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米国経済のアキレス腱(SUMITOMO GOLD NEWS) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 5 月 20 日 20:10:17:

NY株式市場やドルの値動きが荒い。発表される各種経済データや企業業績にまるで一喜一憂するかのように乱高下を繰り返している。
5月8日(水)にNYダウは前日比305.28j高の10141.83j、ハイテク企業の多いナスダック総合株価指数は122.47ポイント高の1696.29ポイントとなり、ナスダックのほうは率にして史上8番目の上昇率となった。ところが翌日から一転急落し、ダウ、ナスダックともに1週間を通してみると結局前週比マイナスというありさまだった(上昇の原動力は空売りの買戻し)。その後はいくつかの業界を代表する企業の好業績発表を受けてやや安定した値動きとなっている。ところが先月からやや変調をきたしていたドルのほうがいまだ波乱含みである。先週末のNY外為市場でドルは売られ1日で対円でも2円以上も下げている(円は5ヵ月ぶりの高値125円台)。 
5月2日配信号で米国景気回復に対する「楽観論の“揺らぎ”」と表現したが、ここにきて景気見通しの修正が大勢となってきた。3月下旬までFRB(米連邦準備委員会)による早期利上げを予想する向きが多かったが、見送られた5月7日のFOMC(連邦公開市場委員会)はもとより6月も見送られ早くて8月と、早期利上げ観測は逃げ水のように遠のいている。まるで昨年はじめの景気V字回復論のようである。その時もV(急回復)だ、いやU(穏やかな回復)だ、L(調整の中長期化)だと、ずるずる見通しが後退した。いずれにしても足元で起きているのは、速報段階でのGDP1−3月期年率5.8%成長(5月24日に修正値発表の予定)という結果は別として、先行きへの懸念である。
ポイントは、3点ある。
まず、今回の米国の予想を越えた成長率の牽引役となった「在庫投資」についてである。それが足元の4−6月期には生産の伸びが一巡し、景気押し上げ要因にならなくなるのではとの見方である。少し説明を加えると次のようになる。景気後退で売上減少を見越した企業サイドは、まず生産を見合わせる。その間も商品は動くので、時間の経過とともに在庫は減ってくる。そして一定限度の在庫水準になったところで企業は在庫の積み増し(生産)に向かう。これが景気循環の基本となる「在庫循環」と呼ばれるものである。循環のサイクルはその時々の状況により差はあるが、どこの(国の)経済でも存在するもので、日本国内では政府をして「景気底打ち宣言」に踏み切らせた背景でもある。「循環」には上昇期でも低迷期でも1本調子のトレンドはなく、いわゆる“踊り場(流れが一時的に止まる局面)”があるわけで、そこをどう判断するかが問題となる(今回日本政府は「底打ち」と判断した)。米国の場合、昨年のテロ発生直後から個人消費低迷を予想した産業界が生産調整に向かったものの、実際には(ゼロ金利ローンによる自動車販売など企業努力もあり)個人消費はことのほか強く、在庫が一気に取り崩されていったという背景がある。そうなると適正水準までの在庫積み増し、あるいは需要を先取りした前倒しの積み増しということになる。それが経済全体を押し上げることになった。企業部門がうまく離陸できなければ、再調整ということになる。
堅調さを維持しつづける個人消費のほうは、伸び率こそ落ちたものの前期比年率3.5%(前期6.1%)と92年1−3月期以来10年連続の伸びを記録している。当欄では昨年来、堅調に推移する米国個人消費の背景として(金利低下とともに)住宅価格の上昇を指摘してきた(2001年8月31日配信号後段参照)。個人金融資産に占める株式の比率が(投信など間接的なものを含め)50%にもなる米国で、株安現象が個人消費にダメージを与えていないのは、“株は安いが住宅は高い”という構図である。いわゆる「逆資産効果」と呼ばれる資産価格の下落による消費への悪影響が生まれていないのである。というのも概算で過去5年の間に2倍になった住宅価格がそれを防いでいるのである。ちなみに中古住宅の平均価格は昨年、前年比8.4%上昇し、15万1400ドルとなっている。地域格差があることは言うまでもないが、特にニューヨークなど大都市近郊では完全に売り手市場となり、高額物件が増えていると伝えられている。
米国一般家庭の風景として、昔からペンキを塗り替えたり、こまめに修理をやったり、芝生の手入れなど住宅に手を掛けている光景をメディアでよく見かける。我が家に手を掛けるのは、それを転売してより広い家に移るという、いわば資産価値維持あるいは資産価値上昇のためでもある。このところ売買が増えているのは、中古住宅の転売市場や税制が整備されていることもあるが、何よりも価格が上昇しているからである。家を買い換えると、「一部屋増えたからTVを、あるいはパソコンをもう一台」というように必ず大物(耐久消費財)の消費がついて回る。これが経済を支えてきた。時期的にもベビーブーマー世代が住宅取得に向かったり、“行け行けどんどん”の90年代に流入した移民の住宅取得が増えていると伝えられている。
気になるのは、ここに来て「住宅取得が増えている要因の大きなものは、金利低下よりもむしろ個人が株式市場に見切りをつけ始めた(TV東京・モーニングサテライト・5月7日放送/マンハッタンの大手住宅業者幹部談)」などと伝えられていることである。“値上がりが期待できなくなった株より上がっている住宅を”という動きは、やはり過熱気味であり、失業率がじわじわ上昇するなかでこうした状況が維持可能なのかどうか。金融政策のほうは、(住宅ブームが)これからさらに過熱化するとしても6809億ドル(約85兆円・国際決済銀行調べ)にまで膨れ上がった債務を抱える米国IT業界のことを考えると、そう簡単に利上げもできないという状況にあるわけだ。以前書かせていただいたが、FRBは難しい“さじ加減”を求められているのである。株にしろドルにしろ、そして金市場を見るにしろ米国の住宅関係のデータからは、ますます目が離せなくなってきた。
ポイントの3番目は、「政府支出」として現れる国防費の増加であるが、これは以前「双子の赤字復活」として取り上げたように、財政の赤字化という形で債券および為替市場の材料になっている。
以上のように決して手放しで楽観できない金融環境のなか(報道は楽観的なものが多いが)、海外金市場は、引き続き強含み310ドルをはさんだ値固めの中にいる。
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎

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