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情報収集衛星、利用者側も知識が不足
http://www.asyura.com/2003/bd24/msg/1067.html
投稿者 nikkeibp 日時 2003 年 3 月 16 日 18:28:15:

(回答先: 情報収集衛星、既存衛星構造体採用が性能面の妥協強いる 投稿者 nikkeibp 日時 2003 年 3 月 16 日 18:26:57)

情報収集衛星、利用者側も知識が不足

 情報収集衛星(IGS)の性能が不十分で民生用地球観測衛星と同程度かそれ以下だとし
ても、存在意義が完全に失われるわけではない。日本が初めて対外情報を収集する専門
の衛星を打ち上げ、運用するのだ。得られた情報で、従来以上に的を射た政策判断を下
せるようになればミッションは成功と言える。そのためには、得られた情報を分析する
ための体制や、的確な観測リクエストを出す体制が必要になる。

 しかし今回打ち上げられる第一世代のIGSでは、得られた情報を生かす体制やノウハ
ウが不十分である。おそらく第一世代が運用される5年間は、ノウハウ蓄積のための試
用期間となるだろう。また、日本の政治家や官庁には、偵察衛星に対する正しい理解が
浸透していない。最悪のケースを考えると、衛星が取得したデータだけが山積し、誰も
満足に利用できなかったり、あるいは分析したふりをしたマル秘報告書が霞が関界隈に
出回るだけに終わる可能性がある。

●地上局を新たに整備、情報は市ヶ谷地区に集中

 米国防総省が運用している偵察衛星は、どれも衛星間通信装置を持ち、静止軌道上の
中継衛星経由でデータを地上局に送信できる。つまり地球上のどの地域を観測している
場合も、取得した情報をリアルタイムで送信できる。一方IGSは、光学衛星もレーダー
衛星も、衛星間通信装置を搭載していない。このため、リアルタイムで観測できるのは
地上局が存在する地域だけということになる。それ以外の地域の観測データは、一度衛
星内に蓄積した上で、地上局上空に来たところで送信することになる。

 IGSの地上局は、北海道苫小牧市、茨城県北浦町、鹿児島県阿久根町に建設されてい
る。日本列島の南北に受信局があるということは、IGSが日本周辺を撮影したデータ
を、なるべくタイムラグなしに直接受信することを目指していることを意味する。IGS
は、あくまで日本周辺向けの偵察衛星なのだ。この他海外にも受信局を設ける動きもあ
るようだ。

 これら地上局は、東京都新宿区市谷の防衛庁市ヶ谷地区に設置された解析設備とデー
タ回線で結ばれている。受信データはすべて市ヶ谷で解析されるわけだ。解析のために
必要な人員の手当も進んでおり、300人規模の解析要員が市ヶ谷に詰めることになって
いる。どの目標を観測するかは、各官庁が内閣府にリクエストを出し、運用計画に組み
込むという手順を取る。政治の側からのリクエストは、官庁経由ということになるのだ
ろう。

 問題は2つある。取得データ解析についてのノウハウが決定的に不足していること、
そして観測のリクエストを出す官庁や政治家が、偵察衛星に何ができて何ができないか
を完全には把握していないことである。

●解析ノウハウの蓄積には時間がかかる

 運用方法はそれなりに違うが、センサーで地表を観測するという点で偵察衛星は地球
観測衛星の一種である。地球観測衛星のデータ解析で一番難しいのは、「データに写っ
たものが実際には何か」を同定することだ。これはデータに写った地域を実地に調べて
確認するほかない。地球観測データの解析ノウハウとは、「このように写っているもの
は実はこれだ」という知識の集積なのである。衛星に搭載するセンサーは、それぞれ独
特の「くせ」を持つ。そのくせを理解し、観測データから自在に必要な情報を引き出す
ためには、一般に想像する以上の経験による蓄積を必要とする。解析要員の人数をいく
ら増やしても、ノウハウの蓄積がなければ十分な解析はできない。

 従ってIGSも打ち上げ後、当分は地味なノウハウの蓄積に集中せざるを得ないだろ
う。その作業は5年間の衛星寿命いっぱいかかると思わなくてはならない。衛星が上が
ったからすぐに安全保障に必要な情報が入手できるというものではない。

●“文系の知識”では衛星を使いこなせない

 衛星から得られる情報には、衛星という宇宙機特有の制限がいろいろと付いてくる。
例えば特定の地域を常時監視することができるのは、静止衛星のみである。IGSのよう
な太陽同期準回帰軌道に打ち上げられる衛星は、目標を斜め横から観測することを考慮
してもせいぜい1日数回、一回につき十数分程度しか同一の地域を観測できない。

 また、IGSはミサイルの発射をリアルタイムで観測することはできない。ミサイル発
射を監視するのは赤外センサーを持ち静止軌道に打ち上げる早期警戒衛星の役目であ
る。1998年の北朝鮮による「テポドン」発射の時には、偵察衛星と早期警戒衛星を混同
している人をずいぶんと見かけた。

 衛星というシステムを理解するためには軌道力学やセンサーの構造などの理工系の知
識、特に物理学系の知識をある程度必要とする。しかし日本の政界も官界も、文系教育
を受けた人材が主流を占めている。結果としてIGSに過大な期待をかけたり、見当はず
れな要求をしたりする可能性がある。IGS導入論議の時に、「北朝鮮上空に衛星を常時
浮遊させろ」といった政治家がいたと聞く。すこしでも物理学を知った者にはお笑い草
だが、同時にごく一般の人が陥りがちな誤りでもある。しかし、IGSに対して観測リク
エストを出す政治家や官僚がこれでは困る。

 IGSに対して的確な観測要求を出すためには、政治家や官僚にいくらかの物理学の勉
強をしてもらわなくてはならない。しかし、「私は理科は苦手で」などと公言する人も
少なくない日本社会で、政治家と官僚だけが勤勉に物理学を再履修する保証はない。


http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/mech/236000

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