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沖縄密約【政府と司法、すべての当事者たちが史実と真摯(しんし)に向き合う時が来た】記者の目:臺宏士(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/10/senkyo76/msg/660.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 12 月 24 日 10:00:14: twUjz/PjYItws
 

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20091224k0000m070102000c.html

●記者の目:沖縄密約 政府も史実と向き合う時=臺宏士


 「過去の真実を追究した報道や歴史家の努力はいいことだ。それを続けることが日本の将来のため有益になると信じるようになった」。外務省アメリカ局長だった吉野文六(ぶんろく)さん(91)は今月1日、東京地裁で開いた記者会見でそう語った。

 この日、元毎日新聞政治部記者の西山太吉(たきち)さん(78)ら25人が沖縄返還(72年)に伴って日米政府が交わした密約文書の開示を求めた情報公開訴訟で、吉野さんは米国が本来負担すべき軍用地の原状回復補償費(400万ドル)と、海外向け短波放送「VOA(ボイス・オブ・アメリカ)」の施設移転費(1600万ドル)を日本が肩代わりする密約文書(吉野文書)に、駐日米公使とともに署名していたことを証言した。日本側の交渉責任者として初めて法廷で密約の存在を認め、密約を否定し続ける古巣に対して「国家のウソ」を突きつけた。

 我部(がべ)政明・琉球大教授らが米公文書館で見つけた吉野文書の存在が00年に明らかになって10年目。毎日新聞の当時の取材に、「この文書をもって400万ドルを肩代わりしたと読み取れる、と言われれば、何をかいわんやだ」と突っぱねた吉野さんを法廷に向かわせたのは、冒頭の言葉にあるように、報道人と研究者、そして弁護士らの真相に迫ろうとする継続した熱意であった、と私は思う。

 沖縄密約を巡っては、西山さんは存在を示唆する記事で問題提起したが、その裏付け資料の外務省の機密電文は女性事務官を「そそのかし」入手したものとして、国家公務員法違反で逮捕・起訴された。当初、メディアや野党は「知る権利の侵害だ」として不当逮捕を批判する論陣を張ったが、東京地検が起訴状で「情を通じて」と取材手法をあえて持ち出すと、「国家のウソ」は「スキャンダル」に一変し、追及を緩めてしまう。

 検察側の思惑通り、「すり替え」は奏功した。検察側証人として法廷で「密約はない」と偽証した吉野さんは「新聞論調は、がらっと変わり助かった」と研究者の聞き取りに語っているほどだ。西山さんは、1審・東京地裁では無罪だったが、2審で逆転有罪(懲役4月・執行猶予1年)。最高裁は78年に上告を棄却し、有罪が確定した。沖縄密約事件は長く、国家の犯罪ではなく、記者倫理問題の代名詞とさえなってしまった。これを「権力の情報操作に乗ったメディアの敗北」と批判する識者も少なくない。だが、06年に転機が訪れた。

 この年2月、北海道新聞に、密約の存在を認め、詳細を明かす吉野さんのインタビューが掲載された。密約を否定し続ける国を相手にした損害賠償訴訟を05年4月に起こした西山さんを記事にし、もう一方の当事者の吉野さんも取り上げた。私もこの訴訟から取材にかかわったが、それまでに何度も否定していたこともあって「吉野さんはしゃべらない」と思い込んでいた。北海道新聞の記事をきっかけに特ダネが相次ぐ。朝日新聞は吉野文書が明るみに出た際、河野洋平外相(当時)が吉野さんに否定するよう働き掛けたことを報じ、沖縄タイムスは、原状回復補償費のほかにVOA施設移転費も日本が負担したという密約証言を吉野さんから引き出した。

 西山さんは74年に新聞記者を辞めた後、青果業にかかわったが「死んだように生きていた」と語った。吉野文書が明らかになった00年、長い沈黙を破って「週刊金曜日」の取材に応じた。02年には毎日新聞労組主催のシンポジウムでパネリストを引き受けた。この年はTBS記者が吉野文書とは別の密約文書を入手し、密約の存在は決定的になった。毎日は密約文書の存在をいずれも1面トップで報じた。国賠訴訟に踏み切った背景には、シンポに参加していた藤森克美弁護士の粘り強い働きかけがあった。国賠では敗訴したが、今回の情報公開訴訟の法廷証言として実った。

 東京地裁が74年、刑事で西山さんを無罪とした判決は、吉野証言を退け、「(密約があったという)合理的疑惑が存在することは否定し得ない」と指摘した。これに対し、検察は吉野証言などを根拠に「密約は存在しなかった」と控訴したのだが、その根幹を吉野さん自身が覆したのだ。

 事件当時まだ子供だった記者が中心になった、この10年の「沖縄密約報道」とは何だったのか。それは、国家の歴史的なウソを暴こうとするジャーナリストと研究者、そして弁護士の共有した思いの積み重ねだった。甘い見方かもしれないが、敗北したメディアも37年後に一矢を報いたのではないかと思う。

 だが、日米間の密約はこればかりではない。核持ち込みに関する密約もある。外務省は来年1月に密約についての調査結果を公表し、東京地裁は同3月に情報公開訴訟の判決を言い渡す見通しだ。政府と司法、すべての当事者たちが史実と真摯(しんし)に向き合う時が来た。


毎日新聞 2009年12月24日 0時25分

 

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