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山口副総裁的“デフレと生きる”−財政の役割と新しい物価理論に言及 東京 7月3日(ブルームバーグ) 投稿者 sanetomi 日時 2002 年 7 月 03 日 17:54:38:

 「1999年および2000年のように、一定の条件の下では、ごくマイルドな消費者物価の下落を伴いつつ経済が回復する実例は、近年においてもあった。少なくとも、デフレという点では、財・サービスの価格の下落より、資産価格、とりわけ地価の下落の方が経済活動にはるかに大きな影響を及ぼしたというのが私の印象だ」――。

  日本銀行の山口泰副総裁が3日、都内で講演し、自身のデフレ観を披露した。「昨年来のデフレに関する議論を振り返ると、重要な論点は、物価と景気の関係をどう理解するかということであるように思う。需要が不足し景気が悪化すれば、物価は下落することは言うまでもないが、物価の下落自体が原因となって景気の悪化を引き起こすことがあるかどうかが問題となる」――。

  山口副総裁はそのうえで「これは、物価の下落がいわゆるデフレ・スパイラルを誘発する可能性いかんという問題として、過去1、2年間活発に議論された。しかし、現実のデータに基づいて、こうした議論を冷静に振り返ってみると、デフレ・スパイラル論の想定するような世界は起きなかったように思う」と述べた。

             貨幣的現象か

  「わたしには、物価を出発点に景気の動向を考えるというより、物価は景気の結果であると捉えた方が良いように思われる。日銀エコノミスト諸氏の研究によれば、需給ギャップから得られる物価上昇率の推計値は、プラス・マイナス1%、計2%程度の幅をもってみる必要があり、ここには供給サイドの構造変化の影響から単純な指数作成技術によるフレに至るまで、諸々の要素が入り込んでいる」――。

  山口副総裁はさらに「近年『デフレは貨幣的現象だ』という議論が呪文のように唱えられている。米国のノーベル賞経済学者、フリードマンは米国貨幣史の研究を踏まえて、『インフレは貨幣的現象だ』と述べた。現在唱えられている『デフレは貨幣的現象だ』という議論は、このフリードマンの命題を援用しているのだと思う。しかし、インフレとデフレ、それも年1%程度の物価変動を『貨幣的現象』として同列に扱ってよいものか、疑問に思う」と述べた。

  「経済の大きな変化は後から振り返って見ると、なぜこのような変化を認識できなかったのかということが多いように思うが、渦中にあっては、変化に気づかないことがしばしば起こる。これはバブルの発生や崩壊についてもそうだし、情報通信技術の発達についても当てはまる。現在、中央銀行の間で関心を持たれている世界的な物価の下落傾向についても、後から振り返って見ると、この時期に大きな変化が起きていたという可能性も否定できない」――。

             現実的な対応を

  山口副総裁はそのうえで「昨年末時点での消費者物価上昇率をみると、東アジアにおいて、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、中国がマイナスを記録している。また、G7(先進7カ国)諸国をみても、2カ国を除いてすべてが2%以下の低い上昇率になっている。こうした傾向は、卸売物価や生産者物価の上昇率をみると一段と顕著だ」と指摘。

  さらに「昨年末時点での卸売物価の前年比をみると、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、中国、韓国といった国がマイナスを記録しているほか、G7諸国でも、カナダとドイツを除いてすべてがマイナスになっています。このような動きは多分に循環的な景気の弱さを反映していると思うが、それだけでは説明しきれない要因も働いているのかもしれない」と述べた。

  「わたしたちは、デフレにしても、ゼロ金利制約下の金融政策にしても、長い間経験したことのないような事態に直面している。このような場合、中央銀行家に必要なことは、現在利用可能な経済理論や過去の内外の歴史に関心を払いながら、しかし、決してドグマティックになることなく、現実に直面している事実をよく見つめ、そこから原因や解決策を考えていくというプラグマティックなアプローチをとることではないかとの思いを強くしている」――。

            新しい物価理論

  山口副総裁は「現在、日本経済にとって差し迫った大きな問題は、供給能力に比較して需要が不足していることだ。従って、まず何よりも需要を増加させ、需給ギャップを縮小させ、潜在成長率並みの経済成長率を実現することが課題になる」と指摘。そのうえで「金融政策がゼロ金利制約に直面している状況の下では、理論的には、財政政策が果たす役割が存在することも認識されている」と述べた。

  この理論とは恐らく、日銀で静かなブームになっている“物価水準の財政理論”【デフレと生きる(22)新しい物価理論で日本を読み解く(5月28日配信)を参照】を念頭に置いていると思われる。山口副総裁は「一般政府債務の対GDP(国内総生産)比は140%近くに達しているが、国債発行で調達した資金が需要創出という観点から有効に使われる場合、需要増加とそれに伴う所得や生産の増加から、最終的には政府債務の対GDP比は低下する可能性がある」と指摘した。

  “金利重視派”と目される山口副総裁。この日の講演でも、量的緩和が実体経済に働きかける効果について、懐疑的な見方がにじみ出ていた。しかし、昨年3月に量的緩和に踏み切った後、10月と11月の講演で懐疑論を繰り返しながら、結局、なし崩し的に量的緩和の拡大に追い込まれたのはつい最近のこと。景気の動向次第では、金利重視派が再び劣勢に追い込まれる可能性も小さくなさそうだ。

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