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ネオ・コンサーバティブの世界戦略
http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/435.html
投稿者 日時 2003 年 2 月 25 日 14:29:58:

☆最近、戦争がらみでネオコン談義が流行ってるねえ

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんには、吉田繁治です。日曜日のTV、サンデープロジェクトでは、
ブッシュ政権で勢力を増している「米国のネオ・コンサーバティブ
(新保守派)」をとりあげていました。今回は、新保守派に典型的に
現れている、米国の、冷戦後の新思潮をテーマにします。

※直裁に言えば誤解を招くであろう表現と用語修正のため、約12時
間の時間をとったことを、お詫びします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
    <Vol.138 ネオ・コンサーバティブの世界戦略>

【目次】

 1.記述目的とスタンス
 2.世界の隅々までの「パックスアメリカーナ」
 3.前方展開の目的の変化
 4.軍事予算の長期での増額
 5.ブッシュ・ドクトリン
 6.日本の代議制には、政策の「説明責任」が欠落

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.記述目的とスタンス

現ブッシュ政権の、軍事的な世界戦略を主導しているのは、チェイニ
ー副大統領、ラムズフェルド国防長官、そして、ネオ・コンサーバテ
ィブ(新保守派)の総帥とされるリチャード・パール軍事政策委員長
です。

新保守派は9.11のちょうど1年前に『アメリカの国防力の再建(
Rebuilding America's Defenses:00年9月)』を発表しています。リ
ポートは以下のサイトで公開されています。↓
http://www.newamericancentury.org/defensenationalsecurity2000.htm

90ページのリポートは、新保守派が結成するシンクタンク「アメリ
カ新世紀プロジェクト」(1997年〜:所在地ワシントン)が作成
しています。

だれでも見ることができます。秘密資料ではありません。折りを見て
内容を解説しようとは思っていたのですが、そのタイミングが今来た
感じです。

本マガジンで骨子を紹介する理由は、このリポートが、現米国政府の
世界戦略のアウトラインを示すものであるにもかかわらず、わが国の
新聞等では、内容が紹介されることはないだろうと思うからです。

しかし米国は「全体」の主張として、新保守派が描く世界戦略に賛成
しているのではないことも、最初にお断りしておきます。米国世論は
、民主党ゴアと共和党ブッシュの、僅差(きんさ)の大統領選挙のよ
うに、軍事戦略については2分されていると見ていいでしょう。

一方、9.11以降のブッシュ政権は、新保守派が『アメリカの国防
力の再建』で表明した世界戦略を、ほぼそのまま採用しているように
見えます。

新保守派の主張と軍事戦略に対し、我々はどういったスタンスを取る
べきか、世界の事象に対し「思考停止」するのではなく、まずは事実
認識をすべきでしょう。

国防と軍事について、日本はタブーが多すぎます。平和憲法を唱えれ
ば、世界は平和になるということではない。日本は米国の同盟国です。
ここに、実は意識の深いレベルでの日本人の自己欺瞞があります。
世界の現実を見たくないし、議論したくないという欺瞞です。

最近の、マスコミ論調の全体的な低調さと、蔓延している気分のアパ
シー(空虚)の根底には、冷戦後の世界に対し、日本人が認識と基本
スタンスを定めることができないことがあると考えます。

経済の停滞より、おそらくこのことが大きい。日々ニュースを前にし
てもどかしさを感じ、結果として思考停止に陥っている多くの人がい
る感じを受けます。「有事」の定義すら、神学論争のままです。

他方、米国の新路線は以下の4項で明らかです。
(1)『アメリカ国防力の再建(00.9)』発表
(2)セプテンバー・イレブン(01.09)勃発、
(3)『ブッシュ・ドクトリン(02.9)』発表、
(4)対中東戦略(03.02)から、次のアジア戦略、

ここで、ブッシュ政権の基本路線を認識することは意味があるでしょ
う。ただし、軍事に絡むことの常として、内容は微妙です。可能な限
り大仰な形容詞を使わない記述にします。

(重要な注)新保守派の思想と描かれた世界戦略に、私が賛意を表明
しているということではありません。誤解が生じることのないように、
あらかじめお断りしておきます。私の姿勢は、事実を客観的に見る
ことです。

