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世界を不幸にするIMF
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投稿者 てんさい(い) 日時 2003 年 2 月 16 日 03:56:49:

■■ Japan On the Globe(280) ■■ 国際派日本人養成講座 ■■■

The Globe Now: 世界を不幸にするIMF

 諸国民の富を使って「市場原理主義」を押しつけ、失
敗しても責任を問われない不思議な国際機関。
■■■■ H15.02.16 ■■ 38,655 Copies ■■ 723,663 Views ■■


■1.世界の貧困の原因は?■

 2001年のノーベル賞経済学賞を受賞したジョゼフ・スティグリッツは、1997年に世
界銀行でチーフ・エコノミスト兼上級副総裁としての勤務を始める前夜、記者会見で
こう抱負を述べた。

 経済学者としての現在の最大の挑戦は、拡大している現代の貧困の問題に取り組む
ことだと思っている。一日1ドル以下で暮らしている人びとは、世界で12億人いる。
一日2ドル以下の人びとは28億人だ。世界人口の45%を上回る。彼らのために何
ができるか? 貧困のない世界という夢を実現するために何ができるのか? せめて
もう少し貧困のやわらいだ世界を、という夢なら叶えられるのか? [1,p47]

 世界の貧困に挑戦するという、まさに経済学者としての責務にスティグリッツは真
っ正面から取り組もうとしたのである。しかし世界銀行でこの問題に取り組んでいく
うちに、彼は驚くべき発見をする。

 それが難しい責務であることはわかっていたが、まさか発展途上国の直面している
主要な障害が、人工的な、まったく不必要なもので、しかも(ワシントンの世界銀行
の)通りの向かい側に本拠をかまえる姉妹機関のIMFにあるとは当時、思ってもい
なかった。[1,p47]

 世界の貧困と戦うためには、それを作り出しているIMFと戦わねばならない、そ
う考えてスティグリッツがまとめたのが、「世界を不幸にするグローバリズム」[1]で
ある。今回はこの本にしたがって、スティグリッツの訴えを聴いてみよう。

■2.アジア通貨危機■

 IMFの正式名は、International Monetary Fund、国際通貨基金。1930年代の大恐
慌の原因となった経済政策の大失敗を繰り返さないために国際金融システムの安定を
確保する事を目的として、1945年12月に設立された。その活動の中心は国際収支に関
する問題を抱える加盟国に信用や融資を提供し、調整と改革の政策を支援することで、
2002年6月時点で88カ国に対し約880億ドル、10兆円規模の融資をしている。[2]

 問題を抱える国に融資を行う機関がどうして貧困を作り出していると、スティグリ
ッツは言うのか? 1997年のアジア通貨危機を例に見てみよう。この年の7月2日、
タイのバーツが一晩にして約25%も急落した。それまで大量に流入していた投機資
本が一斉に、流出し始めたのである。タイではこの年、国内総生産(GDP)の7.9
%に相当する額が流入から流出に逆転した。

 投機家の手口はこうだ。まずタイの銀行に行って240億バーツ借りる。もとの相
場は1ドル=24バーツだったので、これを10億ドルに換えることができる。そし
て1週間後にバーツが1ドル=40バーツとなると、6億ドルを240億バーツに換
えて、銀行に返済する。4億ドルが自分の手元に残る。わずか1週間、自己資金ゼロ
で、4億ドルが手に入るという魔法である。そして大量にバーツを売り浴びせれば、
タイ政府は買い支えられず、バーツは確実に安くなるのである。

 通貨危機は、マレーシア、韓国、フィリピン、インドネシアと広がった。失業率は
タイで3倍、韓国で4倍、インドネシアでは10倍に跳ね上がった。GDPは大きく
落ち込み、98年にはタイで10.8%、韓国で6.7%、インドネシアで13.1%下が
った。それにつれて貧困層も拡大し、韓国の都市部では3倍、インドネシアでは2倍
となった。

 IMFの目的が、「国際金融システムの安定を確保する事」だとすれば、こういう
通貨危機を防げなかったこと自体が、IMFの失敗と言えるだろう。しかしスティグ
リッツは、IMFはこの危機をさらに拡大した、と指摘する。

■3.IMFの口出し■

 まずIMFは先進各国からの援助も含めた1千億ドル(12兆円)以上もの救済資
金を提供して、危機に瀕した国々の為替相場を維持させようとした。投機資金がその
国の通貨を大量に売ってドルに換えようとしても、外貨準備が十分にあれば耐えられ
るだろうとIMFは考えていた。

 しかし、為替相場維持の効果は一時的なものであり、投機資本の集中攻撃にあっけ
なく相場は下落してしまった。また援助資金は、欧米の銀行の貸付け返済に回された
ので、その国への支援というより、欧米銀行への援助となってしまったのである。

