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良かれ悪しかれ、もう日本人は天皇の名に於いて何でもやる
人種ではなくなった。しかしそれは、会社や役所の為に何でもやる
人種に生まれ変わっただけかもしれない。
つまり崇拝の対象こそ違え大体似たような物だが、金を主体とした
利益をハッキリと求めるようになり、また民族主義から遠ざかる
非主体的アナーキズムのベクトルを持ったのが違いといえば
違いかもしれない。ただ全体主義的であったのは不変だったと
思う。称するならば非国家的全体主義、利益崇拝全体主義って所だろうか？

そう見れば、戦後日本が驚異の経済成長を遂げたのは
実に理屈に合っている。
戦後日本人は天皇や国家の替わりに、公民問わず利潤システムを
崇拝するようになり、かつて全面的献身を教えられて育てられた
超人的な気概は全てその方向に注ぎ込まれたからだ。

後知恵を並べるといささか見苦しいが、しかし日本が戦前の
いわゆる遺産だけで成り上がって来て、それなのにその事実を
きちんと認めぬが故に成功が長く持続せず危機に瀕している
という事実は、世界の買い占めさえできると言われた
１５年程前に、為すべき事はほとんど為さず、しこたま浮かれて
破滅の種を撒き続けてきたことからも明らかではないだろうか？
ようするに戦後理念には、利潤の追求があってもそれ以上の物は
無かったという事を雄弁に物語っている。戦後理念が目指した約束の地が
実は空虚でしかなく、戦後日本を輝かせたのが本当は戦前の理念だった
と分かっても、かつての敵国を師と崇め「全てが悪」と
断じて粉々に砕いて捨てた、言わば殺してしまったその母体には
もう戻れない。
こうしてみると戦後社会は、これはこれで人間性を欠いていると
いう事が出来る。

いずれにせよ、だからこそ日本は、伝統に教えを乞う事の
出来ない未踏の領域に突入しているし、そういうものは元来
日本人には不得手なので困難を抱えているということだろう。

個人主義が果たして破綻せずに各人の幸福に貢献しうるのか
という実験のようなものが行われているといっても過言では
ないし、それ以外の選択肢が無いのではなかろうかと思う。

とどのつまりは、個人主義は資本主義と密接に結びついているものなので、
個人主義の先鋭化は資本主義の先鋭化とセットで進む事になる、
従って極論すれば戦後日本は時代を先取し資本主義と
一蓮托生の道を選んだといえるし、新自由主義なる
現在のものに取って替わるだろう世界秩序には
反対する理由が無いのではなかろうかと思う。

その中で、個人は独自に、自ら拠って立つ物を作り出し
生きていかなければならない。しかしそういうものはあるのか？
どういうものなのか？というのは皆目分からない。
そうこうするうちに文明レベルが著しく下がるような状況が
発生し、人類はかつて来た道のどこかに回帰するような事になれば、
それはそれで幸せなのではあるまいかとか思ってしまうが・・・

あるいは、個人主義の究極でしか為しえない新境地への到達と
いうものがあるのだろうか？ご意見があれば頂きたい。

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