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9月「危機」の足音〜大日本土木が教える 続出する「想定外倒産」の激震(エコノミスト9月3日号) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 9 月 02 日 14:55:04:

9月「危機」の足音:大日本土木が教える 続出する「想定外倒産」の激震

工作機械メーカー日立精機(本社・千葉県)が8月19日、民事再生法適用を申請し受理された。負債総額は約504億円。景気低迷による工作機械の需要減、アジア勢の追い上げなどが倒産の背景にある。景気は良くない。負の遺産を背負い込み「30社リスト」等で騒がれた企業ではないところさえも、倒産に追い込まれ始めている。銀行に与える衝撃は――。株価も急落。耳を澄ませば、9月「危機」の足音が聞こえる。

児玉 万里子(三國事務所)

中堅の一部上場建設会社、大日本土木(本社・岐阜市)が7月はじめに民事再生法を適用申請し、事実上倒産した。負債総額は2700億円。上場企業(店頭登録も含む)としては、今年に入って23番目の倒産である。
大日本土木は、ゴルフ場開発事業への投資が、1990年代に急拡大し、その資金をまかなうために有利子負債が膨らんだ。残高は91年3月期末の338億円から10年後の2001年3月期末には1434億円へ、そして02年3月末には1576億円へと拡大。一方、公募増資や転換社債の転換によって自己資本を増強したものの、投資の拡大には追いつかず、さらに00年および01年にゴルフ場等開発事業関連の多額の損失を処理したため、自己資本比率(自己資本/自己資本+有利子負債)は01年3月期には6・8%まで下落した。三國事務所の格付け対象となっている大手建設会社約50社の平均自己資本比率は90年代にやや下がったとはいえ、20%台を保っているのに比べると、大日本土木の自己資本比率は極めて低かった。
01年4月には、近畿日本鉄道などグループ企業および主要取引銀行各行を引受先として第三者割当増資を実施。しかし、有利子負債の圧迫をはねのけるには至らなかった。この間、簿外の開発会社関連の債務保証残高も自己資本を大きく上回る高水準が続いていた。

銀行が慌てた理由

大日本土木の今回の倒産は、少なからず驚きをもって迎えられた。というのは、取引金融機関は大日本土木は潰れないと踏んでいたフシがあるからだ。その証拠が銀行の慌てぶりだ。
大日本土木が民事再生手続きを開始した後、大日本土木向け債権があることを発表した銀行は15行にのぼる。そのうち、最大の495億円の債権を有するUFJ銀行は、債権のうち担保・引き当てにより保全されていない部分は、この9月中間決算で急遽処理するとした。また、地銀・第二地銀のなかで債権額が最も大きい十六銀行(岐阜県)は、保有債権の大部分に相当する147億円の債権が保全されていなかったため、今後、貸し倒れ引当金を積み増すことになり、その影響で今期業績予想を従前の41億円の黒字から84億円の赤字(いずれも連結ベース)に修正した。
つまり、大日本土木向け債権は、こうした取引金融機関の信用リスク管理の対象となっていなかったと推察できる。同じ7月に会社更生手続き開始を申し立てて事実上倒産したロープ大手の東証1部上場会社・テザック(本社・大阪市)の場合、テザック向け債権があることを発表している地銀5行いずれもが、ほとんど担保および引き当てで債権を保全していたのとは対照的である。
自己資本比率が低いにもかかわらず、大日本土木は、なぜ信用リスク管理の対象となっていなかったのか。それは、大日本土木が私鉄大手の近畿日本鉄道の関連会社であったからだ。近畿日本鉄道が、そのグループの一角を占める大企業をみすみす潰すはずはなく、公共性の高いサービスに従事している近畿日本鉄道には、グループ企業を助ける力が十分にあるとみなされていたのだ。

