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日本企業が「不平等契約」で占領されていく 投稿者 小耳 日時 2002 年 8 月 22 日 18:46:30:

特集:景気は決して良くならない  
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日本企業が「不平等契約」で占領されていく
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日産、西友、大成火災・・・手玉に取られた現場報告
 ジャーナリスト 有森 隆 月刊「現代」2002 9月号より
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 フィリップ・トルシエとカルロス・ゴーン。日本にはフランス人の“救世主”が二人いた。ワールドカップの決勝トーナメント進出を果たした日本代表監督と、経営危機に陥った日産自動車を再建させた社長である。ともに、“奇跡”をもたらしたとして“救世主”尊称が奉られている。
 40歳代後半(トルシエ47歳、ゴーン48歳)の「お雇いフランス人」の二人には共通点がある。活躍の場を求めて世界を股に掛ける国際人であること。そして、日本的な常識を覆し、自己の信念を貫くためには軋轢を気にしない独裁者であることだ。
 トルシエはサッカークラブの監督としてモロッコやナイジェリアなどアフリカの国々を転々と渡り歩き、ついたニックネームが、「白い呪術師」。対するゴーンは南米や北米でタイヤメーカーの現地法人社長として辣腕を振るい、異名は「コストカッター」。二人とも行く先々で反発を食らったが、日本の地で、部下に絶対服従を求めて、大成功を収めた。
 なぜ成功したのか?ここが非常に重要です。
「日本人は元々従順だが、マッカーサーのような独裁者の前では、さらに一段と従順になる」----この日本人の国民性が二人の成功を導き出した、といっても過言ではあるまい。

【火星人がやってきた】カルロス・ゴーン

「私はルノーのために日本に来たのではない。日産のために来た」、1999年6月、株主総会でCOO(最高執行責任者)として迎えられたゴーンは壇上に上がり、特訓中の日本語で二分間、スピーチをした。五カ国語を自由に操るゴーンにとって、日本語は六ヶ国語めの挑戦だった。
 ゴーンは1954年にブラジルでレバノン系の移民の子地して生まれた。父母の国レバノンで幼少年時代を過ごした後、高等教育を受けるためにフランスに移住、二つの理工系エリート養成学校で学んだ。1978年に仏大手タイヤメーカー、ミシュランに入社。30歳でブラジルミシュランのCOO、35歳で北米ミシュランのCEO(最高経営責任者)に就任する。
 1996年には、民営化した仏自動車メーカー、ルノーのルイ・シュバイツアー会長から上席副社長にスカウトされる。赤字に陥った’ルノー再建を託されたもので、ゴーン42歳の転身だった。
 この時、フランスの新聞は一斉に「火星人がやってきた」と書いた。仏政府が筆頭株主で、経営トップも官僚出身者が占めてきたルノーに、異色な人物がやってきたからだ。
 ベルギー工場の閉鎖や部品の一括購入のリストラで、約170億フラン(約3000億円)のコストを削減し、「コストカッター」の名を轟かせた。

