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「"ヘッドレス・チキン" 迷走経済の命運」中谷巌・UFJ総研理事長・多摩大学学長
http://www.asyura.com/2003/hasan23/msg/228.html
投稿者 Ddog 日時 2003 年 3 月 07 日 00:23:42:

(回答先: 「重大岐路、未踏の政策パッケージ打ち出せ」伊藤隆敏・東京大学先端科学技術研究センター教授 投稿者 Ddog 日時 2003 年 3 月 07 日 00:20:07)

エコノミスト「"ヘッドレスチキン"迷走経済の命運」中谷巌・UFJ総研理事長

低迷を続け、デフレの出口が見出せない日本経済。問題と対処法は何か。複数の有識者に現状と展望を伺った。

「"ヘッドレス・チキン" 迷走経済の命運」中谷巌・UFJ総研理事長・多摩大学学長

【問】経済再生の道筋が見えません。
【答】ITバブル崩壊後の米経済減速と、経済のグローバル化を背景とする商品コモディティ化の進展によって加速するデフレ傾向に、日本政府は適切な政策を打ち出せないでいる。まず、現行の金融再生プログラムでは不良債権問題は解決しない可能性が高い。資産査定の厳格化により銀行に引当金を積み増しさせれば、それだけ銀行が産業再生機構に売却する不良債権の価格は低くなる。再生可能な不良債権を、大損してまで産業再生機構に売却するというインセンティブは銀行にはないから不良債権処理の切り離しは進まない。不良債権を銀行から切り離すことが出来なければ銀行の金融仲介機能は回復しない。
さらに、資産査定の厳格化を予想する銀行が自己資本比率維持のために資産圧縮に動けば、貸し渋り、貸し剥がしが増加し、デフレが一段と深刻化するだろう。現行の金融再生プログラムは銀行を萎縮させる、いわば北風政策だ。北風政策では銀行は不良債権というマントを脱ごうとはしない。マントを脱がすには太陽政策に転換するしかない。
【問】太陽政策とは。
【答】銀行に不良債権切り離しのインセンティブを与えるため、産業再生機構が再生可能な不良債権を現時点の実質簿価で買い取るというものだ。ただ、これだけでは銀行救済になるので、銀行はその見返りとして、産業再生機構に予想される二次損失額に見合うだけの銀行のストック・オプションを提供する。銀行株はかなり安くなっているから、不良債権が切り離されて銀行が健全化した段階で値上がりする。産業再生機構はストック・オプションの行使でキャピタル・ゲインを得ることが出来る。この場合、産業再生機構の不良債権の買い取り額は10数兆円にのぼるだろうが、これを日銀が全額融資すれば、ベース・マネーはそれだけ増加し、大幅な金融緩和が一挙に実現する。そうなれば、日銀は本気でデフレ脱却を考えているとマーケットは好感し、インフレ期待が醸成される。その上でさらに、10兆円規模の所得税先行減税の実施とその後の段階的消費税の引き上げを含む大胆な総需要政策を付け加えれば、日本経済はまちがいなくデフレから脱却出来るだろう。
【問】ハイパーインフレの危険性もあります。
【答】それでも思い切って大胆な政策を一挙に打ち出さないとデフレからは永久に脱却出来ない。デフレ克服はそれほど難しいと認識すべきだ。減税にしろ、日銀による1兆円程度の国債買い切りオペにしろ、これまでの政策は規模が小さ過ぎる。インフレ・ターゲットに敢えて反対はしないが、日銀が何をどれだけやればインフレに転換するのか、因果関係が全く見えない段階で実行することにどれだけの意味があるのか疑問だ。
