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日中関係:盛り上がる経済と冷え込む政治 ―関志雄と馮昭奎の対談録― [中国経済新論]
http://www.asyura.com/2003/bd24/msg/946.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 11 日 19:31:58:


2002年、日中両国の貿易総額はすでに1000億ドルを超えた。しかしこれと同時に、釣魚台(日本名:尖閣諸島)問題、小泉首相の靖国神社参拝などによってもたらされた政治摩擦は、両国民衆間の対立を激化させている。なぜ、両国の経済関係は盛り上がる一方で、政治関係が冷え込むのか、中国社会科学院日本研究所研究員馮昭奎と日本経済産業所上席研究員関志雄が、今回これについて議論した。

経済関係の「盛り上がり」と政治関係の「冷え込み」

馮:日中貿易の額は三年連続で記録を更新しました。2002年、両国の貿易総額はすでに1000億ドルを超えています。日本は十年連続で中国にとっての最大の貿易パートナーとなり、中国に対する直接投資も明らかに回復しつつある。国別では、日本は米国に続いて、中国に二番目に多く直接投資を行っている国なのです。

関:2002年、アメリカに代わって中国は日本にとって、最大の輸出入相手国となりました。同年の日本の対中輸出も、すでに対米輸出の半分を超えています。この勢いで発展していけば、これから数年間で、中国は日本にとっての最大の貿易パートナーになる可能性が十分あるのです。2001年、日本のアメリカ、EU、NIEs及びASEANに対する輸出がいずれも減少したにもかかわらず、中国に対する輸出だけが増加しています。対中輸出の大幅な増大は、日本の輸出拡大と経済回復にとって、重要な牽引力となりつつあるのです。

馮:しかし、2002年の瀋陽領事館事件から、2003年初頭の釣魚台問題、そして最近の、小泉首相の靖国神社参拝の問題など、両国の政治摩擦は絶えません。また、日本国内では、「中国脅威論」、「中国崩壊論」が大いにもてはやされ、日中関係では、「経済関係が盛り上がっているのに対して、政治関係が冷え込んでいる」という状況が起きています。日中関係におけるこうした歪んだ現実の背後には、大局観に欠けた日本の対中国政策が深く関係しているのです。

関:この問題には、日本の政治家の素質と選挙制度が大きく関係していると私は思います。現在の小選挙区比例代表制では、政治家達が最も関心を持っているのは、選挙区内のことにであって、決して国家のことではない。従って、彼達の度量はあまりにも狭く、いかにより多くの票を獲得できるしか考えていません。選挙はそもそも国内事情のみに左右されるため、日本の政治家達は、日本の国益を考慮した上で対外戦略の策定に精力を費やすインセンティブが働かないのです。国内問題を対象とする選挙で選ばれた政治家達は、国家の根本と長期的な利益判断の能力をそもそも身につけておらず、ある意味では、官僚にすら及びません。なぜなら、官僚でさえ、経済と産業の発展を推進するために、経済グローバル化の現実から対外関係を調整するからです。

馮:私も日本の政治家達は、「戦術」を重視し、「戦略」を軽視する傾向があると思います。彼らは広範な視野を持たず度量が狭い。また、彼らの外交に対する認識は、経済グローバル化との現実から大きく乖離しています。おっしゃる通り、日本の政治制度は、日本人政治家の近視眼的な視野と「戦略の困窮」をもたらす根本的な原因となっています。いかに中国との関係を対応すべきか、これこそ日本にとって、長期的な視野に基づく外交戦略を測定する試金石となるでしょう。なぜなら、中国は日本のすぐそばにあり、しかも台頭しつつある大国だからです。中国共産党第十六回大会では、「近隣友好、近隣団結」の外交方針を明白に打ち出しましたが、「孤掌鳴り難し」という諺のように、日本側が友好、団結の努力をしなければ、中国側の努力だけでは、友好関係をうち立てることはできないのです。

関:残念なことに、日本の政治家の中で、積極的に日中関係の発展に努力しつづけ、しかも言行一致である人はあまりにも少ない。現在、多くの日本の政治家達は、中国の発展を脅威と思い、中国の発展を牽制しようとしています。しかし、昨今のアジア金融危機で示されたように、日本にとっては近隣諸国の停滞と混乱よりも、その繁栄と安定のほうが自らの国益になると、私は一貫して主張していのです。

