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日本経済2010年、衰弱死のシナリオ〜財政が破綻し銀行や企業が消滅――停滞の末の「国家倒産」で日本はどう変わるのか(ニューズウィーク日本版2002年3月13日号P.20) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 3 月 13 日 12:14:45:

千葉香代子
エイミー・ウェブ(東京)
ドリー・ペルッチ(ニューヨーク)
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン)

2010年。日本政府は国債の利払いの一時停止を発表するとともに、IMF(国際通貨基金)に緊急支援を要請した。経常収支はとうに赤字に転じ、国内の金融資産も海外に逃避。海外の投機筋に対抗して円を買い支えてきた政府の外貨準備も底を突いた。
最後まで残った大銀行にも預金者の取りつけが殺到し、政府は預金の引き出しや海外送金に1日10万円の上限を課した。取引銀行がつぶれたためにスーパーは仕入れもできず、食料品や日用品の陳列棚はがら空きだ。地方では、なおも道路建設を続けようとする労働者と、それを止めようとする警官隊の衝突が起こっている。
東京・銀座の表通りにあふれるホームレスは、失業者ばかりではない。あてにしていた年金がふいになった退職者もいる。まだ仕事がある幸運な人たちも、今後は財政再建のための大増税や、1ドル=200円の円安がもたらす輸入インフレに悩まされることになる。
世界のどこかで経済危機が起こるたび、繰り返されてきた光景にそっくりだ。違うのは、これがかつては世界最大の債権国だった日本であること。20年に及ぶ景気低迷の末、この国はとうとう過去の蓄積を使い果たしてしまった――。

銀行の破綻は「大歓迎」

日本では今、年度末決算と4月のペイオフ解禁に向けて、3月危機への不安が高まっている。3月3日には、準大手ゼネコンの佐藤工業が自主再建を断念し、会社更生法の申請に踏み切った。
だが市場関係者の間では、むしろ危機待望論が強い。これ以上問題を先送りすれば、今後5〜10年の間に日本経済そのものが財政もろとも破綻する「国家倒産」が避けられないとの危機感からだ。
政府のデフレ対策発表を受けた先週の東京株式市場は、市場関係者のそんな思いをよそに大きく上昇。1週間の日経平均株価の上げ幅は500円を超えた。
「演出された相場だ」と、UBSウォーバーグ証券の岡崎維徳(しげのり)・政治経済アナリストは言う。「公的資金の買いがあったともいわれる。政府は年度末を乗り切るためにあらゆる手段を講じている。これでは3月危機も起こりようがない」
新年度を無事迎えることができたとしても、その先の展望は見えない。不良債権処理や、1930年代の大恐慌以降は世界にも例がないデフレへの対策は中途半端なまま。構造改革も進まない。
大半の国民が危機を実感していないのも問題だ。ダートマス大学ビジネススクールのジョセフ・マシー教授は、「政府がそのうち助けてくれるだろうと期待するのが日本人の習い性になってしまった」と指摘する。国が富んでいて所得水準も高いうちは、この悪癖を断つのはむずかしい。
これまでの先送りのツケが大きすぎて、今さらどんな手を打っても国家破綻の運命は避けられないという見方もある。「5〜10年後には、日本は自然死を免れないと思う」と、ドイツ証券の松岡幹裕シニアエコノミストは言う。「構造改革や産業構造の転換も追いつかないのではないか」
海外の見方も冷えきっている。「銀行が二つや三つつぶれるくらいの危機ならウエルカムだ」と、ある外資系投資銀行のエコノミストは言う。「行き着くところまで行かなければ日本は変わらない」
政治危機や構造改革のつまずきを期待する声さえある。「そうなれば、誰もが狂ったように円を売る。それが回復の出発点になる」と、コンサルティング会社ロンドン・エコノミクスのビッキー・プライスは言う。円安で輸出が伸びれば景気の追い風になるからだ。
年度内であれその後であれ、金融危機が起これば、その痛みは決して小さくない。金融システム安定化のための財政出動は、将来の税負担をさらに引き上げる。国債や社債の格下げで金利は上がり、景気や財政を圧迫する。日本長期信用銀行の破綻が、そごうの破綻につながったように、借り手企業の淘汰も進む。

購買力が半分になる?

