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国際事業として進む、世界最大規模の電波望遠鏡建設計画 「wired mews」 投稿者 ほくめん 日時 2002 年 10 月 24 日 02:27:35:

2002年8月24日 2:00am PDT  カリフォルニア工科大学、コーネル大学、SETI研究所、マックスプランク研究所、北京天文台――これらは、天体物理学史上最も壮大な電波望遠鏡プロジェクト『スクエア・キロメートル・アレー』(SKA)に参加する有名研究機関のほんの一部だ。

 この巨大電波望遠鏡がもし完成すれば、その名が示すとおり、1平方キロメートルの規模になる。

 しかし、規模よりも興味深いのは、計画の核にある、国際的な共同作業だ。

 「こんなことは前例がない」と語るのは、SETI研究所のジル・ターター氏だ。ターター氏は、SETI研究所の今後の発展に責任を負う『バーナード・M・オリバー・チェア』という肩書きを持つ。

 「この計画は、生まれながらにして国際的性格を持っている。われわれは、最初から最後まで徹底して、これを国際プロジェクトとしてやり抜くつもりでいる。そのためには国際プロジェクト事務局を設ける必要がある。何とかして作り出さなければならない」

 こういったプロセスから恩恵を受けるのはSKA計画だけではない。多くの科学的課題には、たとえば気候変動に関する研究のように、大規模な国際協力が不可欠だが、それを実行するためのシステムも方法論もないのが現状だ。それに比べ、SKA計画に携わる科学者たちは、科学界や工学界の名士揃いで、すでに2つの大陸全体と別の2大陸の相当部分――中国、オーストラリア、カナダ、米国、ヨーロッパ、インド――が参加している。

 「国際事業として進められている大プロジェクトはいろいろあるが、どれも最初は1つの国の事業としてスタートし、後から他国が資金援助のために加わったというものばかりだ」とターター氏は語る。

 SKA建設は、10億ドルの費用がかかる可能性があるため、一国だけでは行なえない。そこで、各国の科学コミュニティーを説得して世界的プロジェクトに参加させるという難題を乗り越える必要が出てくる。この作業が今まさに進行しているわけだが、そのために、電波望遠鏡をどこに建設するかなど、大きな政治的問題が決定しない。

 そのような問題の決定は後回しにして、SKAコンソーシアムは現在、2010年までの望遠鏡の完成を目指し、どんな設計が望ましいかを考える作業に専念している。先週、オランダのフローニンゲンで開かれた会議では、科学者とエンジニアが7つの設計を評価、検討した。

 オランダの財団『アストロン』の理事であり、SKA広報責任者を務めるハーベイ・ブッチャー氏は、次のように語った。「検討した案の1つは、自然の渓谷を使い、そこに反射性素材を並べて設置し望遠鏡にしようというものだった」

 「ほかには、直径数百メートルの鏡を持つ望遠鏡の案もあれば、気球を使って上空数キロメートルのところに受信機を吊り下げておくという案もあった。もちろん、小型の望遠鏡をたくさんまとめて設置する案もあったし、一番極端なケースでは、携帯電話で使うような小さなアンテナを無数に使うという案もあった」

 これらのアイディアはすべて、詳細な工学プロジェクトに詰めたうえで、来年再提出されることになっている。その際は、費用を見積もるとともに、厳密な設計条件――とりわけ1メートルあたりのコストを可能な限り安くするという条件――に従うことになる。

 SKA計画が成功すれば、米国ニューメキシコ州にある現在の世界最高性能の望遠鏡、『超大型干渉電波望遠鏡群』(VLA)より感度も解像度も100倍優れた、巨大で精密な電波望遠鏡が誕生する。

 VLAが1万4000平方メートルの総有効アンテナ面積を持つのに対し、SKAでは100万平方メートルとなる。

 天文科学者が獲得した科学分野のノーベル賞5つのうちの3つは、電波天文学のおかげで得られたものだったが、古い技術が設計効率の上限に達するにつれ、地上での発見はだんだん減りはじめている。SKAは、この限界を飛び越えるものとなるだろう。

 SKAで何を見るのか? その使命の1つは、過去を振り返り、初期の宇宙で生まれた最初のいくつかの構造物について知ることだ。地球外知的生命体の探索という仕事もある。パルサーや太陽に似た恒星の観測や、惑星の発見にも利用されるだろう。

 「用途はたくさんある。この望遠鏡を使うときは、一度に1つの仕事に限る必要はなく、複数の仕事を同時進行できる。これは本当に重要なことだ。何しろ巨額の投資をするのだから、コミュニティーがそれを最大限に活用できるようにしたい」とターター氏は述べる。

 しかし、こういったことをすべて実現するには、現在の技術が大きく進歩する必要がある。「われわれが求める帯域幅は巨大で、データレートも信じられないくらい高くなければならない」とターター氏。「われわれは、1秒あたり数十テラバイトから数百テラバイトというスケールの話をしている。記憶容量について言えば、ペタバイト級の話になる」

 これぞまさに、一番興味深いポイントの1つだ。このプロジェクトの土台となる技術が登場するのは、3年か5年、あるいは7年先のことだろう。同じ価格で実現される処理能力は18ヵ月ごとに倍増していく、というムーアの法則が助けてくれるはずだ。

 だが、このプロジェクトは、さまざまな問題と同時に、可能性も提供する。「巨大科学、そう、たとえば素粒子物理学の例を見てほしい。技術は非常に進んでいるものの、市場への到来はそれほど間近ではない。利用できるようになるのは、5年後ではなく、20年後くらいだ」とブッチャー氏。「気の長い話だし、そこから何が生まれるかは誰にもはっきりわからない。何かが生まれるとしても、それは多くの場合、偶然の産物だ」

 巨大電波望遠鏡は果たして完成するのだろうか? たぶん完成するだろう。多くの国の政府がすでに、デモンストレーション・プロジェクトや主要技術の研究に資金を拠出している。SKAの設計仕様や、一度に複数のプロジェクトを扱える点、SKAから派生するさまざまな技術、そして各国が費用を分担する点を考慮すれば、たいていの国の政府が、世界で一流の天文学研究機関の提案に納得して応じてくれることだろう。

 そして、どの政府も、自国が巨大電波望遠鏡の建設地になるかもしれないという期待を胸に、話に乗ってくるだろう。


[日本語版:藤原聡美/柳沢圭子]

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