【不平等な提携】日産とルノー

 日産でもルノー時代とまったく同じ手法を、さらに効率的に行ったといっていい。
 日本の自動車メーカーは、部品メーカーに出資して系列下に置き、一心同体の経営を行ってきた。部品の品質の悪化や、供給の遅れ、他メーカーへの技術漏洩を恐れて囲い込んだのだ。 
 ところがゴーンは系列を破壊した。おれまでタブーだった系列外取引をどんどん増やし、購入部品のコストを大幅に引き下げた。もろもろの「しがらみ」を断ち切ったゴーン流のこうした改革で、日産はV字型の業績回復をやってのける。2002年3月期の連結純利益は3723億円。二期連続で最高益を更新した。
 ゴーン株は上昇の一途だ。もっとも外から見ればいいことずくめだが、「円安による為替差益と人減らし、資産の切り売りによる合理化効果で最高益を達成しただけ」(外資系証券会社のアナリスト)という辛口の見方もある。
  ダグラス・マッカーサーさながらに日産に乗り込んできたゴーンを、困り果てた庶民に救済の手を差し伸べる“白馬の騎士”と考えたら大間違いだ。この大物助っ人はビジネスの論理に基づき、きちんと見返りを要求する。
 日産は2002年3月、仏ルノーに金融子会社の日産ファイナンスを通じて、19億400万ユーロ(約2175億円)を出資した。続いて5月、2億6140万ユーロ(約300億円)を追加出資して、対ルノーの出資比率を15%とした。これはフランス政府に続く第二位の大株主で、ルノーとの提携関係が「救済」から相互出資による「対等な立場」に進化したと言うのが、日産ゴーンの謳い文句だ。だが、これははなはだ疑問なのだ。
 「極言するなら、この資本関係は、ルノーを利するだけ。日産にはほとんどメリットがない。というのは、日産が取得する株式には議決権がないからです。議決権のない株式を引き受けて、いざという時にどうするんです?」
 こういって外資系の証券アナリストはあきれる。ルノーは金を出し、日産の経営にも口を出す。一方、日産は金を出すだけで、ルノーの経営には一切口をはさまない。いや、はさめないのだ。こうした不平等な取り決めに異議を唱えない日産の日本人の役員たちは、独裁者ゴーンの前にひれ伏す従順な下僕でしかない。
 ルノーが日産を支配するようになったのは、1999年3月にルノーが日産グループに6430億円を出資、日産本体の36.8%の株式を握り、筆頭株主なった時からだ。日産が議決権のない株主取得を見返りに2475億円を出資したことで、ルノーは投資額の四割弱を回収できたことになる。
 さらに、日産は2001年3月期決算から一株当たり年7円の配当を復活。ルノーは100億円強の配当を受け取った。社内保留より株主配当を優先するのが外資系の流儀で、2002年同期は同8円配当と、さらに1円増配した。日産はルノーにとって、“金になる木”に大化けした。
 こんなに大きなお土産を持って、ゴールは凱旋し、2005年4月には、仏ルノーのナンバーワンであるCEOに就任する予定だ。日産の社長兼CEOも兼務する腹づもりで、ゴーンにとって、“両手に花”だ。
 
【年商28兆円の“怪物”】ウオールマート・ストアーズ

 1989年から90年にかけてのバブルの時代。日本企業によるアメリカ買いの嵐が吹き荒れた。が、それも今や昔の話である。「失われた10年」を経た今日では、外資による日本外が猛威を振るっている。
 日本経済新聞社の調査によると、1999年のリップルウッド・ホールディングスによる日本長期信用銀行(現・新生銀行)の買収以降の三年間に、外資による投資目的の日本企業の買収は約160件、買収金額は1兆円に迫るという。中でも日本企業買いの主戦場となったのが流通業界だ。
 2002年3月、世界最大の小売業、ウオールマート・ストアーズが西友・住友商事と提携して念願の日本上陸を果たした。「包括提携」と銘打ってはいるが、実態はウオールマートによる国内第四位のスーパー、西友の買収だ。
 ウオールマートは先ず、5月に60億円を出資した。これだけでは西友株式の6.1%を手に入れたことにしかならないが、2007年12月末までに66.7%に出資比率を引き上げる事ができる「新株予約権」が与えられている。ウオールマートは今後五年をかけて、2500億円を投下するが、驚くなかれ、この金額は同社のわずか四日分の売上に過ぎないのだ。
 モンスター(怪物)、ウオールマートの年商は28兆円、従業員は138万人、米国の食品スーパーの成長の半分を占めているワールドワイドの「勝ち組」だ。
 米南部アーカンソー州ベントンビル。人口1万5000人に満たない田舎町にウオールマートの本社はある。質素な作りの社屋と小さな社長室に、初めて訪れた人々は驚くという。
 この質素さは創業者の故サム・ウオルトン(92年4月に死去。享年74歳)から受け継がれた社風だ。
 ウオルトンは典型的なアメリカンドリームの体現者だ。戦後の1945年、27歳でベントンビルに小さな雑貨店を開き、1962年に同州ロジャースにディスカウントストア「ウオールマート」を創業した。衣料品、家庭用品など日常生活に必要な22の商品群を、低所得層向けに、どこよりも安い価格で提供するという基本戦略で地方の中小都市に進出、小さな商圏で圧倒的なシェア(市場占有率)を占めていく手法で、次々とチェーン展開していった。
 1980年代に入ると米国の製造業が衰退。大規模な人員整理が行われた。その結果、所得の二極化がさらに進み、低所得層が拡大した。ウオールマートは、こうした低所得層の消費者心理を掴み、大躍進する。そして、1990年にはついにシアーズ・ローバックを抜いて小売業全米第一位に輝いた。今では石油メジャーのエクソンをも抜き、売上高で世界最大の企業となっている。

