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公共事業と新潟 真の「公共王国」へ踏み出す時 投稿者 小市民 日時 2002 年 7 月 16 日 23:24:31:

社説
公共事業と新潟 真の「公共王国」へ踏み出す時

 財務省の財務総合政策研究所が六月末、研究報告書「都道府県の経済活性化における政府の役割」を発表した。
 公共事業が産業の生産効率の向上に果たす効果を分析したものだ。向上効果は都市部で大きく、東北など地方圏では小さい状況が続いてきた。
 一九九〇年代に入っても地方圏は公共事業の雇用効果に頼っているが、公共事業の生産効率向上効果は全国的に薄れてきた。報告書は「財政支出に頼った地域活性化策は期待できない」と従来型からの転換を促している。
 公共事業の向上効果が薄れた原因については「製造業中心の産業構造では有効だったが、サービス産業化した社会では効果が限定される」と指摘している。
 「公共事業が社会の変化についていけなくなった」との見方は学者の間にも広がっている。神野直彦東大教授は「公共事業は工業社会のインフラ整備に力を発揮したが、いま日本は脱工業社会への転換期にある」と言う。
 社会の変化を無視し、従来と同じ公共事業を繰り返しても景気は浮揚せず、生活を豊かにする社会インフラ整備にも結びつかないとの主張だ。
 脱工業化社会では生活関連の社会資本整備や社会福祉サービスのニーズが高まる。
 にもかかわらず小泉純一郎首相の「聖域なき構造改革」は、公共の社会保障サービスの削減を図っている。
 財務省政策研報告書も「眠っている生活密着型の潜在的サービス需要を掘り起こす」戦略を求めながら、それを民間の役割と限定しているようだ。
 政府は八〇年代から「公共の領域」の縮減を図った。その背景に「日本は大きな政府」との誤解がある。
 日本は、租税と社会保険料が国民所得に占める比率(国民負担率)が米国と並んで低い低福祉国家だ。
 高福祉国家の北欧に近い英国は、サッチャー改革で手厚い社会保障にメスを入れ、活力を生もうとした。
 低福祉の日本が同じ手法を取れば、国民の不安は増大し、消費心理が冷え込んで経済活動は収縮する。
 「日本は大きな政府」との誤解について、橘木俊詔京大教授は「政府による規制や関与が強いためで、質の面での役割が大きい」と分析。「質の面は小さい政府にしながら、福祉国家を目指すべきだ」と方向を示している。
 しかし、日本では国民負担率を高くすることには強い拒否感がある。多くの人はその理由に官僚への不信と官僚統治の非効率性を挙げるだろう。
 住民ニーズが社会保障などの対人サービスに移ってきた今、霞が関がコントロールする公共事業の有効性はさらに低下していく。
 権限と財源を地方に移譲すれば、住民ニーズに沿った施策が可能になり、カネの使い道も監視しやすくなる。
 神野教授は脱工業化社会を「知識社会」と規定する。教育など人間への投資が知識社会では重要になる。
 社会の変化をにらみながら、地域の実情と理念に基づいて、地方が公共投資の優先順位を決めていく時代だ。
 福祉や教育など人間への投資は新しい雇用の場づくりになるし、何より生活の質が高められる。対人サービスなら海外と競合する「空洞化」もない。
 財務省主導で「公共の領域」をいたずらに小さくする構造改革が日本を幸せにするだろうか。小泉首相にはよく考えてもらいたい。
 日本は分権・福祉国家を目標とし、その一環として公共事業の在り方を見直すべきではないか。「公共の領域」をとらえ直す時がきている。
 高齢化の流れが速く、相互扶助の思いが強い新潟は、福祉社会の先行モデルとなる可能性がある。これまで土木、ハコ物に偏ってきた公共投資の在り方を新潟は自ら問い直すべきだ。
 「公共事業王国」の新潟を、官民やNPO(民間非営利団体)などの力が存分に発揮できる地域に変えていきたい。それは真の「公共王国」につながる。

[新潟日報7月16日(火)]

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