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【外資系ファンド「日本買い」不良債権処理加速、チャンスに】

外資系投資ファンドによる日本企業の買収が拡大している。不良債権処理の加速で、金融機関は不振企業向けの債権や担保不動産の売却を増やすとみられ、外資系ファンドの「日本買い」は一段と活発化しそうだ。

　大手銀行の審査部フロア。このところ外資系投資ファンド担当者の出入りが激しくなっている。「Ａ社の債権売却を考えていませんか」。外資系といっても、国内の大手銀行や証券会社からの転職組が大半。日本の金融界に通じており、問題企業各社の経営状態を調べたうえで、債権売買の情報を探る。

　米国勢を中心とする外資系ファンドの日本上陸が本格化したのは金融危機の９８年以降。不良債権処理の拡大で破綻（はたん）企業が増え、ビジネスチャンスが広がったからだ。

　●リストラを実行

　ローンスター・ジャパンは日本を主な対象とする総額４２億５千万ドル（約５１００億円）のファンドを設けている。破綻した東京相和銀行（現・東京スター銀行）を買収。さらに、結婚式場「目黒雅叙園」（東京・目黒）の運営母体で８月に会社更生法の適用を申請した雅秀エンタープライズの再建支援にも乗りだした。雅秀の主力銀行の東京三菱銀行など４行から７７３億円の債権をグループ企業が購入。資産売却などリストラを進めて再生を目指す。

　サーベラスは４月、経営再建中の一戸建て中堅メーカーの木下工務店に資本参加し、３５％の株式を持つ筆頭株主になった。木下は債務免除をテコに主力のあさひ銀行と再建を進めている。木下を上場させて株式の売却益を狙うとみられる。

　破綻した旧日本債券信用銀行グループからＲＣＣ（整理回収機構）に移ったダイア建設向け債権約１４００億円も、４月に極めて安い価格で購入。約１千億円分を債権放棄し、残りをあさひ銀行に売却して債権を一本化して再建を目指す計画を進めている。

　●元官僚スカウト

　各ファンドとも企業再生の豊富なノウハウをアピールする。ここ１、２年で全国約２０のゴルフ場を買収したローンスターは「キャディーをつけずに回れる乗用カート方式に変えるなどプレー料金を下げ、顧客サービスも充実させれば再生できる」と話す。芝の育成で博士号をとった米国の専門家まで招くほどだ。

　経営陣に元官僚をスカウトする例も目立つ。官庁や政治家への人脈も必要とされるためで、ローンスター・ジャパンの会長にも大蔵省ＯＢの久保田勇夫・元国土事務次官が就任している。

　●買収失敗の例も

　もっとも、外資系ファンドの買収・再建がすべて順調にいくとは限らない。サーベラスは長崎屋の再建から撤退。旧日本長期信用銀行や宮崎のリゾート施設シーガイアを買収したリップルウッド・ホールディングスも、大手自動車金型メーカーのオギハラ（群馬県）買収には失敗した。

　外資系が買収したゴルフ場でも、会員のプレー権の保証やゴルフ場に預けている預託金の返還問題などで経営側と会員側が対立しているところがある。

　破綻企業の債権を安値で購入し、元の債権の大部分を放棄したうえで売り抜けるケースでは「混乱期に火事場泥棒的に利益を上げている」（邦銀幹部）といった声がつきまとう。

　しかし、不良債権処理の拡大に伴って企業再生の進め方に注目が集まるなか、「官製の産業再生機構より、市場原理を掲げた外資系ファンドの力を借りる方が早い」との指摘も少なくない。

　後塵（こうじん）を拝していた国内のファンドも動き始めた。独立系のフェニックス・キャピタルが設けたジャパン・リカバリー・ファンドには、日本政策投資銀行（政投銀）や東京三菱銀行などが出資。主力行から債権放棄を受けた大手和服商社、市田の株式の２５％を取得し、筆頭株主として再建を目指す。１０月には第２弾のファンドも作った。

　ＮＴＴデータや政投銀などが出資する日本みらいキャピタルも、これまでに１００億円以上の資金を集めている。

　◆「ハゲタカ」避け、事業再生に努力――ローンスター・ジャパンのランディー・ワーク社長の話

　ファンドの役割は、あやふやになった経営戦略を原点に戻し、本業の価値を高めることにある。「ハゲタカ」と呼ばれないよう、事業再生に努力している。海外の不動産を買いあさった日本企業のようなことはしないように注意を払っている。

　ただ、永久に企業を所有することが目的ではない以上、機が熟せば売るのは当然だ。再生した企業は、株式公開した時点で、再び日本の投資家の手に戻ることになる。

　「竹中改革」は日本経済をめちゃくちゃにしてでも不良債権処理を加速し、米国の投資ファンドに安く買わせようとするものだ――との説を唱える人もいるが、我々には当てはまらない。我々は銀行もゴルフ場も持っている。「改革」でも日本経済が悪くなればマイナス、良くなればプラスだ。

　　　　　　◇　　　　　　　　　　　　◇

　◆投資ファンド

　年金基金などの機関投資家や資産家から高利回りを狙う資金を集めて企業を買収。経営権を握り、厳しいリストラや事業再編などで企業価値を高めたうえで、転売や株式上場をして利益を稼ぐ。投資組合を結成してファンドを運営する場合が多い。ファンドの総額は世界で３千億ドルとも４千億ドルともいわれる。

http://www.asahi.com/business/news/K2002111600218.html

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