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Ddogさんへのレス:「労働価値」の計測性や通貨について 投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 09 日 19:13:29:

『: あっしらさんへのレス:管理通貨および通貨について』( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/778.html )に対するレスです。
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Ddogさん、こんにちわ。


株価の共同幻想性については基本的に同意です。

>そもそも証券市場の成立する土台は、長期で大きな資本を必要とする企業と、短期で
>小口の資金しか提供できない投資家の調整市場が証券市場です。

上場時は既に株式との交換で通貨が集められた後の株式の放出ですから、創業者及び出資者が保有している一定割合の株式と余剰通貨を保有する多数の投資家の通貨の交換だと考えています。(その通貨が新たに資本化されるわけではなく、株式既保有者の懐にはいるという意味です)

証券(株式)市場が成立する土台は、株式というかたちに固定化されている資産を一般的交換手段である通貨に戻したいという人と通貨を株式に転換することで果実を得たり通貨の増加を図りたい人がいるからだと考えています。


>結論からいえば、我々の社会の枠組みが根本より変革されない限り、管理通貨制度は
>保たれる。また、それにとって変うるシステムが発明されていないし、通貨の本質か
>ら逃れられる通貨に代わる道具は存在しないだろう。

管理通貨制度の通貨は、これまでとは歴史を画する通貨の誕生だと考えています。
端的に言えば、供給過程さえ変われば、“労働証書”になってしまう通貨です。

管理通貨制の通貨は、たぶん、価格表示機能と交換手段に特化していくかたちでこれからも長く使われると予測しています。(価値蓄蔵手段は意義性が喪失していくと考えています)

私の仮説的通貨の起源については、次の書き込みをご参照ください。

『【経済学者のトンデモ理論】デフレーション・インフレーションそして通貨』
(デフレとインフレ:貨幣の成立) http://www.asyura.com/2002/bd17/msg/111.html
(金融家の登場) http://www.asyura.com/2002/bd17/msg/122.html
(金本位制と中央銀行) http://www.asyura.com/2002/bd17/msg/135.html
(戦後世界) http://www.asyura.com/2002/bd17/msg/151.html
(現在の世界) http://www.asyura.com/2002/bd17/msg/189.html


ほとんど人が通貨なしでは生存すらできないという経済社会は、「近代経済システム」の確立以後ですから、それ以前の通貨と近代の通貨は大きく性格が異なると思っています。
それは、経済学が成立できない経済社会か成立できる経済社会かの違いと考えてもらえばいいかなと思っています。


>あっしら氏の労働価値説へ多少批判になります。何度も疑問に感じるのは、ご説での
>労働価値は、計量化できないと思うからです。目に見えた尺度は存在しない概念です
>よネ。ですから通貨は労働価値と比例する考え方にはわからずでもないが釈然としな
>い部分です。

連載のなかでは曖昧にした点があったことを反省しています。

工業製品は機能や能力が更新され続け同じ効用を持つ財が継続的に生産されているわけではないので、単純には比較できません。(これは、価格そのものについても言えることです)

「労働価値」については、時代的普及機能を有するテレビ1台を製造するのに、どれだけの労働(時間×人)が必要なのかの差で計量することができると考えています。
ある時点で必要な労働が500で、5年後に必要な労働が100であれば、「労働価値」は5倍になったと言えます。(生産設備や原材料に投入されている労働量を含むものです)
この変動は、TVの需要量が一定であれば、TVの論理価格が1/5になることを意味します。TVの現実価格を1/5にしたくないのなら、生産量を減少するか、輸出を増加させるか、通貨量を増加させなければなりません。
(家電メーカーは、TVのパーソナル化による需要増加・別の効用を持つ新製品の開発・輸出の増加・TV生産量の減少などの政策で、この問題が利益と雇用者数を減らさないかたちで対応し、国民経済(通貨当局)は、通貨量の増加でこの問題に対応してきました)
「労働価値」は産業種別ででこぼこが生じますので、国民経済では、個別産業の「労働価値上昇」がそのまま価格変動として現象するわけではなく、労働価値の産業連関的な分配調整を経るかたちで表現されることになります。

例えば、TV生産の「労働価値」は5倍になっても、米生産の「労働価値」は2倍というように、財の種類によって「労働価値」の上昇ペースは異なります。

TV生産の「労働価値」が5倍になっても、通貨量が5倍になって国内需要に見合う台数が出荷されていれば、TVの価格は5年前と変わりません。
TV生産に従事する人の給与が4倍になっても、TV製造企業は5年前以上の利益を得ることができます。
このような変動に対し、国家が米価を3倍に引き上げると、「労働価値」の国民経済的分配を実現することができます。(ある時期までの米価政策は国民経済の均一的成長にとって有用性を持っていたと言えます)
TV生産に従事する人は、必需品である米の価格が3倍になっても、給与が4倍になっているので問題ありません。TVの価格は5年前と変わっていないので、TV生産従事者は、同じペースでTVや米を買っても、貯蓄を増やすだけではなく、他の利便財や快楽享受財に対する支出も増加できますから、他の分野も需要が増加していきます。
これにより、TV製造企業も利益を増加し、勤労者も実質所得が上昇し、農家も実質所得が上昇し、それらは支出する通貨の増加で他の分野も潤うことができます。
(米価は、通貨増加量5倍/労働価値2倍で2.5倍の価格に収まるはずどころか、財の性格から向けられる需要量がほとんど増加(現実にはパン食などで減少)しないのであまり価格が上昇しないはずです)