【問】デフレさえ解消すれば日本経済は復活するでしょうか。【答】本格的回復には政府・日銀によるマクロ経済対策に加えて、企業の構造改革が必要だ。日本企業の収益率の低下は病的状態にある。1990年代を通じて継続して低下してきた上場企業のROEは、2001年度の決算数値でマイナスとなった。低収益の大きな原因はコモディティ化の急速な進展にあるが、これに日本企業は上手く対応出来ないでいる。景気が悪いから利益など上げられないと強調するトップも多いが、それでは経営者失格だ。厳しい環境でいかに利益を上げていくかが経営の神髄というものだ。勿論、景気と企業業績とは無関係ではないが、右肩上がりの好況時に利益が上がるのは当たり前の話だ。むしろ、トップがビジネス環境の劇的変化、パラダイムシフトに対応出来ないでいるところに日本経済長期低迷の根本的問題がある。
【問】具体的には。
【答】キャッチアップの時代には、日本には欧米に追いつけ追い越せという明確な目標が存在していたから、欧米の技術やサービスを横並び式に真似をしていればよかった。何をどうすれば上手くいくのかわかっていたから、そこに資源を集中すればよかった。日本がフロントランナーとなった今、欧米を超える新しい技術やサービスを提供しなければ、企業はグローバル競争に負けてしまう。新しい技術やサービスを生み出すには戦略性や構想力が求められるし、失敗のリスクをとらないといけない。だが、依然として多くのトップの考え方は横並び的だ。戦略は不明確で、積極的にリスクをとろうとせず、右往左往している。今の日本は、足腰が強くて走るのは早いが、頭がないためにどこに走っていったらよいのか分からないという、いわばヘッドレス・チキンの状態にある。日本企業の多くが明確な事業戦略を立てられず、低収益に甘んじているのは、コーポレート・ガバナンス(企業統治)が欠如し、日本社会がヘッドレス・チキン状態になっているからだ。
逆に、ヘッドがきちんとあって、方向性を示された時の日本人の強さは圧倒的だと言える。V字型回復を成し遂げた日産自動車の例を見れば明らかだ。社長のカルロス・ゴーン氏は、「日産の技術と社員の能力の高さは相当なものだ。あれだけのリストラ、コストカッティングを断行したら車の品質が落ちるのではと危惧していたが、全くの杞憂だった。こんな国は珍しい。本国のルノーでこれだけの改革を実行しても同じような成果を出せなかっただろう」と語っている。日本人は戦略を実行する段になって圧倒的な能力を発揮する、というのがゴーン氏の意見だ。つまり、リーダーシップとガバナンス構造が確立されれば、日本は直ぐに立ち直れるだけの手足を持っているということだ。
【問】ガバナンスの仕組みをどう構築すればよいでしょうか。【答】先ず、きちんとした透明なプロセスを経て、企業価値を高め、痛みが伴う改革を断行出来る人が、トップに選出されるような仕組みを創る。改革を実行するトップの選出方法が曖昧だと、調整型の人材や、トップがお気に入りの部下が指名される可能性が強く、そうなると効率的でダイナミックな経営を行なうことが難しくなってくる。経営チェック機能を強化し、トップに大きな緊張感を持たせることも必要だ。改正商法(2002年5月成立)で、上場企業に経営陣に対する指名、監査、報酬の3委員会を設けることが出来るようになり(委員会等設置会社)、正しい後継者を選出すると同時に、業績不振を続けたトップを退陣させることが可能となった。ソニーが97年に導入した執行役員制度が、今や上場企業の7割程に採用されているという状況からも、3、4年の間に上場企業の多くが委員会等設置会社に踏み切るだろう。勿論、外部チェックの形式だけを整えて全てが上手くいくわけではない。キーポイントは、トップの意識改革がどの程度進むかだ。
【問】2003年度の日本経済をどう展望しますか。
【答】政策次第だ。マクロでは大胆な経済政策を一挙に打ち出し、ミクロでは企業がガバナンスを確立することでヘッドレス・チキン状態から脱却し、利益を上げる体質に転換できるかどうか。日本人が意識改革を図り、これらをどこまで実行出来るか。そこに日本経済の命運がかかっている。
(聞き手・QUICK岡村健一)

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