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『親日派のための弁明』を読んで 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 27 日 19:28:13:

話題にもなりベストセラーにもなっているという『親日派のための弁明』(キム・ワンソプ著:荒木和博・荒木信子訳:草思社刊)を読み終えた。

該当書を読んでいない段階で、『Re:「近代」をきちんと批判できない限り“作家”を乗り越えることができない』( http://www.asyura.com/2002/bd18/msg/761.html )を書き込みしたり、『論理と価値観は峻別しなければならない』( http://www.asyura.com/2002/war14/msg/666.html )という関連の書き込みを行ったこともあり、読後感を書くことでまとめにもしたいと考えている。


書籍の帯にも書いてあるように、韓国では「有害図書指定」を受けたものだという。
また、氏によって“売国奴”呼ばわりされた相手の子孫が氏を名誉毀損で訴えたという報道などもある。

キム氏の『親日派のための弁明』は、論理と価値観が峻別されていない難点を第一に指摘できるが、それを踏まえて読めば、日本−韓国(朝鮮)−中国(+ロシアα)という関係の近代史を知る上でたいへんよくまとった書籍だと評価できる。


キム氏が論理と価値観を峻別していない背景を勝手に忖度すると(一応書かれた内容に即してだが)、


● 韓国における強固な反日教育&価値観の裏返し

  論理を主張するだけでは突き崩せないほど反日的価値観が根強い韓国の状況では、アンチテーゼとして、日本賛美&親日派=愛国派という価値観を提示せざるを得ないのかもしれない。


● マルクス主義的歴史観の影響

 キム氏は、高校生のときに光州事件に連座した人で、マルクス主義にも理論的素養があるようだ。古代奴隷制→中世封建制→近代資本主義→共産主義という唯物史観的「進歩史観」をベースにしており、未来の共産主義はともかく、封建制→資本主義という歴史過程を経たのは欧州と日本だけであり、朝鮮や中国はそのような過程がないため、自立的に近代化を進められない歴史的条件にあったという認識があるように、価値判断が強い歴史観を持っている。


● 近代の是認

 キム氏は、儒教的価値観を基礎とした朝鮮王朝は遅れた反動的なものであり、それを墨守しようとする勢力は“悪”で、それを否定し、自力では無理だった近代化を日本と組んで進めようとした勢力こそが“正義”という立場で書かれている。
 これは、再独立後、開発独裁型から民主制に移行しながら経済発展を遂げてきた現実から得ている“自信”の現れかも知れない。
 キム氏は、前近代は遅れた酷い歴史段階で、近代は良きものという価値観を持っているように思われる。


と、まとめることができる。


韓国政府が当該書を「有害図書」に指定した処置は痛いほど理解できる。

キム氏の主張に全面的な反論を加えるためには、朝鮮戦争まで経験しながら現状まで到達した戦後韓国の近代的発展そのものを批判しなければならないことになる。
そのような論理を構築をしない限り、キム氏の論理部分を突き崩すことはできないし、そんなことをすれば、国民あげて取り組んできた近代化=経済成長はなんだったのかという自己否定につながってしまう。
このような意味で、できるだけ国民が読まないよう「有害図書」に指定し、日本の大韓帝国併合を“善”とするキム氏の価値観だけを取り上げて非難を行うしか方法がないというになるだろう。


キム氏に対しては、論理と価値観は峻別すべきということをまず語りかけたいし、韓国の将来及び日韓関係の将来を希望的なものにしたいと願っているのなら、より有効的な問いかけ手法を選択したほうがいいのではないかと言いたい。

日本の敗戦により梯子を外され米国の保護国に近いかたちになった戦後韓国は、近代国民的統合のイデオロギー的支柱として、反日がもっとも手っ取り早いものだった。
(他にはなかったと言ってもいいだろう)

2000年の韓国ではキム氏の論理や価値観もそれなりに受け入れられるかもしれないが、1980年までの韓国で、「日本の併合は善であった」・「朝鮮は歴史的に日本に遅れていた」という国民意識が普遍化していれば、今日の韓国はなかった可能性が高い。

35年間続いた“日本時代”が外的要因(日本の敗戦とそれに伴う国際関係の変化)で突然消失し、独立国家しかも民族分断国家として歩み始めなければならなかった韓国は、35年間の“日本時代”を、日本の罪をあげつらいながら自己否定するしかなかったのである。
日本による併合が韓国のためでもあり素晴らしかったと総括しても何ら益がないどころか、外部依存体質を育むことで阻害要因とさえなったであろう。

否応なく日本から離れて独立した分断国家として生きていかなければならない韓国は、統合及び未来志向のバネとして直近までの歴史過程であった“日帝=悪論”を利用せざるを得なかったと言えるだろう。


キム氏は、論理部分でも、戦後も“日本時代”が続いていれば韓国はよりスムーズな経済発展を遂げていただろうとも危うい認識をしている。

これは歴史的には検証できないテーマだが、日本は、朝鮮半島及び満州という「カネ食い支配地」を無理矢理放棄させられ、米国などとの新しい関係性を基礎に日本列島に人的資源を集約することで驚異的とも言える経済成長を遂げたのだから、キム氏の論が誤っている可能性が高い。
おそらく、米国の保護のもとでの開発独裁という現実の歴史過程のほうが、韓国の経済成長に資したはずである。


最後に、反韓意識を強く持つ日本の人たちが、自分たちの主張を補強するために『親日派のための弁明』を利用しないことを願っている。
(おいおいと思ったり赤面するほどの日本賛美で書かれている部分もある)

ナショナリズムや民族意識をベースにする考えであれば、キム氏の主張は、反ナショナリズムであり反民族主義のそれである。
日本の民族派であれば、キム氏のような反民族主義的韓国人は批判の対象としなければならない。そうではなく都合よくキム氏の言説を利用するというのであれば、ナショナリズムや民族主義ではなく、日本優越主義や自慢史観でしかないと言っておきたい。

(優越意識を持つことや自慢することが悪いという意味ではなく、戦前のアジア主義的民族派のほうがずっと優れていたという意味)


『親日派のための弁明』は、日本と韓国(朝鮮)を軸とした近代史を再確認するために優れた書であり、ある意味で韓国人の自信が表明された書とも言えるものであり、多くの日本人が読まれることを期待したい。


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