国民経済の平均的「労働価値」は、概念的に、金融取引・退蔵通貨・輸出入・就業者数を捨象すると、通貨量増加率/GDPデフレータ変動率で算定できます。

通貨量増加率が4倍でGDPデフレータ変動率がプラス2倍であれば、平均的「労働価値」の上昇は2倍になったことになります。
「労働価値」が上昇しないまま同じことをやれば、この値は1になり、たんなる物価上昇を引き起こすだけです。


>また、労働価値を高める条件として、外部国民経済から得る利益とされています。
>所謂貿易黒字ですが、戦後日本の日米間の関係で考えましょう。日本が得た貿易黒字
>は、蓄積労働価値の上昇分もありますが、(数字的資料は探しますが)何割かは資本
>として、米国に還流し、その分円高となった。円高になった分投資を行なった経済主
>体は円ベースでの損失となり、国民経済も損失したことにはならないのでしょうか。

「労働価値」の上昇が意味のある経済成長として具現されるためには、外部国民経済への財の輸出増加を達成しなければなりません。そうでない限り、「労働価値」の上昇は、財の価格下落を引き起こしたり、廃棄される財を生産してしまう恐れが高いからです。

うっかりだと思いますが、対外投資は、日本円→米ドルの交換を意味するので、円高要因ではなく円安要因になります。(日本が対米投資などの対外投資をしていなければ、経常収支の黒字がそのまま為替レートに反映し、もっと円高になったはずです)

対米投資を行った後に円高になると、それを行った個別経済主体は円ベースで損失を被ります。
しかし、通貨的“富”の過半が対米投資されていれば別ですが、国民経済が損失を受けたとは言えません。円を通貨としている国民経済ですから、円高は、自国通貨の国際的購買力が高まったことを意味するからです。
仮にですが、100兆円で米国の株式の1/10が買えるとしたら、円高により同じ100兆円で1/9が買えるようになります。

>資本が還流しない限り貿易黒字を伸ばすことはグローバル社会では許されず、米国へ
>資金還流していった事実を踏まえると、磐石に見える労働価値上昇説の弱点ではなか
>ろうか。

「労働価値」の上昇成果は、輸出増加に結びつかないとしても、別の手段で様々に活かせるという観点が重要です。(「労働価値」の上昇がなければ、採用できる政策が限られてしまうということでもあります)


極端に言えば、「労働価値」が5倍になることで、給与はそのままで物価が1/5になることでもかまわないのです。(これでは、超円高になったり、債務を抱えている企業の活力は失われてしまったり、ローンを抱えている個人も喘ぐことになりますが)

他にも、「労働価値」の上昇は同じ就業者数でも“余剰資本”が増加することを意味しますから、科学技術研究に人を投入したり、サービス業の従事者を増やしたり、リタイアした人に通貨=財をより多く分配することができます。

輸出増加はそれほど期待できないと思っていますから、新規市場の開拓で減らさないことを第一義にし、真の意味での内需拡大に政策を転換しなければならないと思っています。
「労働価値」の上昇は、放置していれば、失業者の増加=供給の減少=需要の減少につながるものです。(日本ではありえませんが、ラッダイト運動という愚策につながりかねません)

日本のみならず先進国全体が、成熟しきった「近代経済システム」の歴史段階を迎えて、経済価値観や経済政策の大きな転換を求められています。


>もっとも、1ドル360円から120円へ3分の1にドルが下落したが、5%の複利計算でも、
>23年で307%になるからそれで調整されるのですかネ。

通貨に対する根源的無価値説を採っていますので、ある優良米国企業を買収するのに50兆円必要だったのが、円高で20兆円で買収できるようになったと考えたほうがいいと思います。
(日米の金利が同じだったとして計算すれば、円高傾向が続く23年後の日本円と米ドルの実質価値の違いは明瞭です。米国の経済主体は、1兆ドルで買えた優良日本企業を4兆ドルでも買えないという状態になっています)

通貨の価値は、資本化されることでのみ付与されるものです。
(管理通貨制になって通貨の価値蓄蔵機能はなくなったという視点が重要だと思っています)

IBMのように早くから日本に進出し成功している企業は、長期的な円高ドル安傾向により、ドルベースでとてつもない収益を上げたことになります。


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