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正念場を迎える米国金融政策、その中での「金」(住友金属鉱山ゴールドニュース11月8日) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 11 月 08 日 20:48:02:

またアクセルを踏むことになった。しかも大きく。
アクセルを踏むのは、言うまでもなくエンジンの回転数を上げるためである。というのも予定とは異なり、それだけエンジンの回転数(スピード)が落ちてきた、あるいは今後さらに落ちる(そして止まってしまう)可能性が高まったためである。
ただし運転者は、これだけ大きく噴かしたのだから当面は大丈夫だろう、と乗客に伝えた。
11月6日に発表された米国の利下げの内容を例えると、以上のようになる。
具体的には、公定歩合(有名無実化しており廃止の方向)とFFレート(フェデラル・ファンド・レート)と呼ばれる金融機関の間で資金を融通する際の指標となる金利は、それぞれ0.5%引き下げられ、公定歩合は0.75%、FFレートは1.25%となった。このところ利下げ期待が高まっていた市場の予想は、「引き下げがあってもその幅は0.25%」というものだったので、まさに「サプライズ(予期せぬ出来事で市場への影響度合いが大きくなりがちな相場変動材料)」となった。
同時に、今後の政策運営の方向性も示されたが、こちらは「景気配慮型」から「中立型」へと戻されることとなった。政策スタンスは、「インフレ警戒型」、「中立型」、「景気重視型」の3段階に分かれているので、金利は大きく引き下げたものの(つまり現状と先行きに対し楽観視はしていない証)、運営方針としては“警戒を解いた”ことを示すという、受け取り手の解釈によっては、どちらにでも取れる内容となった。事実、この日のNY株式市場は、予想を上回る利下げを好感し上昇したものの、その後は一転して前日比100jほど売られ、また引けにかけ買い戻され、結局92.74j高で取引を終えるという乱高下をみせた。
これから導かれるのは、中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、いかに難しい政策対応を求められているか、ということだろう。それだけ米国経済自体が、微妙なバランスの上に立っているということである。このバランスは、例えばそれを映し出す“鏡”でもある株式市場が、通常以上に投資家の市場心理(センチメント)に影響を受け易い状態になっていることに投影されており、そうしたものにも配慮をせざるを得ないということにつながる(ただし金融政策自体が市場に縛られていることを意味するため、当局は、けっしてそれを認めるような発言はしない)。
もともとFRBは、バブル崩壊後の政策対応が後手後手にまわり、結果的に極度のデフレ状態に陥ってしまった日本を研究し尽くしているとされ(“同じ轍を踏まない”)、かなり大胆な予防策を取ってきた。それが昨年の11回にもわたる記録的な利下げという、異例の政策だった。今回は、今年に入り初めての利下げではあるが、0.5%にすることで予防的な意味合いも醸し出し、同時に「(0.5にしなければならないほど)そんなに状態が良くないのか」という見方を封じ込めるために、「だからといって悲観的な見方ばかりではない」ことを示す意味からも政策スタンスを「中立型」にしたのではないだろうか。もう少し戦略的な“読み”をすると、「一応利下げは打ち止め」という意思を「中立型」移行で示すことで、再び盛り上がる利下げ期待を抑えておき、その中で突然利下げを実行し、より大きな心理的効果を狙うということも考えられる。それほど心を砕かなければならない程、利下げ余地は無くなっている。「撃てる弾は、残りわずか。撃つ場合は、有効に」ということである。
問題は、これからである。
金融政策は、心理面は別として効果が現れるには時間がかかる。すでに想定していた“個人部門の好調なうちに企業部門の立ち直り”というシナリオは危うくなっている。足元の10〜12月期の状況が芳しくない結果に終わると、昨年の11回の利下げは、果たして効果があったのか、という疑問につながるだろう。と言うのも足元の景気後退懸念が、単純な景気循環のなかで起きたものではなく、バブル(以前「世界バブル」と表現)が弾けた結果としてもたらされているだけに、利下げが思ったほどには効かない可能性があるからだ。

株安のなかで財務内容の悪化した多くの企業は、格付が低下してしまい、金利低下の恩恵を受けることができないでいる。つまり企業を取り巻く環境が好転しないのは、バブル崩壊の後遺症とでも言うべきものであり、特殊事情の下で利下げが効かない証ともなる。
一方で、利下げは、個人部門の借り入れを容易にし、住宅ブームを加速させ、高水準の消費を持続させている(その結果として、家計の負債は膨れ上がっている)。
既に8月19日配信号でも取り上げ、昨年12月28日配信号で2002年の見通しで指摘したように、米国金融政策上の正念場到来ということである。
世界的に金融緩和傾向が強まる中で、本来的に利息を生まないという「金」のマイナス要因は、小さくなっている(金融商品としての競争力が増している)。また、昨日(7日)開かれたECB(欧州中央銀行)の定例理事会では、利下げが見送られたことから(政策金利3.25%据え置き)、米欧間の金利差はさらに広がり、ユーロがドルに対し買われたこともあり(ドル安)、海外金価格は約1ヵ月ぶりに320jを超えてきた。
「弱いドルは、強い金」である。

金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎

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