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実体経済は回復しているのに、不良債権処理特別プロジェクトチームの結成で日本の株式市場は大混乱。しかしここで注意すべきは、実体経済悪化のリスクであることをお忘れなく。
いわゆる「竹中ショック」で株式市場が動揺している10月8日に、内閣府から機械受注統計（8月）が発表された。機械受注統計は、機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計したもの。GDP上の設備投資（機械分）は、機械が工場等に導入された段階で計上される。通常、生産設備は、機械メーカーの受注→機械の生産→機械の導入、といった手順で設置されるため、機械受注統計は設備投資の先行きを示す指標となる。なかでも、民間設備投資と密接な関係があり、触れ幅が大きい電力からの受注と、造船の受注を差し引いた「船舶・電力を除く民需」（以下：民需・除船電とする）は、６〜９カ月先の民間設備投資動向の先行指標として注目されている。
まずは7月までの民需・除船電の受注金額と前月比（前月との比較）をみてみよう。
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
金額（億円） 7,825 8,318 7,799 8,456 8,470 8,718 8,884
前月比（％） -10.9 6.3 -6.2 8.4 0.2 2.9 1.9
ご覧の通り民需・除船電は、4月以降、前月比プラスを維持しており、受注金額も9千億円近くに達している。機械受注統計の結果は、他指標と比べても振れが非常に大きく、安定しない傾向にある。それにもかかわらず民需・除船電が4ヶ月連続でプラスを維持したことから、マーケットは、設備投資が（4月から半年後の）10月頃から回復するだろうというコンセンサスを醸成しつつあった。
ご存知のように、日本の株式市場は、竹中大臣を中心とする不良債権処理特別プロジェクトチーム（以下、不良債権PT）の結成をきっかけに大きく下落した。本コラムでは、日本経済が回復基調にあることを何度も指摘したが、不良債権PT結成後のマーケットは実体経済の回復という事実を気にもとめなくなった。マーケットは、不良債権PTの構成メンバーをみては先行きを悲観し、どの程度の影響を及ぼすのか全く分からないデフレ圧力というリスクを感じた。その結果、株式は投げ売りの状態となり、日経平均はバブル経済崩壊後の最安値を更新した。
そういった状況の中、8月の機械受注統計が発表されたわけだが、その結果はひどいものだった。民需・除船電は、前月比13.6％減の7,676億円であった。02年以降、積み上げてきた受注増加額は、たった1ヶ月で全て吐き出したわけで、今回の結果が4ヶ月連続で増加した反動だとしても、落ち込み幅が非常に大きいといえる。
機械受注では、先行き3ヵ月後の受注見通しも発表される。7−9月期の受注見通しは前期比3.9％減であったが、じつは8月の結果が発表されるまで、7−9月期の実績はこの見通しを大きく上回り、4−6月期に続き２四半期連続のプラスになるだろうと言われていた。しかし8月の結果をもとに試算すると、7−9月期にプラスになるためには9月に前月比18.3％ものプラスになる必要があり、このハードルをクリアするのは非常に難しい。せいぜい前期比3.9％減という見通しを達成するのがいいところだろう。その場合でも、9月は前月比で5.3％も増加する必要がある。
機械受注が発表された8日の日本の株式市場は、ペイオフ解禁２年延期の発表や、自律反発期待の買いや押し目買いなどから、なんとか前日比プラスを維持した。また今後は、不良債権処理PTの実態が明らかになることから、マーケットの動揺も徐々に沈静化に向かうだろう。しかし、本コラムでウォッチしている実体経済については、景気を牽引している輸出の後継者（＝設備投資）の先行きが楽観視できなくなっただけに、さらなる注意が必要となる。先に述べたように機械受注は振れが大きいので、今回の結果だけをもってシナリオを変更する必要はないと思うが、景気の山が想定以上に早く到来するリスクは確実に大きくなっている。
マーケットエコノミスト 秋新作
提供：株式会社ＦＰ総研
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。