※以降の記述で、<・・・>内の部分は、『アメリカ国防力の再建:
00年9月』を翻訳したものです。

■2.世界の隅々までの「パックスアメリカーナ」

ネオ・コンサーバティブ(新保守派)の主張と信条は、以下のように
要約できます。

<現在、米国には(冷戦時のソ連のような)ライバルは消えた。米国
の基本戦略(Grand Strategy)は、今のような有利なポジションを、可
能な限り将来まで、確保し拡張することを目的とするものでなければ
ならない>

冷戦体制が終わった今、可能な限り遠い将来にまでわたり、米国によ
る一極支配の維持・強化を図るのが基本戦略であるべきだというのが
新保守派です。

【日本人一般との意識ギャップ】
ここで解説が必要です。まずは冷戦後(post Cold War)の世界に対す
る、(i)米国の新保守派およびブッシュ政権の認識と、(ii)日本政府お
よび日本人の意識に、落差、断絶があるということを指摘しなければ
なりません。

80年代までの冷戦時代には、共産圏を封じ込める目的で、米国は
「西側世界の軍事・経済同盟戦略」をとっていました。欧州ではNAT
Oであり、日本とは日米安全保障条約によって、「集団安全保障」の
体制を敷いていたのが米国です。

ところが冷戦後は、共産主義の拡張を恐れるという要素が消えていま
す。米国にとっては、冷戦時代の西側世界の枠組みであった「集団安
全保障」を続けることの意味が薄れています。

米国新保守派の思潮では、西側世界と東側世界という対立の構造は既
に消えています。

それを理由に、
(1)冷戦時代の「自由世界の共同利益」が、
(2)「米国単独の国益」に振り代わったと見ることができます。

この前提で、新保守派は米国の国益、言い換えれば世界の単独支配を
グランドデザインしています。

▼基本戦略

「グランドデザイン(目的はパックスアメリカーナ)」の推進のため
に、米国は以下を確立しなければならないと説きます。

【4項の中核となるミッション】
<1.米国本土の防衛
 2.多極的、同時的な劇場戦争(theater wars)に対して戦い、 
 
   決定的な勝利を勝ち取る。
 3.紛争地域で安全を確保するために、世界の警察官の役割を果
   たす。
 4.軍事において(従来の方法とは違う技術の)革命を推進でき
   るように、米国の武器と装備を変容させる。>

「劇場戦争」とは、世界のマスコミに対するプロパンガンダを含み、
01年の9.11以降は、同時多発的なテロまでを含むものです。

<この、4つのミッションを推進するために、国防費の十分な増額を
要求する。>

ブッシュ政権の前の、クリントンの8年間は、冷戦終結を理由に、軍
縮を図った8年間でもありました。90年代の米国の国防費はGDP
の3%(約36兆円)弱を基準としていました。(注)日本の自衛隊
費はGDPの1%基準であり金額では5兆円です。

新保守派は国防費をGDPの4%(約48兆円から50兆円)に増額
する必要があると主張します。<米国民は$1に対し、4セントは十
分に負担できる>

年間20兆円弱の増額分を何に使うか?

【基本戦略】
<1.核の戦争抑止力を使うために、核戦略で優位を維持する。
 2.職業軍人を140万人から160万人に増強する。
 3.21世紀戦略として東南ヨーロッパ、東南アジアに永久基
  地を作る。
  緊張が高まっている東アジアに海軍を重点配備する。>

冷戦終結で、世界は軍縮に向かうというのが一般的な考えでしたが、
新保守派は、逆の考えをします。ソ連という、核の恐怖を与えてきた
ライバル国家が崩壊した。ここで、西側世界の共同利益ではなく、米
国の国益を中心とする世界戦略をとるべきだと主張します。

▼20世紀の冷戦と21世紀戦略の違い

新保守派は、20世紀の冷戦環境と21世紀戦略の違いを以下のよう
にまとめます。

          【冷戦時代】   【21世紀】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
セキュリティシステム  2極   → ・一極
戦略目標      ソ連封じ込め → ・パックスアメリカーナ

軍事的な      ソ連の拡張を   ・民主主義地帯の拡張
  ミッション   防ぐ     → ・大国の勃興を防ぐ
                   ・戦争の形を変える
軍事的脅威     世界大戦   → ・劇場戦争が拡散する
戦略の中心     ヨーロッパ  → ・東アジア
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

パックスアメリカーナとは、米国が世界を軍事的、経済的に支配しコ
ントロールすることです。上記をそのまま解釈すれば、米国による一
極支配の世界を作るために、軍事的、経済的に脅威になる国を押さえ
ることになる。

ここで言う「戦争の形を変える」とはどういうことか?

