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ＮＴＴ株にようやく春？――日経金融スクランブル
先月中旬に突如破たんし話題を呼んだ日本株ヘッジファンド「エイフク・マスター・ファンド」の運用状況が徐々に明らかになってきた。
運用成績が急激に悪化したのは今年の大発会からの7日間。原因とみられているのは、数百億円規模の資金を投じたとされる「ＮＴＴ株買い・ＮＴＴドコモ株売り」のポジションだ。ＮＴＴ高、ドコモ安の形で両社の株価格差が拡大する方向に賭けたが、年初から7日間でこの格差は逆に23％も縮小。借入金まで使ってレバレッジを効かせていたことも裏目に出て、破たんの引き金になった。
この間膨らんだ外国証券によるドコモ買いが計算外だったようだが、ファンドの創始者、ジョン・クーメン氏考案のポジションは、世界の通信株が直面しようとしている地殻変動を先取りしていた可能性がある。通信政策を巡る大きな潮流の変化が感じられるからだ。
ＮＴＴの時価総額は子会社のドコモを約5兆円下回っている。1999年末から常態化した時価総額の「親子逆転」という奇妙な現象は、ＮＴＴ東西地域会社に対する総務省の厳しい規制に原因があるというのが一応のコンセンサス。ＮＴＴ法に縛られて身動きがとれない東西会社は前期、計5000億円余りの最終赤字に追い込まれた。しかし、その後、同省の姿勢は変化を見せ始めている。
総務省は昨年末、反ＮＴＴ、競争促進の急先ぽうだった醍醐聡東大大学院教授の情報通信審議会（総務相の諮問機関）委員再任を見送った。事実上の解任と受け止める向きが多い。さらに同省はＮＴＴ東西の市内回線への他社の接続料金値上げを検討中。ライバルの新電電幹部からは「総務省とＮＴＴが蜜月関係に入った」という声も漏れ始めた。
ＮＴＴ交換機を経由する通信量が減少に転じるなか、設備費用を通信量で割って同料金を求めるという算定式に基づく限り、接続料金値上げはおかしな結論とはいえない。だが、算定式を実際に適用するかどうかは別問題だ。
総務省がデフレ下の異例の値上げに踏み切れば、市内回線網を独占するＮＴＴ東西の設備を安く開放して新規参入を促すという「これまでの競争促進政策の転換に動いたと見なされる」（ＫＤＤＩの小野寺正社長）との声がある。
総務省の一連の動きには、競争を促進しようという世界の通信政策の模範となってきた米国で、連邦通信法の見直し機運が高まっていることが影響していることは確実。米国では「規制緩和が多くの通信会社が破たんするほどの過当競争を招き、結局、消費者が迷惑を被る事態が発生」（情報通信総合研究所の神野新シニアリサーチャー）。このため、米連邦通信委員会（ＦＣＣ）のパウエル委員長は既存の地域通信会社に課した設備開放義務の緩和を検討していると報じられている。
米連邦通信委は早ければ今月13日に開催する政策決定会合で、96年通信法の「劇的な転換」（ウォールストリート・ジャーナル紙）といわれる規制緩和を決める見通し。これは、同様に光ファイバー網の開放義務の緩和を切望するＮＴＴ東西にとっても大きな「福音」になるに違いない。
一方、携帯電話のＮＴＴドコモには逆風となりそうな政策の変化がありそう。総務省は高止まりを指摘される「固定発・携帯着」の通話料引き下げを促すため、料金設定権を固定通信会社側に持たせる新方式を検討し始めた。
価格競争圧力が働きやすい固定電話会社側にこの料金設定権が移れば「固定発・携帯着」の通話料から得られる収入が減り、ドコモ側にとって「千数百億円の減収要因になる」（ドコモの津田志郎副社長）恐れがある。先月中旬に携帯電話間の接続料の15％値下げを決めた英国をはじめ、割高な携帯電話料金については、引き下げが世界的な潮流になりつつある。
「エイフク・ファンド」はヘッジファンドの一種。3年前から日本株で運用しており、昨年までは高い収益率を誇っていたという。わずか7日でファンド資金
のほぼ全額を失ったもようだが、「ＮＴＴ買い・ドコモ売り」のポジションは、仕込むタイミングがほんの少しだけ早かったのかも知れない。（川崎健）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。