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森田実氏:2003.3.2 無気力政局の底流
http://www.asyura.com/2003/hasan22/msg/754.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 01 日 22:26:51:


「永田町はベタ凪状態です」(与党幹部)。

 イラク問題で、熱い戦争が起きるか、世界が分裂し国連が崩壊するか、の瀬戸際にあるのに日本の国内政治の動きは鈍い。
 国内経済は沈滞している。株価は下がり企業倒産は急増しているのに、政府は景気回復のための新たな手を打とうとしない。その上、銀行いじめの不良債権処理加速化という破滅的政策に突進し、不況をさらに深刻化させている。この結果、貸しはがしが激化し、中小零細企業者は塗炭の苦しみにあえいでいる。竹中金融担当相は大失言をしても平然としている。
 小泉首相は「国債枠30兆円」などの公約に違反したことについて「大したことではない」と発言、物議を醸したが、この発言を撤回していない。一昔前なら内閣総辞職か衆院解散かという話になるほどの大問題なのに、いまはそうならない。閣僚もオソマツ。大島農水相、森山法相、川口外相など、一昔前なら引責辞職というほどの不祥事や失言が見過ごされている。
 昭和22(1947)年の新憲法制定で日本が議会制民主主義の国になって以来56年が経つが、これほど無気力な国会はめずらしい。小泉首相と閣僚には緊張感がない。大失言をしても責任をとろうとしない。
 かつて吉田茂、三木武吉、三木武夫、大平正芳、平井太郎、西尾末広、成田知巳ら四国出身の誇り高き信念ある政治家が活躍した頃は、こんな体たらくは許されなかった。
 当時の野党もこんなたるんだ内閣を許すことはなかった。中央の大新聞もきびしかった。いま強い責任感と誇りと見識をもちつづけているのは地方新聞のみである。
 残念なことだが、いまの中央政界には誇りと高い見識が見られない。野党にもかつてのきびしさがない。経済政策の議論も低調。外交政策も議論らしい議論はない。わが国の政治はまさに無気力・無気力の極にある。
「ベタ凪政局」の第一の原因は、解散・総選挙の風が止まったこと。昨年末まで小泉首相は「抵抗勢力」に対して解散の脅しをかけつづけた。だが最近は小泉首相は解散を口にしなくなった。野党を含めて政界全体が解散・総選挙を先送りする方向に動いている。その上、内閣改造が首相の側からひそかに流され始めた。これが反小泉の動きを止めている。
 第二はイラク情勢の緊迫化と北朝鮮核武装の衝撃。テレビはイラク・北朝鮮報道一色。国民全体の関心がイラクと北朝鮮に集中している。結果として国内政局は凍りついてしまっている。大多数の日本国民は日米安保体制下では日本政府に独自外交は許されないと考えている。独立国になることを諦めてしまっている。その上、国内政治の最大テーマである経済政策はほとんど議論されない。国民の政治不信は強まるばかりだ。
 第三は政界の方向感覚喪失だ。2年前に大フィーバーを起こした小泉構造改革の勢いは止まり、小泉改革を推進すべきか、それとも方向転換すべきかについて、国民意識は五分五分だ。日本全体が、歴史の岐路で立ちすくんでいる状態にある。
 国会審議は与党ペースだ。平成十五年度予算案は3月3日に衆院通過の予定。3月27日の知事選告示前には参院通過・成立の流れだ。だが底流には大きな変化がある。
 一つは政界の脱小泉化の動きだ。小泉構造改革論と亀井景気回復論の中間に位置する多数の政治家群が小泉離れを始めた。
 二つはいままで小泉構造改革の親衛隊だった官僚指導層の中に静かな脱小泉の動きがある。
 三つは国際関係が日本の小泉政権抜きで動き始めたことだ。北朝鮮の核開発問題は、国際政治の中での中国の立場を強めている。だが小泉首相には中国首脳とのパイプが薄い。靖国参拝が尾を引いている。日本が中国と話し合う上で小泉首相の存在が障害だ。新政権を求める内外の動きが徐々に強まるのではないか。
 4月以後、「ベタ凪政局」が「激動政局」に転化する可能性は高い。
【以上は、3月1日付け『四国新聞』に「森田実の政局観測」として掲載された小論です】

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