 さらにIMFは融資に対して、物価上昇率や成長率、失業率など、多い時は100
以上もの貸付け条件を設定し、その上これは30日間で、あれは90日以内に、と厳
密な達成期限を設定する。その中には金融危機と関係ない項目も含まれている。たと
えばインドネシアに対しては、食料とパラフィン油(貧困層が調理に使う燃料)への
補助金廃止を要求した。これなどは、経済政策というよりも社会政策であって、金融
危機とは何の関係もない。

 たとえて言えば、銀行が金回りが苦しくなって個人商店に対して、「こんな経営状
態で子供のおやつに金を使うのは問題だ、おやつをやめさせることを条件に融資して
やる」というようなものである。とんだ内政干渉だが、融資をしてもらえなければ、
店がつぶれるというのでは、無法な条件も呑まざるをえない。

■4.高みの見物■

 IMFの融資条件が本当に危機脱出のために有効ならこういう口出しも許されよう
が、スティグリッツはその内容が誤っており、危機を逆に拡大してしまった、と言う。

 IMFは、為替相場を維持するためには、外国資本の流入が必要であり、そのため
には金利を引き上げろ、と要求した。それも25%以上にも。これは単純明快な正し
い理論である。高金利による当該国の企業倒産を考えに入れなければ。

 通貨危機に襲われたアジア諸国では、企業は株式による自己資本よりも、銀行など
からの借り入れに頼っていた。したがって金利の上昇は企業経営に甚大な影響を与え
る。金利が25%にもなったら、投下資本に対してそれ以上の利益を出せない企業は
やっていけなくなる。

 当時、アメリカでは、連邦準備銀行が0.5%ほど金利を上げようとして、クリント
ン政権はそれによる景気後退と失業率上昇を恐れていた。もしIMFが米国に25%
もの高金利を要求したら、クリントン大統領は、IMFが米国経済の破滅を企んでい
る、と非難しただろう。(もっともIMFの主導権を握っているのはアメリカなので、
そもそもこんな要求をするはずもないが。)

 しかし、融資を受けるためにアジア諸国はある程度、IMFの要求を聞き入れなけ
ればならなかった。その結果、インドネシアでは全事業の約75%が経営難におちい
り、タイでは銀行融資の50%近くが焦げついた。いくら高金利でも、貸付先がいつ
倒産するか分からないような国に海外資本が流入するはずもない。

 スティグリッツはIMFに方針を変更するよう訴えた。このまま高金利を続ければ、
どんな悲劇が起こるか分からないとも指摘した。返ってきた返答は、「あなたの正し
さが証明されたら、そのとき方針を変えましょう」。IMFが高見の見物を決め込ん
でいる間に、タイやインドネシアや韓国の国民が長年汗水垂らして築き上げた企業や
商店が、次々と倒産していった。

■5.ついに暴動発生■

 IMFはまた金融機関の体質を問題にして、自己資本比率(使用総資本に対する自
己資本の割合)の基準を直ちに満たすか、それが出来ない銀行は閉鎖するよう要求し
た。自己資本比率を高めるには、新しい資本を株主から集めるか、融資を減らすしか
ない。経済が下降している中で新しい資本を集めるのは難しいので、新たな融資を断
ったり、貸付先企業に返済を迫った。その結果、ますます多くの企業が倒産し、銀行
側も不良債権が増えて、体質はますます悪化した。

 インドネシアでは16ほどの銀行が閉鎖され、さらに多くの銀行が閉鎖されるかも
しれない、という通告が出された。預金者たちは自分の預金を守ろうと、国営銀行に
乗り換えたため、残っていた民間銀行もたちまち顧客を失った。

 スティグリッツの「どんな悲劇が起こるか分からない」という警告は、98年5月の
インドネシアでの暴動となって現実化した。数万人が暴動に加わり、多数の商店、銀
行が略奪・放火され、約30カ所で火の手が上がった。

 IMFは230億ドルを提供したが、それは為替相場を支えるためと、外国の投機
資本を含む債権者を救済するだけであった。インドネシアの貧困層への食糧と燃料の
補助金はそれよりもはるかに少額であったが、徹底的にカットされ、その翌日に暴動
が起きたのである。暴動は、投資対象としてのインドネシアの信頼性をさらに傷つけ、
いっそう外国資本を遠ざけることになった。

■6.IMFの言うことを聞かなかったマレーシア■

 IMFの言うがままとなって、壊滅的な打撃を受けたインドネシアとは対照的に、
隣国マレーシアのマハティール首相はまったく独自の行動をとった。1ドル=3.8リ
ンギットに固定し、外国資本の引き上げを12ヶ月間、凍結した。IMFのエコノミ
ストは、そんな規制を始めたら外国からの投資は激減し、株価は下落して大変なこと
になるだろう、マレーシアは根本的な問題に対処するのを先延ばししている、と非難
を浴びせかけた。

