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西尾幹二氏:米の北朝鮮政策に誤算はないのか    ――日本は対応の危険な間違いに警告を――
投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 04 日 22:22:59:

(回答先: NPT脱退問題は北朝鮮が正当 投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 04 日 21:31:58)


 北朝鮮の核開発問題について、私はアメリカのマスコミを追いつづけて、それを参考にしながら、『Voice』3月号に「北朝鮮は妥協しない――アメリカ政府に問い質したき事」を書いたことは、今までに報告してきた。ところが同誌の刊行日は毎月10日で、これでは遅すぎると思った。

 アメリカの新聞からの拙論への引用の最後の日付は1月17日である。拙論はアメリカ大使館で必ず翻訳されるそうだ。日本の世論をアメリカ側が知るためである。けれども、どんなに早くても、アメリカ政府の日本担当者の目に触れるのは、1月17日から大略一ヵ月後であろう。タイミングが完全にズレてしまう。しかも、私の英訳文はアメリカの役人の目には触れるかもしれないが、世界中の誰もが自由に入手できるインターネットにはのらない。これでは日本の言論が世界に発信されたことにはならない。
 
 私は今度、友人の協力でアメリカとドイツの北朝鮮関連の記事を次々と入手する幸運を得た。しかし日本の新聞にかかれた言論で、アメリカ人やドイツ人やイギリス人やフランス人やロシア人にほぼ同時的に届くのはデーリー・ヨミウリやアサヒ・イブニングニュース等にかかれた特定のものに限られる。『読売』の月曜朝刊一・二面に出る論文はどうやら即座にインターネットにのるらしい。『産経』の「正論」欄は、英字紙に転訳される機会をもたないので、日本国内の閉ざされた言論にとどまる。

 日本の大部分の言論は閉ざされた侭である。それなりにレベルの高い日本の言論は月刊誌のそれで、これは世界的に確かに例が少ない。しかし日本人以外の国の人に知られることはほとんどない。週刊誌や日刊紙の言論はといえば、世界の思想と競合しきたえられていないので、閉ざされた自足状態に安住して、レベルも低い。

 日本の言論はこれでよいのだろうか。月刊誌の編集長にこの話をすると、日本の言論は日本人によませるのが目的だから、それでいいのだという。しかし時代は今急速に動き、果たしてこんな暢気な考え方でよいのだろうか。

 ことに今回の拙論はアメリカ政府に問い質すことを目的のひとつとしていて、アメリカの言論界はもとより一般人士にも広く読んでもらいたいと切に思っている。外国に発信するという日本側のシステムができあがっていないので、日本語の壁を越えることができない。

 外務省の外郭団体が出している雑誌があって、日本人の言論を拾って英訳している。拙論もときおり拾われている。しかし、2〜3ヶ月先の話になるし、選抜に日本政府の意図が入っていると思われているから、外国人も本気では受けとめない。

 左翼のばからしい言論も含めて、多様な日本発の思想が英語でインターネットにのせられて世界に広がる必要がある。そのための国策が求められる。左翼のばからしい言論が国際競争力に耐えなければ、やがて消滅する。そういう試練が大切である。右翼にも今は9・11テロを擁護するなどの国際的に通用しない、韓国並みの無責任な言論が出現し始めているのが昨今の日本である。

 アメリカの友である者のアメリカ批判こそが、今初めてアメリカの言論に有効に働きかけ、これを動かし、日本の国益にもかなうのではないだろうか。

 今日2月4日付『産経』正論コラムの拙論はそのような意図で書かれた。アメリカには手厳しい内容である。しかし残念乍ら、「米の北朝鮮政策に誤算はないのか」と題した拙論は国内の言語にとどまるのであり、国境の外へ出ていかない。今のところ私はそれをどうすることもできない。

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     米の北朝鮮政策に誤算はないのか
   ――日本は対応の危険な間違いに警告を――


 《《《日米安保に背信の匂い》》》

 核不拡散条約(NPT)によると、核兵器保有が許されるのは第二次大戦の戦勝国に限られる。それ以外の国は自国の核防衛に自己責任を果たせない仕組みになっている。日本はこれに署名させられている。従って同盟国アメリカは北朝鮮の核問題を、日本のために無事に解決する「義務」を背負っているのである。日本人はそのように理解しているし、そのように主張する「権利」を有している。

