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【経済学者のトンデモ理論】 「資産デフレ」の問題点と「不良債権」罪悪説 (別タイトルの続き) 投稿者 あっしら 日時 2002 年 2 月 27 日 19:29:57:

下の欄にある『【経済学者のトンデモ理論】 デフレの論理と超金融緩和政策と「資産デフレ」罪悪説の問題点』の続きです。

そちらを先にお読みください。
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■ 「資産デフレ」はどういう問題をもたらしたか

このようなことを書いてきたからと言って、「資産デフレ」が何も問題を起こしていないわけではない。

銀行が陥っている財務上の苦境は、まさに「資産デフレ」に起因するものである。


[銀行経営者の独白]

ある会社に10億円の担保価値があると思って“無理矢理”10億円貸し付けたのに、返済は“永遠に”できなそうにないし、担保物件も現在では5億円の価値しかない。
今展開している銀行業務で厖大な利益を上げてはいるが、どこもかしこも返済が滞っているし、あらゆる担保物件が同じように価格を下落させているから、新たに上げた業務利益で不良債権を処理しようとしても処理し切れない。
さらに、蓄積してきた利益で不良債権を処理してきたために、自己資本比率がBIS規制ぎりぎりまで落ちている。
これ以上利益を不良債権処理に回すと、BIS規制をクリアできないから、実質は不良債権だけど建前は通常債権にしておこう。
ちょっと前までだったら、利子だけでも返済してもらってかっこを付けてもらうために“追加融資”をしてきたんだが、自己資本比率が下がってしまうし、そんなことをしなくても金融庁も通常債権だと黙認してくれるから止めておこう。
日本経済全体の不況が長いから、正常債権だったものまで不良化している。これじゃあ、新規に貸し付ける相手はよほどの優良企業か、よほどいい担保を提供してくれる相手で差し出す担保価値の半分までにしておくしかないな。


[金融担当キャリア官僚の独白]

数年前に公的資金を投入したときには、これで金融危機が解消され、それにつれ実体経済も良くなり景気も回復すると考えていたのに、まったく駄目などころか、さらに不良債権が増えている。
世間は景気を回復するために不良債権を早く処理してしまえと言うけど、前回の例でもわかるように、それで景気が回復するとは思えない。
ひょっとしたら、公的資金を投入して不良債権を処理したことが、さらに不良債権を増やすという結果をもたらしたのかもしれない。

それに、新たに公的資金を投入し続けら、ほとんど銀行を国有化しなければならないだろう。そのときには、銀行の経営者の責任問題そして大臣の責任問題も浮上してくる。
そう言えば、A銀行もB銀行も...いや、どこもかしこに、“先輩”たちがいるもんな。

不良債権をするにしても、銀行が上げている利益に見合うペースでやるしかないのだがなあ。


少し前に例として上げた住宅所有者のことを考えてみる。

住宅購入に必要だった5千万円を貯金ですべてまかなったのであれば、3千万円に下落した時点で、「クソ〜、2千万円損した!」と叫べば済む話である。(その人は相当悔しいでしょうが、経済的には、その結果“ヤケ買い”でもしてくれればかえって助かる)

しかし、5千万円の内4千万円は銀行から借金している場合に3千万円まで価値が下落したらどうなるだろうか。
これも、所得が変わらなければ、返済計画に支障をきたさないはずだから、毎月「クソ〜、アホをみた」と罵るだけで済む話である。
ところが、景気が悪くなって失業してしまった、さあ大変である。ぎりぎりで返済計画を立てているから蓄えもない。返済できるだけの金額で返済を続けたが、失業給付金を終わり、とうとう0円しか返済できなくなった。
銀行もこういう場合はすぐに担保権を執行しないようだが、したとする。

残債が2千万円あり、旧自宅を売った3千万円から1千万円受け取った。
このような場合、銀行は損しただろうか?
きちんと計算していないので申し訳ないが、銀行は、この焦げ付き=不良債権処理で損はしていないはずだ。長期で借金をすると、普通、借りた金の3倍を超える額を返済することになる。

(「あぽ〜ん3世」さんが数式を示してくれているので参照してください。わかりやすい例を上げると、アメリカ先住民がオランダ商人にマンハッタン島を売ったお金($1かそこらのたいへん安い額)を複利で預金していれば、現在のマンハッタン島の土地を全部買ってもあまりある金額になっているそうです)

