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【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:まとめ 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 06 日 22:05:36:

【世界経済を認識する基礎】という、無味乾燥の部分も多く経済原論的でありながら体系的とは言えないまとまりのない拙文におつきあいいただいたみなさんに心より感謝申し上げます。

投資情報を効率よく入手する目的であったり、日本経済の回復を真摯に願う立場であったり、日本経済や世界経済の“瓦解”過程を高みで見物しながらなんとか生き残りを図ろうとする立場であったりなど、★阿修羅♪サイトは、様々な思いを持つ人が集っていることに特徴があり、自分自身の立場をどこかとは違って節度ある文章で投稿されていることに居心地の良さを感じています。

投稿している身としてアクセスカウンターは気になりますので、このような固い投稿にいずれも300を超えるアクセスをいただいたことが、何より持続力の支えになりました。
(100人ほどの方に継続してお読みいただければという思いで書き始めましたので、望外の喜びを感じています)

レスをいただくことで不十分な説明や概念化を自覚することができ、その後の思考過程にたいへん役立ちました。(金価格問題のレスに茶々を入れたせいなのか、意義のない内容だったせいなのか、それ以降レスをほとんどいただけなかったことが心残りです)

今回書いた内容の基礎的な考えは30年ほど前から持っていましたが、こうして文章化したのは初めてで、文章化する過程とレスを読む過程で自分の思考の曖昧さが是正されていくことを痛感させられました。

もう一度書き改めれば既述のものとはだいぶ違った論述になるのではと思っていますが、基礎論理や根幹の見方が変わったわけではないので、明瞭になった論理を基に別のテーマの投稿に反映させたほうがいいかなと思っています。


経済事象は論理体系として記述できるとしても、自然現象ではなく経済主体及び国家の主体的活動の有機的連関として形成されるものですから、日本経済や世界経済が今後どうなっていくかは“神のみぞ知る”だと考えています。
しかし、連載で書いてきた経済論理は貫徹すると確信しています。
重大な経済変動が起きたときに連載内容を再読していただければ何らかのお役に立つのではと思っています。

経済原論よりももっと抽象的で無味乾燥な認識論(哲学)について書きたいという思いもありますが、しばらく様子を見ようと考えています。

社会科学(認識)と自然科学(認識)の両方の基礎になるのは、哲学だと思っています。
このサイトでも日本の教育問題が論議されていますが、日本の教育カリキュラムで欠落しているのは、対象を認識するとはどういうことなのかという哲学領域の教育だと思っています。(フランス風の自己目的化した哲学教育が良いとは思っていませんが...)

哲学と概念化思考力(論理学)が基盤化されていれば、各分野の知識(テクニカルターム)を得ることで体系的な認識と合目的的な活動が可能になります。
(知識の集積だけではすぐに限界にぶつかりますし、知識依存ですと別の分野に移ると理解しにくいという知的状況を生み出します)

自身の哲学的立場は、ヒンドゥーで言われる“凡我一如”(アートマンとブラフマンの合一)やエルンスト・マッハの“感覚の哲学”に近いもので、認識(論)=存在(論)というものです。(唯物論や唯心論、主観や客観という対立項は無意味だと考えています)

日本人が抽象思考力を高めれば“鬼に金棒”で、学問世界でも諸外国を凌駕することができると考えています。
具体化思考力である技術と抽象化思考力である科学がバランスのいい両輪になることで日本は発展していくはずです。

哲学のさらに上位にあると思っているのが“目的意識”です。
何のために対象(世界)を認識するのかという問題です。これは、学問の領域にも関わることですが、それ以上に各人の生き様そのものに関わることだと思っています。

連載で書いてきた内容も、このような部分を読みとっていただければという思いを注いだつもりですが、とうてい巧くいったとは思えません。

書いてきた内容=論理が、みなさんが経済事象を見るときの一つの視点に加わることができれば何よりの幸せです。

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連載で書いてきたことを簡単にまとめて終わりにしたいと思います。


1)管理通貨制通貨の価値実体

管理通貨制の通貨は、金本位制のような財的な裏付けがなく、無価値のものである。

しかし、これは管理通貨制でより明瞭になっただけの話であり、金属貨幣でさえ、一般的交換手段として繰り返し使われることから、価値尺度としての正当性はあっても、価値実体としての危うさがつきまとっている。

