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「日本の銀行改革、新たな希望」・ハバード米CEA委員長寄稿 投稿者 Ddog 日時 2002 年 10 月 17 日 20:51:40:

◎ 「日本の銀行改革、新たな希望」・ハバード米CEA委員長寄稿

 小泉純一郎首相の改造内閣は、改革の新たな確約を表すとともに、不
良債権処理を加速し銀行セクターに対する国民の不安を緩和するための
決定的措置の可能性を示すものである。こうした措置は、構造改革と規
制改革を促進するより広範な努力の一環として、日本経済の再活性化に
不可欠である。
 市場参加者の一部は、銀行改革が短期的な混乱につながる可能性に注
意を集中しているようである。事実、この発表からl週間の間に、日経
平均株価は5%下落し、1983年夏以来の最低水準となった。銀行株は総
合で6.5%下落し、日本最大の銀行であるみずほ銀行の株価は26%下が
った。これについて、新たに金融相に任命された竹中平蔵氏は、最近の
「ニューズウィーク」誌のインタビューで、次のような現実的な評価を
下している。「政府は、何もしなくても、思い切った措置を取っても、
いずれにしても批判を受ける。しかし、長期的には市場は正しい対応を
求めている。スウェーデンの例を考えてみると、1990年代初めに、スウ
ェーデン政府は資本を[銀行に]投入した。これは正しい対応だったが
、株価は下落を続けた。そこで政府はさらに投入資本を増やしたが、そ
れでも株価は下がった。株価がようやく回復を始めたのは、l年後だっ
た。したがって、われわれには多少の辛抱が必要である。
 私も竹中氏と同意見である。日本が再び健全な銀行制度を取り戻すた
めには、広範な改革が不可欠であり、それが世界第2の経済大国を再び
繁栄させる鍵となる。しかしながら、lつ妥当な疑問が残る。それは、
真の銀行改革が有益であるならば、なぜ日経平均株価が悲観的な見方を
反映しているのか、という点である。

 lつの理由は、そうした政策が有益であること、実施される措置が銀
行セクターの真の改革を意味することの確証を、投資家が求めているか
らである。l999年に日本政府は、総額750億ドルの銀行救済に同意した
が、銀行が不良債権を整理することを義務付けなかった。それから3年
後、多くのアナリストは、銀行の状況は良くなるどころかかえって悪化
したと見ている。竹中氏の計画の詳細はまだ公表されていないが、公的
資金の注入は「銀行貸付の質を評価する基準を厳しくしない限り、無意
味である」という同氏の主張は妥当である。竹中氏は、単に銀行援助の
ために公的資金を費やさないようにすることの重要性を認識し、「不良
債権処理政策は、必ず、貸付の査定強化、株式資本の増強、および企業
統治の厳格化と同時に行われかければならない」と述べている。
 不良債権の現実的な分類、不良債権の引当金積み増し、資本の質向上
、そして銀行経営者と株主に適切なインセンティブを与えるアメとムチ
を奨励する計画が望ましい。竹中氏がこうした改革を公的資金による資
本注入と組み合わせることができるならば、税金の無駄遣いにはならな
い。そうなれば、この政策は、過去半世紀間の大半を通じて世界有数の
工業国経済を誇ってきた日本経済の再生に貢献することができる。
 2002年3月現在の公式な試算では、不良債権総額は52兆円(4200億ド
ル)で、総資産の約9%となっている。民間部門アナリストの試算によ
ると、実際の数字は少なくともこの2倍であるという。民間部門アナリ
ストが公式な報告内容に懐疑的であるという事実自体が、銀行制度への
信頼を向上させるためにはあらゆる金融機関の特別調査を行うべきであ
ることを示している。その結果、この大きい試算額の方が正確であるこ
とが判明したならば、銀行の引当金を大幅に増やさなければならない。

 引き当て強化が必要である可能性を示す兆候はすでに見られる。金融
庁が、問題のある融資先149社を対象に実施した特別調査が2002年4月
に完了したが、その結果、不良債権総額は当初の推定を5兆円上回り、
2兆円の貸倒引当金積み増しが必要であることが明らかになった。この
調査結果は、銀行の貸借対照表を綿密に検討すること、そして情報が明
らかになったならば銀行の準備体制を確保することの重要性を強調する
ものである。資産査定の厳格化を奨励する1つの手段は、米国で使われ
ているようなディスカウント・キャッシュ・フロー方式を採用すること
である。この方式では、貸付金回収の確率を、融資先企業の過去の収益
性ではなく、将来の収益性に基づいて計算する。この方式を採用すると
、銀行は引当金の積み増しをせざるを得なくなる。現在、この種の融資
の場合、日本の銀行は貸付の帳簿価額の約5%を貸倒引当金とするが、
米国の銀行は推奨の会計方式に基づき約20―30%を引当金としている。
適切な引当率計算法を採用することによって、日本の銀行は、今後財政
が逼迫した場合に、よりよい級和策を持つことができる。

