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「モスクワ劇場占拠事件」報道に見る「近代世界」崩壊の予兆 投稿者 あっしら 日時 2002 年 10 月 31 日 22:25:02:

「モスクワ劇場占拠事件」は、強力麻酔剤フェンタニールが主成分とされる特殊ガスを充満させた後にロシア軍特殊部隊が突入して“解決”した。

劇場に流入した特殊ガスにより、今日現在で人質だった119人が死亡したと報じられている。

人質が119人も死に至るという結末は、プーチン政権にとって想定外のことだっただろう。作戦立案者も愚昧ではないだろうから、相当数は死ぬ可能性を認識していただろうが、100人を超える人質が流入させたガスによって死ぬとは...というものだろう。

劇場に流入したガスの成分が何かは別としても、空気より重いと思われる「空気以外のガス」を充満させれば呼吸困難に陥ることになる。そして、成分に身体機能を麻痺させるようなものが含まれていれば、それと呼吸困難の相乗作用で所定時間内で救出したとしても死に至る可能性がある。
死を覚悟したチェチェン独立派勢力は、相当量の爆薬を用意し(身体に付けたものと劇場に仕掛けらもの)、劇場の2階にも陣取っていたというから、起爆させないためにたっぷりガスを流入させたはずである。

プーチン政権が劇場を占拠したチェチェン独立派勢力の要求を呑まないのなら、できるだけ多くの人質を救出するために今回のような作戦を立てざるを得ない。

メディアは100人を超える人質が死亡したことでプーチン政権を非難しているが、「対テロの戦い」を正当とするのなら、あのような作戦自体を非難することは不適当である。
非難できるとしたら、散布したガスが身体に及ぼす害を緩和するための薬剤を突入時に用意していない場合であり、病院に収容した後に治療効果がある薬剤を医師に提供していない場合である。

前置きが長くなったが、問題にしたいのは、今回の作戦で劇場を占拠したチェチェン独立派勢力が射殺されたことに対する非難が起きていないことであり、チェチェン独立派勢力を支援しロシアのチェチェン政策を非難していた米国が手のひらを返したようにチェチェン独立派勢力をテロリストとしていることである。


● 人事不省に陥った劇場占拠グループを射殺

身体に巻き付けた爆薬も劇場に仕掛けた爆薬も起爆させることがなかったのだから、劇場を占拠したチェチェン独立派勢力は身動きができない状態にあったと推定できる。

ロシア軍特殊部隊は、刑法犯とはいえそのような状態にある50人ほどを射殺したのである。(頭を狙って撃ったと言われている)

寡聞にして、このような虐殺行為を非難しているメディアを見聞きしていない。

普段は人権・人道・民主主義・法治主義を高らかにうたっているメディアが、それらすべての理念や価値観に抵触する虐殺行為に非難の声を上げていないのである。

勝手に推測するに、テロリストにはそれらの理念や価値観は適用されなくて当然だという判断が働いているのであろう。

人権は人が生まれながらにして有する権利とされているから、テロリストは人間ではないということになる。

世界で発生しているあやしげな事件は、ことごとくと言っていいほど、「イスラム過激派」のテロだとされている。そして、イスラム自体がテロリストを生み出す危険な宗教という刷り込みも行われている。
極端な言い方をすれば、12億人と言われているムスリムを人間と見なさいという意識が醸成されつつあるということになる。

いやそんなことはないと抗弁しても、受け手側であるムスリムは、そのような思いを持つだろう。そして、それをイスラムの危機だと考えれば、穏健なムスリムも、イスラム擁護の戦いに立ち上がることが考えられる。そうなれば、その人は正真正銘のテロリストとなり、人間としての扱いを受けなくて当然の存在になる。

メディアの愚かな報道は、自覚しているかどうかに関わらず、世界に大きな亀裂と対立を生み出しているのである。


プーチン政権も愚かである。
生け捕りにして裁判にかけて死刑にするのなら、チェチェン独立派勢力も怒りを抱くとしてもそれなりに納得ができるが、身動きできない状態で有無を言わさず射殺されたとなれば、仲間が虐殺されたという思いから第2第3の「決死隊」を生み出すことになるだろう。


● 様々な勢力をご都合主義で利用する米国

今回の人質救出作戦について、米国は、パウエル国務長官が人質の命が失われたことを遺憾としながら地球規模での「対テロ戦争」の意義を強調する素材に使った。
フライシャー米大統領報道官も、「罪なき人々の生命がテロによって失われ、自由世界に対するテロリストの危険を思い起こさせた」とチェチェン独立派勢力を非難した。

バーシュボウ駐ロシア大使は、「無実の市民の犠牲を最小限に抑えたロシア当局の対応を高く評価する」と述べるとともに、米国が劇場占拠事件でロシア政府に助言を与えていたことを明らかにした。

しかし、米国は、9・11米本土空爆テロが起きる前まで、チェチェン独立派を支持していたのみなず支援まで行い、チェチェンにおけるロシアの“虐殺”を非難していた。
米国が支援しなければ、チェチェン独立派勢力があそこまでの対露闘争を続けることはできなかったのである。
チェチェン独立派を支持していた期間にも、チェチェン勢力の犯行とされるアパート爆破事件がモスクワで起き400名近くの“無実”の人が殺されているにも関わらずである。

このような米国の変節は今に始まったことではない。
現在米国の標的になっているイラクも、イランイスラム革命後に始まったイラン−イラク戦争では米国の支援を受けた。単純な支援だけではなく、生物兵器の供与や毒ガス作戦の支援まで受けている。

しかし、戦争終結後まもまく米国の罠に掛けられるようなかたちでクェートに侵攻し、「湾岸戦争」に突入した。そして、その後現在に至るまで経済制裁を受け、今やフセイン政権打倒が目標と公言される状況で攻撃を受ける危機にある。

このような米国の変節を非難しているメディアも寡聞にして聞かない。


経済が行き詰まり状況に陥り、自らが掲げてきた理念や価値観を公然と投げ捨てている「近代世界」は、最後の害毒と災厄を派手にまき散らしながら、着実に崩壊の道を歩むことになるだろう。


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