【「法的措置」の可能性も】・・・外資系の常套手段

 世界最大の小売業になった後も、ウオルトンは片田舎のベントンビルから本社を移さなかった。彼は自分の店で売っている1万円にも満たないジャケットと、数千円のスラックスを身に着けて働いたという。マイカーは中古の小型トラック。飛行機はエコノミークラス専門。呼吸者に乗っていた役員を「こんないい車に乗るべきではない。人間は謙虚さが必要だ」と叱ったという有名なエピソードも残っている。
 こうした数々の神話に彩られた「ウオルマート日本上陸」の水先案内人になったのが、西友の筆頭株主である住友商事の副社長(02年6月末に退任)、和田文男だ。関係者は内情をこう語る。
 「西友とウオルマートの交渉が始まったのは昨年9月からだが、当初は難航した。ウオルマートが6000億円にものぼる西友の連結有利子負債を懸念したからだ。西友を売却したい和田副社長は、そこでウオルマートに「西友への出資を段階的に引き上げてはどうか」と提案した。西友のリストラの進捗状況をにらみながら、段階的に出資するのならばウオルマートのリスク負担は少なくて済む。この提案でウオルマートは日本に出る気になった。西友と提携したと言うより、住友商事を日本進出のパートナーに指名したのです。」
 ウオルマートと住友商事が共同で作業委員会を作り、「西友以外のスーパーの買収・提携を検討する」(大手流通企業のトップ)という衝撃的な情報もある。
 提携条件に段階的な出資比率アップを取り入れたことで、ウオルマートはフリーハンドになった。西友への支配権を着実に引き上げることも出来るし、もし、西友の将来性に見切りを付けたのであれば、手を引くことも可能だ。いかようにも料理できるのである。
 ウオルマートが西友に60億円出資したのは「日本市場へのツバつけ料」の意味合いが強い。今年末に500億円を振り込んで出資比率を33.4%に引き上げるかどうかで、ウオルマートの本気度を計ることができよう。
 別の大手流通企業の社長はこう指摘する。
「西友の過剰債務解消のメドが立たない限り、ウオルマートは丸抱えする事はないだろう。ただし、過剰債務を削減するには民事再生法で借金を棒引きすると言う手もある。こうすればもっと安く買える。法的措置をとる可能性を排除する事はできない」
 会社をいったん潰してから買い取るのは外資系の常套手段だ。新株予約権という、いわば生殺与奪権を与えてしまった西友は、今後ウオルマートの掌の上で手荒く転がされることになる。
 

