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http://www.asyura.com/2003/hasan18/msg/193.html
週間レポート
投稿者 Ddog 日時 2002 年 12 月 17 日 00:53:50:

平成14年12月16日号きったレポート

●経済関係2閣僚の交代は為替政策をドル安へ変更する為ではなく、ブッシュ政権の経済政策の大きな目玉である減税策の実現を確実にするための措置。財政規律の棚上げ政策を打ち出す。現状のドル安は国際情勢の緊迫化を先取りした一時的な思惑現象●

12月6日に発表された11月の失業率が7ヵ月ぶりに6%台に乗る悪化となったことを受けて、米国では経済関係閣僚である財務長官と大統領補佐官が辞任を発表した。第二次世界大戦後の大統領11人のうち、失業率が6%を超える中で再選を果たしたのは、強烈な改革を成功させたレーガン氏だけで、父親のブッシュ元大統領が湾岸戦争に勝ちながら、失業対策という経済政策に失敗して92年の大統領選で敗れ再選を果たすことができなかったことは、現大統領にとっては苦い教訓である。
ブッシュ現大統領にとっては「父親の轍だけは踏みたくない」という思いが、今回の決断を下す大きな要因であったようだ。過去の米国政治を振り返ってみると、今回と同じようなケースが90年代半ばにあった。それはクリントン前大統領時代に起こったことであるが、96年の大統領再選を睨みベンツェン財務長官を更迭して、その後任にルービン氏を任命し、経済チームを大幅に強化した。この交代劇を発表したのも奇しくも8年前の12月6日であった。日本経済は、ルービン財務長官の誕生によって完膚なきまでに破壊されてしまったことは記憶に新しい。
二期目の大統領として再選を目指すブッシュ大統領は今後2年間、景気回復と失業の解消に向けてなりふり構わぬ経済対策を打ち続けることは必至である。クリントン前大統領とブッシュ現大統領が、奇しくも12月6日という同じ日に強力な経済チームを編成したのも単なる偶然ではなく、米国の大統領再選はそこまで思い切った政治行動をとらないと勝てないということである。従って、これからも経済対策として何が飛び出してくるか解からないというのが正直な見方かもしれない。ましてや、父の轍だけは踏みたくないと思うブッシュ大統領は、なりふり構わぬ経済対策を打ち出してくる可能性は強いであろう。
先週、ブッシュ政権は経済チームの新布陣を決定して、いよいよ来年初めからの減税 などを中心とする経済対策の検討に入った。ブッシュ大統領は、新財務長官にジョン・スノー氏、大統領補佐官にスティーブン・フリードマンの両氏を指名して「ウォール街との対話能力向上」、「議会との関係修復」という市場からの二つの課題に答えを出した。2人の新閣僚に課せられた任務は、減税を中心とする景気対策に全力をあげるということである。経済閣僚の交代は、ブッシュ政権の政策の方向性に変化があったのではなく、2004年の大統領選までに景気を強い状態に持っていくことが課題であるために、経済対策強化のためのシンボル的要素を強く打ち出したものと言える。
陣営の入れ替えで、ブッシュ政権は本腰で経済対策に取り組んでいるというメッセージを市場に送ることができる。オニール前財務長官とリンゼー大統領補佐官は、共に為替政策に関しては、はっきりとドル高有益の態度を示し、国際会議では日本の生産性向上などを後押しする態度を取り、対日圧力は表面化してこなかった。しかし、財政政策については両氏共に財政の規律を重んじ、ブッシュ大統領による今後の減税政策には批判的であった。
先般、米国在住の某氏が帰国したので、彼から米国経済の動きについて話を聞く機会があった。その話では、ブッシュ政権はあるポリティカル・コンサルタントによって動かされているということだ。2004年の大統領再選の戦略はその男が立てており、大減税構想もその男が主役であるとのことだ。減税をして経済を立て直すためにはオニール氏とリンゼー氏の経済閣僚では駄目だということで、その男が2名の首切りをしたということである。要するに、経済チームの刷新はブッシュ政権の政策の方向性に変化があったのではなく、今後2年間でいかに景気回復を実現させていくかをアピールするためのシンボル的要素を強調したものと言える。
現状ブッシュ政権では、経済対応策として大幅減税以外に道はないとの考え方が中心となっている。従って、この政策に抵抗する者は排除していく考えである。ブッシュ政権内での抵抗勢力と考えられたのが経済対応策を取り仕切る2名の経済閣僚であったというわけだ。大統領再選を果たすためには、それくらい非情な決断が必要であったといえる。
新任のジョン・スノー財務長官は、大手鉄道会社CSXの会長兼CEOで、フォード政権時代に運輸省次官補を務め、規制緩和論者として知られ、産業界の意向を反映する政策をとるのではないかとみられている。
また、スティーブン・フリードマン新大統領補佐官は、米証券大手ゴールドマン・サックス会長を務めた。クリントン政権時代の財務長官ルービン氏と共にゴールドマンで働き、企業向け投資銀行業務を担当していた。共和党員である。ウォール街出身であるため、「強いドル」が株高や長期金利低下を促すことを熟知しているだけに、ドル安容認と受け取れるような発言には慎重であると考えられる。
新経済チームの発足で、年明けにかけて大型減税や雇用対策など景気対策のとりまとめは急ピッチで進んでいくものと考えられる。新年早々に打ち出される財政と為替面での景気対策はどのようなものとなるであろうか。