通貨に価値実体があるのではなく、「労働価値」が転化される財に価値実体があり、「労働価値」の転化過程=財の生産過程が通貨によって購われているがゆえに通貨に価値が付与されている。
(これは、通貨に対する現実認識が転倒したものになっていることを意味する)


2)価値実体のない通貨が通貨として流通する根拠

他者の経済活動なくしては生存さえできないという社会的分業の稠密化と「労働価値」論理が、根源的には価格表示(「労働価値」尺度)機能しかない管理通貨制の通貨に対して一般的交換手段の機能を付与している。

管理通貨制の通貨は、価値実体がないことから本来的な蓄蔵手段としての機能を喪失しており、財の生産過程に投じられること(資本化)でのみ価値が保存される。

管理通貨制の通貨は、社会的分業が稠密なものになれば、価格表示機能を持つペーパーマネーで事足りることを証明した。
通貨の通用性や信認性は、国家による強制力で維持されるわけではなく、経済社会構造に基づくものである。国家の強制力は、法定通貨の排他性を意味するだけである。


3)「労働価値」

「労働価値」は、“生産性”と類似的な概念だが、賃金の切り下げや価格支配力で達成できるものではなく、賃金や実質財価格が同じであっても、経済主体が得ることができる論理的利益を増加させるものである。
生産設備の改善などで同じ使用価値を内包する財を生産するために必要な労働力が減少することで「労働価値」は上昇する。
「労働価値」は、個別経済主体の取り組みの成果が産業連関的に波及することにより、国民経済の「労働価値」を上昇させる。

「労働価値」の上昇は、経済主体の利益源泉であると同時に、国民経済の平均的生活水準上昇の源泉である。


4)財の価格に対する通貨量と「労働価値」の規定性

通貨が「労働価値」の表象であることから、同一レベルの「労働価値」で通貨量が2倍になれば、財の価格は2倍になる。これは、通貨の価格表示機能が1/2になるという表現と等価である。

通貨量が2倍になっても通貨の価格表示機能が維持されたとしたら、就業者数・輸出入額・金融取引に滞留している通貨量が不変であるという条件付きで、国民経済の「労働価値」が2倍に高まったことを意味する。

財の論理価格は、「労働価値」の上昇ペースと通貨量の増加ペースの関数で基本的に規定される。

外国為替レートも、二つの国民経済の間の「労働価値」上昇ペースと通貨量の増加ペースで規定される国際競争財の価格変動差異によって基本的に規定される。


資本活動に投じられない通貨の増加や「労働価値」の上昇ペースを超えた通貨量の増加は、ハイパーインフレを招いたり、バブルの形成と崩壊に結びつく。
供給サイドの制約が強い発展途上国は前者のかたちに陥りやすく、資本化される範囲を超えた余剰通貨が多く存在する先進国は後者のかたちに陥りやすい。


5)国民経済の利益源泉は外部国民経済

個々の経済主体はともかく、国民経済にとっての利益は、経常収支の黒字(より言えば貿易収支の黒字)によって得られるもののみである。

外部国民経済から得る利益を産業連関的に再分配することで、国民経済の成長や平均的生活水準の上昇を実現することができる。

「労働価値」をいくら高めても、金融取引をどんなに派手に行っても、それらが国民経済内で完結するものであれば、国民経済として利益を得ることはできない。
(それで利益を得る経済主体があるとしても、国民経済内の経済主体間での通貨の移転でしかない)

「労働価値」が上昇しているにも関わらず、輸出の増加がなく、給与の上昇もなければ、財の価格は下落傾向を示し不況に陥る。
「労働価値」の上昇が産業連関的であると同様に、この経済事象も産業連関的に波及する。

通貨を意味あるかたちで増加させることができるのも、外部国民経済からの貿易収入及び所得収入であり、根源的には貿易収入である。
貿易収支の黒字増加は、国民経済を供給<需要という経済状況に置くことで、財価格の上昇と経済主体の利益をともに実現し、国民経済を成長させていく。

対GDPに占める輸出入の比率などで貿易収支を軽く見てはならない。
貿易収支の赤字はその国民経済の供給=資本が不足であることを、貿易収支の黒字はその国民経済の供給=資本が余剰であることを意味する。


