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キリスト教とアメリカの政治 [’02年2月5日] 投稿者 どうもと 日時 2002 年 11 月 03 日 17:54:41:

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/yuniratera1.html


 ブッシュ大統領は1月29日の 一般教書演説で、北朝鮮とイラン、イラクの名を挙げて大量破壊兵器の開発を非難し、警告を発した。この中で「悪の枢軸」という言葉が用いられ世界に波紋をよんでいる。この言葉で思い出されるのは、冷戦期にレーガン大統領が旧ソ連に対して使った「悪の帝国」という言葉だ。レーガンとブッシュが使った「悪の」という言葉は、キリスト教の「サタン」から来ていると考えてよいと思う。
 政治や社会現象を考える上で宗教社会学というアプローチがあるが、私たちはアメリカの政治を考えるときに、イスラム社会を考える時と同じように宗教が政治に与えている影響を考える必要がある。実質的に無宗教が多数を占める日本では、政治と宗教を重ね合わせて考えることが比較的少ないが、アメリカは世界の先進国の中で宗教への関心が最も高い「宗教国家」だ。礼拝や集会に定期的に通っている者は、西ヨーロッパの2〜3倍に達するといわれる。
 宗教社会学者の鹿嶋春平太氏の著作に、『聖書の論理が世界を動かす』『聖書がわかればアメリカが読める』の二冊がある。以下この二冊をもとに、アメリカの宗教と政治と戦争について考えてみた。

 アメリカ独立戦争が終わり、1787年に合衆国憲法が制定される過程で、民主共和党と呼ばれる政党が結成された。これが現在の民主党の始めだ。共和党はそれより約半世紀後の1854年に結成される。鹿嶋氏によれば、歴史的に見ても共和党は、「国家に対して全体観をもっており、それを構造的に見て政策をうっていく志向の強いグループ」と特徴づけている。これに対して民主党は「個々人への被害を救済することに関心の重点を置くグループ」としている。
 個別救済を主眼とした民主党と比べ、国家への全体観をもちそれを構造的に考える共和党は、国難に遭遇した場合、その力を発揮し危機を回避してきたという。その例として南北戦争時の共和党の構造改革、ジョンソン民主党政権での、黒人に選挙権を与える公民権法の実施などを挙げている。                               

 さて、現在全人口の約二割強を占める宗教右翼は、アメリカの政治に強い影響力を持つ。その宗教右翼の中に「バプティスト」と呼ばれる宗派がある。このバプティスト派は、メインライン(プロテスタント本流)とともに、今日アメリカのキリスト教会の活動の二つの大きな流れと、一般的に見られているという。
 聖書は平易な言葉を使うが、教典解釈は難しい。メインラインは教理の一致で教団を統率することを、聖書解釈よりも優先する。それに対してバプティスト派は、あくまでも聖書に書かれている内容に忠実であろうとし、これを鹿嶋氏は、「聖書主義」と呼んでいる。
 バプティスト派は1854年の党結成のときから共和党と結びつく。個別救済を主眼とした民主党の理念よりも、世界を全体観をもって捉え、それに構造的な政策をうっていく共和党の理念のほうが、世界を聖書の論理で忠実に解釈しているといわれるバプティストの宗派と、整合性があるということだろう。

 バプティスト派をはじめとする宗教右翼は、1970年代後半から急速に勢力を拡大し、1980年代には、諸宗派とともに一大勢力となった。いまや宗教右翼を抜きにしては大統領選は戦えないと言われる。その宗教右翼は、バプティスト派と同じように共和党との結びつきが非常に強い。南部テキサス州から出ているブッシュが属する協会はメインラインだが、南部の教会はバプティスト派の影響をかなり強く受けており、彼自身の信仰もバプティスト的なもののようだと鹿嶋氏は推測している。

 さて、「聖書主義」のバプティスト派はその聖書をどのように解釈しているのだろう。
 私がこれらの聖書に関する鹿嶋氏の書を読んで、最も注目したのは、聖書の論理は、「福音を受け入れないで死んでいく人が少なからず出てもしかたないのだ」という論理に支えられているということだ。

 「人間はというと、これはサタンの虜となっている。これに自由意志のもとに福音を与えて受け入れたものは救い出します。受け入れないものはそのままサタンの側についている者ですから、大ざっぱにまとめていっしょに滅ぼしてしまいます。これがイエスの全体的作業の構図になっています。」 (『聖書の論理が世界を動かす』 159ページ)

 聖書解釈には多くの教義解釈があり、全く異なる誤解のネットワークが生まれ、数多くの教派が存在する。しかしバプティスト派は、いま述べたように、「福音を受け入れないで死んでいく人が少なからず出てもしかたないのだ」という聖書の論理で物を考えると、鹿嶋氏は説明する。
 私はこの論理から、広島、長崎の原爆投下と、ベトナム戦争、湾岸戦争、コソボ紛争におけるアメリカを主力としたNATO軍の空爆、そしてアメリカ同時多発テロ後の、アフガニスタンでのアメリカ軍の空爆を想起した。これらの戦争では、アメリカ軍によっておびただしい死者が出た。


 バプティスト派はアメリカの人口の一部を占めるに過ぎないが、その聖書主義は広くアメリカ国民に影響を与えているといわれる。それは民主党政権下でも、アメリカに広く潜在的に作用しているはずだ。これらの戦争によるおびただしい数の死者が出ても、なおかつアメリカは兵器を世界中に輸出し、戦争を時には仕掛けてでも続けることに、いま述べた聖書の論理が働いているのではないかと考える。

        
 参考文献

 『聖書の論理が世界を動かす』 鹿嶋春平太 1994.10.15刊 新潮社
 『聖書がわかればアメリカが読める』 鹿嶋春平太 2001.9.26刊 PHP研究所

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