「後ろ向き」の日中関係

馮:昨年、小泉首相が「中国の台頭は日本にとって脅威ではない」と発言したにもかかわらず、実際には、日本の政治家達は、実質的な考えの転換がいまだにできていません。注目すべきは、周恩来総理が1954年の時点ですでにこの問題を予測していたことです。日本からの客人に対して、まず「おそらく皆さんはこのような質問をするでしょう。中国が工業化を実現した。日本も工業化を実現した。それでは衝突が生じるではないか。」と自ら問題を立て、そして、周総理は、智恵に溢れ、洞察力の高い観点を披露したのです。「仮に日本が永遠に工業国で中国が農業国だとしたら、両国関係はよくならない。日中両国の工業化こそが、平和な共存共栄への唯一の道なのです」。言い換えれば、中国の工業化は日中両国にとって、「ウィン・ウィン・ゲーム」ということです。今日、中国が工業化への前進に伴い、日中両国間の貿易が縮小するどころか、絶えず拡大していることは、まさしくこの観点の正しさを証明しているといえるでしょう。

関:私は、問題は日本自身にあると思っています。日本経済が不況に陥って以来、経済問題の解決のメドが見られず、日本の国民は深刻な不安に包まれています。そのため、心理的な支えが必要となり、ナショナリズムが台頭したのです。かつて、アジアの中で日本は「一人勝ち」という情況でしたが、現在、中国の台頭を目にして、多くの日本人はその事実を受け入れられず、違和感に苦しんでいます。私は、日中両国は、「相互不信」の悪循環から脱出しなければならないと思うのです。弱者は、いじめられることをひたすら恐れているので、中国人は、日本のあらゆる行動を陰謀と受け止めてきました。そして、現在、逆に多くの日本人はこのような目で中国を見ているのです。

馮:残念なことに、小泉首相は政治的な目的から、靖国神社を参拝しました。これによって、かつて日本に侵略と殖民地支配を余儀なくされた近隣諸国との間に存在する、早急に解決しなければならない問題を先送りしただけではなく、逆に、こうした近隣諸国との相互関係を著しく傷つけたことは、誠に遺憾の極みであります。小泉内閣が誕生した時、その改革のシナリオが挫折したら、国民からの批判を躱すために、矛盾を海外問題に移転するだろうと広く予測されましたが、残念ながら、その予想は的中したようです。

関:私も小泉さんが首相として靖国神社を参拝することには反対です。日本では、一部の国民は身内が靖国神社に合祀されています。靖国神社を参拝する大多数の民衆にとって、靖国参拝そのものと侵略戦争を否定し軍国主義の道のりに踏み出そうとすることとは、区別されなければならないのです。歴史を歪曲し、否定しようとする者は、ほんの一部にしか過ぎません。しかし、日本国の首相としての小泉さんが靖国神社を参拝したことは、普通の民衆による参拝と本質的な違いがあります。この行為は、過去の侵略戦争を反省しようともしていないと、私は思わずにいられないのです。
私が最も心配しているのは、現在の政治家の多くは、戦後生まれであり、彼達の歴史認識と責任感がますます薄れていることです。最近、ある在日中国人を対象とする新聞が、近年の日中関係を評論する記事のタイトルとして、「後ろ向きの日中関係」と書きましたが、この言葉は、現在の両国関係の特徴をよく現わしていると思います。

馮:問題は日中関係を「後ろ向き状態」にした張本人はだれだということですね。第二次世界大戦の戦犯が合祀されている靖国神社を参拝することは、日本による侵略と殖民地支配を受けた近隣諸国の民衆にとって、いまだに癒されていない傷口に塩を塗る行為に等しい。これこそ、典型的な「後ろ向き」の姿勢であって、歴史の流れに逆らう行為に他なりません。

日本は中国を理解していない

関:日本では、中国を本当に理解している人は決して多くありません。その上、本当に中国を理解している人々の影響力が欠けているのです。中国研究の分野において、非常に活躍し、影響力のある一部の学者達は、中国の発展に対して、対立的な立場と悲観的な予測を持っています。そして、彼らの弟子の多くが、関係する学界の主流を成している。私が見るところでは、冷戦時代、長期にわたって「チャイナ・ウォッチャー」(China Watcher)と呼ばれてきた多くのいわゆる「中国問題の権威」と呼ばれる人々には、20世紀1960〜70年代の中国「文化大革命」時代の古い思考で現在の中国を研究し、そして中国の「影」の部分を必要以上に拡大して見る傾向があるのです。