 銀行改革に十分な資金提供が行われるようにすることには、長期的な
利点がある。これは、1980年代の米国の貯蓄貸付組合危機から得られた
教訓である。1987年に米国政府は、経営不振の貯蓄金融機関に対する措
置として、競争均等銀行法を可決した。しかし、この措置のための資金
が大きく不足していたため、限られた再編しか実現しなかった。198
9年には、不良債権処理を管理するために整理信託公社(RTC)が設
立されたが、それでも状況は改善されなかった。それは、当初RTCが
市場の落ち込みを恐れて、迅速に行動しなかったためである。1989年か
ら91年までの間に、資産の売却額が査定価額の95%以上でなければなら
ないとされたとき、RTCは単に不良債権を保留しただけだった。資金
不足と、決定的な対応の欠如により、特に米国南西部で、原資産である
不動産の価値が下落した。1991年に、RTCが、決定的な措置を取って
不良債権を民間部門に配分する権限を与えられると、それまでとは明ら
かに異なる成果が得られ、予定よりl年早いl995年には危機が緩和され
た。資産価値は回復し、1992年にダラスで行われたローン競売では、は
ぼ1年前に帳簿価額の21%だった売値が、帳簿価額の62%まで上昇した
。それでも、当初の資金提供の遅れと不足のため、救済措置の総コスト
は870億ドルに上り、1982年の当初の推定額のほぼ4倍となった。適切な
資金提供と決定的な措置によって、銀行セクターの健全化と資産価値の
向上を実現することができる。

 不良債権を帳簿からなくし、銀行の貸借対照表の内容を改善するだけ
では不十分である。銀行改革は、銀行の業務の進め方を変え、銀行が生
産性の高いセクターに融資を提供するためのインセンティブを増すもの
でなければならない。そのためには、株主が銀行経営の改善と貸付ポー
トフォリオの監視を強く要求することが不可欠である。そして、株主が
こうした要求をするためのインセンティブとして、株主に処理費用の一
部を負担させるべきである。ここで再び北欧の例を取り上げると、スウ
ェーデンとノルウェーでは、公的資金の注入を受けた銀行は、経営陣を
解雇し、支店を閉鎖し、株式価額を切り下げることを義務付けられた。
その結果、決定的な措置が取られてから1〜2年間は危機が緩和されな
かったものの、北欧の金融セクターは収益性を回復した。
 弱気市場となっている2番目の理由は、不良債権の問題がデフレなど
他の問題と切り離して処理されることはないとの確証を、投資家が求め
ているためかもしれない。これは、デフレが消費者および企業の信頼感
を損ない、生産的な貸し付けや投資を妨げるからである。しかし、銀行
改革を考慮に入れた通貨政策は、経済収縮の進行を防ぐことができる。
したがって通貨政策は、銀行改革による短期的なマイナス効果を防ぐ有
用な手段となり得る。残念ながら9月には通貨ベースが縮小した。今後
、銀行改革に大きく配慮した通貨政策が取られなければ、銀行改革はさ
らに困難となる。

 そのような通貨政策が、フィンランド、スウェーデン、およびノルウ
ェーの計画の中心に据えられていた。決定的措置が取られた後には、再
編の成功を確保するため、直ちに通貨政策が緩和された。各国で金利が
引き下げられたため、再編が成功した。最も積極的に通貨政策を緩和し
たフィンランドが、最も迅速に問題を解決したことは興味深い。
 日本銀行は、特に銀行改革の直後のデフレを止めるために、より大胆
な金融緩和を追求することが可能であり、またそうすべきである。これ
は、通貨量に目標を絞り、価格安定を達成するという、200l年3月に発
表された日銀自身の枠組みにも一致する。私は、今月発表される予定の
、日本政府による「反デフレ」パッケージの内容に大きく期待している
。通貨政策が新たな銀行計画と協調して機能すれば、再編開始後に経済
は回復するはずである。
 しかし、通貨膨張政策と銀行改革を実行しても、日本の問題がすべて
解決できるわけではないことを認識しなければならない。2001年に米国
で導入された、経済成長を促進する租税政策は、米国経済の回復の迅速
化と、生産的リスク、貯蓄、投資、および長期的成長のインセンティブ
向上に貢献したが、同様の租税政策が日本の回復にも役立つ。日本の税
制改革計画は、税制の歪みに対処し、税基盤を拡大し、限界税率を引き
下げる必要性に重点を置くことが報告されているが、これは日本と世界
の経済にとって前途有望な展開である。
 不良債権問題に対処し、銀行の企業統治を改善することは、苦痛を伴
う困難な作業かもしれない。しかし、われわれが米国の貯蓄貸付組合危
機を通じて学んだように、いったん決定的な措置が取られれば、その便
益は費用を大きく上回る。銀行改革、構造・規制改革、および反デフレ
措置を取り入れた包括的な経済政策パッケージが、日本経済の復活に貢
献する。(グレン・ハバード 米大統領経済諮問委員会委員長)

くいっくより

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