<(同時・多発的な劇場戦争に対抗するために)1.全地球的なミサ
イル防衛網を展開し、2.情報の効果を用い、3.先端技術を使って、
伝統的な戦争の形を変える>

<従来の戦力では、「同時多発的な劇場戦争」に対抗できないので、
米国の国益と同盟国を守ることができない。米国が、世界の警察官の
役割を放棄すれば、より大きな戦争が起こり、独裁国が米国の利益と
理想に反抗する。そうなれば今のパックスアメリカーナは、早晩、終
わる>と説きます。

そして、新保守派は長期的には「東アジア」に重心を置いた軍事戦略
をとることを提言しています。

■3.前方展開の目的の変化

米軍の展開の特徴は「前方展開(Forward-Deployed Force)」です。
国内に留まって防衛を行うのではなく「米国の国益」になる地域に、
米軍基地を作るということを意味します。

具体的にはヨーロッパのNATO、極東の沖縄・韓国、東南アジア、
オーストラリア等の米軍基地です。冷戦時代の前方展開は、西側世界
の集団的防衛を目的としたものでした。冷戦後は、この目的に変容が
起こる。極東の前方展開である日米安保条約も、米国にとっては、既
に意味が変わった。

以下、各地域の戦略を見て行きます。

▼ヨーロッパ展開

ソ連崩壊後、欧州に米軍を展開し続ける狙いは何か?

<北部と中部欧州は(今は)安定している。しかし米軍が存在するこ
とは、欧州、とりわけドイツの長期的な安全保障に関与することで、
安心を与えるものである。>

ドイツが名指しされているのは、注目すべきです。

<米軍の欧州駐留は、国防での欧州の独立と自主性への動きを牽制(
けんせい)し、ヨーロッパ連合(European Union)がNATOに代わ
りえるものではないことを示すために必要である>

新保守派は「ヨーロッパ諸国が国防で自立することを防止する」とい
う目的で、NATOへの米軍の駐留を強化するということを表明して
います。

実際、今回のイラク開戦をめぐり、NATOに属するドイツ・フラン
スと、米国・英国連合の間に亀裂が生じていますね。

共通の敵であったソ連の崩壊後、つまり冷戦以後は、世界での一極覇
権を狙う米国新保守派と、大陸ヨーロッパの間に微妙で深刻な亀裂が
起こっていることに、注目を続けるべきです。

【補注:通貨では・・・】
背景では、機軸通貨である米ドルと、欧州統一通貨ユーローの金融で
の覇権争いも絡んでいます。ユーローは、独・仏が中心になり、米ド
ルの通貨の傘から大陸欧州が、経済的に自立することを目的にしてい
ます。

通貨の主導権争いは4つの要素、(1)国家の経済力、(2)軍事力、
(3)政治力、(4)文化の総合戦です。世界最大の貯蓄製造機で
あった日本の円は(1)から(4)のいずれの要素においても、その
地位を下げています。

ワールドトレードセンター崩壊以後、トレーダー達は大挙してロンド
ンへ移動しています。ウォール街のNYSE(ニューヨーク証券取引
所)に行くと、9.11以降は、戒厳令を髣髴(ほうふつ)とさせる
警戒が続いています。

ニューヨークに代わって、(1)世界の貴金属・卑金属・資源を含む
商品市場と、(2)金融市場の中心の位置という漁夫の利を狙うのが
ロンドンであるすれば、英国の戦略も見えるでしょうか。

▼中東展開

中東に関しては、新保守派は<長期的に、本質的な>国益の関与を持
つとします。言い換えれば、理由が何であれ、米国は中東に軍事的・
政治的に関与し続けるということです。