 一方、スティグリッツ率いる世界銀行のチームは、マレーシア政府に協力して、直
接的な資本取引規制よりも、国外に流出する資本に税をかける出国税方式への転換を
提案した。税金なら段階的に規制を調整できるからである。

 この方式は順調に機能して、マレーシアは一年後、約束通り、出国税を撤廃した。
規制によって投機資本の攻撃から通貨を守りつつ金利は低く抑えたので、企業の倒産
も少なく、IMFの処方箋にしたがったタイやインドネシアなどよりも下降は浅く、
回復は早かった。その後、経済の安定性が評価されて、外国からの投資はむしろ増え
たのである。

■7.ぶちこわされた日本の救済提案■

 97年秋、日本は「アジア通貨基金」の創設に1千億ドルの提供を申し出た。危機に
見舞われたアジア諸国が必要としている景気刺激策に資金を提供するためであった。
これが実現していれば、アジア諸国はIMFの要求する緊縮策をとらなくとも、必要
な資金を得られ、さらにそれを景気刺激策に用いることによって、インドネシアが陥
ったような壊滅的な打撃は避けることが出来たであろう。スティグリッツは言う。

 日本がIMFの行動に強く不賛成の意を示していたのは広く知られるところだった。
私は何度も日本の上級官僚と会談していたが、彼らはそこでIMFの政策にたいする
疑念を表明していた。それは、私自身の疑念とほとんど同じだった。[1,p167]

 しかしIMFとアメリカ財務省はあらん限りの手を使って、日本の提案を握りつぶ
した。日本の提案が通れば、それはまさにIMFとアメリカのリーダーシップをゆる
がす脅威になるからだった。IMFは各国に市場競争を強く訴えていたが、自分自身
が競争にさらされることは好まなかったのである。さらに日本のアジアでのリーダー
シップに反対する中国も日本案潰しに加担した。

 しかし事態が悪化するに従って、IMFとアメリカ財務省も、東アジアの不況を無
視できなくなり、日本は再度300億ドルの提供を申し出て、今度は承認された。だ
がアメリカはそれでも資金は景気刺激に使われるべきではない、企業と金融の再構築
に使われるべきだと主張した。それは、実質的にアメリカを含む外国の債権者を救済
しろ、という事だった。スティグリッツは言う。

 アジア通貨基金のぶちこわしはいまでもアジアで恨まれており、多くの役人が怒り
をこめて私にその話をしたものだ。危機の3年後、東アジア諸国はついに結集してア
ジア通貨基金にかわるものをつくりはじめた。今度はひそかに、もっと穏健なかたち
で制度づくりがなされ、名称もあまり害のないように、創設が決まった場所であるタ
イ北部の都市の名をとって「チェンマイ・イニシアティブ」と名づけられた。[1,p16
8]

■8.「民主主義に反する姿勢」■

 政府の規制を悪とし、すべて自由な市場に任せるべきだというIMFの「市場原理
主義」はアジアだけでなく、アフリカ諸国や南米、旧共産主義諸国においても悲惨な
結果をもたらし、特に貧困層の生活を悪化させた。そこでの「決定はイデオロギーと
誤った経済学の奇妙な融合にもとづいて下され、ときにドグマが特定の人々の利益を
厚くおおい隠しているように見受けられた」とスティグリッツは指摘する。

 IMFの幹部の多くは金融界出身であり、またそこに戻っていく。アジア危機の際
にIMFで大きな役割を果たしていた副専務理事のスタンリー・フィッシャーは、退
任するとすぐにシティ・バンクを傘下にもつ巨大金融会社シティ・グループの副会長
に収まった。その取締役会長ロバート・ルービンはクリントン政権の財務長官で、I
MFの政策形成に中心的な役割を果たした人物である。スティグリッツ曰く「フィッ
シャーは言われたことを忠実に実行して、十分にその報酬を得たというわけだろうか。」

 IMFは諸国民から集めた資金を使って、危機に陥った国に異論の多い政策を押し
つけ、それが悲惨な結果を招いてもその責任を問われない。そこでの議論は密室の中
で行われ、その決定が「特定の人々の利益」のために行われているという疑いが持た
れている。それに対して貧しい人々は暴動を起こすよりほかに、抗議する術を持たな
いのである。スティグリッツの言うように、IMFの姿勢は「そもそも民主主義に反
する」と言うべきであろう。(文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(071) ビル・トッテン氏の警鐘
階級搾取の行われるアメリカ社会
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog071.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
1. ジョゼフ・スティグリッツ、「世界を不幸にしたグローバリズム
の正体」★★、徳間書店、H14
2. IMFの概要
http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/glancej.htm


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