★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 議論・雑談6 > 419.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
http://www.asyura.com/2003/dispute6/msg/419.html
「投資」のイロハ
投稿者   日時 2003 年 1 月 23 日 17:57:03:

 

 道路関係四公団民営化推進委員会の最終答申・意見書について、読者のみな
さまよりお寄せいただきましたご意見・ご感想を2回にわたり、特別号として
配信いたします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■匿名希望(在米医学研究者)
----------------------------------------------------------------------
 道路関係4公団民営化推進委員会の意見書については全くをもって同感であ
る。これに同意する者にとって重要なことは、これが抵抗勢力によって骨抜き
にされるのを防ぐことであり、そのための一国民から猪瀬氏への期待をいくつ
か述べたい。

1.第一に、今後とも猪瀬氏には極力多くの場で発言をつづけてほしい。なぜ
なら最終答申・意見書に対する自民党道路族ら反対勢力の発言が頻繁に紹介さ
れるのに比較し、野党陣営や民間からの改革支持の報道が極端に少ないからで
ある。

 今回の道路関係四公団民営化推進委員会の活動は、日本国の改革を目指す具
体的行動の必要性をわれわれ一般国民にかつてないほど強く実感させた。なぜ
か? 委員会が公開され大量の報道が流れたからである。しかし直後、反対意
見ばかりが報道され、やがて関連報道自体が減ると人びとの目はまた曇ってし
まうであろう。利害が直接実感されない事項に関し、一般人の意識はマスコミ
報道に左右されるからである。とくに保守系政治家達は、多くの報道に継続性
がなく、国民は喉元過ぎれば熱さを忘れてしまうことを熟知している。

 かかる展開により、数多くの不正・失政が忘れ去られてきた。既得権益保守
勢力と拮抗し最終答申・意見書を骨抜きにされないためには、とにかく猪瀬氏
は公の場で発言を繰り返し国民への周知をつづけるべきである。既得権益保守
勢力は、改革を支持する世論が盛り上がり、彼らの選挙に影響することを最も
恐れている。

2.マスコミでの発言をつづけるに当たっては、今後とも具体的かつ統計的な
調査結果を継続的に提出し、抵抗勢力に突きつけていただきたい。

 既得権益保守勢力があいまいかつ抽象的な言葉で情勢の悪化を回避するのは
常套手段であり、われわれは国会の論戦等で嫌というほど体感させられてきた。
抽象的表現は多様に解釈することができるため、発言者と受信者との間に誤解
が生じた場合、発言者に解釈の相違という逃げ道を用意する。よって政治家や
評論家は意図的に抽象的表現を使うのである。

 猪瀬氏は自己のweb site上で調査・公表してきた国交省・公団・ファミリー
企業のもたれあいやでたらめな将来交通需要予測等の記事は、つねに具体的な
事実・統計を提示している(実際は統計にも標本採取や統計処理方法等ごまか
しの余地はあるが)。具体的な事実を知っていれば、道路族議員の「私達は道
路建設のプロだから今後も任せて欲しい」に対しては「90%以上の事業発注を
ファミリー企業に任せるような八百長プロには任せられない」と一蹴できる。
「例え赤字であっても建設が必要な道路はある」に対しては「そもそも建設の
根拠となる交通需要予測が不適当だ」と反論できる。

 さらに、猪瀬氏が公表した事実の多くは従来国民の目に触れなかった新しい
ものである。同じ議論の繰り返しはすぐ飽きられてしまうが、新しく公表され
た情報はより注目される。またそれらを小出しにすることにより、反対勢力に
迎撃態勢を準備させない効果もある。

3.他分野(官僚・政治家・学者等)の人びとと公に共闘することは猪瀬氏に
とって不適当だろうか? 思想信条の違う人びとがそれぞれの思惑を胸に集う
ことは、猪瀬氏の主張や立場をぼやけさせ抵抗勢力に何らかの反撃の口実を与
える可能性もある。しかし、いっぽうで強い逆風が吹くなか現在の猪瀬氏は孤
高というよりも孤立無援に見えてしまう。易きに、そして「多きに」流れる一
般国民がいつまでも厚く支持してくれるだろうか? 私はそれが心配である。

 口先ばかりの言論人がはびこるなかで、猪瀬氏こそは日本の改革のために具
体的に行動した数少ない民間人の一人だと私は評価している。猪瀬氏が上記の
私見に同意され、今後とも日本国のために奮闘をつづけてくださることを海の
向こうより応援しています。

===================================

■神宮司信也(金融機関勤務)
----------------------------------------------------------------------
 ファミリー企業の実態については、たいへんな執念で「資料編」まで付け、
「官」がやるとこんなとんでもないことになると、説得しています。確かに
ファミリー企業の実態解明は今回の成果のひとつでした。だから「民」でと、
こう言いたかったのでしょう。

 ファミリー企業資料編では、データ、数字でなぜ天下りがよくないのか、詳
しく説明しています。同様に、「民営化」でどういうことを狙っているのか、
なぜ「民営化」でなければならないのか、「民営化」で何が果たせるのか。こ
れらについて、データ、数字を示して、論旨展開してくれればよかったのにと
惜しまれます。

 その過程で、経営主体が「官か民か」は、じつは真のポイントではなく、
「投資の考え方」がメインテーマであることが納得できる報告書であったなら、
と思います。

 なぜなら、「失われた10年」を招来した大きな理由の一つに、日本の各経済
主体が、つまりわたしが、あなたが、「投資の考え方」について適切な訓練を
受けてこなかった、「投資の考え方」を身に付けてこなかった。それがために
いまの社会は一種「バベルの塔」状態にあり生産的な議論ができないまま、経
済が「御巣鷹山事件」の日航機さながら、ダッチロール状態にあるからです。

