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「"95%没落"残された一手は？：地域通貨で経済再生を」加藤寛・前政府税調会長
21世紀はデフレの時代とも言われているが、景気変動はどんな時代でも不可避だ。順 調な経済成長を続けることもあれば停滞を続けることもある。21世紀の全てがデフレと いうことではない。コンドラチェフの波からやがて世界経済は勃興期に突入する。勃興 の筆頭は中国で、これを後押しする米国はアジアとより一体化する。その中で、日本は 復活出来ず、95%没落する。だが、5%救う道は残されている。これに気付いて、やろうと 決意すれば日本は必ず立ち直れる。
では、何をすればよいのか。構造改革とよく言われるが、実のところこれがよく理解 されていない。構造改革の本質を一言すれば、明治以来続いてきた間接金融方式を直接 金融方式に変えることだ。そのために今こそ間接金融を支えてきた郵便貯金・簡易保険を 変えないといけない。郵貯・簡保には全国から360兆円ものカネが集まり、これを原資と する財政投融資で道路公団などの特殊法人が肥大化し、無駄な道路や橋などが造られて いった。その結果、公的金融の不良債権額は民間を上回る150兆円ぐらいにまで膨張し、 これが全く手付かずの状態だ。まさに、「万里の長城を造って国が滅びてよいのか」だ。
公的部門の不良債権を片付けないことには財政赤字の解消、日本経済の本格回復はな い。郵政を改革する理由はまさにここにある。郵貯・簡保が集めたカネを財政投融資で特 殊法人に流れるという構造を根本から変えれば、公的部門の不良債権問題と財政赤字問 題は解決に向かい、機動的な経済・財政運営が可能となる。郵貯・簡保資金がもっと株式 や投信に向かえば株式市場は活性化する。株価上昇による資産価値効果で銀行の不良債 権は減少し、貸出は増加、また、個人消費は拡大する。
さらに、郵貯を分割して、同じ地域ブロック内で郵貯・簡保資金を循環するようにすれ ば、地方経済が活性化する。郵貯には融資のノウハウがないから、地銀経由で地方の中 小零細企業に融資する。いわば、コール市場の地方版だ。日銀などは資金需要がないと いうが、逆に、地方企業は資金繰りに窮しているというのが実状だ。日銀は量的緩和を 進めているが、不良債権リスクを恐れる銀行が企業向け融資に慎重になっているため、 資金は市場に回らず、国債投資に回っている。このため、地方企業にまで十分に資金が 行き渡らず、地方経済は停滞したままだ。資金需要はある。高金利の消費者金融の躍進 がその証左だ。郵貯資金を地銀が低金利で融資すれば借り手はどんどん現れる。ところ が、小泉「構造改革」本丸とされるこの郵政改革が遅れている。郵政公社案では改革にな らない。
今の状況は、未知の構造変化が起きている時の景気後退だ。流動性の罠に陥っている ため、金融・財政政策は効かない。ケインズ自身も主著「一般理論」の中で、公定歩合引き 下げ、財政支出拡大、所得税減税などは短期的不況対策で、構造変化を伴う中・長期的政 策には有効ではないと言っている。では、どうすればいいのか。崩壊瀬戸際の日本経済 には残された時間はないが、策もないのか。
八方塞がりの日本経済だが手は一つ残されている。それは地域通貨(エコマネー)の活 用だ。これはケインズが「一般理論」で引用したシルビオ・ゲゼル(19世紀後半のドイツ人 事業家。時間とともに価値の下落するスタンプ貨幣を提唱)の着想だ。一定の地域でしか 使えない期限付きの通貨で、保証しているのは中央銀行ではなく、各地域が中央銀行の 役割を果たす。期限内に消費に回さなければならないため、必ず消費が増える。投資も 可能だ。例えば、地域通貨を資本金として起業することも出来る。
既に、国内でも100以上の都市で地域通貨が発行され、今後も東京の世田谷区や千葉県 でも始めようとしている。だが、地域通貨を福祉のために使うといった事例などが多く 、当初の地域経済活性化の意義が弱い。地域通貨は地域振興券のようなテンポラリーな ものではなく構造改革と言うべきものだ。そこで、地方政府レベルで地域通貨の導入を 促進してはどうか。そうすれば、日本経済はたちまち回復に向かうだろう。(談)
クイックより
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