馮:本当は中国を理解していない「中国問題専門家」に、私は三つの助言をしたい。第一に、中国問題を考える際、表面上のことをざっと見るのではなく、中国社会に足を踏み入れて、事実を厳格に観察することが求められること。第二に、ひたすら自分の研究成果の「商品化」に走らないこと。第三に、中国に対する理解だけではなく、世界全体を見る目を養うことが欠かせないということです。中国は世界の中での中国であり、日本も世界の中の日本です。ですから、日中関係は、世界の中での日中関係なのです。
一部の日本人の国際政治学者には、「現実主義」がその理論の基礎に横たわっていて、それは、すでに彼らの考え方のアプローチになっています。彼達は国別の力関係に最も注意を払い、国際関係がまさしく力関係の現れであるとのスタンスに立っている。そのため、彼らは中国のような巨大な近隣諸国の実力の成長に対して、非常に敏感で、こうした成長は、従来の国際関係の枠組みを破壊し、日本にとっての脅威になるだろうと考えているのです。しかし、私は少なくとも、彼らとは別に、日本では国家間の協力、協調、そして共同利益の側面を重視する学者達が存在していることも知っています。そこには、一部の経済学者、さらに一部の政治学者がそれぞれ含まれていますが、しかし、日中関係に関して、こうした学者は、決して主流ではないのです。

関:私は、日本における中国研究には、ある特徴があると思います。つまり、国際政治の角度から中国を研究する成果には、中国と対立する立場が採用されることが多いのに対して、経済発展の観点から中国を研究する成果には、中国と協力する姿勢がよく見られる。経済問題を深く理解した一部の経済学者達は、比較的客観的に問題を観察し、経済問題に対する深い洞察から、中国との友好関係を主張しているのです。こうした学者の中で、少なからぬ専門家や官僚達が、日本の根本的かつ長期的な利益から、アジア諸国との協力を加速するよう積極的に主張しています。そして、そのなかには、多くの良い意見が見られます。
しかし、一人のエコノミストとしての「偏見」かもしれませんが、私は政治を研究する学者の一部は、ひたすら矛盾点を探し出し、問題の拡大を煽る傾向があるように思えるのです。日中の間にはあまりにも対立点が多く、真ん中に立とうとすると、双方から批判を浴びることが多い。日本では、日中関係に携わる一部の有識者は、「親中派」と呼ばれ、場合によって、「売国奴」と罵倒されることすらあるのです。

馮:国際関係上、敵対または、戦争状態の時のみに、相手国寄りの人を「売国奴」と呼ぶものですがね。アメリカと日本との関係を例にすれば、アメリカ政界、学界の中にも、一部「親日派」と呼ばれる人々が存在していますが、彼らはただ日本を重視し、良い関係を結ぼうとするだけで、「売国奴」とは全く無関係で、「親日派」という言葉自体にも特にマイナスの意味合いは含まれていません。しかし、日中両国の間では、「親日派」、「親中派」といった言葉は、明らかにマイナスの意味合いを持ち、ある意味で罪名の様な扱いを受けている。このように、両国の外交関係は早々と「正常化」を実現したにもかかわらず、本当の両国の関係はいまだに「極めて正常ではない」状態に陥っていることが、ますます浮き彫りになっています。

関:日中関係については、メディアの影響力を低く評価することは出来ません。両国のメディアは、対立を強調する声ばかりが大きく、逆に「ウィン・ウィン・ゲーム」を主張する声が殆ど聞こえてきません。また、両国は互いに「良いニュースは隠し、悪いニュースばかり流す」傾向があり、とりわけ、相手国の良い面に関する報道を避けようとしている。例えば、石原慎太郎東京都知事が中国の悪口を言うと、中国のメディアは大いに報道しますが、日本人が中国のことをいくら誉めても、中国のメディアに取り上げられることは非常にまれなのです。

