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2002年「ドイツ総選挙」の“世界史的意義” 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 24 日 21:02:07:

大げさなタイトルを付けたが、将来そう考えられる可能性もあれば、一つの国の総選挙だったということで忘れ去られることもあると考えている。

ドイツの政治状況は、8月始めまで、400万人を超える失業者という経済状況のなか、シュトイバー氏率いるCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)が政権を奪取すると予測されていた。
そのような政治状況を変えたのが、東部地域の大洪水であり、米国政権の対イラク攻撃前のめりである。
8月に起きた東部地域の大洪水で被った被害に対して、シュレーダー政権は、政府の財政出動と法人税引き下げの延期を決めた。
シュレーダー政権の真意はともかく、米英の対イラク攻撃が現実味を帯びるなかで高まった「反戦」及び「反ブッシュ政権」の世論を受け止めるかたちで、「米国のイラク攻撃には人もカネも出さない」と表明した。(「イラク攻撃反対」が8割という世論調査もある)

対米協調路線を標榜するシュトイバー氏までが、「イラク攻撃のために、ドイツにある米軍基地を使わせないし、領空を通過することも認めない」と発言せざるを得ない状況にあった。(のちに発言趣旨を曖昧にした)

このようなことから、SPD(社会民主党)と緑の党の連合の総選挙勝利は、「イラク攻撃への不参加表明」の“賜物”と言えるだろう。

シュレイダー氏は、現在では「国連決議があってもイラク攻撃には参加しない」とまで表明している。

第二世界大戦の敗戦国であるドイツの国際政治に対する影響力は、分断状況が解消されたとは言え、日本以上フランス未満である。
ドイツが「イラク攻撃不支持」を唱えたからといって米国のイラク攻撃を阻止できるわけではないが、EU最大の経済規模を誇るドイツの言動は、EUのみならず東欧・ロシアの判断に大きな影響を与える。

ポーランドのワルシャワでNATOの非公式会議が行われており、米国政権が経済支援をちらつかせながらポーランド政権に米国支持を迫ったが、ポーランド政権は首を縦に振らなかった。
その八つ当たりかどうかはわからないが、ドイツ政権が求めていた国防相とラムズフェルド国防長官との会談を拒否した。


米英政権は、イラク問題について、「大量破壊兵器」からさらに踏み込んで「武装解除」を公言するまでになった。
フセイン政権が軍事力を保有していることさえ認めないというスタンスである。
反対給付のない無条件査察を渋々受け入れたフセイン政権が、独立国家の“権利”である武装を放棄することはあり得ない。

「強行査察」を含む新たな国連決議に反対しているロシアや2段階論を提示しているフランスが、「武装解除」を目標として掲げ始めた米英政権に同調するとは考えにくい。
米国政権は、ロシアに対しては対テロ戦争や経済権益でなんとか同調させようとしている。フランスに対しても、イラクに対して保有する経済権益を尊重することで同調を働きかけている。
(経済成長第一主義を“国是”としている中国政権は危ない判断は避けて棄権する見通し)


安保理の常任理事国ではないドイツの判断がことを決するわけではないが、ドイツの「イラク攻撃不支持表明」は、ロシアやフランスがイラク問題で米英と距離を置く支えにはなるはずだ。

逆に言えば、シュトイバー氏が政権を握っていれば、ロシアやフランスが“孤立化”する可能性のある政策を採ることは困難であろう。

EUのなかではイタリアとスペインの政権がブッシュ政権寄りの政策を表明しているが、国民意識とは乖離している。(EUの流れがイラク攻撃不支持に傾けば固執はしない)
ブレア首相はイラク攻撃を強行突破で踏み切る気でいるようだが、米国政権が絶対的な同盟国と考えている英国でさえ、閣僚内で反対論があるように攻撃に向けて国内の統一ができているわけではない。

米英政権が国連安保理で否決されてしまうという醜態を見せるわけがなく、国連決議無しの攻撃に踏み切る可能性が高いと思われる。

国連決議がない米国のイラク攻撃に対して、EU諸国はお手並み拝見という傍観者的態度に終始し、ロシアや中国も、止めはしないが愚かな軍事行動に走る米国を冷ややかに見届けるということになるだろう。
日本も、そのような国際情勢のなかで、イラク攻撃を支持するとしても、イラク攻撃参戦に踏み切ることはないだろう。

米国にとって最悪のケースは、ブレア政権までがイラク攻撃に躊躇する事態である。
このようなケースも、英国世論に照らせば、それほどあり得ないことではない。

イラク攻撃にどういう価値があると思っているかはわからないが、大統領自身が国連の弱腰までを取り上げて吠えまくっている米国政権が、イラク攻撃を断念することは考えづらい。(ブッシュ政権はイラク攻撃を断念できないほど拳を振り上げすぎた)

ドイツ政権が「イラク攻撃不支持」を公言して総選挙に勝利したことで、米国政権(米英経済支配層)の世界戦略が大きく狂う可能性が出てきたのである。

1648年のウェストファリア条件以前にまで国家間の関係を戻そうとしているブッシュ政権に対して、世界の国々は明確に反対の意志表示をすべきである。
(単独の意志表示は標的になるので、ASEMやEUなどの諸国家組織で行うべき)

国際条約を無視すると公言している国家こそが「テロ国家」である。


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