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「円安維持政策がデフレの元凶」 週刊RR vol.48 掲載 [金融ファクシミリ新聞社]
投稿者 あっしら 日時 2002 年 12 月 24 日 18:44:39:


三國事務所 代表取締役
経済同友会 幹事
三國 陽夫 氏
                聞き手  編集局長 島田 一

――この度、「円デフレ」(東洋経済新報社刊)を出版され、デフレの原因は円安誘導政策にあるという新説を打ち出された…。

 三國 R・ターガート・マーフィーさんとの共著で、英語版が二カ月前に前駐日大使のアマコスト氏が社長をしていらしたブルッキングス研究所から発刊され、日本語版はつい最近発売された。マーフィー氏はハーバード大卒で、チェースやゴールドマンを経て現在は筑波大で先生をされている。また、先行した英語版はおかげさまで話題となり、NYタイムズ、ワシントン・ポスト、FTなどの海外を代表する新聞に取り上げられた。

――デフレ対策は円安誘導が有効という意見が多いだけに、日本でも間違いなく話題となる…。

 三國 本書の趣旨は、日本政府が輸出振興のために続けてきた円安誘導策がデフレの大きな要因になったということであり、また、この先、さらに円安にすると、むしろデフレが加速することを歴史的に検証して説いたものだ。

――そのロジックは…。

 三國 日本は恒常的な貿易黒字国であり、輸出で稼いだお金をいわば取り立てずに資本輸出している国だ。資本輸出をすれば円高にならずに済む。ところが、この資本の流出が国内に資本不足を生み、デフレの要因になっていると考えられる。

――円安維持のための資本の流出がデフレを生んでいると…。

 三國 もう少し解り易く説明すると、ソニーやホンダなどの輸出メーカーが米国に輸出して得たドル建ての代金は、賃金など日本国内の支払いに充てるために円に転換される。そして代金は回収される。しかし、日本はほぼ恒常的に輸出超過であることから、海外にある円は少なく、ドルは多い。このため、輸出代金のドルを円に替えると少ない円にドルが殺到してしまうので円高になってしまうということだ。円高になると輸出が難しくなることを嫌い、資本輸出で円安を維持することになる。つまり、そこでは本来日本に持って帰らなければいけないお金が資本輸出をすることで米国にとどまってしまうことになる。

――円安を維持するために、輸出した代金を米国に置いておくと…。

 三國 輸出メーカーは日本の銀行や生保にドルを売って円を手にする。そして、銀行や生保はドルのまま持ち続けて資本輸出とするが、そのドルの裏打ち資金は日本国内で集められた預金や保険料だ。ドルに転換されていなければ、その預金や保険料は本来、円で日本国内で与信に向けられていたはずだ。これが行なわれずに米国に資本輸出されたことになる。そして、その分、日本国内では資本が不足することになり、日本のデフレの大きな要因となると指摘しているわけだ。

――なるほど…。

 三國 その金額が小さければデフレの要因になることはないが、経常収支の累積額は二百兆円に上っている。つまり、日本のマネーサプライが六百兆円規模であることから、その三分の一にあたる規模になっており、その分、日本国内では使えないお金になっているというわけだ。これに対し、この二百兆円が円建てで、国内で使われているお金であったら、A銀行から借りた人が決済してB銀行の口座に振り込み、B銀行はそのお金で融資を行うというように、国内でお金がぐるぐる循環する。

――円の預金で集めたお金を銀行がドルに転換すると、そのお金は国内では循環しない…。

 三國 ドルは米国では強制通用力があるが、日本国内では強制力を持たない。日本はお金はたくさん貯めているが、資本輸出に見合うだけ国内で使えるお金はない状況だ。マネーサプライは伸びているものの、そのかなりの部分が通貨として機能していないということになる。また、別の表現をすれば、売掛金を回収しないということで考えると、例えば銀座の高級バーのようなところは高い料金でたくさん稼ぐけれども、お客さんはツケで飲む。このため、なかなか売り上げを回収できない。といってしつこく催促するとお客さんが来てくれなくなる。売掛金だけがどんどん溜まっていく。そうなると、売り上げは上がっているにもかかわらず、回収されたわずかな現金の範囲内でしか店にお金をかけられず、銀座の高級バーは慎ましい経営を強いられると聞いている。

――銀座の高級バーと同じようなことが日本経済で起こっていると…。

 三國 この話をすると大方の日本人はそんな話は聞いたことが無いと反論する。そこで私は、過去、日本でこうしたことが無かったのかと調べたところ、昭和四年に石橋湛山が週刊東洋経済に掲載した論文を見つけた。この論文の時代背景は、第一次世界大戦で、その時日本は交戦国ではなかったため、欧米の交戦国に輸出することで、大幅な黒字になった。しかし、欧米諸国は金輸出を禁止していたため、日本はその輸出代金を金輸入で決済できず、輸出すればするほどドルを抱えていった。そしてドルを売ると、大変な円高・ドル安となってしまった。これはたまらないと、石橋湛山の論文では、輸入国にドルのまま貸しておくのが一番良いということで、貸してみたら、どんな大きな輸出製造業でも売掛金を回収しなければ成り行かない。銀行に立て替えてもらったらどうかといったが、銀行も余裕がないということで、大変に困ったという顛末が書いてある。

――第一次大戦の時にも同じ事が起こったわけだ…。

 三國 そしてその時は、ドル余剰から先物為替が立たなくなった。と思ったら大戦が終了し、今度は輸入品が大量に入ってきたため、ドル余剰は解消した。ということで湛山の論文には、第一次大戦の際の経常収支の黒字には「実に斯様な悩みがあった」と記してある。

――なるほど、今と同じだ。しかしどうしたら良い…。

 三國 やはり今の変動相場制の元では、経常黒字が出たら円高にして、そして、その円高により輸入を増やし、輸出を抑えることで円安にし均衡させ、国際間で貸借関係がないように調整するのが基本の姿だと思う。

――無理に円安を続けるとデフレになると…。

 三國 その通りだ。そして、こうした無理な円安を続けるとどのようなことになるかということも、既に一九七一年に近代経済学者三十六名が見事に予想している。それは、一九九九年に発行された牧野裕先生の「日米通貨外交の比較分析」に記されており「国際収支の黒字はわが国の資源を使って生産した価値の一部を外貨保有という形で国際収支の赤字国に提供していることを意味する。すなわち、日本では国民経済全体としての年々の消費・投資・政府支出が黒字分だけ切り詰められ、他方赤字国は年々の赤字額だけ国際収支が均衡しているときよりも多額の消費・投資・対外収支がなされる」というわけだ。

――これは大変だ。それを直す良い方策は…。

 三國 金利を引き上げて資本を国内に環流する、すなわち円の切り上げが必要だろう。しかしそうすると、米国が資本不足に陥ることから、米国はこれを簡単には許さないだろう。このため、日米相互で、この問題についてきちんと話し合うことができればデフレ解決策の第一歩になると考えている。       (了)

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