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〜〜トラブル原因究明の「怪」は見せかけの無策？〜〜

預金者無視とも言える内部での勢力争いの陰で、今回のシステム障害の原因究明はいまだ進んでいないという。今回、みずほ<8305>が金融庁に報告した内容でも原因は示されていない・・・が、しかしそれは真実なのか。

●「原因究明委員会」「経営改善委員会」はなぜ発足されないか

実を言うとみずほは、トラブルが起きた後もあまりにも無策なのだ。不祥事が起きればどんな問題企業であっても、外部から専門家などを招いて不祥事の「原因究明委員会」なるものを立ち上げるのが一般的で常識的な流れである。たとえ、それが形だけであろうとも。また、内部処分を前提するなら弁護士などから成る「経営改善委員会」を作る必要も出てこよう。しかし、そうした自浄を促すような積極的な声は、今のみずほからは聞えてこない。聞えてこないというより、言い出せない事情がそこには見え隠れしている。
システム障害の原因を本当に解き明かすには、複雑なシステムであるほど、内部担当者の力が必要だし、それを外部の監視の下で行う必要がある。しかし、みずほは原因の究明を金融庁と日銀が緊急に行っている検査に完全に委ねようとしている。一方の柳沢金融担当相も「一連のトラブルの原因究明は、みずほには期待できない」と断じている。世界最大の金融グループに対して「自分の尻も自ら拭えない、まるで赤子」―の扱いだ。さらに「金融庁こそが、このトラブルの原因を突き止めることができる」とまでコメントしている。早い話が表向きには、まったくみずほには期待していないのである。

●屋台骨を揺るがす事態に不安と焦燥

金融庁が今、最も恐れているのは、このトラブルが長期化した場合の金融不安の再燃であろう。2月、3月と危機を招くことなく無難に乗り切った金融当局は、一連のトラブルがみずほの経営の屋台骨を揺るがすことを何よりも恐れている。
そのために金融庁は、事態の収拾に向けて密かに段取りを進めている。その手始めに、以前同様にシステム障害を起こしたUFJ<8307>に対して、内部処分と再発防止策を近く公表して欲しいと頼み込んでいる。UFJもその意向に沿って行動している。みずほに対して内部処分と再発防止策のボーダーラインを具体的に示すのが狙いだ。みずほの発表がUFJが発表した内容以下のレベルでは、市場の評価が得られないことになる。これを防ぐための“苦作”ともいえようか。

●シナリオはすでに完成している〜「すべては金融庁が解決したのだ」

金融庁のメインシナリオは、こうだ。今月いっぱいをかけて、みずほ自身がすでに突き止めている原因を、「あたかも緊急検査で究明したように見せかけて」検査結果を公表する。そして業務改善命令を出して、みずほに防止策を念入りに作らせ、内部処分も大々的に行わせる。

●満を持して「安全宣言」！

そして柳沢金融相が登場する。満を持して「安全宣言」を行うというのだ。これ以上、みずほの信任が落ちることを抑え込むというわけだ。つまり、金融庁が、自ら今回のトラブルに幕を引く役割を担おうとしている。しかし、当局がなぜここまで手を貸すのか。それは、柳沢金融担当相と金融庁の森長官の晩節を、金融不安の再燃という最悪の事態で汚したくないという当局内の事情がある。
近く予想されている内閣改造で交代が確実視される柳沢金融担当相、今月末から来月にかけて退任する見通しの金融庁の森長官。一連のみずほのトラブルは、そのまま日本の金融界の脆弱さを露呈しているにもかかわらず、またもやその根本解決を先送りするという大罪を犯そうとしている。
みずほのオンライン障害は、日本という国がこれまでに経験したことの無い“社会インフラのマヒ”でもあった。その昔、経済大国・ニッポンと呼ばれ、その中でも世界有数の金融機関となったはずのみずほが無残なトラブルを起こした。さらにその無残さに輪を掛けて社内での権力闘争や、政治主導の保身が当たり前のように行われている。まもなく金融庁から出されるであろう「安全宣言」は一体何に、誰に対しての安全宣言なのか―。
（東山　恵）
　
・「金融再生最前線」〜みずほトラブル幕引きで“邪悪な思惑”＜上＞
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/09/20020509110015_72.shtml
・雪印に酷似の「みずほ」〜利用者無視の構図
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/07/20020507093517_95.shtml
・「金融再生最前線」〜大再編に大暗雲・・・みずほのATM障害
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/03/20020403103510_21.shtml
・「深層・真相」〜日銀当座預金残高が伝える“みずほ”と金融危機
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/10/20020410152513_09.shtml
・みずほの障害復旧に“ウルトラC”？〜当局の苛立ち頂点に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/25/20020425095520_71.shtml
・みずほを覆う新たな“憂鬱”〜煩雑さ極める「費用請求」
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/19/20020419101511_71.shtml
・露呈した金融界の“盲点”〜みずほ障害が示すシステム軽視のツケ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/09/20020409103016_01.shtml

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