残債が2千万円だとすると、3千万円以上は既に返済しているだろうから、2千万円を超えて受け取った金額は、“不満”だろうが儲けである。
デフレであれば、利息0円でも、実質金利はデフレ率に相当する。
銀行は、この不良債権処理で“お好きな”国債と同じ利息が得られたら、“満足”すべきである。

事業を営んでいる企業についても、基本的にこのような論理が通用する。
企業にとって大きな問題は、「資産デフレ」になると、保有している不動産を担保にして借り入れをするときに、評価額が下がり(今後も下がると考えるので実質評価はさらに下がる)、借り入れできる金額が少なくなるということであろう。
土地や株式は、他の商品以上にデフレが進んでいるから、ある土地を売って他の土地を買う話と違って確かに問題である。機械設備や原材料は、以前想定していたものより少ない量しか買えないからである。

(これは、バブルがどういうものであったかを示すものである。ここまで土地が下がってもまだ価格が反転しないほど、異常なバブル(高度成長期以来)が形成されてきた証である。株式も同じようなものだが)

そうであったも、事業を拡張したいということは順調であることの証であり、できる範囲で事業を拡張し、それで儲けたお金で少しずつさらに拡張していけばいいのである。

技術力や販売力に定評がある企業であれば、工場を拡張するための土地を取得する絶好のチャンスであるはずである。それがされていないということは、やはり地価がまだ高いのである。

こうしてみていけば、「資産デフレ」は、デフレや不況の要因ではなく、銀行のバランスシートや経営者責任の問題しかもたらしていないことがわかるはずだ。

デフレや不況が長引いているのは、デフレや不況の原因を取り除くことではなく、銀行の救済ばかりに目を向けた政策を行ってきたからである。

端的に言えば、銀行を救済しないと決定すれば、政策の縛りがなくなり、物事がはっきり見えるようになるのである。

(銀行業界に大蔵省出身のキャリア官僚がどれだけ“天下り”(金銭的には“天昇り”)しているかを考えれば、財務省や金融庁が銀行救済にあれだけの熱意を傾けるわけがわかる)


■ 「不良債権処理」は単なる「銀行救済策」

「不良債権処理」が公的資金の注入で行われたからといって、「デフレ対策」や「不況脱出」につながるわけではない。

「不良債権処理」を通じて、不良債務企業が破綻させられないとしても、ダイエーのように事業規模が縮小されることになる。
それにより、失業者が増大するため社会不安を煽り、供給の削減以上に需要が減少することになる。それは、デフレが進行し、より経済状況が悪化することを意味する。

「不良債権処理」がデフレ対策や景気回復につながると“錯覚”している人は、「不良債権」がBIS規制の自己資本比率を大きく下げさせているために、銀行が新規の貸し出しを抑制せざるを得なくなっているから不況がますます酷くなってきたと考えているからではないかと推測する。

しかし、冷静に考えてみれば、瑕疵担保条項がまだ有効な『新生銀行』でさえ、“貸し渋り”と“貸し剥がし”に励んでいるのが実態である。
このことは、たとえ「不良債権処理」を行っても、銀行の貸し渋りが解消されない可能性が高いことを示唆している。
貸出先の能力を見極められない日本の銀行であれば、資産価値が下がらないと判断しない限り、貸し出しは増大しないだろう。

自身が銀行経営者であれば、現在のような経済政策下に置かれている日本企業に対して貸し出しをしたいとは思わない。貸し出しをするとしたら、優良な担保物件を持っていることが条件で、しかもその担保物件の現在価値の半分までの金額にする。

おそらく、日本の銀行の多くが、BIS規制がないとしても、不良債権を増やしたくないと考え、日本企業向けに貸し出しを拡大するよりは、国債取引でわずかばかりの差益を採ったり、欧米諸国の債券に投資したり、中国向けの取引を拡大したいと考えるだろう。

「不良債権」が銀行の活動を縛っていることは間違いないが、だからといって、「不良債権」さえ処理すれば、企業向け融資を通じて実体経済領域での日銀券の流通が拡大され、需要が拡大するというわけではないのである。

「銀行救済」のような公的資金の注入を行えば、身軽になった銀行は、これ幸いとばかりに、日本の経済的苦境を尻目に、もっと安全な国際取引での融資拡大に走る可能性が高いと考えている。
わずかなばかりの差益しか採れない国債取引も減少させていく可能性がある。
これはゆゆしき問題を引き起こす。(大量の国債を保有している銀行は、無謀な“国債離れ”はできないが)

