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外貨準備は多いほど良いか −求められる重商主義からの脱却− [中国経済新論]
http://www.asyura.com/2003/hasan22/msg/181.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 18 日 19:08:34:


中国の外貨準備が近年急増しており、2002年だけでGDPの6%に相当する742億ドルも増加し、年末には輸入の一年分に当たる2864億ドルという高水準に達している。これに対して、私は2002年6月にこのコラムで、中国の外貨準備がすでにその最適水準を超えていると論じた。この見方は中国のマスコミでも取り上げられ、大きな反響を呼んだが、その中には批判的な意見も多かった。特に、当局は依然として、「外貨準備が多ければ多いほどいい」という従来のスタンスにこだわっているようである。

その理由について、中国統計局の邱曉華副局長は、次のように説明している(2002年12月16日付「中国経済時報」)。まず、外貨準備は、通貨投機といったリスクに対する備えとして、また経済改革の資金源として必要である。また、豊富な外貨準備は、人民元の国際化の必要条件でもある。さらに、日本の外貨準備が4000億ドルを超えているのに対して、中国はまだ3000億ドル程度に留まっており、多すぎるとは言えないというものである。しかし、このような考え方は、政策を誤った方向に導きかねず、是正する必要がある。

まず、外貨準備が通貨の安定を維持する手段として必要であることについて異論はないが、過去のコラムでも強調したように、その保有には高いコストを伴うということを認識すべきである。発展途上国としての中国は、海外から資金を調達する際にはリスク・プレミアムによって高い金利を負担しなければならないのに、米国のTB(財務省証券)で外貨準備を運用すると低収益率しか得られない。この金利面における逆ざや現象は、低所得国である中国から高所得国であるアメリカに所得が移転されてしまうことを意味する。

そもそも、外貨準備は国内のインフラや生産設備と同様、国の資産の一部であり、その主な資金源は国民の貯蓄である。国の資産が一定であるならば、その最適な構成(ポートフォリオ)は収益性とリスクをバランスさせながら決めるべきであり、外貨準備が多ければ多いほどいいとは限らないのである(注)。実際、中国では、収益率の低い外貨準備が増える一方、中国の経済発展の目玉である西部大開発計画が資金難に陥っているということに示されているように、国民の貯蓄は必ずしも効率的には使われていない。改革のための資金も、税金や国債の発行で賄うべきであり、外貨準備に頼る必然性は全くないのである。

また、人民元の国際化のために外貨準備を増やすべきだという主張も本末転倒であると言わざるを得ない。自国通貨を国際的に流通させる最大の目的は、通貨発行の利益を獲得することである。例えば、米国は、自国の信用だけを担保に、国際的に流動性の高いドル紙幣やTBを発行し、低い金利(ドル紙幣の場合、無利子)で資金を調達することができる。しかし、中国のように、自国通貨への信用を高水準の外貨準備に求めざるを得ない場合、それに伴うコストが発行による利益を完全に相殺してしまうため、人民元の国際化のメリットが全くなくなってしまう。その上、不良債権問題に象徴されるように、中国の銀行部門が依然として脆弱である状況では、人民元の国際化はもちろんのこと、その前提となる資本移動の自由化も慎重に進めるべきである。そうしないと、金融危機の発生するリスクが高まることになろう。現に、最近の外貨準備の急増は、貨幣供給の拡大を通じて不動産価格の高騰など、バブルの膨張を助長している。

さらに、日本と中国の経済状況は大きく異なっており、単純に比較しても意味がない。まず、日本の外貨準備は、絶対額こそ中国を上回っているが、GDP比で見ると10%程度に留まり、中国の25%には遠く及ばない。さらに、日本では国内の金利が米国と比べてかなり低く、米国債での運用は必ずしも悪い投資ではないのである。これは、資本蓄積の水準が依然として低く、投資の限界生産性が高い中国とは対照的である。さらに、日本は内需の不足による不況に陥っており、外需の拡大を通じて景気を維持するためにも、介入を通じて円高を阻止しなければならない。一方、中国は「独り勝ち」と言われるほど、景気が良く輸出も好調である。

この、外貨準備が多ければ多いほどいいという考え方は、外貨準備の規模が国力を表す重要な指標であると見なす重商主義に基づくものである。しかし、覇権国である米国でさえわずかな外貨準備しか持っておらず、外貨準備と国力の間には必ずしも関係性がないということは明らかである。中国が追求すべき目標は、あくまでも国民生活の向上であり、これは制度改革に加え、国内の人的資本や生産設備・インフラといった物的資本に投資することを通じてのみ達成できるものである。国民の貴重な貯蓄を低金利に甘んじて米国政府に融資し続けるのではなく、国内向けの投資など、もっと有効に利用すべきである。

(注)個人や家計は、資産の保有形態として流動性の高い現金や預金のほか、リスクは高いが収益性も高い他の資産にも分散化させて投資することができる。実際、真の富裕層は「お金」よりも多くの株や不動産を保有している。

(関連記事:2002年6月7日 実事求是欄掲載 「上昇圧力にさらされている人民元」
2002年6月14日 実事求是欄掲載 「『最適規模』を超えた中国の外貨準備」)


2003年2月14日掲載

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