<1.サダム・フセインが歴史の舞台から消えても、米軍の関与は継
続すべきである。
2.長期的には、イランが米国の国益にとっての敵対者になる。仮に、
イランとの関係が改善することがあっても、米国の長期的利益の観
点から、中東での米軍の展開は米国の国防の本質を形成する要素にな
る。>

米国の新保守派にとって、中東は国益の生命線とされています。2つ
の要素があります。(1)新保守派の盟友であるイスラエルの支援、
(2)原油生産のコントロール、です。

91年の湾岸戦争の時は。50万人の米軍展開でした。
02年2月23日時点では、20万人の展開ですね。

▼東アジア展開

『アメリカ国防力の再建:00年9月』は、北朝鮮と韓国の統一後の、
米軍の朝鮮半島での展開にまで言及しています。

軍事大国としての中国の台頭があるため、国益の確保のためには、朝
鮮半島で米軍基地を必要とするとの見解です。

朝鮮半島と日本に米軍基地を維持することは、米軍の前方展開にとっ
て、欠かせない必須のものだと定義しています。

東アジアでの前方展開の目的は、軍事大国として浮上した中国への対
抗措置であり、中国の軍事的脅威に対し、台湾を含む東アジアの同盟
国と米国の国益を防衛する目的を持つとされています。

そして中国に対しては「米国型の民主主義政体」への転換を明確な表
現で要求しています。

前方展開は、(1)仮想敵国とテロ集団に対する軍事戦略であると当
時に、(2)基地を配置する国と、その周辺国に蓋(ふた)をすると
いう二重の目的を持っています。

■4.軍事予算の長期での増額

軍事予算の面では、80年代のレーガン時代には国防費の20%を先
端技術の開発に使っていました。クリントン時代には、それが8%に
低下してします。(NASAのスペースシャトルの事故も予算縮小が
原因と言われます)

新保守派は、パックスアメリカーナの維持のために必要になる先端兵
器の研究開発費を、増額すべきであると提言しています。

米国の軍事費は、GDP対比では以下の推移をたどっています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第2次世界大戦(1942〜45)  GDP対比  38%
朝鮮戦争   (1952〜54)   14%
ベトナム戦争 (60〜70年代初頭)     8〜9%
80年代のレーガン時代の軍備増強       6%
90年代のポスト冷戦時代の軍縮     5%→3%へ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

00年までの傾向では、2020年の軍事予算は、GDP比で2.2
%への縮退が想定されていた。軍事予算の減少を続けるなら、米軍の
装備はすぐにも古いものになり、結果として米国の国益を損なうこと
になると新保守派は警告します。

そこで01年9.11の直後、間髪をいれず増強されたのが軍事予算
です。軍事費増強、減税、税収の急な減少という3要因が重なって、
クリントン時代後期は黒字だった連邦財政は$3300億を超える赤
字に陥ったのは、ご存知の通りです。

新保守派は4%(約50兆円)への軍事費の拡充が国益にとって必要
であると結論付けています。事実は、その方向に向かっていますね。

▼9.11(01年)以後

新保守派の『アメリカ国防力の再建』が起草されたのは、9.11の
同時多発テロ発生の、ちょうど1年前です。

01年9月11日以後、議会の総意を得て国防費は増額され、ブッシ
ュ政権内で、新保守派が勢力を得て行きます。

ブッシュ政権のイラク開戦を含む世界戦略は、「結果的にせよ」、新
保守派が書いたシナリオに沿っています。シナリオによれば、フセイ
ンを「歴史の舞台から消した」後も米軍はイラクと中東への関与を維
持・強化し、次はイランを敵とします。

以上までは、『アメリカ国防力の再建:00.09』から重要な部分を抜粋
したものです。

【02年9月23日:ブッシュ・ドクトリン】
その2年後、02年9月には、ブッシュ政権は西側世界で歩調をとる
集団安全保障から、単独での「先制攻撃」の戦略に転じることを明ら
かにした『ブッシュ・ドクトリン』を発表しています。日本では、金
融危機で、このニュースは影に消えていました。株価の推移だけがニ
ュースだった。

