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戦争の影と巨匠の死(日経マネーデジタル)【戦争と深層心理】
http://www.asyura.com/2003/bd24/msg/1104.html
投稿者 中央線 日時 2003 年 3 月 18 日 00:40:27:


 日本を代表するアクション映画の巨匠、深作欣二監督が去る12日、亡くなった。享年72歳。中学生同士の殺し合いを描いて話題となった映画『バトル・ロワイアル』の第2作目を演出途上のガンによる壮絶な死だった。
 筆者は深作監督の作品をかなり見た方だと思う。「義務教育課程にある者に見せてはいけない」とその昔、PTAが指定していたテレビ映画『キイハンター』『必殺仕掛人』などは、その全てを深作氏が演出したわけではないが、印象的な作品は必ずといっていいほど深作氏がメガホンを取っていた。そして筆者は深作作品に限ってよく覚えている。
 例えば昭和47(1972)年のテレビ界を彗星のようによぎった古典的名作『必殺仕掛人』では、深作氏は「士農工商大仕掛け」という一話を演出した。これがトンデモない話で、士農工商それぞれの階層の好事家たちに輪姦された挙句に発狂して自殺した娘の敵を山村聡、林与一、緒形拳扮する仕掛人たちがとるというストーリーである。義務教育課程にあるガキには刺激的な内容だったが、輪姦しながらそれを絵に描くというバカ者どもに仕掛けるという爽快さが実に印象的であった。今も「必殺」オタクの間では語り継がれる名作(?)である。うまくいえないが、そこに深作的予定調和の世界が描かれていた。「悪い事をした奴は無残に死ぬ」という単純な世界観ではないが、深作氏ならではの倫理観が感じられた。

 深作監督の代表作といえば東映映画『仁義なき戦い』だ。昭和48(1973)〜49(1974)年の封切り当時、筆者は中学生であったが、何かセンセーショナルな映画が封切られたということは覚えている。しかし、当然のことながら中学生が堂々と見に行く雰囲気ではなかった。同じ頃、高倉健主演の『山口組三代目』という映画が封切られた。その頃の日本映画は暴力物でなければポルノか「寅さん」かという感じだった。政治は田中角栄内閣の列島改造路線が破綻し、物情騒然としていた。そんな折の『仁義なき戦い』『山口組三代目』である。「暴力団を美化するとは何事か」と世の良識的人間の告発はその極に達し、こういった系統の映画を見に行くと補導されそうな雰囲気があった。そこで、『仁義なき戦い』見るのはやめて『エマニエル夫人』を見に行った(同じようなものか……)が、やはり封切り当時に見ておくべきであったと今さらながら悔やんでいる。
 後に高校生になって池袋の場末(この映画はこうした場所が妙に合う)の映画館で同作品を見たとき「こりゃぁPTAは推薦しないわなぁ」と思ったものだ。何しろ、冒頭から暴力、強姦などのシーンの連続だ。だいいち出演者のセリフがこのうえなく下品である。「わしら×××の××でめし食うとるんで」(深作映画ファンならどんな言葉かはすぐわかるであろう)といった広島弁のセリフが延々と続く。
 しかし、私はこの映画で、話の中でしか知らなかった日本の敗戦直後の異様な雰囲気、そこに生きた人々の捌け口のないエネルギーの充満の実態がよくわかり、どんな歴史の本よりも勉強になった。日本の戦後史は、特に高度成長期はそうしたエネルギーが一気に経済に向かって吐き出された感があるだけに、この映画で戦後史の原点といったものを再確認できたのである。


 そして遺作になった『バトル・ロワイアル』。筆者はある女性とともにこの映画を見たが、あいにくと昼食後、しかも天ぷら定食を食べた後であったため、連れは途中で暴力シーンと天ぷらの油とが化学反応を起こし、吐き気を催していた。「何ですか、これは!!」という非難の目付きにさらされたが、深作的演出に割と馴染みがあった者としては、深作ワールドの集大成のような気がした。「あの映画のコロシのシーンをここで使っている」とすぐわかるのだ。同時に悪評とは裏腹に、大変倫理的な映画だと感心したものである。戦争の体験者でないと語れない暴力の悲惨な結末が生々しく描かれていたような気がしたからだ。もっとも、深作氏はこの映画を作るにあたって「いい歳をした大人が戦争ごっこの映画を作るなんて子供みたいだ」と自己韜晦の言葉をあちらこちらで口にしていた。こうした映画とはほとんど無関係とも思える『日経マネー』のインタビューでも深作氏は嬉々として暴力映画の真髄を語った。
 深作監督ほど一種モラルに溢れた監督はいないのではないか。先に××ヌード写真を公開した有名女優のMとか、関わった男はやがて死ぬという悪女の典型のような女優のOなどとの不倫関係はご愛嬌。昨年末、深作氏との関係を本で暴露したOとは関わらない方がよかったようにも思うが(苦笑)、何度も週刊誌の巻頭グラビアを飾っているMとの関係は世のおじさん方が地団駄踏んで悔しがる話で何とも痛快である。

 一方で、深作監督には誰もが認める名作がある。真珠湾奇襲までを描いた日米共同合作の『トラ・トラ・トラ!』である。昭和45(1970)年の作品である。巨匠・黒澤明監督が米側とトラブルの末降板した後を受けて、日本側の監督になったのが深作氏と日活出身の舛田利雄氏であった。
 これはもう何度見ても名作といえる。監督の話を後回しにするが、だいいち俳優陣がよい。日本側は山村聡、東野栄治郎、田村高広、北村和夫、内田朝雄など。米国側が『第三の男』のジョセフ・コットンのほか、ジェイソン・ロバーズ、マーティン・バルサム、E・G・マーシャルなど。これ以上の人たちは望めないという演技力豊富な俳優たちの重厚な布陣。深作氏の演出力も冴えていた。最近の戦争映画は軍人がだらだらとしており見るに耐えないが、この映画の軍人役の俳優はそれはそれは見事に決まっている。山村聡演じる山本五十六連合艦隊司令長官など、本物の山本五十六が見たら「俺はこんなに立派だったのか」と感動するであろうくらいキマッテいた。しかも変に物語的ではなく、実録風に淡々としていたのもよかった。実録――『仁義なき戦い』で用いたこの手法が深作氏の真骨頂であったように思う。黒澤監督ではこうはいかなかっただろう。物語的に流れたはずである。やはり真珠湾攻撃のような題材は深作氏が適任だったのである。
 深作氏の作品を見ると、暴力とかアクションの背後から必ずといっていいほど、「戦争」「昭和20年」「敗戦」「原爆」が浮かび上がる。それを境に全ての価値観の転倒を迫られた時代に生きた貴重な証人でなければ描けない重層的な世界がそこにはあった。イラク、北朝鮮問題など世界に再び大戦争の影が忍び寄ってきた今、「戦争という最大の暴力」(『仁義なき戦い』の最初のナレーションの一節より)を繰り返し告発した深作氏が亡くなったことはかえすがえすも残念といわざるをえない。(音羽屋半右衛門)

(写真は『日経マネー』で『バトル・ロワイアル』の制作意図などについて語る深作監督=2000年11月

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