【ハゲタカとプリンス】

 現在、「日本買い」の先頭に立っているのが、いまやすっかり有名となった米投資会社のリップルウッド・ホールディングスだ。同社には経営不振の日本企業を次々と買収してきた。経営のプロを送り込み、リストラで企業価値を高めた上で売り払い、巨額の売却益を得る。破綻した企業を食い漁ることから「ハゲタカファンド」と呼ばれる。
 6月に入り、リップルウッドによる自動車金型メーカーの最大手、オギハラ(群馬県太田市)の買収説が浮上してきました。創業者一族が持つ全株を買い取る方向で交渉中で、買収額は50億円から100億円の間と見られている。
 オギハラは戦前の中島飛行機の流れを汲み、独メルセデス・ベンツや英ジャガーなど世界の高級車のボディ用金型を数多く手掛けてきた。職人芸による精密な加工技術は世界の自動車メーカーから高い評価を受けている。
 それ程の優良企業が今回、売却を決断した背景には、米国での新規設備投資に必要な100億円の資金調達がうまくいかなかったことがある。
 リップルウッド傘下に入った後の同社の新社長には、かつてホンダの「プリンス」といわれた入交昭一郎の名が挙がる。入交は1993年にホンダを去った後、セガの副社長として「世紀の転身」を遂げ、話題を呼んだ。セガでは社長、副会長を務めたが、実績を上げることができず、2001年末にトップの座から石もて追われた。「ハゲタカファンド」と「ホンダの元プリンス」とは意外な組み合わせだが、外資系ファンドの関係者は次のようにうち明ける。
「投資ファンドは、その業界に通じたパートナーと一緒に投資先を絞り込む。リップルウッドは昨年、入交をパートナーに選び、自動車部品業界で投資先を選定した。その結果、最終ターゲットとして残ったのが、資金難のオギハラだった」
 買収に成功すれば、破綻した企業や赤字企業を買収してきたリップルウッドが、黒字の中堅・優良企業を日本で買収する初のケースになる。
 リップルウッドは1999年、日本長期信用銀行の買収で一躍名を挙げたCEOのティモシー・C・コリンズが、1995年にニューヨークで設立した新興の投資ファンドに過ぎない。日本では知名度が高いが、米国ではまったく無名だ。
 コリンズは大学卒業後、エンジンメーカーのカミングに入社、セールスの経験を積んだ後、転職、コンサルタント会社などで企業買収の手法を身につけ、オネックス社のニューヨーク支社長を最後に独立、そこで設立したのがリップルウッドである。
 

【「必ず勝つ」仕組み】

 投資ファンドの事情通は語る。
 「アメリカでは競争相手が多いため、コリンズは破綻ビジネスの処女地である日本市場に目を付けた。かき集めた投資資金39億ドル(約4700億円)の半分以上の22億ドル(約2600億円)を日本市場を対象としたファンドに注ぎ込んだ。つまり、日本がリップルウッドの主戦場になったわけだ」
 リップルウッドの日本進出の水先案内人を務めたのが三菱商事だ。リップルウッド会長のコリンズと三菱商事会長の槙原稔との交流は深くて濃い。三菱商事がリップルウッド本体に出資し、槙原は新生銀行の非常勤取締役に就任している。
 1999年9月、破綻して一時国有化された日本長期信用銀行(現・新生銀行)はリップルウッドを中核とする金融グループへ譲渡された。この長銀のM&A(企業の買収・合併)は、日本政府が外資に手玉にとられた典型的なケースといってよい。
 長銀破綻から譲渡されるまでに投入された公的資金の総額は6兆9500億円。その長銀をリップルウッドは、わずか10億円で手に入れた。その上、新たに国民の血税1200億円の“持参金”や「瑕疵担保特約」というオマケまでついた。
 瑕疵担保特約とは「譲渡後の三年以内に、引き継いだ債権が二割以上劣化した場合は、国が簿価で買い戻す」という条項だ。返品自由の特権である。取引先の企業が倒産しても、この特約を使えば、国が買い戻してくれるので損はでない。逆に、企業が立ち直って、貸した金を順調に回収できればすべて新生銀行の利益になる。リップルウッドが必ず勝つ仕組みになっているのだ。
 長銀のM&Aでは、外資系のプレーヤーはそろって濡れ手に粟で大金を手にした。中でも日本政府とフィナンシャル。アドバイザー契約を結んだ米ゴールド万・サックスは顰蹙ものだ。
 売り手側のアドバイザーとなったのだから、日本が有利になる条件で譲渡契約を結ぶのが義務なのに、ゴールドマン・サックスは日本に不利な瑕疵担保特約を認めた。しかもである。買い手側として交渉に臨み、新生銀行の取締役(非常勤)に就任したJ・クリストファー・フラワーズは、なんのことはないゴールドマン・サックスの元パートナーだった。完全な出来レースだ、と言う非難の声があがったが、「金融危機を回避するためには多少の犠牲(これが多少の犠牲なのか?)はやむを得ない」との政府高官の声にかき消されてしまった。
 破綻ビジネスの成功報酬は巨額だ。
 新生銀行は2000年3月期に、社外取締役の二人が経営するコンサツタント会社に合わせて22億2000万円の報酬を支払ったことが明らかになった。その社外取締役とは、リップルウッドのコリンズ会長と、そして買収交渉に臨んだフラワーズだ。長銀を買収した投資組合の中核メンバーで、それぞれ11億1000万円を手にした。
 破綻ビジネスの舞台裏は一攫千金を狙うマネーゲームだ。日本政府は海千山千の「ハゲタカファンド」の徹頭徹尾、手玉に取られてしまったのである。
 