「民」を言い立て「採算」重視は結構だが、道路は「政」が「国家100年の
大計」のなかで決定すべきもの。「採算」などという次元の低い議論をすべき
では、そもそもないんだという主張があり、この二元論(「民」=採算=低次
元、「政/官」=国家の大計=高次元=だから「採算は二の次」)に、今回報
告書も絡め取られてしまいそうです。

「投資の考え方」についての適切な訓練の欠如。わたしが、あなたが、金融機
関に属しておれば、それは「不良債権問題」に帰結し、一般企業であれば「過
剰債務問題」「日本企業の低収益性問題」に、公務員であれば「財政再建問題」
「年金問題」に、家計主体であれば「招来への漠たる不安」に、じつは連なっ
ているのです。

「投資の考え方」のイロハが社会の基本常識、「読み書き算盤」として共有化
されてこなかった悲劇です。過去10年を覆った悲劇が、このままでは将来にわ
たり繰り返される事になります。

 今回の報告書が道路公団という「演習問題」に対し、「投資の考え方」を踏
まえた「解答例」を提示してくれる体のものであって欲しかったと思います。

 数字で話を少し敷衍しましょう。
 日本の家計には1400兆円の金融資産があると言われます。この1400兆円に、
企業、政府のものを加え、2500兆円の金融資産が日本にあります。それは銀行、
郵便貯金、年金基金等を通じて、どこかに「投資」されています。銀行、郵便
貯金、年金基金は金融仲介機関ですから、「貸出」「証券(株、債券)」の形
を取った「投資」です。

「貸出」「証券(株、債券)」は、相手にとって「借入」「自己資本」であり、
これを使い、企業がそして政府がその先で、さらに「投資」活動を行っていま
す。企業の「借入+自己資本」は1400兆円、政府のそれは600兆円。2500兆
円の残り(2500−1400−600=)500兆円は家計と海外です。今回の報告書は
政府600兆円の内、40兆円の道路向け「投資」を対象にしていました。

「企業」が「借入+自己資本」を上手く使って、売上をあげ100のものを来
年110にしてくれると収益(110−100=)10で金利、配当を払って
くれます。「上手く使って」とはつまり「投資」の巧拙です。下手な「投資」
をすると、100のものが90になり、金利、配当を払えないばかりか、その
企業の存立が危うい状態になり、極端な場合倒産に至ります。

 そうすると、「借入+自己資本」が銀行、郵便貯金、年金基金に返って来ま
せん。それは銀行、郵便貯金、年金基金の「投資」の巧拙の結果であり、下手
なことをすると、預金金利、年金給付を払えないばかりか、その銀行、郵便貯
金、年金基金の存立が危うい状態になり、極端な場合、倒産に至ります。さて
そうすると何が起きるでしょう。

 そうです、銀行、郵便貯金、年金基金の「投資」の元手は、2500兆円の金融
資産でした。そのなかの1400兆円はわたしやあなたの金融資産でした。という
ことは、企業の「投資」の、それに起因する銀行、郵便貯金、年金基金の「投
資」の失敗は、すなわち1400兆円の金融資産が、増えないばかりか、減るとい
うことを意味します。

 同じことが政府に言えます。政府は600兆円の「借入+自己資本」の向こ
う側で「投資」活動を行っているのです。これが「下手」だった。すくなくと
も道路については。だから、「投資」のイロハに則って、こういう風にこれか
らはやっていきましょう。

 今回の道路関係四公団民営化推進委員会の最終報告はそのことを言おうとし
ています。『民営化』の単語で指し示そうとした内容はそのことであったはず
です。「官か民か」が問題なのではなく、適切な「投資」だったかが本当のポ
イントなのです。

 銀行の下手な「投資」の結果が「不良債権問題」、一般企業の下手な「投資」
の結果が「過剰債務問題」「日本企業の低収益性問題」、政府なら「財政再建
問題」「年金問題」という訳です。

 この文章の前半に「バベルの塔」「ダッチロール」の単語がありました。ご
存知の方と、そうでない方とで、この文章の理解の深浅は異なります。ご存知
なければ、その説明を加えなければなりません。「バベルの塔」「ダッチロー
ル」が共有されていれば、「議論の生産性」をあげることができます。

 ちょうどそのように、「投資の考え方」が社会の基本常識、「読み書き算盤」
として共有化され、議論の生産性があがり、スピードを持って施策が立案され、
実行されねばなりません。

 しかし、今回の最終報告で「官/政」が「投資の考え方」を取入れる方向に
変っていくとはなかなか思えません。われわれの預貯金の一部は引きつづ蚕食
されつづけると覚悟すべきなのかもしれません。

(数字は日銀発表の2000年9月末の数字を、簡単化のため、すこし丸めて使っ
ています)

━━━━━━━━━━*本の検索・購入はこちらから*━━━━━━━━━━

          オンライン書店 ビーケーワン
   http://www.bk1.co.jp/s/02inose01/kenkyu/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
バックナンバーはこちら。 http://www.inose.gr.jp/mg/back.html
ご意見・ご感想はメールでどうぞ。 info@inose.gr.jp
配信の取り消し手続はこちらから。 http://www.inose.gr.jp/mg/form_2.html
猪瀬直樹の公式ホームページはこちら。 http://www.inose.gr.jp/index.html

○発行 猪瀬直樹事務所
○編集 猪瀬直樹
○Copyright (C) 猪瀬直樹事務所 2001-2003
○リンクは自由におはりください。ただしこのページは一定期間を過ぎると削
 除されることをあらかじめご了解ください。記事、発言等の転載については
 事務局までご連絡くださいますよう、お願いします。

 次へ  前へ

議論・雑談6掲示板へ



フォローアップ:



 

 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。