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【国債問題への定量的アプローチ】その6:財務省の国債償還プラン 投稿者 あっしら 日時 2002 年 6 月 05 日 21:47:05:

どういう事態をそうことだと思っているかどうかわからないが、「債務不履行(デフォルト)はない」と豪語している財務省官僚がどのような国債償還プランを持っているかを紹介する。

(明示的な債務不履行はなく、ハイパーインフレによる実質価値の切り下げという債務不履行を行うことになると考えている)


次の表は、財務省が昨年時点の国債残高をベースに算定している国債償還プランである。

普通国債償還年次表(2001年補正後予算ベース)

 年度      償還予定額    償還率
------------------------------------------------
2002年   74兆0427億円 19.1
2003年   42兆8982億円 11.0
2004年   29兆2680億円  7.5
2005年   42兆6549億円 11.0
2006年   40兆5673億円 10.4
2007年   30兆5814億円  7.9
2008年   42兆4514億円 10.9
2009年   22兆2863億円  5.7
2010年   20兆9535億円  5.4
2011年   15兆7026億円  4.0
2012年    1兆6262億円  0.4
2013年    1兆0193億円  0.2
2014年    1兆5340億円  0.4
2015年    4兆8436億円  1.2
2016年    2兆1937億円  0.6
2017年    2兆3989億円  0.6
2018年    1兆7980億円  0.5
2019年    2兆7918億円  0.7
2020年    1兆1469億円  0.3
2021年
2022年
2023年
2024年
2025年
2026年
2027年
2028年      4994億円  0.1
2028年      6997億円  0.2
2028年      3019億円  0.1
====================================================
合計     388兆4570億円 


この償還表を見れば、“普通”、「そうかそうか、国債問題も、あと30年もしないうちに解決するんじゃないか。それどころか、あと10年で実質終わったも同然じゃないか」と考えるだろう。

2002年度の74兆0427億円といえば、予算の90%を超える金額である。
まさか、今年度の予算を国債償還にぶち込むとは思えない。

それは正解で、2002年度の国債償還費は5兆8329億円しか計上されていない。
では、74兆0427億円という償還金額はどこから出てきたかというと、2002年度に発行する借換債69兆6156億円と02年度の国債償還費5兆8329億円を合計した金額のようなのである。
4千億円ほど差が出てぴったりとは一致しないが、それは他の“用途”に使われるものと思われる。
こういう謎解きをしないとわからないほど、償還表には説明が付加されていない。

借換債は、過去に発行した国債の“差し替え”のためのものだから、それを償還したのだという理屈が成り立たないわけではない。

しかし、それによって、388兆4570億円から償還した74兆427億円を差し引いた309兆9872億円が残高になるわけではなく、それに69兆6156億円を足した金額384兆299億円が残高になるのである。借換債にも当然のように利払いが必要である。
(新規国債が30兆円発行されれば、残高は414兆299億円になるが、それは不問に付す)

財務省官僚は、“強弁”すれば償還と言えるかもしれないものを、償還プランとして出しているのである。
そう非難すれば、財務省の官僚は、「2002年度中にはきちんと2003年度以降の償還表を提示します」と平然と言ってのけるだろう。

400兆円を60年間で返済(これを償還と考えるべき)すると考えれば、毎年6.6兆円を償還しなければならない。(60年後以前に償還しなければならないものも400兆円に含まれているがここでは省略する。本格的な国債発行は75年以降で、20兆円を超すような国債発行はここ8年のことだから、今後20、30年間の話としては通用するだろう)

2002年度の償還費は5兆8329億円だから、それを満たしていない。
そして、これからしばらく30兆円の新規国債発行が行われるのであれば、翌年から毎年0.5兆円ずつ償還費が上積みされていくことになる。

      必要償還費
=========================
03年度: 7.1兆円
04年度: 7.6兆円
05年度: 8.1兆円
06年度: 8.6兆円
07年度: 9.1兆円
08年度: 9.6兆円
09年度:10.1兆円
10年度:10.6兆円
11年度:11.1兆円
12年度:11.6兆円

そして、これに利払い費が加わることで国債費となる。

2002年度の利払い費は9.6兆円であり、これは2.4%程度の利子率に相当する。このまま低金利(国債表面金利が1.5%程度)が続けば、加重平均の利子率は下がっていくことになるが、元本(国債残高)が増加していくので、12年度まで平均9兆円程度の利払いが続くと考えることにする。

税収が増収しなくとも安定的に推移すれば何とか対処できるかも知れないが、「デフレ不況」が続けば、20兆円という国債費はずっしりとした負担になる。
新規国債は30兆円という条件で税収が40兆円であれば予算総額は70兆円になるが、20兆円は28.6%という構成比になる。

これは、一般歳出及び特別歳出に使える金額が50兆円であることを意味し、今年の60兆円に較べると10兆円減少することになる。
10兆円は、対GDP比で2%である。乗数効果が1と考えても、景気状況が変わらなければ、このためにGDPが10兆円減少することになる。
それは、消費税・法人税の減収をもたらすことになるだろう。

ちなみに、税収が35兆円(84年度水準)になれば、一般歳出及び特別歳出に使える金額は45兆円で今年度よりも15兆円減少し、国債費率も30.8%となる。

(10年後は、高齢化がさらに進み、このまま「デフレ不況」が続いてると言う想定なので失業者や生活保護世帯の増大により社会保障費がずっと増えている可能性が高い。そして、その時点では経常収支も赤字になっていると予測できる)


新規発行分30兆円というタガがはまり、国債費も予測可能という現実のなかでは、税収動向に国債問題のすべてがかかっていると言えるだろう。

税収額が不変であっても、国債費の増大により一般歳出及び特別歳出に使える金額が減少し、GDPを押し下げることも重要である。
GDPの減少は、消費税税収を直撃し、法人税や所得税にも影響を与える。

今後、国債費の増大が真水の財政支出を減少させることでGDPを減少させ、それにより税収額も減少し、さらに真水の財政支出を減少させていくという悪循環に陥る可能性が濃厚だと言わざるを得ないのである。

これは、1%デフレで実質経済成長率が0%という想定を基にしたシナリオだから、デフレ率や経済成長率がさらに低下すれば、よりいっそう深刻な事態を迎えることになる。

また、選挙の洗礼を受けなければならない政治家が、刹那主義的な景気浮揚策として国債発行高の増加を実現すれば、翌年からの国債費増大につながっていく。
さらに、昨年度がそうなりそうだが、予算を下回る税収であれば、国債を発行しないとしても、何らかの政府借り入れでしのがなければならなくなる。

ここでの話の前提は、400兆円という国債残高であり、政府債務全体の700兆円ではない。
政府債務の57.1%を占める国債残高400兆円のみでさえ、悲劇的なシナリオになるのだから、700兆円を考えたらどうなるかは自明であろう。

(財務省官僚が国債償還に“命をかければ”、そのために日本の金融資産が総動員されることになる。国債以外の政府債務が急増大し、国債は償還され続けるが、日本経済は資金的に身動きできないという状況に陥ることになる。自己保身第一の財務省官僚は、平気でそのような策動を行うだろう)


前回は、「国守って、民なし」と書いたが、今回は、「国債守って、国民経済滅ぶ」とまとめておく。

===================================================================================
※ 1%のデフレが続いた場合のシミュレーションは次の書き込みを参照

『【国債問題への定量的アプローチ】その2:デフレ下とインフレ下での国債負担の差異』
http://www.asyura.com/2002/hasan10/msg/563.html


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