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国内公募債のデフォルト事例のなかでは過去最大規模とも言われる破たん劇を昨年９月に演じたマイカルをめぐり、社債配当率やその弁済時期に注目が集まっている。市場関係者によると、未償還分の社債が約３５００億円にものぼる規模であっただけに、デフォルト債として姿こそ変えたものの、いまだにマーケットで流通、５円程度で売買が行われている、という。果たして５円を安いとみるか高いとみるか、そのカギはひとえに配当率が握っているとされるが、直近で再生計画案を提出した寿屋のケースをみる限り、予想される配当率よりも相当低いものとなる可能性が指摘されている。
「マイカル債は３円─６円程度の気配が立っており、５円程度で実質的に売買されているもようだ。破たんした社債ながらも、流動性が全くない訳ではなく、それなりに取引が成立する流動性がある」（外資系証券）というように、昨年９月に破たんし１２月３１日に会社更正法手続き開始が決定したマイカルの社債がいまだに取引されている。
破たん後もマーケットである程度の流動性を持って売買される社債は、マイカル債が初のケースではないが、「これまで破たんした企業の社債発行残高はせいぜい２００億円─３００億円といったレベルで、マーケットに表立って出てくることもなかった。しかし、マイカル債は３０００億円超と圧倒的に規模が大きいこともあり、マーケットでの流通はいまだに行われている。破たんしてしまった企業の債券という意味ではジャンク債という定義には当てはまらず、デフォルト債という格好で流通している状態だ」（ドイツ証券・クレジット調査部長の島義夫氏）という。
既に破たんした企業の社債であるために、５円程度という価格に対する評価は社債配当率の見込みによるところが大きいとされている。
こうしたなか、昨年１２月に民事再生法を申請し事実上、倒産した熊本の中堅スーパー寿屋が、熊本地裁に提出した再生計画案が１６日明らかになったが、担保権のない一般債権者に対して返還される割合、いわゆる配当率の低さが目立つ格好になった。
ゴールドマン・サックス証券・金融戦略部クレジットリサーチ部長の三浦毅司氏は、再生計画案で示された一般債権者に対する平均配当率が、０．６６％と低いことを踏まえ、「事業が継続できない場合、配当率が極めて低い場合があるということが証明されたケースだ。過去の事例では、一般債権について１０％以上の配当率が決定されたものもあるが、昨今は倒産が増加、事業の継続が難しくなっている事例も増えており、そうしたケースでは一般債権者に対する配当率は低くなる可能性がある」と指摘したうえで、「近い業種の直近のケースが参考とされる事例が多いこともあり、寿屋の計画案がマイカルの更正計画に影響を与える可能性がある」と述べる。
また、三浦氏は、現在５円程度とされるマイカル債の価格については、「将来的な配当率１０％─１５％を見込んだうえで現在価値に割り引くと、５円程度と算出することもできる。ただ、先に述べたように、マイカルの場合も資産価値に乏しいことから、一般債権者の配当率が予想よりも低くなる可能性があるだろう」という。
東京三菱証券・投資戦略部チーフクレジットアナリストの三島拓哉氏も、マイカルに限らず大手小売業の多くは、土地を賃借しているケースが多いとしたうえで、「市場価値のある資産をほとんど保有していないとみられ、資産処分による弁済資金の確保が難しい状況だとみられる。また、問題が長引いた企業が最近になって破たんする事例が増えたことから、このところ配当率が低下傾向にあることも事実だ」と述べ、マイカルのケースでも、低く配当率を見積もることが賢明だと指摘する。
そのうえで、三島氏は、「配当率１０％─１５％程度という水準は、過去の平均的な水準であることから、平均的な水準を見込んで５円程度と社債の価値が算出されているとすれば、割高感があるといえるのではないか」と述べるとともに、東京三菱証券では、配当率７％程度までを視野にやや低めの予想を行っている。
５円を割高とする声が聞かれるなか、ドイツ証券の島氏は、「相対取引の値段であって、実勢水準はつかみかねるが、５円や６円程度とすれば、コール・オプション的な感覚で買いが入っても不思議ではない」と指摘する。
島氏は、一般債権者への配当率が相対的に低い点については、既に過去の事例で経験済みとも語っているが、果たしてマイカル社債の配当率がどの程度の水準で落ち着くのか、社債保有者にとってはその弁済時期と合わせて気がかりなところだ。
マイカルによると、配当率を含めた更正計画案について、「今年１２月３１日の提出期限に向けて作成中」（広報）という。
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