6)供給=需要

閉じた国民経済を想定すればわかることだが、余剰通貨が存在しない限り、供給と需要は等しいものである。

供給を需要サイドから拡大するためには、一時的には余剰通貨を活用した赤字国債発行による財政支出によっても可能だが、持続的には輸出の増加を継続しなければならない。

(余剰通貨の活用が一時しのぎでしかないことは、純貯蓄を超えていると推定できる公的債務の積み上げでわかる。老人などの貯蓄に課税しても、需要の拡大に活かすことができず、公的債務の軽減にしか役立てられないところまできている)

需要サイドの拡大が期待できない状況では、供給の拡大を通じて需要を拡大しなければならない。
供給の拡大と言っても、通貨額ベースであり、財の物理量ベースではない。
より多くの資本を投じた生産過程を通じて同一量の財を供給することで、産業連関的に財の価格上昇=需要拡大をもたらす。
このような供給拡大を通じた需要拡大を実行できるのは、資本化していない余剰通貨を保有する優良経済主体や信用力や価格支配力を保持している大手経済主体である。

(一部の経済主体が踏み込み始めた賃下げは、個別経済主体の生き残り策としては理解できるが、「デフレ不況」をさらに深化させので、そのような策を採った個別経済主体にも打撃を与えることになる)


7)余剰通貨と余剰資本

資本化されない通貨が余剰通貨であり、生産活動に従事する人たちを超えて財を供給する資本が余剰資本である。

先進国の国民経済は、資本化されない余剰通貨の増加に悩まされている。これが、バブルの源泉であるとともに、失業者の増加やデフレ不況を引き起こしている。
(余剰通貨は潜在的資本であり、発展途上国で見られるような通貨=資本不足ではないので、対応策が採れる恵まれた条件とも言える)

貿易収支の黒字は、国民経済を超えて余剰資本があることを意味する。
一方、貿易収支の赤字は、国民経済が資本=供給不足にあることを意味する。

国民経済内の科学技術研究活動や社会保障政策なども余剰資本に負っているが、国民経済を超えた余剰資本があるかどうかが国民経済の強さを示す。

余剰通貨をどうやって資本化するか、“高齢化社会”でさらに必要となる余剰資本をどうやって拡大していくかが、先進国に共通課題として投げかけられている。


2)金融経済主体と産業経済主体の対立論理

自己資本比率が地を這っている日本の銀行は別だが、余剰通貨をたっぷり保有している銀行や金持ちは、保有通貨の価値が高まるデフレで打撃を受けないと考えがちである。
0%以下の金利はないから、デフレであれば確実に実質プラスの金利を得ることができる。

産業経済主体は、通貨形態の資本を財形態(労働力を含む)の資本に転化して生産活動を行いその成果である財を販売して元の通貨形態の資本にしなければならないことから、財の価格が下落していくデフレは忌み嫌う経済事象であり、通貨の資本化を抑制させてしまう。

このような金融経済主体と産業経済主体の間で見られる“資本の論理”の違いが、今後の世界経済の動向を規定する。

貸し出しを中心とした金融取引の利益の源泉は労働成果財の資本活動にあるから、長期化する「デフレ不況」は、金融経済主体の資本=通貨も劣化させていく。(金持ちが困ることはないが、余剰通貨は、保有通貨に見合う財の生産がない状況にあることを意味する)

「デフレ不況」で国民多数の生活水準が切り下げられる事態が続くと政治的に強引なデフレ解消策(=社会政策的財政支出の拡大)が採られる可能性が高く、この時点で、金融経済主体が保有する余剰通貨の価値が毀損されたことが明瞭になる。(供給=資本不足であったり「労働価値」を上昇させる力がない国民経済は、ハイパーインフレに陥ることになる)

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連載の内容は「論議・雑談」ボードにまとめて投稿しています。


1)『【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:基礎 〈その1〉』から〈その7〉までの前半部分。
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/903.html

2)『【世界経済を認識する基礎】 “あっしら”的経済概念の説明:「近代経済システム」における金利と物価の変動 〈その8〉 前半部』から〈その14〉までの後半部分。
http://www.asyura.com/2002/dispute2/msg/108.html


また、この連載を行う契機となった【世界経済のゆくえ】も参照していただければ幸いです。


『【世界経済のゆくえ】世界経済にとって70年代はどういう時代だったのか』
『【世界経済のゆくえ】経済支配層は70年代に何を考えたのか』
『【世界経済のゆくえ】80年代以降の金融資本的収穫を支える価値観と経済政策』
『【世界経済のゆくえ】日本経済が突きつけたマネタリズムへの“最後通牒”』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/787.html

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