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「円の国際化で日本経済を再生」 [週刊RR vol.7 掲載:金融ファクシミリ新聞]
http://www.asyura.com/2003/hasan22/msg/226.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 19 日 22:49:57:


慶應義塾大学経済学部教授
経済学博士
吉野 直行 氏
            
    聞き手  編集局長 島田 一

――現在先生が座長を務めておられる「円の国際化推進研究会」は、今回具体的な進展がみられている。

 吉野 円の国際化は今まで様々な議論がなされたが、今回はアジアの債券市場を育てようということで、具体的な提言がなされている。アジアの債券市場を活性化させようという動きは、1997年の金融危機がきっかけだ。日本と同様、アジア諸国は中小企業が多いため、銀行中心のシステムだ。つまり、銀行セクターがうまく機能しなくなると、民間に資金が流れなくなる。このなかで資金がうまく流れるようにするために考えたのが、アジアの債券市場を作るということだ。各国とも債券市場をどう整備するかが、喫緊の課題となっているが、我々は日本にアジアの債券市場を持ってくれば、日本の景気に対しても一石二鳥になるのではないかと考えている。つまり、現在は香港やシンガポールに株式市場が移ってしまったため、オフィスビルの需要が少なくなっているが、アジアの債券市場が日本にできれば、人の流れが活発になり、弁護士や会計士、翻訳業などのオフィスが国内に来る。インフラが来るということは、それ自体経常収支への貢献にもなる。

――国際取引で圧倒的に使われているのは、ドルだ。

 吉野 経済規模と各国の通貨建ての通貨を見ると、日本は経済規模に比べて円が使われている比率が非常に低い。通常は、経済規模に比例して通貨の使用量も増えてくるものだが、ドルやユーロに比べ、円は突出して少ない。アメリカの強みは、言語が英語であることと、為替リスクに全くさらされないことだ。そのほか、アメリカ経済は日本の資産が相当入っており、日本を痛めつけるには、ドル安・円高にすればよい。ドルは基軸通貨であるからこそ、そういう操作ができる。日本のこれからの国力と、アジア全体での日本の位置付けを考えた場合、円の国際化、あるいはアジアの中で円のウエイトを持ったカレンシーが流通するということは日本にとって、またアジアにとっても望ましい。

――日本やアジアの経済の安定化につながる…。

 吉野 アジアでは、ドルとの実質的な固定相場制を長く維持していたところに海外からの資金が急激に流入し、金融危機が発生した。それから、中央銀行の準備通貨が、ほとんどドルで積まれているのも原因のひとつとして挙げられる。今後、貿易で円が使われるようになれば、円の準備預金も必要になってくる。

――ご指摘のように、ひとつの通貨だけでは、暴落した場合などにリスクが大きい。準備通貨に円の割合が増えると、リスクの分散化というメリットもある…。

 吉野 そのほかの円の利用促進は、今までドルが仲介していた取引を円建てにすることだ。例えば、石油はドルに換算されて評価されることが慣習であるため、ドルで買う。日本は石油の大きな輸入国なのだから、本来なら円で輸入してもよいはずだ。また、特にアジアの場合は、資金援助、ODAなどで円が行っている。その円をわざわざドルに換えず、円で日本のモノを買ってくれればよい。

――なるほど…。

 吉野 円の国際化は政治、行政、民間と学者が一体にならないと、前に進まない。今までは、円の国際化に関して行政が臆しているところがあり、民間もそんなことはできないという認識だった。どちらかといえば日本人は石橋を叩いて渡らないタイプだが、可能性があることは、トライすることが必要だ。そうしなければ、日本経済は再生しない。

――税制についても、具体的に発言されている。

 吉野 日本の、例えば東京に作ろうとしているオフショアマーケットで、今までネックになったのは、非居住者の課税の問題だ。非居住者の取引に対して免税権を与えると、一時的に税収は減るが、免税によって取引が活発化されれば、ほかの経済活動も活発化する。

――今回進歩が見られた点とは…。

 吉野 前回と違って、一歩進んだといえるのは、具体的にどういうところで円の国際化ができるかを、産業界の方々が説明してくれた点だ。それによって解ったのは、日本企業は海外に行くことが非常に多いが、大企業であるほど、どこの国ということを考えず、アジア全体で考えるということだ。例えば、日本、フィリピン、マレーシアなどで部品を調達し、それをタイで組み立てるといったように、インターナショナルな企業は日系企業でありながら、日本をワン・オブ・ゼム(アジアのネットワークの中に一つの国)としか見ていない。このことからわかるように、日本から海外に輸出する力というのは、弱くなってきている。日本から出て行く企業に比べて、日本に入ってくる企業の比率は、非常に少ないが、イギリスやドイツではGDP比で8〜10%程度だ。

――国際化が進んでいる。

 吉野 例えば、クリントン前米大統領がアーカンソー知事だったときには、日本企業を誘致することに積極的だった。日本で地方は農業と、国の公共事業に依存しているが、これではもたなくなってきている。地方をどうするのかということは必ず議論になるが、日本の知事も、こういう産業にきてほしいともっと宣伝をするべきだ。高齢化社会に向けて、高齢者の医療技術などの輸出が多いスウェーデンの工場を日本に持ってくることなどを検討すべきだろう。

――円の国際化が実際こういう形で推進できればいい。

 吉野 今後必要なことは、政治、行政、それから民間、学会を含めて、具体的にどういうことをすればいいかという提言だ。政治が日本の通貨のことばかりでなく、将来的にはユーロのようなバスケット通貨、アジア通貨圏を考える。政治的なリーダーシップを取りながら、アジアからの注文に応えていかなければいけない。日本の政治家の発言力は、海外の新聞では相当低いが、円の国際化に関する記事も、もっと外に発信しないといけない。こういう動きがあると、アジア圏に日本のテリトリーを作るのかということを必ず言われるが、それを防げるのは政治の力だ。

――これからの発展に欠かせないものは…。

 吉野 人、モノ、金、情報の四つが大切だとよく言われるが、アジアと日本の関係で、人の質が、日本は大変に落ちている。情報は今は落ち込んでいるが、復活できると思う。金の動きは円の国際化で改善し、それに伴いモノの動きも活発になる。最後は人の質だが、これは今はアジアと比べると相当低いといえるだろう。80年代は、気候が涼しくて情報量が豊富な日本は有利だったが、最近は東南アジアも冷房化が進み、気候がハンディではなくなった。さらに、インターネットで海外の情報がただで取れるようになった。そして、日本人に追いつけ追い越せで彼らは頑張っている。また、近年アメリカに留学する人の数は、中国や東南アジアの国々からのほうが日本よりも多い。これは、長期的にみて、彼らのほうに多く情報が入ることを意味する。

――いろいろな視点から進めていかなければいけない。

 吉野 人、モノ、金、情報の四つがうまく働くようにするため、円の国際化、また為替政策を通じて日本の経済を強くすることが必要だと考えている。 (了)

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