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歴史が動いた、相場は動くか 債権相場 投稿者 Ddog 日時 2002 年 9 月 26 日 14:05:14:

債券クオンツ「歴史が動いた、相場は動くか」BNPパリバ・島本氏
NAA 4555 : 2002/09/26 木曜日 12:15

QUICK債券クオンツ情報 VOL.1 BNPパリバ証券会社 チーフストラテジスト 島本幸治氏 02/9/26

【トピックス 】日朝首脳会談と国債札割れは日本国民の意識変化を示唆
【マーケット動向 】下期の相場は、政策リスクの高まりが撹乱要因に
【イールドカーブ分析】長期〜超長期セクターに対する押目買いが有効
【スプレッド分析 】シャープレシオとコンベクシティーという投資尺度が重要に

1.トピックス:「歴史に残る4日間」
2002年の9月第三週は、21世紀の歴史に刻まれる4日間であった。17日(火)は小泉首相
が北朝鮮に訪問し、日朝首脳会談が実施された。日朝間の国交正常化交渉が開始すると
いうことは、世界の安全保障上も大きな意味を持つ。また、先方の事情に助けられたと
は言え、日本外交が交渉勝ちした例も珍しい。何より、メディアの横並び的な批判とは
裏腹に、内閣支持率が上昇した点が注目される。国民の意識は、戦後の洗脳から徐々に
開放され、外交問題や安全保障に対する自己判断能力を回復しつつあることが明らかに
なった。
翌日の18日(水)には、日銀は民間銀行が保有する株式を購入する方針を明らかにした
。日銀が株式を購入するのは史上初で、主要国の中央銀行にも例のない政策である。そ
れでも、翌日の木曜日の金融市場は、一旦、冷静な反応に留まった。株価の上昇や、債
券、円相場の下落は若干の水準訂正に留まり、早速、政府の追加対策へと関心は向かっ
たのである。日本の金融市場は、相変わらずモラルハザードに漬かり切った麻痺状態に
あるかに見えた。しかしながら、これは嵐の前の静けさであった。週末20日(金)の10年
債入札は、予定額に応募額が達しない札割れという事態が発生した。ちょっと前迄は、
国債市場は構造的な需給逼迫状態にあり、クーポンが存在する限り相場は上昇するとい
うセンチメントであったにも拘らずである。まさに、市場は中央銀行が株式を購入して
本当に良いのか、という倫理感に目覚めたのである。
安全保障も金融市場も、日本の常識は世界の非常識という状態が続いてきた。日本は
、蛸壺のなかで独自のルールを築いてきたからだ。但し、グローバル化の潮流により、
それは崩れつつある。その象徴が9月第三週であった。まさに歴史は動いたのである。

2.マーケット動向:「政策リスクがスティープニング圧力を増大」
歴史が動けば、相場も動く。9月第三週を契機に、債券相場のテーマは「時間軸効果」か
ら「政策リスク」へと移行した。日銀の株式購入が、株式市場に与える影響は重要でない
。問題は如何なる政策へと発展するかに尽きる。これだけの判断を、日銀が単独でする
とは考え難いからだ。また、ルービン、サマーズといった強力な財務省チームを擁した
クリントン政権ならともかく、イラク問題で手いっぱいのブッシュ政権が、日銀の金融
政策の技術的な問題に口を出す、或いは興味を抱いているとは考え難い。結局の所、官
邸(つまり、財務省)の危機感が、事態の震源地となったと見るべきだろう。そう考える
と、日銀の株式購入は、今後、政府や日銀がタイアップして 不良債権処理を加速させて
いくということのプロローグに過ぎないとの見方が正しくなる。
小泉首相が何処まで真剣に不良債権処理に取り組むか。これが目先の焦点である。い
ずれにせよ、今後の債券相場は幾多のダウンサイドリスクに直面する。小泉首相が、既
存の政策の延長線上に留まり、抜本処理を先送りするようであれば、国内市場はトリプ
ル安のリスクに直面する。また、全く逆に、抜本処理に踏込む場合も相場には悪影響が
生じる。政府にせよ日銀にせよ、公的負担が膨張することになるからだ。究極的には双
方に違いはない。ただでさえ、下期は財政悪化要因が目白押しである。デフレに伴う税
収の下振れや、日銀の株式購入に伴う国庫納付金の減少により、来年度の新規財源債は4
0兆円に近づく可能性がある。また、北朝鮮の経済支援に伴うコストや、米国によるイラ
ク攻撃の戦費負担なども発生する可能性がある。下期の債券相場はスティープニング局
面を迎える可能性が高いのである。