それでも、先送りを続けるよりはましだ。今ならまだ、銀行が破綻しても金融システム不安を防ぐ余裕が政府にはある。だがこれまでのような対症療法を続ければ、5〜10年の間に日本経済そのものが突然死するか、過去10年と同じような停滞を続けたあげくに衰弱死してしまう可能性がある。
政府は主に10年物の長期国債で資金を調達しているが、今だと92年に5〜6%の金利で発行した国債を1.5%で借り換えられるため、歳出に対する利払いの比率は低く抑えられている。「だが、そうした借り換え効果もあと5年ほどでなくなる」と松岡は言う。
ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券の奥江勲二シニアエコノミストによれば、このまま財政の悪化が続くと、2010年ごろまでには、地方交付税と国債費を支払えば国の税収は一銭も残らなくなるかもしれないという。「公務員の給与もあなたの年金も、すべて国債でまかなうしかなくなる。もちろん、市場がそこまで待つわけはない」
どちらにしても結果は同じだ。5年後に「3月危機」が起これば、政府は金融システム救済のために国債を乱発するしかないが、リスクの高い日本国債を売るには金利を上げざるをえない。財政はますます悪化し、銀行や企業の破綻が相次ぎ、失業者は急増する。円は暴落し、輸入物価の高騰を通じて急激なインフレが襲う。
もちろん、国家は「倒産」しても企業のように消滅するわけではない。どれだけ経済が悪化しようと、人々はそのなかで生きていかなければならない。そのとき、日本人の暮らしはどうなるのか。
円が急落した時点で、海外旅行や外国のブランド品は今までよりずっと手が届きにくくなる。銀行がお金を貸せなくなれば、ローンを組むという行為自体がなくなり、家や車は簡単には買えなくなる。
預金はなんとか戻ってきたとしても、円安とインフレで購買力は半分になるかもしれない。レストランや映画館に出かける回数は今までの半分に減らさざるをえなくなり、携帯電話や家庭用ゲーム機も贅沢品になる。
企業は株式市場からも金融機関からも資金を調達できず、運転資金が不足して黒字の企業まで倒産する。まして新たなビジネスを始めたり、会社を起こしたり、事業に投資することは困難になる。東京で建設中の大規模プロジェクトも途中で工事を放棄するか、運よく竣工にこぎつけたとしても巨大な空き家になるかもしれない。
都市は荒廃し、犯罪や暴動などの社会不安が増大する。「学校に来る生徒は減り、ホワイトカラーは仕事を奪われ、政府は治安維持に苦労することになるだろう」と、マレーシア経済研究所のモハメド・ハフラは言う。