これは新保守派としての、一派の主張ではなく米国大統領が発表し、
議会で承認されたもの、つまり米国の公式な戦略の表明です。

■5.ブッシュ・ドクトリン

米国の戦略を知ることは、難しいものではありません。軍事戦略の骨
子は、議会にも提出される公開資料で読むことができます。ブッシュ
・ドクトリンもそうした公開資料の一つです。

▼言葉での表明

米国は「言葉で表現する国」でもあります。その点で政治家や官僚が、
意味不明のアイマイな単語と言語を多用する日本とは違います。

日本の新聞や雑誌で、米国の実は明確な、実際の戦略が見えなくなる
理由は、ブッシュ・ドクトリンのような文書までが、「ジャパンフィ
ルター」でカモフラージュされるからです。ニュースの選択的な編集
は、重大な事実を覆い隠す機能をもちます。

日本政府は、アメリカの戦略に対する説明を、国内への政治的な配慮
からアイマイなままにしておく。しかし現実では日本政府はブッシュ
・ドクトリンに反対をしない限り、消極的にせよ賛意を表明している
ことになります。ドイツ・フランスは反対を表明しています。

日本では国防の問題について発言すること自体が、危険な思想とみな
される時期が長かった。そのために、世界の現実は見えなかった。

今、少しは議論の土台ができつつありますね。ただし議論の前提とな
る事実認識には、個人間の格差が大きい。日本は不幸なことに、「政
体を守る軍隊」は持ちましたが、「国民を守る軍隊」を持ったことが
ないことが原因です。自衛隊は、公式には軍隊ではないとされてきま
した。

ブッシュ・ドクトリンの骨子は単純です。
(1)米国にテロリズム等の脅威が及ぶ前に、先制的な攻撃の措置を
取る。
(2)大量破壊兵器、化学兵器、生物兵器に対しては、拡散を防ぐた
めの先制攻撃を実行する。

▼対中国

ブッシュドクトリンは、中国に対しては経済発展を讃えながらも、以
下のような警告を発しています。これも驚くべきことです。

<中国のリーダーは、中国という国家の基本的な性格について、(冷
戦後の)選択を行ってはいない。アジア太平洋地域に脅威を与える軍
事的優位を追求し、中国の偉大さの障害になるような時代遅れの道を
たどっている。>

クリントン時代の中国融和策と、ブッシュ政権の対中国政策では、天
地の開きがあります。こうしたことが、国際政治のコアです。

▼単独行動

そして米国政府は次のように、「軍事での単独行動」を行うことを結
論的に宣言しています。

<米国は、友邦国やパートナーの価値観と判断を尊重しつつも、リー
ダシップの発現にあたっては、米国の国益と安全責任の上から、単独
で行動する用意がある。>

【国際社会】
日本の政府・外務省は「国際社会」という言葉を使い、「国際社会」
が認めれば、わが国も米国の軍事行動を支持するという見解です。日
政府が言う国際社会の意味は、国連の安全保障理事会を指しているの
でしょう。

しかしながらブッシュ・ドクトリンは、同盟国の意見は尊重しつつも、
国益のためには単独行動をとることを、明確に表明しています。米国
にとっての国連の比重は、軽い。

【冷戦後という認識】
冷戦で、米国が恐れていたのはソ連の核兵器による報復攻撃です。そ
のために、核のバランスによる抑止力と集団防衛を使った。冷戦体制
で、米国の軍事行動を抑制的なものにしていたのは、ソ連の存在でし
た。

ソ連の崩壊は、米国にとって恐れるものがなくなったことを意味して
います。中国軍は周辺国にとっては脅威ではあっても、太平洋を挟む
米国にとっては、現代兵器の技術格差から恐怖とはみなされていませ
ん。

逆に、東シナ海の、90日は浮上しないで作戦実行ができる原子力潜
水艦に搭載された、攻撃目標をピンポイントで狙うことができる巡航
型核ミサイルに対し恐怖を感じているのは、中国政府です。

新保守派が唱える「パックスアメリカーナ」は、米国の拡張した国益
を、米国単独で守ることができ、世界を押さえることができるという
認識から生まれる。

国家単位での報復を、今の米国は恐れてはいない。国家対国家では、
米国の軍事的な優越と、勝利を確信しているからです。

【見えないテロリズム】
しかし、自爆までを使うテロリストは、見えない個人や集団の単位で
あり、自国が核攻撃を受けることすら恐れないと見ることもできる。
米国の恐怖は、テロ攻撃にあります。それが実証されたのが9.11
であるという認識です。