馮:これに関しては、日本のメディアにも当てはまりますね。日中関係の積極的な面を報道せず、マイナスのニュースを一方的に宣伝してしまう傾向も見られます。一例を挙げると、中国共産党第十六回大会の報告では、「近隣友好、近隣団結」の外交方針が打ち出されましたが、日本のどの新聞にも見当たらない。しかし、一旦、日中間にマイナスの要素が働きを見せたら、日本のメディア、とりわけ、右翼的なメディアはすばやくその宣伝をするのです。いかにして、「ウィン・ウィン・ゲーム」を主張する声を大きくし、少なくとも、事実を客観的に伝えることができるのか、これは両国のメディアにとって、真剣に考えるべき問題です。私はとても理解に苦しむのですが、これほど多くの日系企業が中国に貿易を行い、直接投資を行っているのですから、本来、彼達は日本人の中国に対する理解を促す役割をもっと担うべきではありませんか。

関:多くの日本企業は、日本人の中国に対する理解を促すことに貢献したと言えると思いますが、確かにご指摘の問題も現実に存在しています。グローバル的な競争の中、ますます多くの日本企業は成功を収めていますが、一方で経営不振に陥っている企業も少なくない。成功した企業は何も語らず、経営に苦しんでいる企業ばかりが、中国の製品に「脅かされた」と、大声で叫んでいるのです。
それから、私は一部の中国本土におけるサイトの内容について、少し話したいと思います。それらの言論は、あまりにも感情的であると言わざるを得ません。例えば、「もしまだ南京大虐殺を認めようとしない日本人がいるならば、われわれが東京大虐殺をせよ」といった内容の書き込みを見たことがあります。現在、日本では、一部の人々が、ある中国の政府筋のサイトでの言論をわざわざ収集し、それを本に編集し、出版しようとする計画があるのです。彼達の本来の目的は、金儲けであるかもしれませんが、結果的には、「中国脅威論」を主張する勢力に、良い材料を提供することになるのです。

馮:その問題の根本は、中国国内であれ、海外であれ、だれでも自由にサイトで自分の考えを主張でき、しかも殆ど管理されていないことにあると思います。その中の多くの意見は決して民衆の考え方を反映したものでもなく、もちろん、政府の観点を代表するものでもありません。これからは、日中両国の若者はネット上での交流を展開し、場合によっては、論争を展開したほうがいいと思います。日中間の新しい形での交流、とりわけ両国の新しい大衆文化に対する相互理解と交流は、両国関係の正常化に積極的な働きを与えるものと考えられます。

「日本にとって中国は非常に重要である」との認識が台頭しつつある

関:近年、「中国の存在はますます重要である」との認識が日本国内において、広がりを見せています。1998年に、私が日本人のために「最新中国経済入門」を書いた時に、日本の出版社は殆ど興味を示しませんでした。しかし、現在、こうした状況は完全に変わっています。中国を紹介する図書が非常に良く売れており、普通の読者の中国に対する関心が高まっている。特に中国語を勉強しようと希望する人々が増えていて、中国語教育に携わる学校に進学するための競争倍率が高くなっています。

馮:日本の産業界も、中国との対話を望んでいますね。例えば、最近、日中経済協会理事長である緒方謙二郎氏は、「日本自動車業界の希望に基づき、日中経済協会は両国の自動車に関する対話の再開を希望している」と発言されました。しかし、なぜ経済交流の拡大を政治領域に反映することが出来なかったのでしょうか。

関:仮に「経済基礎は上層関係を決定する」という観点に基づけば、われわれは今後、日中両国関係の発展に楽観的でいられます。日本の企業が大挙して中国に進出したのは、ここ二年ばかりのことです。こうした発展が政治の領域に現れるまでには、一定の過程が必要でしょう。最近の日中関係間でのいくつかの問題だけで両国関係を悲観的に見るのは、短絡的であると言えます。

馮:日中経済貿易関係の発展は、両国の利益と一致しています。経済グローバル化時代とは、企業、人材が国家を求め、自由に流動する時代であり、日中両国間の経済、技術及び文化交流の発展は、経済グローバル化によって決定され、阻止することができない大きな流れなのです。今後、こうした流れが政治面にも現れ、両国が積極的な対応を開始することを、私は期待しているのです。

(出所)「環球時報」2003年2月7日

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