若い世代がねらわれる

インターネットで紳士服のオーダー販売を手がけているアクロスタイルの森弘吉社長は、「日本もアメリカのような階層社会になるかもしれない」と言う。「中流ばかりだった日本に突然、富裕層と貧困層が生まれる。誰もがプラダのスーツを買える国から、アメリカのように金持ちだけが買う国になる」
変化の兆候はすでにある。都内の公立中学校3校をかけもちで教える英語講師によれば、月1万円程度の給食費と教材費が払えず、区の援助を受ける家庭が増えている。ある区では、就学援助を受ける小中学校の児童数が95年度の約10%から徐々に上がり、今では30%に近づきつつあるという。
だが、自治体や国の援助も長くは続きそうにない。今以上に失業率が高まると、保険料を払う人が足りなくなって社会保障制度がもたなくなる。奥江の試算では、現在5.3%の失業率が5.9%まで悪化すると、失業保険をいっさい給付できなくなるという。
アルゼンチンでは、年金給付の削減などが引き金になって暴動が起き、政府は対外債務の支払い停止に追い込まれた。だが日本では、給付削減より保険料の引き上げが優先される形で若い世代にしわ寄せがいきやすい。政治家にとっては、選挙に行かない若い世代のほうが切り捨てやすいからだ。
生き残った企業も新規採用をやめるため、失業は中高年だけでなく若年層にも及ぶ。「実務経験を積む機会を奪われた若年層の増加は、将来の経済成長の足かせになる」と、カリフォルニア大学サンディエゴ校の星岳雄教授は言う。「勤労意欲も失われる。大恐慌のころに世界中で見られた現象だ」
世界第2の経済大国が沈没するのを世界が放置するわけはない、との見方も日本側にはある。「円安になれば中国などアジア諸国で通貨の切り下げ競争が起こる」と、慶応大学の深尾光洋教授は言う。「その結果、アメリカまでデフレに引きずり込まれかねない」
だが、海外の専門家にそれほどの危機感はない。「日本経済が12年間低迷を続けてもアメリカは好況に沸いたし、イギリスも成長した」と、イギリスの調査会社ロンバード・ストリート・リサーチのロジャー・デュマは言う。
日本崩壊の影響を測りかねているせいもあるかもしれない。なにしろ、デフレは世界にとっても大恐慌以来初めての経験だ。
しかも日本は、これまで経済危機を経験した国々と違って外国への借金に依存していない。豊かであるため、不良債権や政府債務がとてつもない水準に達しても、もちこたえることができた。

タイムリミットは近い

個人レベルでも、失業者とその家族は大変だが、物価の下落で購買力が上がった消費者もいる。「全体としては、まだ物価下落によるプラスの効果のほうが大きい」と、生命保険協会の久保英也調査部長は言う。
だが、それも永遠に続くわけではない。問題の先送りを続ければ、90年代と同じように循環的な景気の回復と後退を繰り返しながらも少しずつ生活水準が下がり、最後は国家倒産でさらに一段の切り下げを余儀なくされる。
政策の選択肢もどんどん限られてきている。「エラーを犯す余地はほとんど残っていない。時間切れも近い」と、米国際経済研究所のアダム・ポーゼンは言う。
前代未聞の大胆な政策も必要になるかもしれない。経済学の教科書に登場するヘリコプターマネー(文字どおり空から現金をバラまくような政策)もやがて現実味を帯びてくると、ドイツ証券の松岡は言う。日銀の口座から代金が引き落とされるデビットカードを国民に配る、といったような政策だ。
明るい兆しがないわけではない。東証一部上場企業を対象とするリストラ状況指数を開発したクレディ・スイス信託銀行の最高運用責任者ケビン・ヘブナーによれば、日本企業のリストラは質量の両面で昨年秋から加速している。
「不採算事業からの撤退も含めた大胆なものが増えている。今は金融や官僚の問題に気を取られている市場関係者も、今後半年くらいで企業の回復力に気づくだろう」
最近、帰国して経済産業研究所の所長に就任した青木昌彦スタンフォード大学教授は、90年代は決して「失われた10年」ではないと言う。「これまでの制度が機能しなくなった。それをどう変えるかの模索は決してムダではない」
だが、日本の新しい発展の基礎となる制度を見つけるためには、競争促進的な税制の導入や規制緩和を通じて、企業や個人が自由に実験を繰り返せる環境をつくらねばならない。「それを妨害し続けてきたのが政治家、官僚機構、業界団体の三位一体的な結託構造だった」と青木は言う。
もし改革に失敗して生活水準が下がっても、心の豊かさまで失われるとはかぎらない。
「特別な理由もないのに親元を離れて暮らしたり、実家が米作農家なのに毎日パンを食べている人も多い。そんな余裕はいずれなくなるだろう」と、岩手県石鳥谷町に住む田中由一は言う。「コンビニの弁当を一人で食べるのではなく、手料理の並んだ食卓を家族で囲む。そういう『当たり前』の生活に戻るのも悪くないのではないか」

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