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05/10 16:07 首都しのぐ「特権都市」　イラク大統領の故郷訪ねる　外信70

　イラクのサダム・フセイン大統領の生まれ故郷、ティクリット。
草原を切り開いてつくった人口数万人の小都市だが、出身者は「大
統領の同郷者」として政権や軍の要職を占め、政府は同市に予算を
ふんだんにつぎ込んできた。「首都バグダッド以上の都市基盤を持
つ特権的な市」と言われる。ブッシュ米政権によるイラク本格攻撃
の検討が伝えられる中、「サダムの聖地」を訪ねた。　　　　　　
　チグリス川に平行して延びるハイウエーでバグダッドから百数十
キロ北上、ティクリット市街まで二、三キロに近づくと、十数メー
トル置きに立ち並ぶ背の高い道路照明灯が現れた。　　　　　　　
　草原地帯に不釣り合いな近代的な照明の支柱にはすべて、大統領
を描いた絵が掲げられていた。首都でも見られない光景が、同市の
特別な地位を物語る。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　フセイン大統領は一九三七年、ティクリットの農家で生まれた。
少年時代に父が死亡、おじのいるバグダッドに移った。　　　　　
　七九年に大統領に就任すると、故郷には大統領宮殿、凱旋（がい
せん）門のようなゲートが威圧的な大学、病院、片側三車線の道路
などが次々に造られ、町は急成長。フセイン大統領の出身地という
だけに、湾岸戦争やイラン・イラク戦争では攻撃を受けた。　　　
　ティクリットのスタジアムで、大統領の誕生日の四月二十八日、
ラマダン副大統領らが出席し祝賀行事が行われた。スタジアムはト
イレまで大理石がぜいたくに使われており、建設に特別に力を入れ
たことが分かる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「サダムの名は世界にとどろく」「サダムがパレスチナを救う」
。市民総出でパレードを行い、大統領支持を叫ぶ。男子学生（２５
）は「今日に限らず、誕生は毎日祝っている。サダムは大統領であ
り、われわれの父だから」と語った。　　　　　　　　　　　　　
　農業が市の産業の中心とされるが、相次ぐ公共事業も雇用を支え
、それが市民の大統領への忠誠心をさらに高めているようだ。　　
　スタジアムを離れて街へと歩き出すと、銃を持った治安部隊に止
められた。写真撮影も禁止だという。「街には要人の家や車が多い
からだ」と、この隊員は明かした。　　　　　　　　　　　　　　
　ブッシュ米政権は来年早々にも、本格的なイラク攻撃に踏み切る
と伝えられている。だが、地元の女子大生（１９）は「怖さは感じ
ない。私たち国を守れる。神と強いリーダー（フセイン大統領）が
いるからだ」と話した。（イラク・ティクリット共同＝小熊宏尚）
（了）　　０２０５１０　１６０７　　　　　　　　　　　　　　
[2002-05-10-16:07]

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