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第6回金融研究報告:政府・企業・銀行部門の信用力    日本経済センター 投稿者 招き猫 日時 2002 年 3 月 16 日 15:20:01:

2002年3月15日発表
主査:深尾光洋・日本経済研究センター主任研究員/慶應義塾大学商学部教授
総括:笛田郁子・日本経済研究センター経済分析部研究員


本報告書では、銀行部門が低収益企業の債務(銀行にとっての不良債権)を処理し、政府が銀行に公的資金を投入する過程で、金融と財政が破綻するリスクが高まることを検証する。また、財政破綻に伴うインフレを回避するためには、早い時期にデフレを阻止する必要があることを提言する。(以下に内容の一部と目次をご紹介します。)

【第1章 企業財務と会計制度変更】

 第1章では、近年の相次ぐ会計制度の変更により、企業の財務諸表や行動にどのような影響を与えてきたかをみる。企業は未だに過剰人員や過剰設備、過剰債務の「3つの過剰」を抱えており、これが実体経済の回復を妨げる要因となっている。労働コストや資本ストック、巨額の債務負担を企業部門が軽減できずにいるのはなぜか。1990年代半ば以降のデフレが企業の収益を圧迫するととともに、債務の返済負担を増大させている面はある。
 97年以降新たに導入された会計制度は、退職給付会計を除いて、企業の自己資本や収益をかさ上げする要因となっている。会計制度変更の影響は、特に大企業非製造業において大きい。
 会計制度の変更やデフレの影響を考慮して企業の実質的な収益を試算すると、全産業の収益は見かけほど回復していない。企業は、会計制度変更によって生じる当期純利益のかさ上げ額の範囲内で、特別損失を計上してきた可能性がある。


【第2章 ペイオフ解禁と銀行経営】

 2002年4月からのペイオフ凍結解除を目前に、金融システム不安が高まっている。償却しても新たな不良債権が次々と発生している中でのペイオフ解禁は金融システム全体を揺るがしかねないとして、銀行への公的資金再注入もささやかれている。第2章では、1980年代以降の銀行の財務データから収益構造を分析するとともに、独自に計算した個別行の実質自己資本比率と債務超過確率から銀行経営の実態について考えていく。
 銀行の保有有価証券の含み損益や不良債権の引当率、それに会計制度の変更などを考慮した、実質自己資本比率の推移をみると、2001年9月末における実質自己資本比率は、過去に資本注入を受けた公的資金の額を除くと、全国銀行ベースで0.72%、都銀・長信銀・信託銀を合わせた大手銀行ベースではマイナス0.14%と実質債務超過であることが判明した(図1)。業態別では大手銀行の比率が最も低く、地方銀行は相対的に高かった。

図1:銀行の実質自己資本比率の推移(PDF,70KB)

 銀行の預金残高の推移をみると、定期性預金から決済性預金への資金シフトが起きている。なかでも1千万円未満の定期預金が微増傾向にあったのに対し、残高1千万円以上の定期預金が大きく減少していることから、ペイオフ解禁に向けた動きとみることができる。しかし、預金者はまだ、個別銀行の健全性に基づいて銀行を選別するまでにはいたっていない。大きな資金シフトが起きているのは法人部門と公的部門の定期預金であり、個人の定期預金シフトはみられない。
 預金の全額保護は、ペイオフ解禁後も金融危機対応に限って継続される。預金の全額保護というシステム下での相次ぐ金融機関の破綻により、国からの補助金が9兆円近く投入されたにもかかわらず預金保険の累積赤字は3兆円を超える。ペイオフ解禁で預金保険の対象となる預金残高が減少しても、預金保険料率をすべての銀行で一律に改定することは難しく、可変保険料率の導入によってモラルハザードを防止する必要がある。可変保険料率を導入した場合にそれぞれの銀行がどのくらいの預金保険料を支払うべきかを試算したところ、預金保険料はどの銀行でも概ね上昇し、銀行ごとの預金保険料には大幅な格差が出ることがわかった。