このように、「不良債権処理」は、日本が経済的苦境から脱するための決め手でもなければ最優先課題でもなく、「銀行救済」でしかないのである。

「不良債権」は元々、銀行が愚かで“犯罪的”な過剰融資を行った後に発生したバブル崩壊に伴うものである。

そのような“犯罪的”商取引を行った銀行を救済するだけの「公的資金注入による不良債権処理」には、経済論理に照らすだけでも反対である。

「資産デフレ」が起こしている問題は、それによって生じた「不良債権」を処理しなければ景気が回復しないという誤った“信仰”を広めていることが最大なのである。

デフレを解消し「デフレスパイラル」から抜け出さない限り、「不良債権」の処理どころか「不良債権」の増大さえも防ぐことができない。


■ 優先的な金融政策

「公的資金注入による不良債権処理」よりも優先して行わなければならない政策は、次のようなものではないかと考えている。

(この政策は、不況脱出のための他の経済政策と連動するものなので、「論議・雑談1」ボードにアップしている『ささやかながら少しはましな経済状況を』

htpp://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/119.html

を参照して一体で考えて欲しい)


● 4月1日から予定のペイオフ解除を凍結する

現在のような金融危機状況でペイオフを解除するのは政策の手を縛る愚かな政策であり、「決済専門銀行」が機能するまで延期する。
預金者の預金移動は政府の政策では制御できないから、取付騒動や銀行の突然死を引き起こす可能性があり、より深刻な金融危機や経済状況悪化を招来する。


● 財務的破綻状況の銀行を国有化し「決済専門銀行」に移行する

資本準備金まで取り崩す銀行が続発しているような銀行の今の財務状況では、破綻させるか債権放棄なのかを別として、内部留保資金で「不良債権処理」を行うことができないので、「不良債権処理」を行うためには公的資金の注入を受ける必要がある。

公的資金で「不良債権処理」を進めるとなると、これまでのように債権放棄は民間同士の契約という話は通じず(けっこう通じてきたが(笑))、勝手な「債権放棄」はできなくなる。
これは、民間企業に対する活動規制よりもさらに根源的な存在の是非を国家が決するようになったことを意味する。

こうなると、そのような銀行を民間資本として存続させるよりも、「国有化」したほうが賢明であり、そうならざるを得ない資本構成にもなる。(それがイヤなために無理矢理配当を行って利益を流出させるというのは言語道断である)

詳細は別として、旧長銀と同じように取得した銀行は、郵便貯金部門と合体した上で「決済専門銀行」と「債権管理銀行」に改編する。
(郵便局は全国津々浦々にあるが、地価の関係で駅前や繁華街にはあまりないので、銀行と合体すれば、大きな利便性を実現した店舗網が形成できる)

「決済専門銀行」は、簡単に言うと、個人・法人・公共団体の日銀券を無利子(逆に口座維持料をとる可能性もあり)で預かり、国債と地方債のみに投資するだけで、貸し付け(銀行間の短期のものも含め)や資産劣化を招く可能性がある債券投資を行わずに、引き落としや振り込みなど預金者の取引決済業務のみを有料で行う銀行である。
「決済専門銀行」に預金されたものは、国家が責任をもって全額を保証する。

お金でお金で稼ぎたい人は、日本資本であるか外国資本であるかを問わず、“普通”の商業銀行や証券会社を利用することになる。


● 「債権管理銀行」の不良債権処理

国有化した銀行が保有している資産のうち貸し付けや債券類(国債や地方債は除く)は、「債権管理銀行」が管理し、回収や売却などを冷静に行っていく。

債権放棄は債務企業の存続を認めることになるが、これまでも問題になっているように、どの企業が存続にふさわしいのか、どの企業が破綻にふさわしいのかを決定しなければならない。また、中途半端な債権放棄をしてもそれで経営が立ち直るわけではないし、きちんと債務を返済し続けている企業に不利な競争条件をもたらすことにもなる。

まず、不良債権の担保になっている物件は、債務企業が自主的に売ってそれで得た金額を全額返済に充てることにする。これで残った債務を確定させる。

次に、債務企業の事業継続力を精査する。
経済状況が改善されたとしても通常債権に復帰するとどうしても判断できなかった企業の不良債権は、即座に処理し、その企業も破綻することになる。

不況を脱すれば通常債権になると考えられる不良債権については、元利支払いを猶予して保有し続ける。運転資金などでどうしても追加融資が必要であれば、合理的な範囲まで認めて実行する。
元利返済が可能になった時点で、その債権を民間商業銀行に一定の条件を付けて売却する。

債券類や株式は、国債や地方債などの公債を除き、下落はある程度承知の上で徐々に売却していく。

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