【投資回収のテクニック】

 長銀買収後、鳴りを潜めていたリップルウッドが再び日本買いに姿を現したのは2001年4月だった。4月、5月の二ヶ月間に日本企業三社を立て続けに買収して、またも「リップル旋風」が吹き荒れた。
 4月4日、日産自動車系列の自動車部品メーカーnナイルス部品(東京・大田区)の経営権を取得。続いて5月9日には、日立製作所系の「DENON」ブランドの音響機器メーカー、日本コロムビアを傘下におさめた。コロムビアは美空ひばりなど演歌の大御所を擁し、一世を風靡した日本最古のレコード会社でもある。さらに11日、会社更生法を申し立てていた大型リゾート施設「シーガイア」を運営するフェニックスリゾート(宮崎市)など三社の事業を引き継ぐことになった。買収価格は162億円。2000億円余を投じた東洋有数のリゾート施設を10分の一以下の値段で手に入れたわけだ。
 日本コロムビアの買収では、リップルウッドは短期間で元を取った。その手品の種明かしをする。
 先ず、累積赤字に見合う41億円の第三者割当増資を実施して日立が引き受ける。次に、ハード部門を全額出資の新会社「デノン」に分離して、コロムビア本体は音楽ソフト部門に特化。コロムビア本体が発行する優先株50億円をリップルウッドが引き受けて、41.7%の筆頭株主になる。リップルウッドはさらに、新会社「デノン」の株式98%も59億円で買い取り傘下に収めた。買収価格は合わせて109億円である。 
 この買収のキーワードは“優先株”にある。リップルウッドが破格の条件で優先株を引き受けたのだ。上場している普通株に転換できるこの優先株の転換価格は一株(額面50円)わずか65円だった。
「日本コロムビアはリップルウッドからの50億円と、日立が手切金代わりに、持っている債権を株式に置き換えた41億円、合計91億円を投じて資本を増強、この結果、財務内容が大幅に改善された。この再建策を発表した直後にコロムビア株は急騰し、一時204円に跳ね上がった。リップルウッドは労せずして100億円以上の含み益を手にした計算だ。買収価格109億円の元はあっという間に取った」(証券アナリスト)
 破綻ビジネスはマネーゲームに長けた金融のプロたちの独壇場である。
 
