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Re: 「よき時代」の終焉 投稿者 日時 2002 年 10 月 07 日 11:18:01:

(回答先: 「よき時代」の終焉 投稿者 日時 2002 年 10 月 07 日 11:08:35)

 第1回のコラムで筆者は旧長銀経営者の刑事裁判に違和感を覚えたと書いたが、それは純粋法律的な観点ではなく、バブルを総括する形としては情けない方法だという意味である。

 いうまでもなくバブル問題は裾野が広く、政官財それぞれが重大な責任を負っている。しかし、いまだにバブルの総括をした大銀行は1行もない。政界でもバブルの張本人といわれた政治家や、94年におきた住専問題を政争の道具に使い、その後の不良債権先送りの先鞭をつけた政治家達が今でも権勢を誇っている。大蔵省にいたっては「あの時はあれしかなかった」という元審議官の有名な言葉が残っているだけだ。

 こうした状況の中で長銀経営者の刑事責任だけを追及すれば、長銀事件が特殊例外的な存在になり、不良債権問題の全体像がかえって見えなくなってしまう。

また、そもそも法律で裁けるのは一つの切り口でしかない。世間は「有罪か無罪か」というワイドショー的な目で見ることになり、これまた問題の本質を見逃すことになる。

木村剛氏が警鐘を鳴らしているにもかかわらず、金融関係者やエコノミストでこの判決文をしっかり読んだ者は少ないであろう。しかし、判決文にあるように、旧経営者はなぜこのような「苦渋の選択」をしなければならなかったのか、なぜ違法と思っていなかったのかなど、法で裁ききれなかった部分を解明しない限り、不良債権問題の本質は理解できず、わが国が今日の金融蟻地獄から抜け出すことはできないだろう。

 誰が本当の国賊か

 長銀が破綻して、長銀マンの人生は一変した。経営者の多くは刑事のみならず民事事件でも厳しい追及を受けている。4000人いた行員の半分は退職した。当時45歳以上だった管理職は、いまだに就職先が定まらず生活難にあえいでいる者も少なくない。自宅に届く転職の挨拶状は増える一方だ。ガンの病におかされた者も異常に多いような気がする。この年代での訃報も多すぎる。自殺者も何人か出た。

 悩んだ末に新生銀行に残った若手行員も、覚悟していたとはいえアメリカ人経営者からおりてくる超トップ・ダウン、朝令暮改の指揮命令に戸惑いながらも、これが新しいビジネスモデルだろうと奮起する。

 しかし、彼らにとってもっとも辛いのは「国賊」呼ばわりされることだ。実質破綻先企業に資金回収の交渉をしても、適正貸出金利への引き上げを要請しても、そして政府と結んだ瑕疵担保契約にもとづいて不良債権の買い上げを申請してもすべて「国賊」扱いだ。仲間であるはずの大手銀行までもが口を極めてののしった。

 だが、それから1年もしないうちに、その大手銀行は共同戦線を張って取引先に対して「貸しはがし」に走り、貸出金利引上げを迫り、そしてRCCに対し簿価による不良債権買い上げを要求する。何のことはない。新生銀行の戦略をそのまま追随しているのだ。

 金融庁も、1年前に新生銀行が中小企業向け貸出比率目標を下回ったときには厳しい行政処分を下したにもかかわらず、この3月期に大部分の大銀行が未達成だったときは、まったくの不問に付した。

 その金融庁も、この先本腰で不良債権処理を断行しようとすれば、結局国全体で新生銀行がやろうとしたことを推進するしかない。つまり、資産を厳正に評価し、不良債権の売却や引当によって早急に健全化すると同時に、適正金利による貸出業務の正常化をはかるという、金融の教科書どおりのことを愚直に推進するしかないのだ。

 実態を十分認識していながら「不良債権は厳しく査定してきた」「銀行はまったく健全だ」「金融危機とはほど遠い」と強弁してきた大銀行経営者と金融庁の負の連携プレーに終止符が打たれる日も遠くないだろう。本当の「国賊」は誰なのか、国民は目を凝らして見きわめる必要がある。

 失われたノブレス・オブリージの精神

 不良債権問題の処理をはじめ、構造改革を実現するには、変えることのできる権力を持った者が目を覚まし、みずから変えるしかない。それは既得権の放棄や自己批判を伴うだろう。

 しかし、その辛い行為こそが地位ある者の義務、責任ではないか。言葉を変えれば地位ある者にしかできない武士道の行為であり、それが「ノブレス・オブリージ」だ。 エリートはいざというときに身を捨てて責任を果たすからこそエリートであって、責任を果たさないエリートはただの「高級ごくつぶし」にしかすぎず、一歩間違えば「国賊」にもなりかねない。

 わが国ではバブル以降、政官財いずれのエリート達もこの「ノブレス・オブリージ」の精神を失った。そこから国全体が壮大な無責任構造に陥り、モラルが退廃し、倦怠感が広がっていった。

 財務省が本気で財政再建を断行するのであれば、まずはみずからの職員数を削減し、政府系金融機関を廃止すべきだ。日銀が銀行にリストラを迫るのならば、まずは金融界で最高といわれるみずからの給与水準を大巾に切り下げるべきである。「ノブレス・オブリージ」は「槐より始めよ」にも通じる。

 やや大げさな話になったが、バブル問題についても関係者の誰一人「ノブレス・オブリージ」を果たさないまま、長銀経営者の刑事責任追及という、裁判官という「第三者」による司法問題としてしか総括できなかったところに、日本人として「情けなさ」を感じる。

 かつての長銀マンは、わが国のあの「よき時代」の舞台が完全に終わったことを全身で感じながら、それぞれの新しい道を歩き始めている。その一方で、いまだにその「よき時代」にしがみついているエリート達が、幕を下ろさせまいと跳梁跋扈する日本に強い危機感と失望感を抱いている。

「どうしてこの危機に目をつぶるんだ」。いつまでたっても届かないその思いが、長銀マンの心にあるいまだに埋め尽くせない大きな洞なのだ。

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