねない状況だ。イスラエルは、イランを空爆できる政治状況にない。 (Obama told China: I can't stop Israel strike on Iran indefinitely) (New EU Foreign Policy Chief Lambastes `Israeli Occupation') (Austria: Genocide Charges against Ehud Barak)

 私から見ると、イスラエルに侵攻してもらいたがっているのは、むしろイラン上層部の方である。イスラエルがイランを空爆したら、世界的に、悪いのはイスラエルだという話になる。ヒズボラやハマスがイスラエルを攻撃する口実ができる。中東大戦争になれば、イスラエルがテヘランに核ミサイルが撃ち込むかもしれないが、最終的にはイスラエルは敗北し、レバノン、シリア、イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、エジプトまでの中東の地中海岸地域のすべてが、イラン寄りの地域になる。間にあるイラクとトルコは、すでに親イラン的である。オスマン帝国以来100年ぶりに、中東は欧米系勢力の支配下を出て、イラン・アラブ・トルコという3頭立てのイスラム勢力の地域に転換していくことになる。イランは、中東の英雄的存在になれる。イランのアハマディネジャド政権は、イスラエルからの攻撃を待っている観がある。戦争になれば、石油も大高騰する。米オバマ政権は、イランに対して強硬姿勢と譲歩を繰り返すことで、イランの立場を強化している。

 とはいえ、戦争が起きる前に、来年もう一度、中東和平の試みがなされそうだ。次の和平仲裁の中心は米国ではなく、EUである。EUはリスボン条約を締結して12月に大統領と外相職を新設し、最初の仕事として中東和平をやろうとしている。すでに書いたように、EUはイスラエルに対して厳しい態度を表明したので、パレスチナ側の信頼を得たようだ。パレスチナ自治政府のアッバス大統領は、1月に予定されていた総選挙と自らの辞任を無期延期した。 (PLO extends Abbas' presidential term)

 アッバスの突然の「辞めるのやめた」宣言は周囲を驚かせたが、これはおそらく、EUによる次の和平仲裁に賭けるという意味だ。1月から持ち回り制のEU議長となるスペインの首相は「2010年中にパレスチナ国家を建設したい」と表明した。問題は、イスラエル政府が、入植地を勝手に拡大する国内の右派を抑えられるかどうかにかかっている。ネタニヤフ首相が頑張りすぎると、オスロ合意をやって殺されたラビン首相のようになりかねない。だが、次の和平努力が成功しない場合、イスラエルの国家存続はさらに危うくなる。 (Spain: We'll strive for a Palestinian state in 2010)  

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コメント
 
01. 2009年12月19日 22:41:33
面白かったです。ありがとー

02. 2009年12月21日 04:30:36
 おっしゃるとおりですね。もたもたしてると暖かくなって売れなくなります。
それと今回はタイの空港での一件に対する鬱憤晴らしもあったと思います。
せっかく中国を通らないですむ空路を開いたと思ったらこのザマ。
これでは、いくらなんでもコケにされすぎです。
対するクリントン女史の得意満面。
ここは一発クンロクを入れておかなきゃ格好がつかない。
油田の係争、衝突懸念、原油価格暴騰、寒波襲来、クリスマス商戦に冷水ぶっ掛け、
景気冷え込み、俺たちに喧嘩売るなら覚悟せいやというところでしょう。

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