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景気判断、実は鋭い?タクシー運転手の主張って?(MSNマネー) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 5 月 23 日 13:40:27:

政府は景気底打ち宣言をしたけれど、タクシー運転手は猛反対。景気に敏感な運転手さんはなぜ政府と違う景気判断をしたのだろうか?


内閣府は、先週金曜日(5月17日)に「景気は依然厳しい状況にあるが、底入れしている」と景気判断を3ヶ月連続で上方修正し、事実上の景気底入れ宣言をした。前回の景気拡大局面(99年1月〜2000年10月)では、堺屋太一長官(当時は経済企画庁)が公式判断を見送ったので、政府の公式景気底入れ宣言は93年5月以来のこととなる。
ただし、民間エコノミストの多くは、遅くとも3月には景気の底打ちを認識していた。例えば本コラムでも、今年初めには景気底打ちの可能性が高まっていることを指摘していた(「小泉内閣の支持率低下で2月危機がやって来る?」)。おそらく読者の中にも、今回の公式景気底入れ宣言を「何をいまさら」と感じていることだろう。すでに株価も景気底打ちを織り込んでおり、マーケットの注目点は、景気回復力や回復の持続性に移っている。
ところが、マーケットからやや離れた方々は、今回の景気底打ち宣言に違和感を持っているようだ。私は今回の宣言をタクシーのラジオで知ったのだが、ニュースを聞いた瞬間にタクシーの運転手さんは、政府宣言は単なるデタラメだと怒っていた。客数は少しずつ増えているが、客単価は相変わらず低く、一日の売上は3万円程度。せめて4〜5万円くらいの売上がなければ景気が回復したとは言えない、というのが彼の主張だ。
タクシーの運転手さんが政府見解と異なる景気判断をしているのは、見ている事実が違うためだろうか。しかし、内閣府が発表する景気ウォッチャー調査では、タクシー売上や客単価も対象になっており、政府がタクシー動向といったミクロ現象を無視しているわけではない。おそらく両者の食い違いは、景気判断方法が異なっているためだろう。
一般の人はあまり意識をしていないようだが、景気の良し悪しを判断する方法は実は二つある。一つは、「変化」による判断方法であり、もう一つは「水準」による判断方法である。
「変化」による景気判断は、全米経済研究所(NBER)のW.C.ミッチェルとA.F.バーンズによって確立された。彼らは景気の変化方向を山と谷の転換点を基準にし、景気を拡張と収縮の二局面に分けた。簡単に書けば、多様な諸々の経済活動のうち、活発になりつつある活動が不活発になりつつある活動よりも多数を占めている場合が「景気拡張」となる。逆に不活発になりつつある経済活動が活発なものよりも多数を占める場合は「景気収縮」となる。今回の政府の景気底入れ宣言は、この考え方に基づいている。
もう一つの「水準」による景気判断方法は、有名なJ.A.シュンペーターが考案した。彼はある「正常な」利潤が得られる正常な景気の「水準」というものを設定し、その水準よりも上の領域を「好況」、下の領域を「不況」と名付けた。タクシーの運転手さんの考え方は、このシュンペーター方式ということになる。
たいていの民間エコノミストは、「変化」方式で景気を判断している。これは「水準」方式に比べ、いち早く景気の変化を知ることができるためだ(変化をみているのだから当然だろう)。また「水準」方式だと、何が「正常な」利潤なのか、明確に定義しづらい。タクシー業界だけなら「正常な」利潤を定義することは可能だが、マクロで日本全国の「正常な」利潤を決めることはほぼ不可能である。
正確に景気判断をするためには、このようなやや専門的な方式まで使う必要があるので、慣れるまでが大変だと思う。しかし一度習得してしまえば、マーケットの動きを理解するのに役立つほか、景気に関するコメントが信頼できるものかどうかを判別するのにも役立つ。読者もこれを機に一度どちらかの方式で自分の景気判断をしてみてはいかがだろうか。
ただし、「変化」方式と「水準」方式の両方を同時に使わないよう気をつけてほしい。一つの事実を二つの物差しで判断してしまうと、単に混乱するだけだ。今では「変化」方式だけを採用している内閣府も、91年夏には「景気は依然高水準で『不況』ではない。景気は緩やかに『減速』しているが『拡大』を続けている」と意味不明なコメントを述べていた(当時は経済企画庁)。これは明らかに「変化」方式と「水準」方式を混同したコメントだ。後日、景気基準日付検討委員会が指摘したように、バブル景気は91年2月にすでに終了していた。経済企画庁の判断ミスは、不況対策のスタートを遅れさせ、次の景気回復までに32ヶ月もの長い月日を要する結果となった。読者はこうした愚を絶対にしないよう注意したい。

マーケットエコノミスト 秋新作
提供:株式会社FP総研

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