【第3章 日本財政破綻のリスク】

 銀行部門の資本を増強することで金融システムの安定を維持することはできるが、他方で国の財政を破綻に導く恐れがある。第3章では、このままデフレが継続した場合に日本の財政事情がどこまで悪化するかを見極め、過去に財政が破綻したロシアやアルゼンチンの例を参考にしながら、債務が急激に積み上がった日本の政府にどのような問題が生じるかを考察する。
 ここでは次の2つのシナリオ――@「緩やかなインフレに転じる場合」とA「急激なインフレが起きる場合」――について考える。いずれのシナリオにおいても、当面有効なデフレ対策が打たれず、デフレが緩やかに進行するとともに、国債の信用が低下していく。この結果、2006年度には政府債務残高が名目GDPの2倍を超え、日本の国債が投機的格付けに転落する。国債の格下げによって日本の企業や家計による資本逃避が本格化し、大幅な円安が起きて2007年度にはデフレから脱却すると想定している。
 @のシナリオでは、2008年度からGDPデフレーターが年率2%程度の緩やかなインフレに転じることを想定している。この場合、政府の利払い費の増加もGDP比2%程度にとどまり、破局的な結末は避けられる(表1)。ただし、このシナリオが実現する可能性は小さい。
 シナリオAにあるように資本逃避が激しくなり、インフレが急速に進むと、事態は極めて深刻になる。インフレ率が2008年度に10%にまで加速した場合、政府債務の加重平均金利は2006年度の1.8%から2008年度には5.4%にはね上がり、2009年度には6.5%に達する(表2)。

表1:緩やかなインフレに転じるケース/表2:急激なインフレが起きるケース(PDF,54KB)

 日本政府は、金利上昇によって一般政府に含まれない郵貯や簡保、政府系金融機関などの公的金融機関が被るGDP比4%前後の赤字もカバーする必要がある。現在の名目GDP(500兆円)を基準として、国の負担増加額は50兆円にものぼり、毎年の国税がすべて消えてしまう。
 現在、日本は対外債権国であるために、欧米諸国に比べると政府債務比率が高いにもかかわらず実質長期金利は低い水準にある。国債の格下げや、現在の経常黒字が赤字に転落するような場面で長期金利が上昇する可能性がある。国の格付けは、基本的にはその国の企業や金融機関の格付けの上限(ソブリン・シーリング)となっているため、国債の格下げが起きると、政府の資金調達のみならず、民間の企業や金融機関の国際活動にも重大な影響を及ぼす。これは良くない形での金利上昇を招きやすい。
政府が急激な利払い費の上昇に直面した場合、日銀は@政府の債務不履行を回避するために国債を大量に引き受けて同額のベースマネーを市場に供給するかA短期金利を引き下げて利払い費の増大を防ぐ一方で、インフレの進行を容認するか、あるいはB国債の引き受けも短期金利の引き下げもせずに政府のデフォルトを放置するかの選択を迫られよう。いずれも破局へのシナリオである。財政破綻の危機を回避するためには、一刻も早くデフレからの脱却を図る必要がある。

【第4章 外国為替介入の評価】

第4章では、2001年7月から財務省が公表を開始した外国為替介入の実績に基づき、日本の為替介入について成功率と収益性の観点から評価を加える。1970年代後半から87年2月のルーブル合意までは、1ドル=220円を基準に為替レートここからが大きく乖離した場合に介入が実施されたようにみえる。90年代に入ってからは、1ドル=120〜125円をターゲットに介入を実施している。ターゲット・レートを大きく外れた局面では、米国との協調介入が実施されていた。
 通貨当局が過度な為替レート変化を抑えるように介入している場合、円高時には円売りを、円安時には円買いを行うため、長期的には収益が上がるはずである。70年1月から2001年12月末までの介入による累積損益額は6.5兆円となった。しかし、2000年12月まではほぼ一貫して累積損が続いており、損益が改善したのは2001年以降のことである。

http://www.jcer.or.jp/research/kinyu/kinyu.html

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