3.イールドカーブ分析:「短期的には均衡金利水準の安定性に着目」
スティープニング圧力に対し、如何なるイールドカーブ戦略があり得るか。ここで重
要なのは、歴史と相場では時間の流れ方がまるで異なるという点である。歴史は動いた
。向こう数十年を展望すると、日本の憲法は改正されているだろうし、長期金利は国際
標準に収斂している可能性がある。しかしながら、単年度決算の勝負が続く機関投資家
が採るべき行動は押目買いである。現在、日本の金融市場は、ディスインターミディエ
ーションのミスマッチ(=企業先行+家計遅行)という特殊な事態に陥っている。そのた
め、金融機関は構造的に余資運用に追われている。この構造が、向こう数年間にわたり
継続することに変わりはない。
これまでのイールドカーブのテーマは、日銀の時間軸効果であり、それを前提にした
ローリング効果であった。しかしながら、このローリング効果はイールドカーブの不変
を前提とした机上の空論に過ぎず、今回の相場変動により、その脆弱さが明らかになっ
た。今後は、クーポン収入(そしてコンベクシティー)が再評価されよう。そう考えると
、押目買いの対象は長期から超長期セクターとすべきである。JGBのイールドカーブをフ
ォワードレートに展開すると、10年超のフラットニングレベルは、最近3年間は2%台後半
で安定するようになってきた。これは、国内金利の期待形成における均衡水準として定
着してきたためである。この水準を目安にすると、10年国債利回りの1.3%台は、充分押
目買いの対象となる。もっとも、これから迎えるスティープニング圧力に立ち向かうの
は、精神的にはタフな勝負になる。

4.スプレッド分析:「押目買いの対象は不人気銘柄が効率的」
基本的に押目買い戦略は、不人気銘柄が効率的である。例えば、長期から超長期セク
ターのJGBカーブのなかでは、20年セクターは最も人気があり妙味が乏しい。時間軸効果
が中期から長期へと波及し、ついに超長期セクターに見直し買いが入る局面で、10-20年
のイールド・スプレッドは国債の方がスワップに対して先行して縮小した。その分、20年
セクターの下値余地が発生したことになる。それに対して、10年セクターは時間軸効果
が及ぶには長すぎ、クーポン収入を求めるには低過ぎるという中途半端な水準にあるた
め、投資家不在という構造問題を抱えている。また、30年セクターについては、一時期
、当局の発行政策のスタンスが不透明であったことや、流動性が不十分であることなど
から、依然として投資家層が限られている。しかしながら、リスク対比のリターンとい
うシャープ・レシオで見ると、10年債はバランスが傑出している。また、相場のボラティ
リティーが高まる局面で発生するコンベクシティー・メリットは、30年債が最も大きい。
この点は、未だ多くの投資家が気付いていない。イールドカーブ上の投資理論の高度化
という、時代変化の潮流を勘案すると、実は、10年と30年セクターに最も強力な追風が
吹いている。
歴史が動けば、相場も動く。同時に、投資尺度も変化する。時代の変化に歩調を合わ
せて、常に目線を先に送る必要がある。

<島本幸治氏略歴>
1990年東京大学教養学部基礎科学科(理論物理専攻)卒、日本興業銀行入行。同年、興銀
投資顧問運用部に配属。年金・特金のトレーダー兼アナリスト業務を担当。1991年、同行
証券投資室調査班に配属。イールドカーブを中心とする国内金融市場分析を担当。1996
年、同行調査部経済調査班に配属。シニアエコノミストとして日本のマクロ経済調査を
担当(GDP総括、企業部門、金融・財政政策、他)。2000年3月より現職。日本アナリスト協
会検定会員。日経公社債情報2002年(2002年3月11日号)債券アナリスト・エコノミストラ
ンキング債券アナリストの部第5位。主な著作・論文「日本経済はこう変わる」(日本興業銀
行調査部編、NHK出版)等。

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