l 財政政策は当面、財政規律を棚上げして赤字覚悟で景気回復を優先する考えである。2年後の大統領選に勝利するために思い切った財政・金融政策を取る●

米政権は、まず財政規律は棚上げして、財政赤字を覚悟の上で景気対策を実施していく構えである。ブッシュ政権はすでに2001年に、向こう10年間で総額1兆3,500億ドルの減税策を成立させて、現在実行に移している。今回の減税構想は、この大型減税の追加版である。減税規模は総額で3,000億ドル(約37兆円)になると言われ、実施期間も3年程度の短期間で集中的に実施する案から10年間にまたがる案が検討されている模様である。
以上が来年に実施される減税策の概要であるが、具体的にみると次のようなものである。まず、2001年の大型減税で決まった所得税率の段階的な引き下げの前倒し実施、時限措置となっている相続税の廃止の恒久化などである。これに加え、市場対策としてキャピタルゲイン課税の軽減や配当に対する二重課題の軽減・撤廃、企業向けには設備投資減税の充実などが盛り込まれている。こうした減税に加えて、テロ対策や対イラク戦争などで財政支出が膨らむことから、財政赤字が膨張することは避けられない。
政権内では財政規律を重視していたオニール財務長官が解任されたことで、当面、財政規律は棚上げされる公算が強い。減税によって景気回復を図りたいというブッシュ政権の強い姿勢を読み取ることができる。新経済チームには、新年からまず景気対策に全力を注入していくという姿勢を示すことで2年後の大統領選に勝利したい考えが強い。来年、ブッシュ政権はデフレに対応する思い切った財政・金融政策を実行に移すであろう。

l 新経済閣僚の為替政策は未知数、国際情勢の緊迫化などでドル安の思惑が高まる。ドル安は年末・年初がヤマ場か●

次に為替政策であるが、市場では新財務長官の手腕が未知数で取引材料にしにくいとの声が強く、相場の行方を掴みにくい状態である。オニール前財務長官は強いドルの信奉者であっただけに、市場関係者のセンチメントはたとえドル安になっても一定の限界的水準を持っていた。しかし、今回強いドル論の2経済閣僚が辞任したことで、この限界水準を市場の思惑は取っ払ってしまい、ドル安論が一人歩きしている。
「新経済チームは為替市場への介入に消極的な姿勢を取り、事実上、ドル安を容認するのではないか」との議論が市場の大半を占める状況となっている。新財務長官スノー氏と、新大統領補佐官フリードマン氏らの為替政策が未知数であるが故に、ドルは現状市場関係者のド ル安論の思惑にさらされている。為替市場の最大の関心は、米政府が今まで標榜してきた「強いドル政策」を新経済閣僚がどう表現するかにあり、固唾を呑んで見守っている 。