【ノー天気な経営者】

 外資系の蹂躙を許す原因は、契約に対する日本側お甘さにある。日産はルノーの議決権のない株を持たせレ、西友は新株予約権でウオールマートにフリーハンドを与えた。新生銀行に至っては、どう転んでも負けない仕組みを作り上げ、現在までずっと収奪のし放題だ。
 日本側の甘さがもっとも露呈した「極めつけ」は大成火災海上保険の経営破綻である。同社は2001年11月、398億円の債務超過に陥り(最終的な債務超過額は破綻時の2.4倍の950億円に膨らんだ)、保険会社版の会社更生法にあたる更生特例法を申し立て倒産した。破綻の引き金になったのは744億円(最終的には1300億円)の巨額損失の発生だった。
 当初、その原因は「米国同時多発テロによる保険金の支払い」にあると説明されていたが、損失のうちテロによる保険金の支払いは半分以下の272億円。やがて損失の本当の原因は、航空保険を主な対象とした「金融再保険」と呼ばれる契約そのものにあったことが徐々に分かってきた。
 金融再保険では大成火災のほかに日産火災海上保険が1288億円、あいおい損害保険が1387億円(決算上の負債額は1064億円)の巨額の損失を計上した。この三社が再保険契約を結んでいたのは、米国のフォートレスト・リー( F R 社、ノースカロライナ州)だった。
 本来の再保険とは、元受け保険会社が顧客から預かった保険料の一部を他の保険会社に支払い、保険金の支払いリスクを軽減する仕組みで、一般的に行われている。だが、F R 社が取り仕切っていた「金融再保険」は、これとは異なるハイリスクなものだった。
 F R 社の金融再保険は、通常の再保険とは異なりリスクを軽減するものではない。つまり、再保険をかけた保険会社から保険金は支払われるが、そのカネは元受け会社(今回のケースでは日本の損保三社)が、五年分割で利子を上乗せして返さなければならない仕組みだったのだ。
 三社の最大の問題点は、F R 社に取引内容を任せきりにしていたことだ。同社から取引一件当たりの正味保有額が示されるだけで、引き受け総額や件数、種目、引き受け形態などについては、まったく開示義務のない契約だったとされる。取引内容は一切知らされないまま、保険金の支払いを肩代わりしていたのである。
 取引開始は1972年からというから、三十年間痛い目に遭わなかったので信用していたのかもしれないが、これではリスク管理能力はゼロに等しい。こういう会社の経営者を“ノー天気のお人好し”と言うのだ。
 大成火災海上保険の場合はF R 社との委託契約は打ちきったものの、海外からの保険金の支払い請求額が1000億円を超えることになりそうなため、金融再保険の契約分は英領バミューダに作る再保険専門会社に移すことにした。
 日本損害保険協会の植村裕之会長(三井住友海上火災保険会長)は記者会見で、大成火災の破綻を招いた金融再保険取引について「異例で特殊な契約と言わざるを得ない」と述べた。
 問題のF R 社は、経営者のM・サバとその妻、娘で株式の66%を保有する個人経営の同族会社で、契約した保険会社からの手数料収入を主な収入源としているために、いくつ損害保険会社が潰れようが、一切、損失はでないという。F R 社と最後まで契約していたのは日本勢だけで、ババをつかむのは、日本の損保だけだったという構図だ。
 
【負け続ける理由】

 害時化に手玉に取られ、敗走を続ける日本企業。バブルの後遺症に押し潰された官僚主導型の和製資本主義が機能不全に陥ったことと、外資による攻勢は表裏一体にある。こうした閉塞状況を打破するために市場原理主義が声高に唱えられるようになったのも当然の流れだった。
「とにかく不良債権の抜本処理だ。不良債権が消えれば、日本経済は再生する」といロジックである。この市場原理主義(言い換えれば株式市場至上主義)に乗って「改革」を叫んだ結果、経済は一段と失速した。北海道拓殖銀行、山一証券を潰し、長銀、日本債券信用銀行を潰してみたものの、不良債権は積み上がるばかりだ。日本経済は良くなるどころか悪化の一途をたどり、転換をはたせないまま、立ち往生を続けている。
 その混沌=カオスのなかにビジネスチャンスを見いだしたのが外資系のハゲタカファンドだった。
 これは「第二の敗戦」などという生易しいものではないのだ。大競争時代の世界制覇の局面で、日産自動車、三菱自動車工業、マツダ、いすず自動車といった完成車メーカーまでが軒並み外資の手に落ちた。考えてみれば銀行から基幹産業まで総嘗めにされてしまったのである。
 これは日本企業に資金力が劣っているのが原因とは思えない。金融技術と一体になった契約社会の裏(落とし穴)に疎いことが、大きく立ち遅れる原因になっているのではないか。
 日本が乗っ取られる、危機寸前にある。

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