「想定外」実は「当然」

これまでなら、まず潰れないと考えられてきたような企業の倒産や破綻が最近、目につくようになった。「信用神話」が、確実に崩壊し始めているのである。
長い間、日本で、最も安全な業種、潰れる心配がない業種と信じられてきたのが金融・保険業だった。だがすでに、銀行は95年の兵庫銀行(みどり銀行を経て現みなと銀行)、生命保険会社は97年の日産生命(現あおば生命)、損害保険会社は00年の第一火災海上保険の解散によって、破綻がそれぞれ「解禁」になり、その後も引き続いて発生している。
また、公共性が高いサービスに従事している企業は、倒産したときの社会的影響が大きいから潰さないはずだと信じられてきた。たとえば、鉄道、通信関連、電力・ガスなどである。だが、鉄道では、昨年12月に四国の高松琴平電気鉄道(本社・高松市)が民事再生手続きの開始を申し立てた。倒産は関連会社のデパート事業の不振が引き金となった。負債総額は344億円と飛び抜けて大きかったわけではないが、私鉄初の破綻として世間の注目を浴びた。そして、大手私鉄の関連会社、それも東証1部上場の会社が破綻したのが今回の大日本土木ということになる。
それまで、金融・保険業にしろ、鉄道などのインフラサービスの基幹産業にしろ、なぜ、これまで潰れないと信じ込まれてきたのであろうか。それは、この種の業務そのものが、もともと明治以来事実上官営で始められ、形式的に民営事業となったとしても、国の事業を担っている会社とみなされてきたからであろう。国の事業ということは、資産が国のものと同等とみなされることになるが、同時に負債も国の負債に準ずるものと考えられてきたわけだ。そして、負債の元利払いは、国に最も近い存在ゆえに、国が手厚く守るはずだと考えられてきた。したがって、金融・保険業もインフラサービスの基幹産業も、潰れるはずはないと信じられてきたわけである。
だが、基幹産業である鉄道会社といえども、その財務内容は、すべての会社が良好だというわけではもはやない。格付けも、三國事務所が対象にしている鉄道会社24社の最優先債務への現時点の格付けは「A」から「CCC」まで5ランクにわたっており、「BB」以下の下位3ランクが24社のうち17社を占める。不振の関連会社をいつまでも助けられる余裕は、鉄道会社にもなくなっていることを今回の大日本土木のケースが端的に示したのだ。それがたとえ、主要企業グループのメンバーであっても同じである。大日本土木がそうだし、94年のボクスイ(本社・東京、旧日窒グループの化学製品卸)、95年の北海道炭鉱汽船(本社・東京、旧三井グループの石炭販売業)の倒産あたりから、グループ支援さえ難しくなってきていることをすでにうかがわせていた。
こうした「信用神話」の崩壊は、これまで大企業の「信用」を支えてきた、経済の成長神話、銀行が力強いバックとして存在するメーンバンク神話、そして、価格が上昇し続ける土地神話がいずれも崩壊したためである。
そこでは企業の信用リスクは個別管理の対象となり、元利支払い能力は対象企業の利益を基準に評価せねばならなくなっている。負債を利益で返済できない企業は、大胆なリストラ策を講じない限り、もはや淘汰されてもおかしくない。経済が大きく上向かない限り、神話崩壊の荒海に投げ出された企業の倒産は、今後も高水準で続くだろう。

利益のでない企業の淘汰

こう考えれば決して、企業倒産は「想定外」ではないのだが、今回の大日本土木の倒産のようなケースが増えると、銀行によっては「想定外」の損失等に見舞われることになる。大型の不良債権処理のために余裕資金が少なくなっている銀行にとっては、大きな痛手には違いない。大日本土木の倒産後、慌てて引き当てなどの処理をする銀行の姿がそのことを物語っている。
こうした動きのなかで、企業の資金調達は、これまでとは様変わりになる。銀行貸し出しや社債投資において、信用リスクが高い与信先には、高い金利が設定されざるを得なくなる。リスク・プライシングである。融資をする銀行も投資家も、リスクが高い相手先からは、高い金利を得ることで、融資や投資の回収をいち早く進められる。
これまで、銀行は融資の回収を進めることよりも、融資先企業の存続を助けることに優先順位をおいていたのは間違いなく、多少業績が悪くとも追い貸しを続けてきたのである。だが、それも限界を迎えている。銀行が融資を続け、貸し倒れの引き当てはせず、増資にさえ応じていた大日本土木の倒産は、従来の存続を助けるという選択肢が、もはやなくなりつつあることを示している。融資先の倒産が続くと、貸し金が戻らないことになりかねない。
そして、採算の高い投資をして利益をあげる企業のみが、元利支払い能力の高さを背景にして、負債による調達で事業を拡大することが可能になる。なぜなら、採算無視で投資を増やしてきた企業には、高い金利を負担する能力がないからだ。
これまでは大企業であれば利益の有無にかかわらず、おしなべて低い金利での負債調達が可能であり、投資を拡大することができた。だが、これでは、投資は利益を生まない潰し合いの競争になってしまう。そこで、潰し合いを避け利益を守ろうとする企業は、これまでは負債による投資拡大を控え、むしろ負債の返済を推し進めてきた。だから、現状では、元利支払いに余裕のある、格付けが高い企業ほど、自己資本比率が高く、負債にはほとんど依存していない。
一方、元利支払いに余裕がない、格付けが低い企業は、現状では負債への依存度が高い。こうした企業も、これまでなら採算無視で投資を増やせたが、これからは負債調達額をむやみに増やせないので拡大は難しくなる。それどころか、金利が上げられることになると、従来どおり利益がないまま存続することはできなくなるだろう。
利益を重視する企業のみが、投資を拡大できるようになると、こうした企業によって、業界全体の投資採算基準が決まってくる。その結果、業界全体の利益はやがて回復し、利益の伴う設備投資が増えるだろう。もちろん、利益を前提とした負債調達の資金需要も伸びるはずだ。それぞれの業界内で企業淘汰は発生するとしても、業界全体としては利益が上向くことになる。
そして、大企業といえども倒産ありを前提としてしまえば、金利水準そのものを引き上げることができるだろう。それとともに、銀行の利益水準も改善される。さらに、回収されないまま放置されてきた銀行貸し出しは回収が進み、銀行は十分な金利を確保できることになる。そして、何より経済全体が回復に向かう。
日本経済は、そうした好循環の一歩手前までようやく来たのかもしれない。

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