新経済チームが「ドル安を優先させる政策を取る」ととらえて為替相場が動けば、それはそれでよしというのが米政府の基本的な考えである。従って、あえて米国は強いドル政策を維持していくと言わなくてもよいという考えである。なぜならば、11月の卸売物価の動きをみても、前月比0.4%マイナスとなり、変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数も0.3%低下しており、デフレ懸念に関する議論の材料となりそうな状況となっている。現在、米国内では景気の本格的な回復が遅れる中で、日本の90年代前半のようにデフレの瀬戸際にいるのではないかとの議論が出始めており、10月のFOMCでもデフレが起きるリスクについて議論が交わされたようである。デフレ対策としてドル安論も出たようだ。
日本では11月頃から円安容認論が急速に高まり、政府高官が円安効 用論を唱え、欧州でもユーロ安論が高まるなど、デフレ色が強まったことを背景に自国通貨安政策を唱える国が多くなってきた。米国でも学者の間に、景気回復に必要な政策はドル安によるリフレ策だとの声が高まってきている。
アジア開発銀行は、2003年のアジア太平洋地域の経済成長が伸び悩むとの予測を発表した。先進国に端を発したデフレが途上国にも及んでいると指摘し、特に中国の経済成長が減速するとの見方を示した。黒田財務官は先般、世界的デフレの根源となっている中国人民元を切り上げるべきとした論文を発表したが、中国人民銀行総裁は「中国経済は確かに成長しているが、金融のリスクは残っている」と人民元の切り上げ論を退けている。
中国経済の最大の懸念である不良債権処理はこれからが本番であり、銀行が現在抱える不良債権について、国の財政支援による処理もあり得るような状況であるという。中国の2003年の実質GDP成長率は、2002年の8.0%予想より0.8%下がり7.2%にとどまるようである。中国でもデフレ傾向が最大の懸念材料となってきた。中国としても通貨切り上げに踏み切る考えはないようである。今やデフレはグローバル化してきた。
こうした世界的なデフレ傾向の中で、米経常収支の赤字が大きくなっている。7〜9月期の経常収支は1,270億ドル強の赤字となった。過去最高の経常赤字を記録した4〜6月期に比べて0.4%減少したものの、依然として高水準である。2002年通年の経常赤字が4,000億ドルの大台を突破することはほぼ確実になったようである。1〜9月期の経常赤字は前年同期比23%増えて、3,671億ドル強と急速に膨らんでいる。米国では経常収支だけでなく、テロ対策などによる歳出増や減税で財政収支もすでに大幅に悪化している。その上新経済チームの発足でさらに大幅な減税に乗り出す構えにある。
米国の景気回復は現状では遅れる可能性が高く、経常・財政赤字の拡大を理由にドル安になる可能性が高いと考えられる。経常収支の赤字額が年間4,000億ドルにも達し、財政は景気対策のための減税額の拡大でさらに赤字が増大する状況下で、米国から資金が流出するドル安が続いて果たして大丈夫であろうか。このところ米国景気の回復は遅れ気味の兆候が強まってきている上に、地政学的リスクの発生とされるイラク戦争は現実化しそうな雰囲気である。
さらに朝鮮民主主義人民共和国は、イラク攻撃準備に忙殺されるブッシュ政権から譲歩を引き出すべく、「核施設の稼動再開」を表明し瀬戸際外交の戦術をとって朝鮮半島の核危機をアピールしている。外為市場では、米国の為替政策としてのドル安論というよりは、イラク・北朝鮮問題などの国際情勢緊迫化などの見地から投機筋のドル売りが加速し始め、13日には一時1ドル=120円22銭と1ヵ月ぶりの円高・ドル安をつけ、1ドル=120円50銭〜60銭で取引を終えた。米国のイラク攻撃はどうやら来月中には現実化しそうな気配であり、また12日には北朝鮮が挑発的な行動に出てきており、戦火はイラクの次は北朝鮮という雰囲気になってきた。
米景気の先行きが不透明な上に国際情勢が不安定になると、米国が当事者として深く関わるために、戦争になれば軍事費など財政赤字が膨らむことになる。米国景気は、出足が当初好調だったクリスマスセールがやや減速気味になるなど、消費を中心に下振れリスクが強まっている。それにここへきて、テロ再発のリスクも高まってきている。
これらの動きがドル売りの流れを発生させている。こうした状況の中で米政府は「為替相場は市場が決めるもの」という態度をいつまで続けることができるかである。2名の経済閣僚の交代は、為替政策をドル安へと変更するためのものでなく、景気対応策を着実に実行していくためのものであると米政 府は言っている。しかし、新閣僚の為替に対する政策が未知数であるが故に、市場が勝手にドル安を演出してしまった。こうした演出がドル安に火をつけ、さらに景気悪化→財政悪化→国際情勢の緊迫化で本格的なドル安につながってしまいそうである。
ドル安による米国からの資金流出は、長期金利などの上昇を招き、景気の足を引っ張る。戦費増大による財政悪化を穴埋めするための国債増発は、企業の資金調達の道である直接金融の崩壊をも招きかねない。ドル安は米国のデフレを食い止める方法かもしれないが、機関車役のドル安政策は世界的な不況を促進することにつながる。経常収支の赤字を穴埋めするには海外から資金が流入しなければならないが、ドル安は逆に資金の流出を招 き、米国の金融システム不安を招くことになる。
このところの国際情勢の緊迫化で、ドル売りが加速してきている。以前、当レポートではイラク開戦でドルが115円程度になったら積極的にドルに投資すべしとの指摘をしたが、流れは変わってきた。もし今回120円割れとなったら、ドル買いは当分様子見にしてもらいたい。このような急ピッチなドル安が進展する中でブッシュ政権の新経済チームが為替政策のあるべき姿を説明しないということは「為替相場は市場が決めるもの」として市場を尊重しているかのような振りをしているが、実際にはドル安でデフレ対応策をとっているとしか考えられないからだ。ここ当分はドル相場の行方を見守ってもらいたい。イラク開戦となれば、110円割れも視野に入ってこよう。そのあたりがドル買いのタイミングではなかろうか。
米国の新経済チームは、景気回復に全力をあげるとはいうものの、為替政策については何もコメントしないことから、市場は強いドル政策の終焉と勝手な解釈をしてドルを売っている。しかし現状、ドル安に対して人為的な介入をしないという米政府も、国際情勢の緊迫化で急激なドル安が進み金融システムにも懸念が発生する兆候がないとも言えないので、景気対応策と共にドル安に歯止めがかかるような政策を打ち出す可能性も出てきた。
一方、日本政府も円の急伸場面ではけん制に動く可能性が高い。115円を超える一方的な円高進行には歯止めがかかろう。来年初早々、米国は減税策を発表するが、それと同時に今後の為替動向についても触れるものと考えられ、今年の年末から来年初 めがドル安の大きなヤマ場となろう。