 核保有国の無責任ないし政策の失敗は、必然的に核の拡散につながる。もし北朝鮮問題で米国が責任を果たさないのであれば、日本は不本意でもNPTを脱退し、核ミサイルの開発と実戦配備を急がねば、国民は座して死を待つ以外に手のない事態が訪れ得る。それは中国の核に対しても同様である。そして、日本が核開発すれば、そのミサイルは確実に米大陸に届く。

 なぜ私があえて矢継ぎ早にそんなことを言うのかというと、米国の北朝鮮政策が根元の所に迷い、戸惑い、誤算があり、日米安保に背信の匂いが漂いだしたからである。そもそも北朝鮮の核脅威をここまで引き出したのは、イラクと並べて北朝鮮を脅迫した米国の責任ではないか。

 それなのに、今ごろになって日本は八個から十個の北の核兵器を容認できないかとこっそり問い質しに来たり(1月20日コーエン前国防長官が来日、打診)、米軍の東アジアからの撤退と離脱と引き換えに、日韓両国の核武装を奨励する案も出た(シンクタンク「ケイトー研究所」提言、1月29日付『産経』)。加えて米マスコミは今年に入って、ブッシュ政権の対北政策の混乱を一斉に指摘し始め、それをClash(不一致)であるとかCollapse(崩壊)といった否定語で批判した。日本政府はこのまま果たして黙っていていいのか。日本の言論界はなぜ反発しないのか。

 
 《《《頭なでてやれば良い子に》》》

 1月15日米政府は北が核開発をやめたら食糧やエネルギーの援助を与えるといい、軍事進攻はしないとの約束を文章化する用意があるとも述べたが、北に拒絶された。私にはこの米政府の対応が、たとえイラク戦直前の時間稼ぎを割り引いても、とうてい理解できない。米政府は二ヶ月前までは一切の話し合いに応じないと言っていた。一ヶ月前には話し合いはするが交渉はしない、に言い方が変わった。そして今は封じ込め政策は止めて、北を宥めすかすやり方に変えてしまった。おいしいお菓子をぶら下げて、こっちから先に手は出さないよと頭をなでてやれば北はきっと良い子になる、とでも思っているのだろうか。

 話し合いはつねに安全ではなく、恐ろしい選択になることもある。米国は武力行使しないと言いながら、北朝鮮を徹底的に無力化する侮辱的な要求を突き付けている。地上軍の削減と国境からの撤兵を含み、国家が丸裸にされる内容である。北にすればバカバカしくて相手にする気にもなれない。米国のこの要求はハルノートである。北朝鮮が米政府との直接的対話を要求しているのは、当然といえば余りに当然である。

 しかも、さらにいけないのは「先制攻撃」の手法がイラクには適用されても、北朝鮮には適用されそうにもないと北に高を括られてしまったことである。イラクは攻撃し易く、弱体なのである。米国はだから叩くのである。それに対し東アジアは難しい。北も米国軍は百人以上の戦死者が出たら戦争継続できない張子の虎だと考えだした。地対地ミサイルが火を噴けば韓国は焦土と化し、三万七千の在韓米軍は全滅する。金正日は「核戦争はやってみなければわからない」とか「米国は朝鮮人の心を理解していない」とか言い続けている。


 《《《「北」に自らの弱さのサイン》》》

 米国は自ら武力行使はしないなどとなぜ先に言い出したのだろう。それは相手を安心させず、米国の弱さのサインとなった。武力行使をちらつかせながら、北が受け入れやすい合理的な条件を段階的に出していくのが交渉の常道であろう。ブッシュにはまるで軍略がない。ハルノートを突きつけておいて、しかもそれが米国の真の強さから出ている要求ではなく、ブッシュ政権が自らの手詰まり状態、どうしてよいか分らない当惑から出ている要求だという弱みを北に読まれてしまっている。

 これは果てしなくエスカレートする先行き不気味な関係である。金正日は国民の九割が餓死しても、核開発をやめない男なのだ。米政府の対応に危険な間違いがあることを、日本政府は警告すべきだろう。
              『産経』2月4日「正論」欄より


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