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Re: 富の正当性について 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 27 日 16:17:29:

(回答先: 富の正当性について 投稿者 ユートピアコレクション 日時 2002 年 8 月 26 日 22:55:00)

ユートピアコレクションさん、こんにちわ。

まず、抽象的な概念や価値観である「法の適用の平等」には賛同しつつも、具体的な活動場面では差別主義(色が付いている言葉なので“差異主義”と言ったほうがいいでしょう)が好ましいという価値観を持っていることを表明します。

別に哲学や政治的な意図ではなく、個々人は外見的様態・活動力・思考力・美意識・価値観などが違うからこそ、関係的な活動を行うことに意義があり刺激的で面白くもあるということでしかありませんが...

平等主義の“拡張”は、差異性を基礎とした共同体=社会を、現実としてはあり得ない“人間の集合体”であるかのような幻想をもたらします。
(ある特性を持った存在の抽象的な定義概念である“人間”というものが、あたかも生の存在であるかのような錯覚を蔓延させ、論理学的な比喩を使えば、帰納的な概念でしかないものが、生の個々人に演繹的に適用されるという倒錯情況を指します)

歴史的でかつ地域的な“人間像”があるべき人間として措定され、それから外れた個は、無能と判断されたり、障害者と定義されたり、異端者と見られたり、邪魔者として疎外されたりすることにもつながります。
マルサス的な社会ダーウィン主義も、それへの対抗思想である人権主義も、“あるべき人間”という意識そのものを疑問視するというより、それを基礎としながら、外れた個に対して国家や社会がどう対応するかにおいて生じている対立だと考えています。


提起された『結果平等主義』が悪いというのも、貨幣的基準での平等・不平等を論じたものでしょう。さらに言えば、“富”も貨幣的基準で測られるものになっています。

貨幣は、直接消費する対象でも、直接利便性を与えてくれるものでもありません。
(成金的に貨幣的“富”を見せびらかす行為においては、貨幣が直接的な効能を果たしますが..)
貨幣には蓄蔵性がありますから、モノや他者の活動力に変えて消費したり利便性を享受したり精神的満足を得るというかたちではなく、より多く保有したいという衝動(欲求)を与えます。

『結果平等主義』が悪いという主張は、そのような貨幣獲得志向(欲求)を抑え込むことで、貨幣経済である「近代経済システム」が停滞するということ以外に正当性(合理性)はありません。
(「近代経済システム」である限り、実際に経済活動が停滞することになります)


>労働は阻害されることがなければそれは楽しいものでしょうし、能力以
>上に働くわけにもいきません。必要以上にモノが豊富にあるなら、必要
>な分があればいい、と考えることにどんな不都合があるのでしょうか?

不都合がないというお考えに同意します。

労働を活動に置き換えればわかるように、人は活動を禁止されることのほうが苦痛であり、疎外されない労働であれば、いろんな意味で楽しさを享受できるものだと考えています。
能力以上に働くこともできませんし、やりたいこととそれほどやりたくないことという好みの問題もでてくるでしょう。(やりたくない人が多いが必要だと判断される労働であれば、それをやった人は、より多くのモノが得られるようになるのが好ましいと思っています)

モノに対する必要性認識も歴史的かつ地域的に規定されたもので、現在の日本であれば、将来的に危ういモノ(食糧など)があり、質的に不満足を覚えているモノ(住環境など)があるとしても、必要性は満たされていると考えています。

より現実的に言えば、モノに不十分さを感じている人はもっと働けばいいし、現状のモノに満足を感じている人は今のペースで働けばいいことになります。

言い換えれば、モノをより多く獲得するために自己の活動力をさらに消費するのか、それとも、モノの獲得ではなく他の目的に自己を活動力を消費するのかという選択をすればいいということです。


現状の先進国であれば、平均的な国民でも、19世紀的金持ちが手に入れることができないほどのモノ(快適性や利便性を含む)を手に入れることができるようになっています。

ユートピアコレクションさんが考えていられるような価値観が多数派にならなければ、諸問題が解決できない歴史段階にあると認識しています。

しかし、貨幣にこそ価値があるという守銭奴的価値観を持っている人が人々の価値観醸成や政治的決定に多大な影響を与えていますから、それに抗して価値観を変容させていくことは難しいと思っています。

それこそ、破滅的な経済状況にでも陥らない限り、目が覚めないのではないかとも思っています。


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