l イラク戦争の後は東アジアが戦火に包まれる可能性も出てきた●

ブッシュ大統領が今年初め「イラン、イラク、北朝鮮は悪の枢軸国」と名指して大きな反響を呼んだが、このところこれを裏付けるような事実が次々と明るみに出てきた。イラクでは国連による査察が進んでいるものの、米国は開戦の準備を軍事的にはほぼ完了し、いつでも出撃できる体勢を整えた。イラク開戦は近い状況のようである。
また、イラク攻撃準備に忙殺される米国は現状、その他の国への武力攻撃をしないと見てとった北朝鮮は、12日に核施設の稼動再開を表明して米朝枠組み合意の崩壊に直結する朝鮮半島の核危機をアピールする瀬戸際外交を展開して米朝対話を引き出そうとしている。
12月10日には、北朝鮮を出航した不審船からスカッドミサイルが発見され、北朝鮮がイエメンに売却したものであることが確認された。北朝鮮がミサイル輸出を進めていることが実証されたわけであるが、米国議会では、北朝鮮による武器拡散の循環に目を向けるべきであり、輸出によって得た外貨が武器生産に使われ、新たな拡散を引き起こしていることに注目しなければならないとして、輸出を全面的に封じ込める対策が必要との北朝鮮に対する強硬論が高まっている。
英国でも、極めて深刻として輸出を止めさせる圧力を強めるべきだとの意見が強まってきた。来年中東での戦火が終った後は、いよいよ東アジアで戦争が発生する危険も高まり、日本も直接の戦争当事者として巻き込まれる可能性も高まってこよう。日本の景気はよくならず、来年も暗い年になりそうである。

l 国際情勢が緊迫化すれば、米国株式は勿論のこと、日経平均株価もバブル崩壊後の最安値を更新しよう●


米国株式相場は、ここへきて方向感のない状況となってきた。イラク査察や北朝鮮の核開発問題などで国際情勢が緊迫すると、株式相場は世界的に不安定になるであろう。日本では与党の来年度税制改正大綱がまとまって、市場が注目する国内の景気に関する対応テーマはほぼ終った。国際情勢が緊迫した場合には、終値ベースでみて11月14日につけたバブル崩壊後の最安値8,303円を割る可能性も強まってきた。株式相場は値ごろ的には買いの水準にきているものの、米国の株式相場が不安定で、先行きさらに低下する気配もあり、米国の株式相場に大きく左右される動きが続きそうである。日本には独自で株式相場が動くような経済状態が訪れないからである。来年初めには地政学的リスクが現実のものとなろう。(終)

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