米国が持つ核もテロリストからの防衛には、役に立たない。したがっ
て反米のテロリストと、米国の国益を犯すものに対しては「問答無用
で先制攻撃」を行うとする。ブッシュ・ドクトリンでは、米国は単独
で、テロリストとその支援グループ、支援国家を攻撃することを表明
しています。

▼冷戦後の歴史が始まっている

ブッシュ・ドクトリンの02年9月以降、こうして「冷戦後の新しい
歴史」が始まったと見ることができます。ここを認識していただきた
いのです。世界への基本的な認識の枠組み・座標軸(パラダイム)を
変える必要がありますね。

軍事と政治戦略の上に、経済は乗る。
米国は、こうした認識をしています。

■6.日本の代議制には、政策の「説明責任」が欠落

アフガン制圧に続き(刻々と迫る)対イラク開戦は、こうした方向で
の、米国の軍事戦略の始まりです。同盟国として米国の支持を表明し
ている日本政府と小泉首相、および議員は日本国民に対し、ブッシュ
・ドクトリンに対しどんな姿勢を取っているのか、どうコミットして
いるのか、「説明責任」を果たすべきです。

国論の混乱が起こることは容易に想定できます。しかしそこを通過し
ない限り、21世紀の日本の国家像は描くことはできない。それは、
日本経済の重大な弱点とみなされ、円のパワーにも影を落とす。

代議制は、直接の情報や決定を知ることができない国民に代わって、
選ばれた議員が代行するという機能を果たすことによって成立します。
これが公約です。

ブッシュ政権は、(その是非はともかく)ブッシュ・ドクトリン(Fi
nancial Times:02.09.23)という形で公約を掲げ、議会の賛同を得て
います。

米国では、自由主義、市場経済、および「国益」を守るための世界戦
略については、(内容の是非は別にして)あらかじめ言葉による表明
がなされます。これが、税を使う政府と議員の義務だからです。ブッ
シュ政権の軍事行動を抑制するものは、米国民の世論しかありません。

一方、日本の代議制が、国民に対し説明の責任を果たさないとなれば、
税を使う正当性は消えます。日本では、ここに大きな堕落がありま
す。

国民は「重要な政策とその背景は知らない立場」に置かれる。メイン
ストリームのジャーリズムも、その点を明らかにはしない。(メール
マガジンとしてお届けする理由でもあります)

民主主義は、国民の知る権利を抑圧すれば、早晩死にます。ここが、
日本国家の危機の根底にあることでしょう。インターネットは、世界
の、10億人の個人の立場での情報アクセスを可能にします。情報公
開さえあれば、内容を知ることはできます。知らなければ態度は決め
られない。

米国の新保守派が狙う「パックスアメリカーナ」は、米国財政と通貨
の面で破綻すると見ています。軍事にはコストがかかる。そのコスト
を、米国財政は長期では負担できないでしょう。短期では軍事が勝利
します。しかし長期では、経済が勝利する。

米国を弱体化させたベトナム戦争という、いつか来た道をたどる恐れ
が強い。日本の公共投資は抑制されますが、米国の公共投資である軍
事予算は拡張されます。米国からマネーが逃げる可能性すら見えます。

米国政府は西側世界での集団安全保障の姿勢を変えた。
冷戦後の現実を、認識しておく必要があります。

see you next week!

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物流システム」というテーマで、二本の原稿を寄稿しています。

3月上旬の『販売革新3月号』と『商業界4月号』にも寄稿していま
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ta Warehousing, Using Wal-Mart Model』が、翔泳社から2月14日
に翻訳・出版されました。

知識作業のデジタル化で、話題になるべき内容があります。価格は25
00円。2月5日と言っていましたが、2月14日に遅れたとのことで
す。済みません。2月14日以降はアマゾンで買えるでしょう。
検索は、ウォルマートに学ぶデータ・ウェアハウジング、です。

▼WEBで、他の考察を体系的に
http://www.cool-knowledge.com
送ったマガジンを含め、後日、修正と付加等を加え掲載

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